09/12/18 14:53:18 rf0nfn0/
十二月初頭。
昼下がりに行きつけの喫茶店で珈琲を飲んでいたところ、
近くの席に中学校時代からの旧知を見つけた。
「お……久しぶりだな、最近どうだ?」
久しぶりに会ったためか。
俺の視線に気づいた彼はカップを携えたまま態々席を移動して俺の隣に座ると、懐かしい物を見るように喜々として言う。
「依然と然して変わりない、強いて言うならやっと仕事が板についてきたぐらいか。そっちはどうなんだい?」
俺は以前会った時と同じスーツ姿の友人にそう言って微笑んだ。
少し安心した。学生時代の彼は教師との交際や不良グループとの交遊で高校中退という、社会的に大きなハンデがあったのだが現在のような不況にも関わらず仕事を続けているようだった。
「同じく変わりねぇよ、スバルが恋人のままさ。俺も仕事はまともにこなせる様になって来たけどな」
「……はは、何だ、お互い変わりないな」
「だな。……そうだ。今日家に来るか?」
「いや、悪い。今日は外せない用事があってな」
「んだよ、付き合い悪ぃな」
「悪い。お―、良い時間みたいだし俺はそろそろ行く。だけど最後に言っとくぞ、お前見たところ仕事も軌道に乗ってるみたいだしそろそろ結婚考えとけよ」
「お前は俺の御袋かよ。だけど、俺ももう二十過ぎだしな。わかってる。でも……お前にだけは言われたくねー」
俺達はそう言いあって苦笑すると、最後に軽く会釈をして別れた。
料金を支払い喫茶店の外に出る。
ちらっと見上げた空にはいつの間にか雪が降っていた。
「さて、家に帰るか」
白い息を吐きながら俺は家路につく。
久しぶりに会った彼等の。
友人とスバル先生の幸福を祈りながら。