08/12/13 10:20:21 UAmSX7z4
だーけど持続はからっきしーだよ。
毎日10時過ぎの帰宅。いい加減奥さんの負担も気になる今日この頃、私はいつものように真っ先にお風呂に入る。
湯船でわずかながらの気力、、体力を取り戻すべく目を閉じ、お湯のぬくもりを心に送り込む。
ふと、目を開くと目の前に自分の陰毛が一本。私の体から新たなる世界に旅立つ其の”陰毛”
今までは私の体にぶら下がっていればそれだけで良かったのになぜ、”其れ”は旅立ったのだろう?いつまでもぷかぷかと”其れ”は浮いていた。
ふと、浴槽の内壁に張り付く陰毛。お湯の波に助けられてか、少しずつではあるが上へ、上へと上っていく。まるでこの上を越えた先に新世界があるのを知っているかのように。
そこへ無常の波。其れはまた其れにとっては大海原。だがしかし”其れ”は壁を上る事を止めない。いつまでも、いつまでも。
助けなんてどこにも無い。運や奇跡なんてものはこの眼前に広がる壁に比べたら微塵も無いことを知っているかのようだ。
そんなに私の体が嫌だったのか?否、”其れ”は自分の旅立つ時期を知らなかったのである。ぶら下がっているだけで幸せだったのである。なのに突然の別れ。もちろん困惑しただろう。あの暗く、少し匂う暖かいあの場所へ帰りたいと思っただろう。
だが”其れ”私の元へ帰ることを拒み、不可能ともいえる壁越えを延々と繰り返すのだ。過去を振り返ることもせずに。
しばらく眺めていると少し疲れているようだ。さっきまで張りのあったちぢれが心なしか少し緩んでいるように見える。
それでも諦めることの無い”其れ”の強い意志に”神”が動く。
神「周りを見てごらん、君は一人ではないよ。」
”其れ”はわずかに動く頭を持ち上げ周りを見渡す。
そこには!何十本もの仲間が壁を登ろうと内壁に張り付いているではないか!まるで地球に落ちる岩を押し戻す男達のように皆が一心不乱に壁を登っているではないか!
そんな大勢の仲間を見て”其れ”は一言
「あったかい」
神は満足そうに一本残らずたらいに入れて大勢の”其れ”に一言。
「お逝きなさい」
”其れ”等の旅は始まったばかりだ。
行き先は誰も知らない。