06/01/29 22:33:14
続き
それからしばらくしてから、その里山に逃亡犯が逃げ込む大事件があって、
しばらくは里山が恐くなり、足を向けることが少なくなった。
時折彼は[母ちゃんと姉ちゃんも集まった]とか、家族の断片情報を語ることがあったが、
私には彼の家族の団欒は全く想像出来なかった。
二年になってから彼は学校に来なくなった。
私は彼のことは忘れかけていたが、彼のことを脳裏に刻み付ける事件があった。
ある日、父が新聞記事の話をしてくれた。
転んだハズミで持ち歩いてた小刀で腹を刺した少年の報道だった。
そしてその少年はR君のことだった。
彼に何があったのか、彼は亡くなったのか、周りの誰も知らないようだった。
また、その後彼と逢うこともなかった。
小屋にはその頃、友達を誘って行ってみたが、夢の様に跡形も無くなっていた。
今にして思うと、彼と彼の一家は謎めいていて、単なる訳ありの食い詰め者
とは少し違う感触があった。
まあ、有り得ないことだろうが、彼が山窩族だったんなら面白いな、と思う。