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1978年4月「残雪の八ケ岳縦走」遭難事件において,
参加者を募集して実施する,いわゆる引率登山の主催者およびリーダーに課される事前義務と
登山中の義務について,以下のように具体的に判示している.まず,事前義務としては,
①参加者らの装備,技術,経験および体力に相応した企画を立案すること,
②責任のある相当の登山経験,技術を具えた者にこれを担当させること,
③その担当者は,参加者が登山計画に相応した技術,体力,経験を有し,
装備を携行しているかを審査し,山行の具体的内容の指示および助言をす
ること,があり,登山中のそれとしては,
④参加者全体の状態・動静を掌握する体制をつくり,参加者の疲労を看取し,
危険に際しては参加者を安全に導き,気象につねに注意して危険にさらさな
いことであるとしている.
本件は任意参加のケースにあたり,注意義務は軽減されるはずであるが,登山というスポーツの性質上,
危険の度合がきわめて高いことと,初心者も参加した山行であったことから,リーダーと主催者の注意義務違反が
厳しく追及されることになったと思われる.
引率登山が有償であろうと無償であろうと,参加者に対する『安全配慮義務』の程度に差はない.
委任者(参加者)と受任者(リーダー)の関係の明白な引率登山ではリーダーのみに安全配慮義務があるが,
一般的な伸問の登山では,リーダーとフォロワーは相互に委任者・受任者の関係にあり相互に『安全配慮義務』を
負担する関係となる.さらに『危険引受』も合理的な限度で相互に契約内容にとりこまれ,よほどの『重過失』
でもないかぎり法的責任は問題とならない」とする.
但し自己決定の尊重に由来する「危険引受の法理」も,判断能力のない者や判断資料が欠如している場合には機能しない
残雪の八ケ岳縦走」遭難事件において,被害者は成人であり,しかも任意参加であったにもかかわらず,リーダー等に
賠償責任が認められている(三割過失相殺)