10/07/07 09:02:11 4i3mf0pu
どす黒い衝動を持った男がいた。いつか人の命を奪ってみたい、と常々そう考えている男だ。
彼は幼いころに虫を潰す快感に目覚めた。そしてそれは心身の成長と共にエスカレートしていき、
爬虫類、鳥類、そして小動物を殺すまでに至り、次は人間の命をと考えるようになった。
だが彼は殺害衝動を除けば今まで平凡に、そして優秀に暮らしてきた。
小学生の頃から塾に通い勉学に励み、良い大学に入る。そして社会的地位のある職に就く。
誰も彼の習慣に気づかなかったし、彼自身も巧みにそれを隠して生きてきた。
しかし彼の前に格好の標的が現れることによりその衝動は人に向けられる事になる。
標的はケイ県ワイ市で水商売をしていた女。
彼女は若くして両親を亡くし、生活のため水商売で身を立てていた。
男運が無いのか彼女の性質なのか、結婚しては長く持たず離婚を二回繰り返している。
各夫達の間にできた女児、あわせて二人も十年以上前に亡くしている。
いわゆる天涯孤独の身だ。
標的には天涯孤独の者が良い。虫どもと違い人間は復讐ができる生き物だからだ。
その点天涯孤独の者なら例え命を奪っても復讐にあう心配が無い。
彼は頭の良い人間だった。だから事を運ぶに当って下手を打ち、社会的信用を無くしたり、
ましてや逆恨みで自身に危害が及ぶ事等は絶対に避けなければならない。
だから標的選びから慎重に吟味し、機が熟するのをひたすらに待った。
そして彼が行動を実行に移した次の日、彼のことが新聞に載った。
「ケイ県ワイ市、女児二人殺害事件の犯人に死刑判決
世間では『刑重過ぎるのでは?』との声も」