09/12/09 18:25:19 3JiiAqcz
「先生!うちの裕樹はどうしてこんなことになったんですか!」
私の剣幕に先生は一瞬たじろいだが、私より五歳ほど若い彼女はすぐに冷静な表情に戻った。
「お母さん、これは裕樹君のノートです。見ていただけますか」
彼女は私に一冊のノートを示すと顔に掛かった前髪をさりげなくかき上げた。
表紙がボロボロになったそのノートは禍禍しいものを感じさせた。
おそるおそる手に取りページを捲った途端、私の手は止まった。
『こらぁお前まだ生きてんかよ。早く消えろよ。』
『あたしあんたと同じ空気吸ってるかと思うとマジユウーツになんの。お願いです。
早くいなくなって下さい』
『お前のことをぜってーブッつぶすからな!』
次のページもその次のページもまた次も…延々と息子を呪う言葉が書き連ねてあった。
私は深いため息とともに目を伏せた。
「全部で20人分書かれていました」
「先生、どうしてうちの子が…」私はさっきの質問を繰り返していた。
「様々な原因は考えられますが、まだはっきりしたことは…それでお母さんに裕樹君の
ご家庭での様子をお聞きしたいと」
「先生は原因がウチの家庭環境にあるとおっしゃるんですか?」
「ま、まあ落ち着いて下さい。今は色んな方向から原因を探ろうとしている所ですから」
ベッドの上で祐樹は眠っていた。中学生になってもまだ甘えん坊の裕樹。それなのに…。
胸に迫った私が裕樹の頭に触れようとしたときだった。
「クククク…」目を開いた裕樹が突然笑い出した。
「ヒャヒャヒャ…歳は食ってるが張りのあるオッパイしてるじゃねーかよ。今度は直接
舐めてやるよ」
「ひ、裕樹…」息子の変貌に私は慄いた。
「お母さん、今の彼は裕樹君ではなくシンゴという十三番目の人格です」
先生の後ろでは看護士がビデオを回していた。