08/11/17 22:45:56 EQlrsw8a
「最近は公衆電話なんてめっきり見かけなくなったよなぁ」と場違いな事を思った。
ガラスの向こう側には古臭いダイヤル式の電話機が備え付けられている。
僕は意を決してボックスの中に飛び込むと、受話器を引っつかんだ。
「もしもし・・・」受話器からは誰の声も聞こえてこない。
「もしもし・・・」仕切り直そうにも、それ以上の言葉が出てこない。
この期に及んで怯んでしまう僕は、なんて情けない男だろう。
私はどこか後ろめたさを感じながら、目の前の扉が開くのを待っていた。
扉の上部には目盛の付いた半円型の板があり、その上を二本の針が動いている。
古い西洋時計を想わせるそれは、やはり古い時代のエレべーターでは
階数表示の為に使われていた。「ずいぶんと時代錯誤よね・・・ふふ」
そう思うとなんだか馬鹿らしくなってきて、ようやく覚悟が決まった。
もうすぐこの箱の中から出てくる・・・もうすぐ・・・願いが叶う。
さっき連絡があったとき、「ついにこの時が来たんだ」と思った。
どんなに頑張っても望む結果は得られなかったし、薄々は気づいていた。
こうする以外に二人が結ばれる方法は無い、と言う事を・・・。
僕が扉を開けて外に出ると、そこには思ったとおり、彼女が佇んでいた。
「待ってたわ。ねえ、さっき言ったことは本気・・・?」彼女は悲しそうに言った。
「ああ・・・本気さ」
「じゃあ・・・もう一度言ってちょうだい。何を望むのか」
「・・・もしもしずかちゃんが・・・源静香が・・・野比のび太と結婚する運命なら」
「本当に・・・それがのび太さんの為になるの・・・?」
「ドラミちゃんと決めた事だろう?こうしないと僕たちに幸せな未来はないんだ!」
僕はきっぱり言い切ると、今出てきたばかりのもしもボックスを破壊した。
「お兄ちゃん・・・!」妹の悲痛な叫び声が、機械仕掛けのボディーにこだました。