09/11/08 22:27:40 TqCE3Ove
なんだろう・・
真っ黒いスーツに身をくるんだ男が立っていた。
背の頃なら180前後だろうか？スラッとした体型に色白の肌
鼻筋がスッと伸び、唇は薔薇のように紅い。何より睫毛が異常なほど長い。
ここまでなら普通のイケメンといったところだが
旅夫の目は、相手の異様な部分、そのただ一点に集中していた。
そう。
頭の毛が「ASIENCEのCM」みたいな髪の毛なのである。
187:異邦人さん
09/11/08 22:41:32 TqCE3Ove
（なんじゃ・・こりゃ・・ぁ・・？）
旅夫は固まってしまって声がでない・・
メールのやり取りでは相手は35歳の男だと言っていた
その35歳の大の男が頭の毛だけASIENCEのCMなのである。
サラサラした肩の下ほども長さのある髪の毛が風にそよぐ
それが雲の間からさす月明かりに照らされて
まるでラメを塗ったかのごとく、ところどころに光り輝く光沢を放つのだ。
（このオッサン・・まんま、バンコランじゃないか！！）
そう。どこからどう見ても、ただのバンコランなのである
188:異邦人さん
09/11/08 22:48:47 TqCE3Ove
どう対応していいか分らない
昔ならバンドマンでこんなサラサラヘアーの男はちらほらとはいた。
しかし今頃、こんなオッサンがバンドの為に髪伸ばしてるとは思えないし
そもそも何で、上下、黒のスーツにサラサラヘアーなんだ？
結果、旅夫の中である一つの結論に達した。
（つまり・・・アレか？ このオッサン・・・共食いの人か？）
189:異邦人さん
09/11/08 23:06:33 TqCE3Ove
旅夫は身をすくめた。
共食いの人を突然目の前にして身をすくめない男はいない。
もちろん旅夫にだって人生の中で知り合った共食いの人の2,3人はいる
しかしそのどれもが、もっと骨太というか野性味溢れた漢（おとこ）たちで
体中の毛という毛がHBの芯くらいありそうで、腕の太さなんか旅夫の2倍くらいある
言うなれば、メスとオスのハーフというより
人間とゴリラのハーフと分類した方が正しそうな共食いの人なのである
しかし今、旅夫が目の前にしてる男は明らかに違う。
正真正銘、オスとメスのハーフで、しかもその努力の跡も垣間見える。
（これは困った・・） 旅夫はその対応に天をあおいだ。
190:異邦人さん
09/11/08 23:14:41 TqCE3Ove
「堀益男と申します。はじめまして・・」男はそう名乗った。
「はは・・旅夫と申します・・ふふ・・ き、キレイな髪の毛ですね・・ひひ」
旅夫も自己紹介を返しながら、相手の様子を窺う
「フフッ・・」
男は一瞬、嬉しそうに微笑した。
！！
（やっぱそうだ！ 正真正銘、共食いの人だ！！）
旅夫の想像が確信に変った。
191:異邦人さん
09/11/08 23:36:03 TqCE3Ove
「いや・・僕はね宝塚の大ファンでね・・今日も今しがた公演を観に行って来た帰りなんですよ」
「え・・？」
「嗚呼！ もし僕が女に生まれていたならば！ 宝塚に入団をし男役のトップスターとして、この一生を捧げるのにぃぃぃ！！」
堀益男はベルサイユの薔薇のオスカルのような雄々しい叫び声を上げ、旅夫に語りかけてきた
「行くぞ、アンドレぃぃぃぃ！！！」（いや、行かねーてっ・・）と一人ノリつっ込みをしながら旅夫は嘆息を漏らした。
なんだ・・思い過ごしか・・ただの中年のコスプレマニアの親父だったんだな
旅夫はホっとすると共に、世の中こんなわが道を行く人もいるのだな～と感心した。
俺も他人の評価にイチイチ気を取られず、もっと自分の目標に向かって突き進まなきゃな！
フランス革命に身を投じて非業の死を遂げたオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェのように
自分も信念を貫き通すぞ！！！
旅夫は堀との出会い、その生き様を垣間見て、自分に大切な勇気を貰った。
192:異邦人さん
09/11/09 03:23:29 5JdDci6i
断食
茶屋
づくり
出来上がる
どうですか
193:異邦人さん
09/11/13 23:30:03 Yn7ejooE
エリア88のサキでも可かい
194:異邦人さん
09/11/30 09:18:40 zV/DPDT8
旅男帰ってきてー。
195:異邦人さん
09/11/30 14:41:41 FThlAQLU
みどくつの『俺様の世界旅行』
196:異邦人さん
09/12/01 11:44:27 ttJBck9r
保守
197:異邦人さん
09/12/02 06:47:30 xmb/vOcI
旅夫には幻滅や！
投げ出すコやったんや！
198:異邦人さん
09/12/03 13:14:52 NPIuZEy3
旅夫！旅立て！
199:異邦人さん
09/12/04 01:25:12 OcGzERG9
堀益男と別れて帰宅した旅夫
猫が餌をもらいに飛びついてきた
旅に出る日はもう明後日に迫っている。
出来るだけ猫の今後の処遇決めるのは先延ばしにして来たが
明日中にはいよいよお別れだ。
猫は飼い主のそんな気持ちを察してか察してないか
いつにも増して与えられた餌にむしゃぼりついていた
尻尾がピーンと立ってるのは嬉しい証拠
旅夫はそんな猫の後姿を見てとても悲しい気持ちになってきた
200:異邦人さん
09/12/04 01:28:26 OcGzERG9
こんな我がままなだけの、か弱い飼い猫が
果たして野生の野良たちと上手くやっていけるのだろうか。。。
いじめられたりはしないだろうか？
エサにありつけずガリガリになって飢え死にしたりしないだろうか？
人間のエゴによって飼われ、人間のエゴによって捨てられる。
旅夫は自由な大空に旅立つ前に、この猫のことだけが唯一の気がかりだった
猫はそんな旅夫の表情に気付いてか、みゃーみゃーと鳴いて近づいてきた
手でそっと頭を撫でてやる。優しく首をくすぐってやる。
猫は目をとろけさせながら、えもいわれぬ恍惚の表情を浮かべ喉をゴロゴロと鳴らしていた
小さな小さな頭。柔らかい柔らかいお腹。
こんな小さな体でいつも我がままいっぱいだった猫
彼女は旅夫に顔を擦りつけて必死にマーキングをしていた。。。
201:異邦人さん
09/12/04 01:31:26 OcGzERG9
もう、いなくなる人に
必死にマーキングする小さな猫がとてもけな気で
旅夫の目からは涙がこぼれ落ちて来た。。
猫はそんな旅夫をジッと見つめていたが、とうとう自分の運命についても察したようだ
「みゃーみゃー」
小さな鳴き声をずっと繰り返してくる。。。
「ごめんよ。。。ほんと、ごめんよ。。。」
「もうお別れなんだよ。。。俺はもうすぐ海の向うの世界へ旅立ってしまうんだよ。。」
溢れだした鼻水と涙のせいで旅夫の声も猫のように濁っていた
202:異邦人さん
09/12/04 01:40:07 OcGzERG9
弱い無力な二人は小さな部屋の片隅で、寄り添って泣いていた
「みゃーみゃー」
「ダメだよ。お前は連れて行ってあげられないんだ・・例えお前がバックパックの中に入ってもだ・・」
「だって・・お前は弱いから。。。」
「みゃーみゃー」
「ごめんよ。。弱い俺じゃ、世界でお前までは守ってあげられないんだ。。。」
小さな猫とひ弱な飼い主は寂しそうに語り合っていた
旅夫はそッと部屋の灯りを消す。
窓の外には雲の間からまん丸なお月様が顔をのぞかせ部屋の中の二人を見つめていた。
地球上で今もっとも無力なこんな二人でも宇宙の彼方からそっと見守っていてくれるお月様
203:異邦人さん
09/12/04 01:51:26 OcGzERG9
（※つたない文章表現力を補うため、もとい、叙情感をより感じていただくため、こちらのBGMをお聴き下さい）
URLﾘﾝｸ(www.youtube.com)
「キレイなお月様だね・・」「みゃーみゃー」
灯りを消した部屋に差し込む月の光。
「僕たちは世界で二人だけじゃないんだよ。ほら、お月様はいつだって僕らを見守っていてくれる」
「みゃーみゃー」
「月と地球の距離は地球の直径の30倍。384,400kmもあるんだ。でもそんな遠い距離のお月様だって、こんな近くで僕らをいつでも見守ってくれてるんだよ」
「・・みゃぁ」
「だから例え、僕が地球の裏側に行ったとしても、お前との距離なんてたかが知れてる、二人はいつも一緒ってことさ。。。」
「・・・・」
小学生の頃から全学年通して理科の成績1,2程度しかなかった旅夫の理系トークが炸裂する。
相手が猫なので「まぁ。。ウィットに富んだ知的な人。。。」と評価されてるかも知れない
204:異邦人さん
09/12/04 01:54:47 OcGzERG9
猫は寂しそうな表情をやめ、旅夫に頬擦りしてきた
「分ったね。明日がさよならだ・・・明日からはお前は野良猫として第二の人生を歩むん・・だ・・」
その言葉を旅夫が発した途端、猫は今までの愛くるしい表情を一変させ猛獣のような雄たけびを上げて飛び掛ってきた
「ミャアアアアア！！！！！！！」
（ふざけるな～！！！ 他にもっと建設的な案を出せ～！！！ このバカ飼い主～！！！）
「うぎゃぁぁぁあぁぁぁーーーー！！！ 噛み殺されるぅぅぅぅぅ！！！」
・・こうしてペットの猫は無事に実家で飼われることになった
めでたしめでたし
205:異邦人さん
09/12/08 07:17:36 HWKaHA39
(￣▽￣；)まだ～
206:異邦人さん
09/12/09 08:23:36 67pV1luQ
旅夫さん はやく戻ってきて～