09/08/17 15:09:22 FHklNB39
「ABCD姉妹」出題篇1/2
台風の影響下で雨風が吹きすさぶ中、人里離れた山頂に建つ大きな屋敷内でこの事件は起きた。
その屋敷の主人で有名な推理作家の帯刀 栄悟(たてわき えいご)が書斎で殺されたのだ。
背中にナイフが刺さっていて心臓をひと突き、机に伏せて死んでいたのをお手伝いの御手洗 和貴江(みたらい わきえ)が発見した。
凶器のナイフはナイフ集めが趣味の被害者所有の物で書斎に飾ってあったものだった。
被害者の利き腕の人さし指の指先に血がベットリついていて、
手の下には彼の著書である「ABCD姉妹」が置いてあり、表紙には血文字で大きく「C」と書かれていた。
「ABCD姉妹」とは帯刀栄悟の書いた推理小説で、養女として育てられたアリス、バーバラ、クリスティーナ、ダイアナの4人の義理の姉妹が繰り広げる連続殺人ミステリーである。
どの部屋にも飾られたナイフ同様に本棚があり、帯刀の著作がずらりと並んでいた、その中の一冊である。
屋敷にいたのはお手伝いの御手洗の他には、帯刀の愛人で内心では別れたがっていた麻生 珠美(あそう たまみ)。
帯刀のゴーストライターではないかと噂の作家志望、馬場 右貴江(ばば うきえ)。
帯刀の本の挿し絵を描いていた千草 真理子(ちぐさ まりこ)。
いつも帯刀にきつくこき使われていた編集の堂島 紗耶香(どうじま さやか)。
いずれも帯刀に恨みの一つや二つは持っている者達ばかりである。
「高齢で持病があって利き腕に力の入らない御手洗さん以外のみんなに犯行が可能よね」
「犯人は千草よ、だってCはCHIGUSAの頭文字よ」
千草に聞こえないように部屋の隅で馬場と麻生がそう話していた。
反対側では千草と堂島もなにやら話している。
そんな4人をお手伝いの御手洗が利き腕をさすりながら扉の脇でじっとみつめていた。(続く)