08/12/24 11:48:44 Off2LfG3
「帰り道」
大気は研ぎ澄まされていた
駅から出た僕を
一刺しで仕留めるためだ
冬の夜の帰り道
人通りが多い
テーマ性のない群れが
主体性を持てよとざわめく
僕は路地に逃げ込んだ
薄い、心地よい路地
弱弱しい電灯が一本
行き場を失った電灯が一本
かえって強い引力で
ありもしない光をかき集めている
僕はそれを笑うことが出来ない
通り過ぎながら
横目で見ながら
僕は待ち焦がれていた
と、
一瞬、電灯が冴え渡って閃く
質量をもった光が、音を立てて割れる
水のように散らばる
乾燥した冬の闇が
蒼ざめた冬の闇が
白い火の粉に焦げ付く
今はもう霧散した
その一粒が、きっと僕だ