08/09/07 00:01:36 dEYz82oV
僕らは居場所をたどりながらゆっくりと車を走らせていたが、そのうちあきらめて車を降りた
ヘッドライト無しには暗すぎる
あまり深追いしないほうがいいよ
彼らはとても賢くて、百年分の呪いを腹いっぱい溜め込んでいるのだから
僕らはできる限りゆっくりと影を追った
竜の鱗のような薄雲が月明かりをごつごつと乱反射させている
あの空に値札をつければ宝飾店街丸ごと一個分くらいの価値はありそうだ
どう
あんまりにも暗くて見えないよ
じっとしていると空から星が落ちてきそうだ
僕らはむずむずとした感じに耐えられず何度も小枝を鳴らしてしまった
濡れた落ち葉の下で虫たちがワンワンと鳴いている
まるで地面が沸騰しているみたいだ
どこ
まだわからない
僕らは一本の懐中電灯にすがりながらその後を追った
それでも時おり木立に痕跡が残っているので、僕らはそのたびに勇気付けられる
すごい
ほんものかしら
ジッポーライターくらいに細い光の先にゆらゆらと影が見える
とても深いわ
そうでもないよ
集落までたったの15分だ
そう言った僕の口先から白い息が立ち上った
ほら
見たことですか
僕は仕方なしに時計を見た
午前2時50分
朽木を見つけたので僕らはそこを第一の目印に定めて
何かを置いていこうとバッグをさぐった
明るくて大きなものがいいわよ
できるだけ明るくて、大きなもの
虫たちが沸き立っていくのを感じた
彼らは僕らの背骨を這い登り、内臓を喰らい、覆いつくそうとしていた
わかっているよ
僕はもう一度時計を見つめていた