08/11/30 02:09:13 yEmoa/l2
「夜の飛行機」
履きつぶした黄色いブーツが
優しく俺の足を進めていく。
それ程寒くないが、やけに冷たく、
雨上がりの道路 少し北のほうに
星の群れがこっちを覗いている。
冬の夜は人の心を冷酷に変える。
コートの中の体、つないだ手。
今感じているのはほぼそれだけで
凍える野良犬にさえ興味はない。
全て煌く静止画の中へ消えていく。
街頭は道路を純粋な色に変えて
俺の心を和ませたりしてくれる。
でもなぜか不安な気持ちは消えず
張り詰めた水溜り 歩く二つの影。
赤い点が星の間をすり抜けていく。
街頭に照らされる 彼女の瞳の奥
小さな輝きが揺れるのを見た。
それはさっき北へ飛んでいった
夜の飛行機となぜか似ていて
喜びも悲しみも切なさに変わった。
冬に飲む紅茶みたいな 優しげな声。
何だかうれしそうに笑いながら
幸せの定義について話している。
俺は話を聞かずに 温もりだけを感じている。
時々、それさえあれば良いような気がする。