08/11/07 01:20:29 ta/CWryi
「警察では内部の犯行ではないかという見方が強まっています」警部が言った。
「そこで、犯行時刻の皆さんのアリバイを確認したいのですが」
「いいでしょう。刑事さんも既にご存知の通り、
この屋敷には私と、殺された妻、そして4人の使用人がおります」
そう言うと屋敷の主人は執事に尋ねた。
「事件のあった時刻、赤井は何処におった?」
「はい、赤井は三丁目のパン屋に行っておりました、ご主人様」
「青山は?」
「青山は近所の公園に犬の散歩に出ておりました、ご主人様」
「黄田は?」
「黄田は隣町のスーパーに買出しにいっておりました、ご主人様」
なるほど、と主人は頷く。刑事が二人の会話を割って執事に尋ねる。
「ちょっと待ってください、あなたは何をしていたんですか?」
「……ああ。わたくしは娘に会いに行っておったのです。
実は十年前に妻と離婚しておりまして、娘には月に一度くらいしか会えないのです」
「そういうことですか。みなさんそれぞれきちんとしたアリバイがあると。
証人もいるようですしね。……となるとやはり、残された一人が犯人というわけですね」
刑事がそう言うと、執事は声を荒げて言った。
「刑事さん、そんな筈はありません!!」
主人は悲しそうな表情で執事を見つめ、言った。
「……なぜ、そのように犯人をかばおうとするのだ、赤井?」
執事は答えた。
「ご主人様!緑川が犯人だなどと、赤井は断じて信じられません!!」