08/12/18 10:05:27 +4q1s6U1
刑事にその質問をして、返ってくる答えは一つしかない。たとえ、事件がどれほど込み
入っていようと、現場の刑事達が内心ではホシは見つからないだろうと思っているような
事件であっても。事件記者であれば、刑事にそんな馬鹿げた質問などしないはずだ。特に、
今のような二人きりの時に。
殺人の現場である公園に残されたのは、たった一つのボタンだけだった。不審人物の目
撃情報はなく、凶器さえ見つかっていない。痴情のもつれからの咄嗟の犯行に見えて、犯
人は呆れるほど証拠というものを残していなかった。被害者の女性の交友関係を調べても、
今のところ男性の影は見えてこない。
平瀬の視線が落ちた。
つられて、都築の視線も追いかける。片肘をついた平瀬の上着の袖は、ボタンが一つ欠
けていた。
都築は目を見開き、平瀬の顔を見る。彼もこちらを見ていた。
「そう、僕はあの日、公園にいたんです。あなたを追っていたから」
言って、平瀬は喉の奥で笑った。
<了>
二年ほど前に他所の板へ投下したやつ
当時もらった感想は「構成はしっかりしてるけどオチがみえみえ」
これって叙述に入るのかどうかが知りたい