08/12/07 18:02:52 ef6yMZVX
「この言葉は届かない」
なにか言葉を求められても
お前のその陰に
針の穴ほどの光すら
俺はやることができない
俺はただ
ほかと多数の俺やら私やらと同じように
歩くだけだ
俺の肩が切るのは
風ではなく
お前の視線
振り払うのではなく振り切って
下を見て歩く
走るように歩く
お前にはもう走っているように見えるだろう
そんなこと知っている
ただそんな数多の走者の中にも
お前に手を差し伸べるやつがいる
俺たちはその二人に恐れを感じている
見せつけられた違いは
ひどく薄い紙となり
指を切る
その小さな傷で
俺たちは満足だ
向かい合っていた矢印が
交わることなく進み
背ければもう振り返れない
俺に吹き付ける風は
お前には追い風となる
なにか言葉を求められても
俺の言葉は
近づくのと同じ速さで遠くなるこの距離を
泳ぎはできないだろう
だから届かないと知って
俺はひそやかに
後ろめたく
ごめんとつぶやく