08/10/30 01:08:35 MzG1Ijpw
肩透かしの帰り道に幽霊を見たような気がした
傘を強く握り過ぎて白くなってしまった指先が冷たいまま
三叉路に五秒くらい留まっていると
スクーターが背中をゆるうっとすり抜けていった
幽霊の話をまるで人事みたいに聞いていると
月がカルシウム不足で墜ちてくるとニュースが騒いでいるようで
雨粒ひとつさえ脅迫的になる
一枚足りないくらいじゃ許してくれないので
児童公園のブランコは私が五年生の頃に撤去されて
古井戸はコンクリートの蓋で埋められてしまった
ヤスリのように硬い雑草がフェンスの高さまで伸び上がって
怨みも呪いも蒲の穂が飛ぶ頃にはみんなたいてい忘れていた
それでも
毎晩ちゃんとそこにいるのだと
隣の地区に住む私にはわかっていて
眠りながらその声をちゃんと聞いていた
屋根の向こうに隠れたお月様を天井越しに見上げながら
身を固くして待ち構えていた
灯台の光が空を通過するたびに町は静かになって
私たちの言葉を綿のように吸い込んでいった