09/03/01 21:43:22 ftSUgGW7
「夜の街」
ノンケを自称するその中年は、
俺と、傍らにいる友人を、同性愛者のカップルだと思っている。
さても頭の中というのは、奔放で愉快なものだ。
ゆきずりなればこそ、若輩たる我々が中年の密やかな愉しみを奪うのは忍びない。
即ち我々は道化に転じる。
観客が目の前にいて、踊り狂うのに最適な環境。
隠れて注がれる視線は、酩酊した意識によって滲んでいく。
酒と、観客と、気違いがあれば、簡単に世間を打ち負かす事が出来る。
中年の妄想のくびきが外れ、桃色の世界が漏れ出し、正に“絵にも描けぬ”。
朝靄が、時間を加速させる。我々は覚醒し、狂態の記憶は現より霧消する。
帰路につく中年は、今後交差することなき別の道を歩む。
しかし夢の残骸は全て自分たちで刻んだ現実の傷跡だ。
そして、
後悔を矛に、諦念を盾に、
愚かな若者は二日酔いに耐える。