09/09/22 07:32:15 nNFHOT6S
悠は気風の良さが評判の魚屋だった。
主婦には勿論、暇を持て余したおじいさんや、
仕事帰りのサラリーマンにも人気があった。
見ていて気持ちがいいからだろう。
ひょっとしたら物珍しさもあるのかもしれない。
私は悠と結婚して良かったと心から思っている。
私は悠に言った。
「ねえ、そろそろ店じまいにしない?」
「そうだね。じゃあ片付け、手伝ってくれる?」
悠はそう言ったが、商品はほとんど残っていない。
今日も売り上げは順調だ。
ここは港町だから新鮮な魚が手に入る。ありがたい。
私たちはこの港町に、お互い別々の旅行で来ていたが、
偶然出会い、結婚した。
そして、二人が出会ったここに住むことを決め、店を開いた。
「今日は一緒に飲みに行こう」
と、悠は嬉しそうに言った。
私は悠の笑顔が好きだ。
私は悠の小さな手を握り、近所の飲み屋に行った。
ここの魚のフライは絶品だ。
悠はいつも、この店に魚を卸していることを誇りに思っていた。
店のテレビにはビートルズが映っていた。
「オレ達が知り合ったきっかけが映ってるぞ」
悠はそう言った。
そうそう、私達はビートルズが好きで、
リバプールに旅行に来た時に出会ったのだ。
懐かしく思い、私は彼の小さな手をそっと握りしめた。