『読みました』報告・海外編Part.4 at MYSTERY
『読みました』報告・海外編Part.4 - 暇つぶし2ch658:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/12/19 12:37:16 jJA0sv3M
アガサ・クリスティー「無実はさいなむ」を読んだ。
アガサの自選ベスト10にはチョイスされているが、日本のアガサファンの
チョイスからは外れている作である。
本邦における一般的知名度は無いに等しい作だが、なるほど読んでみると、
アガサが書きたかったのは十八番のメロドラマをまぶした殺しが
絡む文学的作だったのかなと。
ゆえに、本作は冤罪ネタという現代日本においてもタイムリーなテーマ
を含むとはいえ、週末に気軽に楽しむといった風の創りの作ではない。
(作中でゲーム感覚で事件の推理を楽しまんとするキャラが殺害されて
しまうのは何か象徴的だ)
こんなん地味な作も最後まで読ませる語りの術は巧妙と言わざるを得ないとは
いえ、犯人像はS・Sのルールに抵触するものであり、
アガサらしいアクロバティックな展開の面白さは皆無である。
はっきり言うてつまらんかったね。

659:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/12/19 15:41:41 MiCF+FFQ
H・C・ベイリー「フォーチュン氏の事件簿」を読んだ。
フォーチュン談を読むのは、大乱歩編のロングセラー「世界短編傑作集5」に
収録された「黄色いなめくじ」以来である。
独自な病的テーストは印象的ではあったが、
当時はゲーム感覚の謎解きミステリに嵌っていたため、その後は縁が無いまま
年月が過ぎた感あり。
この作品集は残念ながら「黄色い・・・」を上回る、匹敵するような作は無く、
その点では期待外れは否めないものの、黄金時代に謎解きよりも人間や
社会観察に重点を置いたこのような作が存在したという歴史的な意義は
認めるにやぶさかではない。
好評の声に応え、一応な収録作品全話講評逝ってみよう!!
・「知られざる殺人者」
本書解説を担当した戸川安宣氏は、フォーチュン談とハードボイルドの
共通性に関して触れているが、生来の邪悪に対して拳銃でカタをつける形に
なるこの作など、正にハードボイルド的と言い得るかも。

「彼は死体をヘッドライトの光のなかへ運んで行ってじっと眺めた。
『これでかたづいたか』と呟きながら肩をすくめ、死体を車の中へ引きずり
こんだ。」
ただし、シャーロック・ホームズのライヴァルたちシリーズとしては「?」
なのだが。

660:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/12/19 15:43:19 MiCF+FFQ
・「長い墓」
これはホームズ談にもありそうな古代の墓を巡る陰謀ネタ。
まあ、そこそこの面白さか。女は怖いネタ。
・「小さな家」
執筆年代的にラストに救いはあるものの、これはジャック・ケッチャム的幼児虐待な世界でしょ。刺激に慣れた昨今ならともかく、
当時は相当にショッキングな作ではないかな。
・「ゾディアックス」
タイトルからシリアル・キラーねたかと思いきや、時代が異なり。
意外や経済ネタ(採掘権、株価)ミステリ。
この作者の社会的視野の広さを覗わせるものはあるが、まあ、今読むとそれ
だけの作とも言い得る。
・「小指」
最後に平然とちょいグロい展開になるエピ。
1度も表立って登場しないキャラが事件のキーマンになるなどミステリとしては問題外な面あり。
・「羊皮紙の穴」
まあ、フローレンスとその周辺の観光案内ミステリといったところか。
バイブルに馴染みが薄い日本人にはそれ以上の興趣は湧かないと思われ。
・「聖なる泉」
偶然性が絡むとはいえ、これはクリスティ風の人間ドラマがあるミステリで
まずまず読ませるものあり。


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