09/02/14 12:55:30 oamUPOnZ
ここは希望しかゆるされない世界でした。少女も多くの希望を持っていました。
かつてやさしさをもった少年が彼女の希望でした。彼は森と対話し風の歌をう
たうことができました。ふたりは出会いふたりの希望は次第に大きくなりました。
次第にふたりの希望は不協和音に満ちていきました。希望だけがあらそいは
じめました。二人の周りではとてもよい香りがはげしく匂っていました。少女は
希望を受胎するたびことごとく希望によって殺されていきました。島の小高い丘
にはこうして出来たたくさんの人々の沈黙の希望が高く積みあがってゆきました。
それでも人は希望を批判することは許されません。それがこの島の掟でした。
もはやこの世界では希望はにがい意味しか持ちませんでした。珊瑚が西日
に照らされ水晶のように輝きます。深い群青に彩られた海はえぐるように遠く。
人々の渇きは燐粉の金色から。灰色は薄明の夕やみから作られていきました。
それらは人々をぬくみの消えた淋しさに慣らしていきました。それでも希望は
日々生まれ続けました。うずたかく詰まれた沈黙の希望にできた無数の傷口
は輝き多くの蝶が集まってきます。島は生の快楽に満ちていました。思い出は
柔らかな金色に輝き太陽は日々に新しく島は希望に満ち溢れていました。
世界はただそれを記述するだけでした。