09/12/13 23:21:22 o2T8fbMH
「正直なところ、この作品を、トリック至上主義の見地から見るならば、不満は禁じ得ないところであろう。たくみな小業は各所に展開されてはいるが、一読あっと叫ぶような、大業には乏しいというのが本当のところであろう。
そしてまた、『鬼火』のように恐ろしくも美しい、人間愛憎の地獄の描写を、まともに期待している人々にとっても、ある種の物足りなさはおさえきれない事だろう。
しかし、その両方ともに、この作品を鑑賞する正しい立場ではないと、私は思う。楷書の基準を以て行書を批判し、草書を見るがごとき眼を以て、行書の筆法を云々する―いずれも正しい鑑賞眼とはいえないのである。」
(高木彬光「行書の傑作―『悪魔が来りて笛を吹く』を評す」より)
ま、ものは言いようと思うか、一理あると頷くかは人それぞれで。