08/12/05 00:52:21 fwngv+Qx
「午後の微熱」
肌寒さとランドルト環の午後
右に開いた一分は止まらないカーテンをとらえる
私は黒スプーンで左目に蓋をした
ぼやけて輪っかに見える
退屈そうな保険医が
進行を務めていた
彼女の白衣はカーテンと同じように
木枯らしをはらむ
ああ
冬だなと
瞼にくっついて離れないスプーンが言うのが聞こえた
開かれている窓の向こうに
飛んでいった温度は何色だったか
退屈そうな保険医が
くしゃみをした
それにびくつき
やっと瞼から離れたスプーン
一段と黒を纏っていて
ああ
冬だなと
私と退屈そうな保険医は呟く
部屋中の白が際立つ寒さに体をふるわせた
両目になったところで
ランドルト環の切れ目は見えない
ポケットで凍り付いていた
銀の眼鏡をかける
退屈そうな保険医は机の上にコーヒーを用意する
カップからさっきとは違う黒に出会う
彼は熱く
保健室に色が戻るのを
退屈そうな保険医に頭をなでられながら感じる
ああ
冬だなと
私は言葉を吐き出す
冬は
退屈そうな保険医が微笑みながら声を出す
春が近いから寒いのね
窓からの、冬からの風が
退屈そうな保険医の髪の匂いを運んできた
ああ
コーヒーがおいしい