10/06/13 17:36:23 GVs9PgW+
ゆりぴょんとあたしは、校庭の片隅にあるタイムカプセルを埋めた場所に二人でやってきた。
「十年後の私」にあてた手紙が入ったタイムカプセル。十年後あたしはどんな気持ちでこの手紙を見るのかな。
もうすぐ卒業。ゆりぴょんとももうすぐお別れだね。
ゆりぴょんは、この三年間いつも一緒にいたあたしの大親友。初対面の時から気が合って、何でも話した。
友だちのこと、オシャレのこと、アイドルのこと、たまにはちょこっと勉強のこと。
クラスの男子のこともたくさん話したね。楽しかったな。
一晩中ガールズトークしてもちっとも飽きなかった。そしてあの木崎クンのことも。
「りさっち、私たちいつまでも親友よね」ゆりぴょんは寂しそうな笑顔を浮かべて言った。
「もちろんよ。ずっとずっと友だちでいようね」あたしは答えた。
「私が木崎クンにふられたときも、りさっち、一緒に泣いてくれよね」
笑顔でいるけど、木崎クンのことはゆりぴょんにとって辛い想い出だ。
ゆりぴょんは木崎クンと付き合っていた。それがある日突然彼から「もう別れよう」というメールが来て、そのまま木崎クンは転校してしまった。
木崎クンには新しい彼女ができたんだというウワサが流れた。
ゆりぴょんはあたしの前で一晩中泣いていた。
「りさっち、私たちいつまでも親友よね」ゆりぴょんはもう一度同じことを言って言葉を続けた。
「親友だったらお願い、本当のことを言って」
「え?何の話?何を言ってるの、ゆりぴょん」
「木崎クンの新しい彼女って、りさっち、あなただったのね」
ゆりぴょんが前に差し出した手帳の切れ端には、あたしと木崎クンが並んでピースサインをしているプリクラ写真が貼ってあった。
あたしが言葉を失っていると、ゆりぴょんは急に表情を変え、「この裏切り者!」と泣き叫びながらあたしに襲いかかってきた。
手にはカッターが握られている。
あたしはびっくりして、とっさにゆりぴょんのカッターをかわした。
そして何とかカッターを取り上げようと必死でゆりぴょんともみ合った。
しばらくして、両手に妙な感覚を覚えた。同時にゆりぴょんの力が急激に抜け、彼女はゆっくりと床の上に崩れ落ちた。
ゆりぴょんの左胸には、さっきのカッターが深々と突き刺さっていた。