『読みました』報告・海外編Part.4 at MYSTERY
『読みました』報告・海外編Part.4 - 暇つぶし2ch43:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/10/19 09:05:51 I5Yh1apz
C・デイリー・キング、鮎川哲也訳「鉄路のオベリスト」を読んだ。
90年代に入り国書刊行会等が本格的に取り組んだ本格を中心とする未訳ミステリの紹介、
既に80年代前半に光文社がカッパノベルスで試みていたわけである。
ただし、作品のセレクトに問題があったせいもあり、企画倒れに終わったという感は否めない。
本作もマエストロ鮎みずからが翻訳を手がけながらも特別に面白い作ではなく、
訳者あとがきにもあるとおり、今ではトンデモと言われても仕方ないような心理学(あとがきによれば
作者はコロンビアでマスター、イェールでドクターを得たインテリ)の薀蓄が
非常にうざいのが難。ただし、平板過ぎる人物描写には問題有りな作者だが、
プールまである豪華な大陸横断鉄道列車を舞台に事件と推理の合間に挿入される風景描写は
トラベル・ミステリの興趣を十分に感じさせ楽しめるものがあり、
また、クライマックスのお約束な関係者一堂を会した名探偵の謎解きは、第一、第二の事件(殺人というワードを使用していない点に留意)共に、それなりにエル風の理詰めな論理展開を試みて
いるのは評価しても良いかモナー。

44:名無しのオプ
08/10/19 10:47:19 RtXu5P63
>>42
読後感の感想文大量投下が一番の原因。
再考を促したいな。

45:名無しのオプ
08/10/19 10:51:32 yT5jLMsf
>>44

>>39、そして容量を言うのなら明らかに馬のほうが多い。
ミステリーでないものを無理矢理ミステリーだと言い張って投下する量も莫大。
お前も読後感氏に嫉妬する暇があるなら本の一冊でも読めよ。

46:名無しのオプ
08/10/19 10:54:59 P6YJ+S5i
削除依頼ひとつ出さないくせに原因だってさw
ほんとにそうおもっているなら削除依頼かけたりすればいいのに

依頼をしないことについてどんな言い訳するか知らんけど、
依頼も自分でできない時点で言いがかり以上のものではないな

47:名無しのオプ
08/10/19 10:56:42 P6YJ+S5i
ちなみに必死に正当化してる書斎の書き込みの方はなんども依頼が出て何度も削除されてるぜ

48:名無しのオプ
08/10/19 11:52:24 +me/1gFT
余計なこと書くのは、自分の書き込みに自信がないからだろうな。
内容では勝負できない書斎の悲しさよ。

49:名無しのオプ
08/10/19 13:52:03 JZY0VI9H
>読後感の感想文大量投下が一番の原因。

これ↑がデタラメであることは、きちんと証明されているよ。

スレリンク(tubo板:146番)

を読んでみればすぐに分かる。

50:名無しのオプ
08/10/19 15:08:35 RtXu5P63
>>49
恣意的に期間を区切って比べたところで客観的な判断材料になりえるはずもない。
書斎叩きのための資料作りといったところか。

51:名無しのオプ
08/10/19 15:10:57 ybW9IKu0
じゃ、あなたの判断材料は?

52:名無しのオプ
08/10/19 15:50:25 sMaNLT+6
匿名で自分をほめるしかないのかねえw

53:名無しのオプ
08/10/19 16:09:11 JZY0VI9H
>恣意的に期間を区切って

期間なんか区切っていないだろ。

「終わりの方の25レスを見てみると」と書かれていることから分かるように、
期間を区切ったのではなく、レス数をきりの良いところで区切っているだけ。

こんなことも分からないのか?


そんなことよりも重要なのは、その25レスの中で比べると、
レス数は読後感が7つで書斎魔神が6つと、読後感が1つ多いだけだが、
レスに書かれた行数は、圧倒的に書斎魔神の方が多い。

つまり、感想文大量投下をしているのは書斎魔神の方であり、
ID:RtXu5P63 はそのことを隠そうとしているのがミエミエ。

54:名無しのオプ
08/10/19 16:13:47 JZY0VI9H
あと、ID:RtXu5P63 は最悪板のスレのレスを一部改竄して横溝スレに貼っている荒らし。
(横溝スレの34、35、44。)

55:名無しのオプ
08/10/20 02:01:20 ciskbhih
自演とわかりきって相手してるヤツが一番うざい

56:ジョー・サージェント
08/10/20 18:29:07 sddxfAop
>>55
書斎アンチが、クズであることを証明してくれたね。

57:名無しのオプ
08/10/20 21:50:26 AYvcPbZb
ハイハイ

58:あぼーん
あぼーん
あぼーん

59:名無しのオプ
08/10/24 21:46:33 y/n6owf9
>>56
自演は認めるんだねw

60:名無しのオプ
08/10/25 11:22:03 2kG/fO+P
デス・コレクターズ読んだ
前作未読
僕一人称でトラウマ刑事が謎多い事件を追う。比較的好みの作品だと思ったが
なぜかとにかく文章のリズムというかなんというか、とにかく合わない。
読んでても面白くない。筋立てやキャラもわるくないし、しっかりしてし嫌いな話
じゃないのに、読んでる間全然楽しくなかった。
評判も良い作品なのに何故自分に合わないのか理由がわからない。
そういうのってない?

61:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/10/25 20:50:27 agnQlPFS
テリイ・サザーン「怪船マジック・クリスチャン号」を読んだ。
ミステリちゅーか、ブラック・ユーモアちゅーか、
プラクティカル・ジョーク(本邦作品では大乱歩の「ペテン師と空気男」が想起される)、
それも金に糸目をつけない悪ふざけという感がある作。
「イージーライダー」も著したアメリカ人作家の手になるものだが、モンティパイソン・シリーズ
とか好きな向きにはウケそうなテーストの作である。
なお、表題作は連作の中編であり、長編と呼べるボリュームを持つのは併録された
「博士の奇妙な冒険」であるが、本作は終盤に来てやっとミステリ的展開(殺人に関する偽装工作)
となるものの、即座にエンディング。なんとも評価に困る「奇妙な味」の作ではある。

62:名無しのオプ
08/10/25 21:14:10 DZU3DlQ9
書斎さんの論考はためになるなあ。

63:名無しのオプ
08/10/26 00:31:10 HFzENmBO
>>43
>「鉄路のオベリスト」
EQで連載してましたね

64:名無しのオプ
08/10/26 01:55:49 pRKotqjA
 

65:名無しのオプ
08/10/26 04:34:09 Yqe6Gnnd
お前らそんなに二人の感想が気に入らないなら自分らで代わりの感想を投稿しろ
その方がこのスレも活性化する
競争してお互い負けないような感想文を書けばいい

66:名無しのオプ
08/10/26 10:09:51 nlNmqDE4
キャロル・クレモー『アリアドネの糸』(ポケミス)

大学で開かれる、エーゲ文明黄金展の展示品が盗まれ、失踪した女学生アリアドネに疑いがかかる。
彼女の無実を信じる女教授ニールセンが、独自に調査を始めるが……。
英国推理作家協会最優秀新人賞受賞作(1983年)。

謎は女学生の失踪だけだし、主人公の女教授も地味な人物。
そのぶん大学内の人間関係とか、空気とか、他人の家庭のプライバシーに立ち入ったときの違和感とか、
肌ざわりがリアルに書かれている。
神話通りの名前、アリアドネとパイドラの姉妹など、いかにも見立てっぽい要素が前に出てきているが
虚構性やサスペンスで読ませる作品ではなく、話は退屈だった。
何と言うか、マーガレット・ミラーやルース・レンデルからハッタリを抜いたような感じ。

67:名無しのオプ
08/10/26 10:14:02 pQSVeETt
名無しもくだらん感想を書くねえ。
やめとけ。品位を落とすなや。

68:名無しのオプ
08/10/26 10:22:43 ROOFf8Tl
書斎が書き込み続ける限り品位の低下は防げない。

69: ◆XjFtIkbasQ
08/11/03 16:54:55 hH4fmeFV
マイクル・コナリー『ザ・ポエット』(上下、扶桑社ミステリー、1997)【8点】

新聞記者マカヴォイを主人公とするノン・シリーズ。
猟奇的殺人+殺人課刑事の自殺の謎を主人公がFBIと協力して追う展開。

ポオの詩の一節を現場に残していくという殺人犯というあおり文句の割には、
正直上巻はやや退屈なんだけど、下巻はおもしろかった。
ちょっと伏線があからさま過ぎた気もするけど。

70:名無しのオプ
08/11/05 22:53:54 AXGBYQbW
ローレンス・ブロックの短編を読んでるんだが、どれもオチが切れてて面白いな。
星新一やO・ヘンリーの作品の中の、良作ばかりを集めたような感じ。
この人がエッセイで、短編は売れない、商売にならないって言ってるのが、
皮肉なもんだなと思う。
明らかに短編の才能があるし、本人も短編書くのは嫌いじゃないんだろうが、
それを否定せざるえない市場の状況が・・・

71:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/11/08 12:45:53 AhGwAmk4
イーヴリン・ウォー「囁きの霊園」を読んだ。
最近、俺が読み狂っている(とは言うてもマジで狂っているわけではないが(w )
早川のブラックユーモア選集の1冊。
「ブライズヘッドふたたび」で著名な作者の文庫化もされていない作だが、
ヴィアンやトポール等の作よりも、ストレートにこれぞブラックユーモアという展開と味わいを
持つ現代にも通じるなかなか面白い作である。
巨大ビジネス化した葬祭業、脇で登場するペット葬祭業等、現代では珍しくはないものの、
日本での翻訳当時は、正にブラックユーモアそのものだったのではないだろうか。
また、挿入される身の上相談コーナー(ヒロインの運命を左右する結果となる)の内実も面白い。
ただし、重要なテーマであると思われるカリフォルニアという母国とは対照的なカラーの土地柄
で暮らす英国人たちの心情や主人公の詩人が行う名詩の剽窃ネタの面白さは、
正直言うて、多くの日本人が翻訳で読んでもわからない世界と言わざるを得ない。
他にサイコ・ミステリ風の「ラヴデイ氏のささやかな外出」(悲劇に見舞われるのは
A嬢だとばかり思うていた)、予想外のオチを迎える「べラ・フリース、パーティを催す」
(これもヒロインの人柄ゆえにそして誰もいないかと思うていると・・・)の2短篇と
ウォーの人と作品を紹介した文献を収録。

72:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/11 18:21:39 asgMQrfl
「アトラスの使徒 上・下」サム・ボーン(ヴィレッジブックス)

NYタイムズの新人記者ウィルが初めて扱った殺人事件は
よくある類のものに思えた。しかし、野心旺盛なウィルが
事件を掘り下げていった結果、被害者の意外な一面が明らかになる。
意気盛んに取材に励むウィルだったが、そんな時、妻ベスが何者かに
誘拐されてしまう。犯人と思われる人物から断続的に届くメールに
隠された秘密とは何か?

これは壮大なホラ話である。後半はこんなことない。あり得ないと
思いながらページをめくった。バカミスというか、呆れる人もいるかも。

しかしながら、陳腐な表現だが、謎が謎を呼び、全体像が
浮かび上がりそうで浮かび上がらないというもどかしさで引っ張る
リーダビリティがあるのは確か。ただ帯にあるように
「『ダ・ヴィンチ・コード』より面白い」かは未読なんで判らないけど。

それからプロット上1つ損してるなと思ったのは、(メル欄)。
これは(メル欄2)という風にするべきだったと思う。そうすれば、
実は(メル欄3)というミスリードになったのに。

最後に2点。
・ブラックベリーは非通知に返信出来るのか?
・原書のハードカバー版の結末が違ってるんならあとがきに書けよ。皆が
 お前みたいに気軽に原書に向かえるわけじゃないんだぞ。でなきゃ
 本書を手に取ってないっつうんだよ。

73:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/11 18:23:37 asgMQrfl
「犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き」ジェラルド・カーシュ(角川書店)

「私」が大犯罪者だったという男の回想を聞く形の連作短編集。
これもホラ話であるが、壮大ではなく小手先のもの。だがそれがいい。
晶文社の2冊に収録された分を除いて、ベストは
「カームジンとガスメーター」。タダでガスを使うという
裏技の面白さとその簡易さが○。こんなことがやれたなんて
いい時代だったんだなぁ。他の話は大抵カームジンでなくては
無理そうなものや、共犯者が必要なものばかりだったので。ま、本来は
そういうカームジンのキャラクターを評価するべきなんだろうけど……。

気になったのが「カームジンの出版業」。これはどう解釈すべきか?
作者自身の皮肉交じりの疑問とみるべき?

後、表紙のじいさんはイメージと合わんかったなぁ。

74:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/12 20:11:34 wn9d3o/G
「垂直の戦場」ジョセフ・ガーバー(徳間書店)

40代にして優良企業の副社長という成功者デイヴィッドはその朝も
いつも通りに出勤した。オフィスでシャワーを浴び、コーヒーを入れ、
スーツに着替える。しかし、部屋に入って来た社長はいきなり
デイヴィッドに銃口を向けた! そして突如現れた謎の殺し屋たち!
更に友も妻も息子も、何故か周囲が皆デイヴィッドの敵に回り始める!
自分の身に一体何が起こっているのか? 訳の解らぬままたった一人で
得体の知れぬ敵に立ち向かう羽目になってしまったデイヴィッドの
運命は!?

(「巻き込まれ」+「あなたはだあれ?」+「ベトナム帰還兵」)3
みたいな。この粗筋は惹かれるわいな。そんな状況SF無しで
無理やろと思って読み始めた。
主人公が次々に襲って来る危機に刹那的に対処していく様は
中々の読み応え。この辺が映画化権が売れた由縁か。真相も
納得の行くもので、巧いと思った。割かしお薦め。

ただ、この邦題は頂けない。直訳せずに字面を考えるべき。
それから、初期段階と結末違うんならちゃんとそっち教えろよ!
こないだのもそうだが、翻訳家ってのは原書と自国人との橋渡し役だろ?
言わばストローみたいなもんで、それが勝手に弁作ってんじゃねーよ。
何か勘違いしてねーか? そんな意識だから例のがあんなに
遅れたんじゃね。

最後に4つ。
・22ページまで包帯の描写が無いのはおかしい
・130ページのあれは辻妻合わなくない?
・無線機って銃声やら拾わないの?
・カッスラーに筋運び褒められても……お前が敵わないだけだろw

75:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/12 20:13:05 wn9d3o/G
「8(エイト) 上・下」キャサリン・ネヴィル(文藝春秋)

現代のアメリカ。コンピュータープログラマーキャサリンは、
左遷が決まった夜友人の家で占師に奇妙な予言を受ける。その翌年の春、
友人と観に行ったチェスの試合場で見知らぬ男から「今すぐ立ち去れ」と
言われたキャサリンは、その直後に命を狙われ、以後巨大な闘いの渦に
巻き込まれていく。
革命期のフランス。財産を没収されることになったモングラン修道院では
代々伝わる呪いのチェス・セットを守るため、院長が分散させて
修道女達に預け、各地へ送り出した。しかし、その中心メンバーである
2人の修道女は潜入したパリで血生臭い狂気に襲われることになる。

最近ホラ話よく読むな。いや、面白かったよ。こんな作家がいたのか。
現代と過去のパートが交互に進行するんだけど、フランス革命の頃の話は
歴史小説としても良い気がした。勿論、かなり創作入ってるけど。

ただ、ヒロインの行動に唐突で内面描写が不足気味の面が感じられたり、
また、中盤から「こんなにハンサムだなんて」とか少々雲行きが怪しく
なってきて、その後ナポレオンが凄い美男子という記述で
「やっちまったなァ!」こやつも所詮女であったかと思ったが
ま、その辺を除くと、楽しめる。

終盤どんどんまとまっていく展開は読んでいて心地よい。少々まとまり過ぎ
な気もするがそれはホラ話ってことで……。あっ あっ みたいな感じの
サプライズも○。長いけど内容は濃いと思う。

しかし、パリ・コミューンててっきり普仏戦争後に出来たのかと思ってた。

76:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/13 17:03:32 srPso2+Y
「女医スコーフィールドの診断」ヘンリー・デンカー(文藝春秋)

美貌の神経科医ジーンは抜群の実力を持っていたにも関わらず、
性差別の壁や過去の経験等から部長昇進を阻まれていた。そんな時、
彼女は発作を起こしての運ばれてきた幼児の診察に当たって
ある疑惑を覚えるのだが、それが彼女の仕事も私生活さえも揺るがす
事態に発展していく。

社会派医療ドラマって感じ? 何か地味なんだよな。扱う問題が
小さいというか少ないというか……もっと内容を詰めて欲しかった。
まるで同時期の日本の小説みたい。で、ラストは(これまでの
流れからすると)甘過ぎ。つかこの女、もうちょっと処世術学べよ。
雌伏してゲットしたら豹変すれば良いのに。

後、子供同士の交流が案外ドライで驚いた。

77:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/13 17:04:22 srPso2+Y
「ロス・アラモス 運命の閃光 上・下」ジョゼフ・キャノン(早川書房)

第二次世界大戦末期。世界中の科学者達を集めて原子爆弾の開発を
進めていたロス・アラモスの秘密基地の保安部員が下半身を露出した
状態で死んでいるのを発見される。極秘裡に処理したい軍部は
新聞記者上がりの情報部員コノリーを派遣する。住人を総ざらいして
犯人を探すコノリーだったが、彼自身もまた監視の対象とされ、
窮屈な立場での捜査を余儀なくされる。そんな中コノリーは
美しい人妻と出会い心を動かされる―。

多感な時期にナンガサクに住んでも何色にも染まらなかったことが
誇りです。
いやー長かった。どうしようかと思ったよ。あとがきにもあるけど、
本筋に関係無さそうな場面が多くて……。訳者曰くその辺りこそ肝で、
デイトンも関心した部分なんだろうけど、やっぱりミステリーしたい
自分には些か苦痛だった。

捜査が中々進まなくて(不倫はスムーズに進行するんだがw)
苛々させられるけど、上巻の終りでやっとこさ一波乱来ていよいよ
話が動き出す。下巻に入ってからは割と展開が早くなって来る印象。
ああ、あれがここで……とか解ってくる。ただ、
「だから上巻は我慢して読んでね(^_-)―☆」とは言えない。
何か推理の筋道が曖昧だし……別に読まんで良かばい。

78:名無しのオプ
08/11/13 20:37:23 4y+pUuhu
>>77
ネルソン・デミルの作品の感想かと思った。

79:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/11/15 13:05:27 YhP+TS35
サマセット・モーム「アシェンデン 英国秘密情報部員の手記」を読んだ。
新潮文庫(2分冊)以来、久々の再読。
言わずと知れたエスピオナージの古典中の古典であるが、
俺自身がサマセット作品(長篇)があまり好きではない(短篇は「雨」等面白いものが多いとは
思うが)ということもあってか、初読にも退屈であったが、今回も同様な感があった。
まあ、権威や歴史的意義に拘泥しなければ、現代ではエンタメとしては文句無しの「逝ってよし!」
だわな。これはサマセットのメーンな意図がスパイを主人公にした人間ドラマであったとしても
同様、俺も経験があるが、人間ドラマは異常時よりも平常時を設定した場合の方が難しいのである
ゆえに、
第1次世界大戦を背景にしたそれなりにスリリングな設定なのだが、
とにかくプロスパイならぬアマスパイそのものの作家(勿論、サマセット自身がモデルというか
体験談含みの作)が、諜報活動が趣味的、娯楽的に過ぎスリルの欠片も感じさせないのである。
連作小説の型を取りながらも、ストーリー的に章割りの役目しか果たしていない部分も多く、
この構成の選択そのものも問題視したいところである。
上司のR大佐は当然、イアンの007シリーズのMの元ネタなんやろね。
でも、この原典にはマネー・ペニーは不存在という寂しさ。

80:名無しのオプ
08/11/15 16:55:42 2t0VUUii
読後感のスレ容量潰ぶし荒らしがひどいことになっているね。
コイツこそアクセス禁止にすべきだよ。

81:名無しのオプ
08/11/15 21:30:51 PPnvYKoC
ここのコテの方々、いつも参考にさせていただいてます!

82:名無しのオプ
08/11/15 23:07:13 SUEacNBN
>>77
キャノンの『Alibi』ならハメット賞('06)を獲得したということで
読んだことあるんだが感想は全くいっしょで笑ってしまった。
WW2直後のヴェニスでの安っぽいミステリロマンスに
ホロコースト関連の歴史的詳細・異説を細々書込んだだけって感じで、
あちゃらでの評価の高さが今一つわからんかった。文芸ってレベルでもなさそうだし。

83:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/11/16 16:12:50 sYNgHhlQ
リチャード・スターク「汚れた七人」を読んだ。
20年以上のブランクを経て世紀末に復活したシリーズだが、
これは旧シリーズの7作目、もっと会話主体でテンポが良いイメージがあったのだが、
主人公パーカーが極端に無口なせいもあり、間も持たす意味もあるのか、
情景描写、性格描写も詳細で、意外にじっくり読ませる作という感がある。
後にはスーパー・ヒーロー化してまうパーカーだが、この初期作ではまだまだ悪党ぶりを
発揮し、とち狂ってパーカーの命を狙う仲間、情婦を殺し現金を横取りした藤四郎を始末
するまでを一気に読ませる。
終盤の森林でのチェイス、建築中のビル内でのアクションは読ませどころとなっている。
しかし、本作のパーカーは素人に強奪した現金を奪われるは、警察の動きを読み間違えて
仲間を壊滅状態にしてしまうわ等、間抜け過ぎる感がある。
そもそも犯罪のプロ中のプロであるのにもかかわらず、あくまで強奪金に拘り危険(事件担当の
刑事の自宅への訪問までする等)を犯し過ぎるパーカーの態度が最後まで説得力を欠く感が
あるのだ。
内容的には、カレッジ・フットボール・スタジアムからの売上金強奪のプロセスを軽く流さず、
もっと書き込めば非常にスリリングなものとなったであろうことが惜しまれる。
(ちなみに映画化作品ではこの部分に尺を割き、前半の見せ場とし、キャラ的にも
殺される女も主人公(黒人に脚色)の恋人と設定、リベンジ的要素も入れて主人公の追跡に
説得力を持たせている)

84:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/16 17:51:55 AQuJSsWq
「深海のアリバイ マイアミ弁護士ソロモン&ロード」ポール・ルバイン(講談社)

バカンス先でボート事故に遭遇したスティーヴとヴィクトリアは
ボート内で死んでいた男の殺人容疑にかけられた資産家グリフィンの
弁護を担当することになる。常日頃スティーヴの専横を苦々しく思い、
独立を考えていたヴィクトリアは、グリフィンと家族ぐるみの付き合い
だったこともあり、この件では何としても主導権を握ろうとするのだが、
それがきっかけで2人の間がギクシャクしてしまい、更にグリフィンの
イケメン息子の登場で舞い上がるヴィクトリアにスティーヴが
嫉妬して公私共に危機を迎えることに―。

いつ出るかいつ出るかと思っていたら6月に出とったやないかーい!
ひぐち君ちゃんと教えてくれなきゃダメだー。
いやしかし掴みがOK過ぎる。出だしからぐいぐいですよ。
訳者のセレクトも奏功したんだな。

リーガルサスペンスはそんなに好きじゃないけど、これは法廷の場面は
割と少なくて、主役2人のドタバタとかアクションとかがメインだから
問題なく楽しめる。後半ヌーディストクラブに入会させられる
行なんかはやりすぎコージーな気がするけどw。
中心となる事件とは別にそれぞれの親に関する事件の謎解きもあり、
またソロモン法という名称で紹介される一種破天荒な裁判必勝法も面白い。

ただ、ロマンスものとしてみた場合不満点がいくつかある。その辺りで
ちょっとヒロインにムカつくけど、全体としては続きが楽しみな
シリーズだ。

あ、法廷劇そのものには捻りはあまり無いのであしからず。

85:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/16 17:52:52 AQuJSsWq
「無実はさいなむ」アガサ・クリスティ(早川書房)

静かな町にやって来た一人の男。彼がアージル家にもたらした
驚くべき知らせが、2年前の殺人事件の悪夢を再び甦らせることに
なる―。

後期のクリスティはこういう過去の事件を再検証する作品がお気に入り?
殺人犯として獄中死した男が主張していたアリバイが2年後に証明され、
証人の学者が関係者に酷い衝撃を与えたことに責任を感じて捜査に関わる
わけですが、事件の性質上証拠より証言がクローズアップされており、
ダイイングメッセージ(とは違うか)等も出てきます。緻密な推理は
ありませんが、淡々と進行していくストーリーは秋の深更に
マッチしている気もします。

ただ、クリスティにしては話が膨らまず印象が薄いということも
言えますが……。後、186ページの罠は罠になっていないと思います。
その事はほんの数ページ前に皆に知らされていますから。

86:名無しのオプ
08/11/16 18:25:16 K1QqK66L
読後感よ、張り合って荒らすのはやめろや。
所詮レベルが違うし、スレ容量潰し以外の何者でもないんだからな。

87:名無しのオプ
08/11/16 18:33:10 nLInzscc
>>86
スレリンク(mystery板:77番)
>77 名前: 名無しのオプ 投稿日: 2008/11/16(日) 09:13:56 ID:K1QqK66L
>>3. 固定ハンドル(2ch内)に関して
>>叩きについて
>>最悪板以外では全て削除します。

>削除されるということは荒らし書き込みだということだね。

書斎支持者は自他共に認める荒らしであることがこれで証明されたなw

88:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/18 18:19:11 tNq4vZFM
「チャイルド44 上・下」トム・ロブ・スミス(新潮社)

スターリン体制下のソ連。保安省の捜査官レオはとあるスキャンダルに
巻き込まれ田舎町に左遷されてしまう。しがない警官としての余生に
絶望しかけていたレオだったが、森の中で惨殺された少女の事件を
扱うことに活きる意味を見出そうとする。密告の危険を抱えつつ
妻と共に捜査に乗り出すのレオに未来はあるのか……。

やっと読めた。初めて粗筋を知った時は「モスクワ、2015年」
(及びその続編)を連想したけど、ひょっとして同じ犯罪実話が下敷き?

閑話休題。犯罪政治愛情等が絡み合って引きの良い読み物になっている。
特に逃げ場の無い社会情勢だからこそ成り立つ人間関係のドラマが
面白かった。気に食わなければ割と簡単に離れられる現代では
本作の様な変化が起きることも稀になっているのではないか。
後、小さな子供の描写が切なくてキュンと来た。ラストの決断も心地良い。
それから勿論ミステリー的な驚きの要素もある。

ただ、ケチもいくつか思い浮かぶ。
まず、前フリが長すぎる。特に序盤の雪合戦と逮捕劇の行は
もっと刈り込めるはず。それから主人公が身の危険も省みず捜査に
これだけ入込むことに対して説得力のある理由が提示されていない
と感じた。この辺が「モスクワ~」と違う所。後、(メル欄)というのは
根拠の無い幻想だと思う。

それにしてもこんな組織で一廉の地位にある人はどうやって
出世し続けられたのやら……。
最後に、あの紅茶俺毎日飲みたい。飲み明かしたい。

89:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/25 18:45:18 lbx6RJ1u
「ウォリス家の殺人」D・M・ディヴァイン(東京創元社)

大学教授モーリスは、幼馴染みの売れっ子作家ジョフリーから彼の館に招待される。
ジョフリーの様子がおかしいと彼の妻ジュリアから聞かされていた
こともあり誘いを受けたモーリスだったが、ジョフリーには
複雑な思いを抱いており、更に彼の息子がジョフリーの娘と婚約していて
それにジュリアが反対しているという込み入った状況の中にいた。
館に着いたモーリスはジョフリーの兄ライオネルがこの地に来ていて
兄弟の確執が起きているらしいと知る。そしてある日、2人は揃って
姿を消した。大量の血を跡に残して……。

創元ディヴァイン・ウォーズ第2弾。相変わらず面白くてサクサク
読み進められる。伏線がガンガン出てきてキッチリ回収されていく
爽快感ったらたまんないね。本来それが当然なんだけど。
「悪魔はすぐそこに」に比べて難易度は高いと思う。

主人公の別れた妻が息子にあることないこと吹き込んで父子の関係が
半ば破綻しているというサイドストーリーも興味深かった。こんガキが。

ただ、「えっ!?」と思ったのは、作中で犯人の正体に気付く
決め手となる手掛りが提示されるタイミング。他の事情を勘案すると
ここで出てくるのは腑に落ちない。
後、223ページの最後の一文は「顔に現れている」では。

しかし、流石のクオリティだ。つくづくブランクが恨めしいよ。
というより見る目の無かったポン助どもがという方が正確か。
こいつらがスルーしたせいで、にわかが得意気に順番決める様な
不愉快な事態になったんだからな、全く。大体こいつも本格古典を
それなりに扱ってきた癖に聞いたこと無かったて有り得ねえよ。

90:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/25 18:47:02 lbx6RJ1u
「亡き妻へのレクイエム」リチャード・ニーリイ(早川書房)

広告代理店の副社長ポールは、ある夜衝動的に決意し、自室の
クロゼットの片隅に長いこと放置していたトランクを開封した。
それは21年前、退役後帰国する彼を待たずに死んでしまった
妻キャシーの思い出が詰まったトランクだった。様々な品を手に取り
過去に思いを馳せていたポールは妻の財布の中に手紙を発見する。
それは彼に宛てたもので、夫が間もなく帰ってくることに対する
喜びに溢れていた。最後に日付を見たポールは衝撃に襲われる。
それは彼女が自殺したとみられていた当日に書かれていたのだ!
妻の死因に疑惑を抱いたポールは独自に調査を開始する。

初ニーリイ。「仮面の情事」は映画で観た。

クリスティがお得意の過去の事件ものですが、不惑過ぎて会社重役という
責任ある立場にいる主人公が過去に拘わるのを周囲の誰も止めず
普通に協力するのがおかしかった。この会社の次期社長人事を巡る
争いも見所の一つ。

真相は、まあ、意外なんだけど自分は驚けなかった。引きが弱かった
のかな?

そうそう、いくつか辻妻が合わない様な箇所があった。
・45ページと46ページの記述が食い違う


91: ◆XjFtIkbasQ
08/11/28 00:30:42 jxMT8jyj
ピーター・ラヴゼイ『マダムタッソーがお待ちかね』
(ハヤカワ・ミステリ文庫、1986)【7点】

ヴィクトリア王朝を舞台としたクリッブ部長刑事物。
写真館の妻が助手の男を毒殺し、殺人を自白。絞首刑の判決を受けるが、
ある日その自白を覆す証拠を示した写真が郵送されてくる・・・女の真意は。

絞首人のパートが当時の死刑と民衆の文化が窺えて面白い。
ただそこそこ愉しめたけど、ミステリとしてどう絡むかという問題となると、
ちょっと物足りない。地味な良作というところ。

92:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/28 16:46:36 JN1PpYQ/
「アパルーサの決闘」ロバート・B・パーカー(早川書房)

横暴な牧場主ブラッグが君臨する町アパルーサに新たな保安官が
やって来た。男の名はヴァージル・コール。各地で名を馳せた
ガンマンであるコールは助手エヴァレットと共に巨悪に立ち向かうのだが、
やがて事態は複雑な色合いを帯びて来る……。

初パーカーが西部劇ものなのは、元々西部小説が読みたかったから
です(強く薦められた逢坂は女主役で「はい、消えたー」)。
どうせ読本を眺めた限りでは現代ものはフェミニストならぬ身には
かなりしんどそうですしね……。

しかし、西部小説ならそういうのは無いだろうと安心して強い男の
ドライな闘いを期待して読み始めました。コールの造型は一見機械の様で
感情に流される面もあり、矛盾を孕んでいる様にも思えましたけど、
これは西部小説の主人公として割とオーソドックスなのかな?
ガンマンという人種の微妙な立ち位置をきっちり描写しようと思ったら
結構大変なんでしょうね。その点侍は身分という枠組みから
アプローチして書けるからまだ楽と言えるかも知れません。

助手のエヴァレットは、コールよりもはっきりした倫理観を持っていて
より人間味が感じられます。この2人の差異がああいうラストに繋がる
のは納得がいきました。

他のキャラクター―悪役、美女(玄・素)―は類型的で、
彼らによって織りなされるストーリー展開も従来の西部劇(欧米の映画)の
それと変わらない印象を受けました。だから次作がどんなストーリーに
なるのか、早く読みたいです。

93:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/28 17:12:26 JN1PpYQ/
「反撃」ブライアン・ガーフィールド(早川書房)

善良な弁護士マールの人生は偶々賄賂の受け渡し現場を目撃して
しまったことから暗転する。マールの証言で有罪判決を受けた
大物マフィア・フランクの報復を恐れて名を変えてひっそりと
暮らす日々。そして8年後、出所したフランクは遂にマールの居所を
突き止め、復讐の牙を剥いた!
常に命の危険に晒され、家族の絆も危うくなりつつあるマールは
到頭ある決意を固める。

以前読んだ「ロマノフ家の金塊」は革命後の歴史ものとして良かったが、
今回は所謂素玄対決もの。ランボーでもポアロでもなく、
普通の中年のおっさんが、ホーム・アローンの様に単に機転を利かせて
危機を切り抜けるのではなく、ガチで身体を鍛えて様々な技術を
身につけて敵に立ち向かうという展開。

しかし相手はマフィア。頭を潰せばそれで済むという問題ではないし、
かといって壊滅させるのも現実的に不可能。何より報復感情を
捨てさせなければならないわけで、これは暴力で解決出来る事柄
じゃないぞと思いながら読み進めるわけですが、うーんこういう
展開か……。まあ、納得出来なくもないかな、という印象。

主人公の染まる様で染まらない意志の強さが物語に独自性を持たせている
と言えるかも。同じ作者の「狼よさらば」(映画のみ)と対照的な作品
といった処でしょうか。

94:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/03 16:55:09 046YdUqR
「腕利き泥棒のためのアムステルダム・ガイド」クリス・イーワン(講談社)

ミステリー作家兼泥棒のチャーリーは滞在先のアムステルダムで
突然裏稼業の依頼を受ける。それは2軒の家から小さな人形を盗み出す
ことだった。依頼人の持つ人形と合わせて所謂「三猿」を形成するもの
らしいが……。
仕事に取り掛かるチャーリーだったが、何者かに邪魔をされ、更に
事情を知っているらしいブロンド美女と共に依頼人を訪ねると
彼は自室で殺されていた! 一体誰が? そして猿に隠された秘密とは?

タイトルが洒落てたんで読んでみた。
これ劇画的だね。主人公が蘊蓄垂れながら泥棒する泥棒する話で、
編集者との会話で平然と泥棒の話をしたり、
本来会うのが難しそうな人にスルッと会えたり、
そもそも三猿というアイテムが「マルタの鷹」を意識してるし。
だからそういうノリを楽しめればおk。

しかし、おとぎ話故の甘さも垣間見えるようで、
1、前半にある人物が主人公のためにした行動は、それ以前の行動と
矛盾するはずなのに、誰にも突っ込まれていない。
2、154ページ辺りの記述はアンフェア。
3、最後にお約束的に皆を集めるシーンは本来有り得ないはず。
4、終盤語られる主人公がしたある細工は手順通りだとすると不可能。
など瑕もあり。後、やたらマンセー描写されてたヒロインが
あっさり……なのもマイナスかなw。

シリーズ化されてるみたいで次はパリが舞台。声の出演のみの
女性編集者との絡みなんかは面白かったしまた読むかも。

95:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/03 17:18:20 046YdUqR
「死の連鎖」ポーラ・ゴズリング(早川書房)

は女性大学教授が自宅で射殺されているのが発見され、グランサム警察の
敏腕警部補ストライカーと部下たちは捜査を始めた。そんな時、
部下の一人ピンスキー部長刑事は娘の恋人から相談を持ち掛けられるが
詳しい事情を聞けないまま彼は殺されてしまう。深く悔やむピンスキーは
犯人は通り魔と判断するストライカーと袂を別ち独自に聞き込みを
行うことに。
一方、ストライカーの恋人ケイトは研究室に頻繁に掛って来る
脅迫電話に悩まされていた。

ゲイブリエルシリーズをスルーしてストライカーものとしては
4番目の作品。恋人のインテリ美人、ケイトとはまだ結婚しておらず、
またもや一悶着有りそうな雰囲気の中スタートします。
やっぱりこういう女性と付き合うのは大変なんですねえ……。

あとがきでストライカーは「ほとんど何もしてない」と指摘があり、
そういやそうだなと思ったのですが、今回は部下の刑事たちの捜査に
焦点を当てているようで、それプラス前述の2人の関係の行方は
というのが見所ですね。実際の警察組織ってのはもっと前時代的だ
と思いますけれども、まあコージーの流れを組むらしい
ゴズリングですからこんなもんかなと。

……個人的には、ノン・シリーズものを期待したいのですが。

96:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/06 15:56:32 sXVqK7iK
「本命」ディック・フランシス(早川書房)

超一流騎手のビルが障害レースで転倒し、死んだ。完璧な跳躍
だったのに……。不審に思った親友のアマチュア騎手アランが
問題の柵を調べると、そこには針金が巻き付いていた。ビルは何者かに
殺されたのか!?
アランは警察の協力も請いつつ捜査を始めるのだが……。

デビュー作だそうで。
競馬という共通のテーマを元に何十作も書き続けているフランシスだが、
それは毎回どういう不正を考えるかと(ほぼ)言い換えることも出来よう
(←使ってみたかった)。こないだ読んだ「読本」に収録の短編然り
本作然り。主人公が親友の為に奮闘(孤軍ではないが)し、
かつ恋のレースにも励むという筋書きと合わせて基本的な作品だと思う。

恋敵に対して心穏やかでないながらもフェアたらんとする天晴れな男気や、
巨大な敵に襲われた四面楚歌からどう脱するのかや、終盤に強いられる
厳しい選択で主人公がこの先どうなるのか等が読み処。

最後に疑問点が2つ。
1、76ページの時点で主人公があの疑問を持つのは不自然。
それよりも先にまず思い浮かぶ可能性があるはず。
2、248ページの時点で主人公があんなことされたらその直後の
展開に繋がらないはず。

97:名無しのオプ
08/12/08 23:26:08 +r2iBEZc
現在、「2chが選ぶこのミステリーがすごい!2009」の投票を行っています。
こちらに投票お願いします。

2chが選ぶこのミステリーがすごい!
スレリンク(mystery板:266-番)

【以下のルールを守ってください】
・投票スレの>>1-3は無視してください。
・対象は奥付表記で2007年11月~2008年10月の期間内に発行された広義のミステリー作品。
・6作品以内で順位をつけて投票すること。
・必ずしも6作挙げる必要はなく、1作でも投票可とするが、上記のように順位はつけること。
・1位=10点、2位=9点~6位=5点で集計。
・国内作品と海外作品は別々に投票する。
・各作品に一行以上の総評必須(ネタバレ禁止)
・宝島社の作品は対象内
・投票期間は12月8日~1月20日まで

今年のこのミス、本ミスなどのランキングです。参考にしてください
国内編 スレリンク(mystery板:267-270番)
海外編 スレリンク(mystery板:271-278番)

98:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/09 17:13:11 EfhqmR+L
「ニューヨーク12番街 ブロークン・ハート・クラブ殺人事件」イーサン・ブラック(DHC)

ニューヨークで連続殺人事件が発生。被害者はいずれも女性で
惨たらしく殺されており、現場には必ず「BHC」の3文字が
残されていた。事件を担当することになった由緒正しき資産家の刑事
フートは、相棒と共に犯人を追う。

大富豪のイケメン刑事が主役で美女との濡れ場もたっぷりという
官能ミステリー。
真相には中盤で気付くと思うが、それよりも事件に関連した
主人公と恋人のイザコザで読ませる。

ラストはザマミロ4割はあ?6割って感じかな。続編も読もう。

しかし、(メル欄)は言い訳出来んぞw。

99:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/09 17:29:13 EfhqmR+L
「サーズビイ君奮闘す」ヘンリー・セシル(論創社)

資格取り立ての新米弁護士サーズビイは右も左も判らない法曹界で
戸惑い翻弄されながらも、良き先輩やガールフレンドの助言を得て
頑張るのであった。

最初は乗れずに困った。主人公共々ポカーンとただただ傍観してる様な
感覚だった。でも離婚訴訟の行から徐々に作品世界へ入れる様になった。
で、読み終って思うのは、これは別に成長物語でもなければ
法廷ミステリーでもないなということ。

セシルの作品は「浮ついた世界観」が土台にあってそこから
「奇妙な味の法廷もの」が展開していくというイメージがあって、
本作もそんな感じなんだけども、中心となる事件があるわけでもなく、
鮮やかなどんでん返しがあるわけでもなく、主人公が最初と最後で
然程成長しているとも思えず、主人公の性格も余り好きになれず、
正直読むんじゃ無かったと思った。ただちょっと気になるラスト
だったから続きが知りたくなくもないけど。

俺「メルトン~」も駄目だったんだよなあ……「法廷外裁判」は
傑作だと思うけど。

100:名無しのオプ
08/12/14 02:45:04 Cf99i4gQ
『秘密機関』アガサ・クリスティー(早川書房)
アガサ・クリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』に続く長編二作目にして冒険ミステリーデビュー作でありトミー&タペンスのデビュー作
久しぶりに再会した幼なじみのトミーとタペンスは、青年冒険家商会なる何でも屋的なものをつくった。そして、二人に仕事の依頼が舞い込むが、そのことをきっかけに二人は英国の極秘文書消失事件に巻き込まれてしまう。
トミーとタペンスは地下組織からイギリスを守るため機密文書をめぐる暗闘に身を投じることになった。

クリスティーの冒険もののお約束である、明るく向こう見ずな女主人公、登場人物の軽妙なやり取りと洒落たセリフ回し、明るく愉快な登場人物、多少のご都合主義の全てが揃っている。
ご都合主義な点で、特にイギリス政府が重大な仕事を素人の二人に託すのはどうかな?と思わぬでもないが、それはご愛敬。
常に死と隣り合わせの緊張感のあるスパイスリラーとまではいかないが、組織のボスの正体や機密文書の謎、敵との駆け引き、組織のアジトに侵入調査など冒険ものとして充実している。
後のクリスティーの冒険小説『茶色の服の男』『七つの時計』ほどミステリー的なサプライズはないが著者にしてはめずらしく密室殺人的な謎もあり(といっても簡単なトリックだが)、組織のボスの正体の隠し方などミステリー的にほどよく手の込んでいる。
だが、この本のメインはやはりクリスティーの序文にあるとおり「冒険の楽しみ」である。
クリスティーの冒険ものはやっぱり楽しく、主人公たちが人生楽しそうな人間ばかりである。少年少女のころのようにワクワクしたい方にぜひお勧め。
にしてもクリスティーの書く元気いっぱいの女の子はかわいいなあ

101:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/16 01:18:14 mxaYIvri
「原子力潜水艦、北へ」ジョン・ボール(早川書房)

人気ロック歌手の徴兵拒否から始まったアメリカ国民の
軍備に対する忌避感は陸軍のスキャンダルによって爆発的に増大し、
遂に違憲判決まで引き出してしまう。左派政治家の台頭。軍備の縮小。
そして、その日は突然やって来た。ソ連の奇襲攻撃にアメリカは
なす術もなく降伏し、占領されてしまう。大統領は身を隠す直前、
ある計画を立ち上げる。アメリカ最後の希望を背負って立ち上がった
愛国者たちの闘いが始まる!

面白かった。これは日本の未来だね。そう遠くない。アメリカじゃ
絵空事だけど、軍備そのものを忌避する特殊な左翼がのさばる日本じゃ
普通に有り得そうで怖い。

ストーリーはレジスタンスが侵略者に立ち向かうというものだけど、
この作者が偉いのは「アメリカの正義」をごり押ししない点。
ソ連側にも話の解る人物として描かれているキャラクターが複数いるし、
そういう人物のセリフを通して第2次世界大戦における
アメリカの欺瞞を指弾させている。そして主人公もそれに反論出来ない。
更に事態を悪化させた反戦政治家にも愛国心を認めている。

これらのことに一々頷きながら読み進めていくと、あらすじからは
予想出来ないラストを迎えるのだが、そこには単なるご都合主義とは
違う説得力がある。

ただ惜しむらくはタイトルが限定的なイメージを与えてしまうことと、
ソ連によって征服される過程がすっ飛ばされていることだが……。

総合的にはお薦め。

102:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/16 01:45:21 mxaYIvri
「レゾリューションの対決」ロバート・B・パーカー(早川書房)

さすらいのガンマン、エヴェレットが辿り着いたのは小さな田舎町だった。
有力者エイモスに用心棒として雇われたエヴェレットは
住民の信用を得るが、エイモスは強引なやり口で町全体を
支配しようとする。やがてかつての相棒ヴァージルもこの町を訪れ、
2人はエイモスの野望を阻むために立ち上がる!

2作目をどう作ってくるのかと思ったら、ああ、普通に作れるんだね。
短い会話が多くてサクサク読んだ。でも……ぶっちゃけ飽きてきたかもw。
主役2人(特にヴァージル)のキャラクターがイマイチピンと来ない。
何だかんだ言ってても最後に物を言うのは拳銃だし、事実そうなる
わけで……。だったらつべこべぬかしてないでさっさと撃てや
と言いたくなる。

道理や哲学にこだわる様で結局感情の赴くままに行動するヴァージルも
それに雷同するばかりのエヴェレットも好きになれないし、
そういう性格にしては不自然な程クールに描かれているせいで
人間味を感じない。

つか、今までもこんなこと繰り返してたんならこいつらとっくに
賞金首になってると思うんだが……。

でも3作目が出たら……読み易いから読んじゃうと思うw。
他に西部小説無いし……。

103:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/17 20:06:29 SKF8rKig
「ウィーヴワールド 上・下」クライヴ・バーカー(集英社)

リヴァプールに住んでいる若者キャルは逃げた鳩を追いかけて
辿り着いた屋敷で不思議なものを目撃する。
その体験が忘れられないキャルは数日後、再び屋敷を訪れるが、
そこで恐るべき敵と、そして運命の美少女スザンナに出会う。
キャルとスザンナは敵に追われながら、大いなる秘密を探り、そして
守り抜こうとするのだが。謎の絨毯に隠された“フーガ”とは?

初バーカー。長い。後半飽きが来た。
思うに、世界観とかの設定が雑かなー、と。読んでると
「結局、人間のみで良くね?」と思う瞬間が来るのよ。
普通のものと違うものを描くなら、大いに違えて貰わないとね。

加えて今はラノベ、漫画、アニメ等で多くのバリエーションが
産み出されているから真新しさも無いし。そこは20年の重みだぁね。

あと登場人物紹介でヒロインが処女となってるけど、誤り。
漫画だったら休載もんだぞw。ちなみに貞操観念で言えば、敵の女の方が
保守的なのがちょっと面白い。

最後に細かいけど、45ページで唐突に「壁」という言葉が出てくるが、
当該シーンに壁は無い。勢いで指が滑ったか?

104:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/02 00:01:50 Muk40sWC
ヘンリー・ウェイド「議会に死体」を読んだ。
昨年度の「このミス」等でもそこそこの評価を受けた作だが、
謎解きも淡白でつまらん、文句無しの逝ってよし作品であった。
殺人計画がダブる偶然性に、これまた偶然の目撃者が絡むという萎える真相に加え、
森英俊(早大政経卒)氏が、「フィニッシング・ストローク」と評したダイイング・メッセージねた
も小ねたに過ぎないという感がある。
土地開発に絡む議員汚職というエレメントは現代にも通じるものがあり、
この作者のキャリアから来る社会派志向は致し方ないものがあるとはしても、
怪奇探偵小説やファースの装飾がなく、この手の傾向で謎解きを読まされるのはきついという感
がある。

105:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/02 22:36:32 eX0ttsy3
コナン・ドイル「陸の海賊」を読んだ。
サー・アーサー・コレクション第4弾であり、表題作他10編を収録。
第4弾ともなるとさすがに「サー・アーサーってこんなのも書くのかお」といった感じの
異色作も多く収録されておる。
例によって、大好評な全話講評逝ってみよう!!
・「クロックスリーの王者」
貧乏医学生が学費稼ぎのためリングに賭ける。
面白いが今読むと辛気臭い感もあるシャーロックもののサー・アーサーが
こんな痛快ボクシング小説を書いていたとは意外だ。
・「バリモア公の失脚」
「よく見ればわかるだろうが」と突っ込みを入れたくもなるが、
洒落たボクシングねたのトリック小説として楽しめる。
・「ブローカスの暴れ者」
これもボクシング小説と見せて、グロな怪談への切り換えが見事な一編。
短い中に起承転結が綺麗に決まった短篇小説として非常に良く出来た作かと思う。
・「ファルコンブリッジ公」
オチと主人公の締めの台詞が効いているボクシング小説であるな。
・「狐の王」
解説にはバスカヴィルを連想させるとあるが、怪犬の登場以外は特に共通項を感じない。
近年、英国内でも批判が高まっている狐狩りをねたにした作だけにどうも好感を持ち難い作では
ある。

106:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/02 22:37:20 eX0ttsy3
・「スペディグの魔球」
日本では殆ど知られていないクリケットねたゆえ、エンタメとして日本の読者に提供するのは無理
があったようである。
思い切って野球ねたに翻案したら面白い作に仕上がったと思われ。
・「准将の結婚」
サー・アーサーファンにはおなじみジェラールものの一編。
獰猛なブルと准将の一騎打ちかと思わせて、牛の角に突き上げられて恋人の部屋へ窓から
ダイブする間抜けぶり。相変わらず憎めない活躍ぶりや。
・「シャーキー船長行状記」
海賊シャーキーを主人公とした3作を収録。
奸智に長けた極悪非道な海賊が堂々の主人公というだけで十分に異色作。
巻末の解説によれば、シャーキーもの(?)にはもう1作あるとのこと。
うーん、読んでみたいものである。
ボリューム、印象度等からみると、次に収録されている「陸の海賊」(面白いタイトルとは思うが)
よりも本シリーズを表題作にした方がベストだったと思われ。
・「陸の海賊」
これはシャーキーものとは異なる義賊もの風な一編。
怪盗ルパンならぬルパン三世あたりを喜んで見ているような連中にもウケるような明解さと
洒落た英国短篇小説風味を兼ね備えた作と言い得る。

107:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/03 03:47:19 fRqVBOtt
「荒野のホームズ」スティーヴ・ホッケンスミス(早川書房)

偶々手に入れた雑誌に載っていたホームズ譚に魅了されたカウボーイ、
オールド・レッドと弟の俺ビッグ・レッドの兄弟は、雇われた牧場で
奇妙な殺人事件に遭遇する。周囲がいい加減に処理しようとする中、
ホームズを尊敬するオールド・レッドは推理によって真相を突き止めようと立ち上がるが……。

普通に本格として面白い。西部劇ぽさもちゃんと絡めてある。
主人公達がパーカーのみたいに強すぎないのも良い。
ただ、ホームズ・パスティーシュとしての評価はノーロキアンなのでパス。
個人的には(メル欄)方が良かったかも?

西部劇とミステリーてのは、意外と合う分野だと思うわ。
「テキサスの五人の仲間」とか「暴行」とか。未見だが
「必殺の一弾」や「六番目の男」もミステリー味があるらしいし。

西部劇は今国内で中々読めないから貴重なこのシリーズ。
続編や短編集もどんどん出そうぜ早川。

108:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/03 11:57:07 r1PH0/44
「クルンバーの謎 ドイル傑作集3」を読んだ。
表題作他4作を収録。恒例となった大好評な全話講評逝ってみよう!!
・「競売ナンバー二四九」
サーアーサー版「恐怖のミイラ」とでも称すべき作か。
ベタな怪奇小説の展開の後、終盤は一転、アクティヴな化物退治談へと転じるのが
いかにもホームズ談やチャレンジャーもののサー・アーサーらしい。
・「トトの指輪」
20頁強の短い作だが、H・R・ハガードなら長篇で書きそうな古代エジプトから始まる不死を巡る
怪奇ロマン。
深夜のルーヴル美術館という恐怖を描く最適な舞台設定ではあるが、古代ロマンの印象度の方
が強い作であり、クールな医学者らしい古代考証へのシニカルな視点も感じさせるのが面白い。
・「血の石の秘儀」
無記名で雑誌掲載され近年発掘された(解説より)お宝作品ではあるが、出来は良くない。
古代ケルトの宗教を巡る他愛もない冒険談(この手の作としては主人公が女性というのが
異色とはいえるが)という感あり。
・「茶色い手」
タイトルからしてコテコテな怪奇小説、ストーリーも謎のインド人絡みのゴーストストーリーなのだが、
陰惨な感じは薄く、相続秘話という明るいイメージの作である。
主人公は医師(多忙ながら富に恵まれないのが若き日のサー・アーサー自身を投影している
ようだ)であり、死人の左右の手を取り違えるという失敗も犯す(笑える)ものの、
非常にアクティヴなせいかと思われ。
・「クルンバーの謎」
収録作品中で最大のボリュームであり、かつ、過去に単独で文庫化されていたこともあってか、
表題作となったのであろうが、先が読める展開(神秘的なインド人僧の登場による因果応報的
展開)が萎える感がある。今回は翻訳された補遺にサー・アーサーの心霊学への深い耽溺ぶりを
覗わせる点が興味深い程度の作かと思う。

109:名無しのオプ
09/01/03 20:50:47 3Yw7aZr6
「サイモン・アークの事件簿1」エドワード・D・ホック(創元推理文庫)
2000年生きた男が、探偵役の短編集。
オカルトを扱っているが、ホックなので、あまりホラー風味は強くない。
2000年生きていることが、あまり推理に生かされていない。
犯人の意外性にこだわっているところは、好感が持てた。
サム・ホーソーンの事件簿が好きなヒトにはお勧め。


110:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/03 23:38:15 lVjuHjvF
グラディス・ミッチェル「ウォンドルズ・パーヴァの謎」を読んだ。
首無し死体あり、肉親間の軋轢あり、オカルト探偵あり等と来れば、
横溝正史的どろどろの世界を想起、期待してまうのだが、
長年学校の先生もやっていた作者らしく少年(15歳)少女(20歳の設定だが書かれている
イメージは完全に元気少女)が活躍する明朗なジュブナイル風の雰囲気である。
この手の作風を好む者にはOKだろうが、作品としての重厚さを欠く感は否めないかと思う。
内容的には犯行現場におけるファースの如き偶然性の連続には萎えるものがあるが、
結末=最終的謎解きは、サイコロの振り出しに戻る感があり、遵法精神をスルーする姿勢は
アント二イ風でもあり、まずまず良しか。

111:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/04 20:25:53 /u0hGB8P
マイケル・イネス「霧と雪」を読んだ。
完全ネタばれしている作なのであるが、
ネタばれしているのが「わからない」という点がミソか。
どことなく大乱歩の習作「火縄銃」を想起させる作でもある。
ただし、このネタはシャープに短篇で書いた方が活きたかと思う。
文学薀蓄を散りばめ、多彩な登場人物が跋扈する展開が実にうざく読み難いものがあり、
これを読まされるとアガサならもっ巧く書くのにという感を拭い切れない。
(ただし、ネタはジョン風)
勿論、オクスフォードのフェローにまでなった作者ゆえ、単なるトリックに頼った読み捨てミステリを
著す気も無かったであろうが、本邦におけるユーザーに関してはミスオタしか想定し得ない点を
考慮すれば、本作のようなものこそ謎解きの興趣を活かすことを主眼にした抄訳、翻案等を意図
してもOKだったのではないか。
完訳で楽しめと言われても無理が多い作かと思う。

112:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/08 00:34:24 lGpA9kT+
「八一三号車室にて」アーサー・ポージス(論創社)

ポージスの短編集が遂に出た! とかニワカ丸出しの事は言わないが、
とにかく目出度いのは確か。
ミステリ編とパズラー編に分かれており、前者は倒叙ものや
シチュエーションに力点を置いたサスペンスの他、SFも含んでいる。
こちらのベストは「犬と頭は使いよう」。遺憾ながらSFである。
遺産を手に入れるため必死に犬を飼い続ける男の話。
余詰に余念のない弁護士が好印象。
次点は「冷たい妻」。犯人の工作と失敗が明確で短編として良い切れ味。
他に掌編「ひとり遊び」も心に残った。

後者では「静かなる死」がベストかな。ある一家が一晩で全員
謎の死を遂げるという話で、真相に驚いた。バカミスと言えるかも。
次点は「誕生日の殺人」。悪意あるパロディだが巧いまとめ方だと思う。
他にはバカトリックが炸裂している「賭け」や、アリバイ崩しの
「消えた60マイル」、某国内有名短編とネタが被る(こっちが後)
「横断不可能な湾」等が目に止まった。

こういう短編作家の作品をまとめるのはとても良い事なので
どんどんやって欲しい。

113:読後感
09/01/08 01:13:48 lGpA9kT+
「パニック!」ジェフ・アボット(ヴィレッジブックス)

新進の映画監督エヴァンの元に突如掛ってきた母からの帰郷を促す電話。
会わないと事情を話せないという切羽詰まった様子に急ぎ帰った
エヴァンだったが、そこに待っていたのは変わり果てた母の姿だった。
悲しむ暇もなく謎の二人組に捕まったエヴァンだったが、
その後現れた第3の男に救出される。自分の周りで一体何が
起こっているのか?
エヴァンの決死行が始まった!

図書館シリーズは長らくツンデル癖に新作をすぐに読んだのは、
こういう巻き込まれ型が大好きだからです! と言おうとして、はて、
主人公が事件に対して全くの門外漢でない場合は巻き込まれ型とは
呼ばないのではという疑問に突き当たりました。
ならスピード感のあるコージー? ま、いいや。そういうのってことで。

いや、面白かったです! 500後半と厚いがダレることなく読ませます。
この話の広がり具合とスピード感の保たせ具合は凄いと思いました。

類型的との批判はあるかも知れませんが、そういうジャンルなので
それを楽しめる人にだけお薦めします。

114:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/08 01:35:03 lGpA9kT+
「殺意に招かれた夜」イーサン・ブラック(ヴィレッジブックス)

NYの富豪刑事フートが今回担当することになったのは
男性の惨殺事件だった。死体はメッタ刺しにされ、局部が
切り取られていた。フート達の捜査にも関わらず殺人は続いていき、
やがて事件にはフートのプライベートにも繋がりを見せてくる。
現場に必ず残されるメッセージが持つ意味とは?

シリーズ2作目。あのラストだから今度は……と期待半分不安半分で
こわごわ読んだが、ゴルァ! 何だよこれ。もうね、アフォかと。馬鹿かと。

こんなフラグの壊し方ってあるか? うぜー。普通あそこでもう決定的だ
と思うてまうやろー! 気をつけなはれや!

えっと、このシリーズは、犯人の描写にかなりの枚数を割くので、
その辺好みが分かれるとこしょうね。ミステリー的には特に見せ場なし。

最後に気に食わない点。
1、前作の流れを改竄してる点
2、数ヶ月間の中に夏冬が含まれてる点 3、貧乳しか出てこない点
4、ラストの展開

マジで絶対無いわ! これ4巻ぐらいまで出てるらしいけど、さて……。

115:名無しのオプ
09/01/09 19:46:46 vOfCkznz
『帽子収集狂事件』ジョン・ディクスン・カー 森英俊訳 集英社文庫
乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10(7)
ロンドンでは帽子の盗難事件が相次ぎ世間を賑わしていた。
そんなロンドンにエドガー・アラン・ポーの未発表原稿を何者かに盗まれてしまったウィリアム・ビットン卿から要請を受けフェル博士がやってくる。
そんな折り、ウィリアム・ビットン卿の甥であり、帽子盗難事件を新聞記者として追っていたフィリップ・ドリスコールの死体がロンドン塔で発見されたという知らせが届く。
不思議なことに、その死体の頭にはウィリアム・ビットン卿の盗まれたシルクハットが被らされていた。
フェル博士もの二作目。ポーの未発表原稿についてはワクテカさせられ、おどろおどろしい霧がかかったロンドン塔の雰囲気には興奮するが、調査と聞き込みが始めると、あまり面白みのない展開が続く。
しかも場所を把握するのに何回もロンドン塔の地図を見返さねばならずめんどくさい。
被害者のマンションの部屋に調査が移されると、スピードアップし事態は一転、また新たな死体が発見され、そして真相が語られることに。その真相と犯人は確かに驚くべきものなんだが、あまりカタルシスを感じなかったな~。
思えば帽子と原稿の秘密をフェル博士によって明かされたときが物語の最高潮だった。
面白かったかと問われれば面白かったと答えるが、乱歩がベスト10に選ぶほど面白かったかと言われるとうーん・・・・

116:名無しのオプ
09/01/09 22:03:33 TNgVKvJP
今は地道な捜査場面とか尋問シーンとかが出てくると
すぐにつまらないという人多いね
そういう人はそもそもミステリ読むのに向いてない気がするが
次々に死体発見シーンが出てこないと興味引かないんだろうか
やたら被害者の多い連続殺人物が好まれるのもそのせいなのかな

117:115
09/01/09 23:46:26 vOfCkznz
いや、『帽子収集狂事件』の地道な調査、聞き込みが面白くなかっただけで、カーの他の作品、例えば『白い僧院の殺人』(別名義だけど)の調査、聞き込みはつまらなくなかった
最近読んだクリスティの『予告殺人』でも苦もなく読めたし

118:名無しのオプ
09/01/10 03:13:25 j4UKD1VZ
>>116みたいなレスする奴はそもそも2ちゃんするのに向いてない

119:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/10 08:42:11 sZVV8+ui
ジョン・ロード&カーター・ディクスン「エレヴェーター殺人事件」を読んだ。
ワンマンな出版社社長が密室状態のエレヴェーター内で殺害される。
ベタで淡白なタイトル(原題は「DROP TO HIS DEATH」とカッコ良さげであり、
章立ても「・・・転落」で統一した四部構成と凝ったものであるにもかかわらず、
この点は邦訳では活かされていない感がある)だが、筆致もそのまま。
カーターらしいオカルティズム(白昼の出版社が舞台の作のためともいえるが)や
ドタバタ劇も無く、淡々と進行してゆく感があるのは、やはり共作ゆえか。
素人探偵による外れな推理もそれなりに面白く(D・G・グリーンの書によれば全てカーターの
アイデアらしい)、真相はホームメイドかお(w
だが、これもまた良し、今ではジョンスレ等でさえ話題に挙がることがない作だが、
当時は次企画(大戦で中止?)の話が出る程、セールス、書評共に好調だった(D・G・グリーン)のはわからぬでもない。
ただし、エンタメとしての語りや装飾の弱さゆえ、やや退屈感を催す部分があるのが残念。
「彼女の話こそ犯罪というものの説明だよ」、結びとなるグラス医師の言だが、
雇用環境が厳しさを増す大不況到来の昨今、痛切なものがあり、
この点(動機)をクローズアップすれば、今なら社会派ミステリとしても成立し得たであろう。

120:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/11 09:09:08 N8V47F8j
コナン・ドイル「勇将ジェラールの回想」を読んだ。
年末・年始の読書に向いたナポレオン戦争時代を背景にした楽しい連作時代小説ゆえ、
久々に再読してみた。
勇将と冠した邦題がシニカルに思えるくらいどじっ子ぶりが際立ち、
正直言うて、本シリーズの実態はユーモア小説である。
ダルタニアン物語や007シリーズと比較する論が見受けられるのには「?」、
ゆえに、ミュンハウゼンのほら男爵との比較は妥当という感あり。
ここまでジェラールを戯画化出来たのは、やはり作者が英国人であり客観的にユーモアの対象に
出来たからであろう。フランスの作家では難しかったのではないか。
では、全話講評逝ってみよう!
第1話 准将が<<陰鬱な城>>へ乗り込んだ顛末
ジェラールが好漢デュロク少尉の助太刀のため仇が潜伏する城に乗り込み男気を見せる。
しかし、真にカッコ良いといえるのはこのエピぐらいなのである。
第2話 准将がアジャクショの殺し屋組員を斬った顛末
剣戟を披露するとはいえ、ナポレオンのコルシカ時代の腐れ縁の後始末の手先にされるだけ
とも言い得るエピ(細かい説明は無し)
第3話 准将が王様をつかんだ顛末
スペインのゲリラに捉えられたうえ、最後は英軍の捕虜となる顛末。
ゲリラの首領を倒すのもバート(准男)こと英軍のラッセルだし、いいとこ無しの主人公。
第4話 王様が准将を捕えた顛末
脱走を試みるもののぐるっと廻って元に戻る間抜けぶり、
しかも脱走そのものが無意味だったというオチまでつく。ここまで来ると間違いなく滑稽談か。
第5話 准将がミルフラール元帥に戦闘をしかけた顛末
ミルフラール元帥こと元イギリス近衛連隊将校アレックシス・モーガン一味の討伐を命じられた
ジェラール、途中で盟友バートの一隊とも合流するのだが、クセモノにして配下にも人気者の
ミルフラールの策にはまってしまう・・・最後の台詞がなんともシニカルや。
今回も主人公は全くと言うていいくらい良いとこ無し。

121:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/11 09:10:07 N8V47F8j
第6話 准将が王国を賭けてゲームをした顛末
ドイツ融和のため疾駆するジェラールだが・・・
「宮殿の窓から指摘した大きな星(ナポレオンの星)が西の空で色が薄く、
霞んでいるのが見られた」
この締めの一文から結果がわかろうか。
第7話 准将が勲章をもらった顛末
レジヨンドヌールはもらえることはもらえるのだが、これって御苦労賃?
第8話 准将に悪魔が誘惑された顛末
これも2話&7話同様にナポレオン直々の指令談。
ナポレオンの密書ねたにして限りなくほら話の匂いが濃厚。

旅団長まで出世する主人公ジェラールだが、自信満々の語りのわりには、
中尉時代の上司(大佐)の評価は「拍車と口髭のことに凝り固まり、女と馬のほかは何も考えない奴・・・」(2話)
5話でまんまとジェラールをはめるミルフラール元帥も「マセナ元帥(ミルフラール討伐を命じた)は
多忙を極めていて、あなたのことなどあまり念頭になさそうですよ」と言われてしまう始末。
その行動を見ても、第6話では女と話し込んでいて4時間も使命を忘れ去っていたり、
第7話では使命を言い訳にしてひとり地下室に逃げ込んだと思われるシーンがあったり等、
ヒーローとして感心しないものが多い感あり。
まあ、、本人もその総大将であるナポレオンから、その勇気ともかく知力は評価されていない点
を残念に思うという語りもあるのだが・・

122:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/12 09:40:24 LWktV3dh
コナン・ドイル「勇将ジェラールの冒険」を読んだ。
「回想」に続くジェラール准将冒険談の完結篇。
全話講評逝ってみよう!!
・「准将が耳をなくした顛末」
ジェラールが男気を見せて耳をなくすというちょいグロいエピ。
だがそれだけとも言えるエピ。
・「准将がサラゴッサ市を占領した顛末」
准将のサラゴッサ市潜入談。このエピは007風でスリリングに一気に読ませる感あり。
・「准将が狐を殺した顛末」
あとがきによれば、ジェラールもの中で作者が一番愛好した作とあるが、
前述したとおり、今読むと動物虐待とも見える狐狩りのネタは後味が悪く好きになれないもの
がある。
・「准将が軍隊を救った顛末」
タイトルは「?」。
軍隊を救う結果となったのはデ・ポンバル(ゲリラの副官)の優れた機転ではないのか?
デュプレシス(ジェラールの同僚)も悲惨過ぎ。
・「准将がイギリスで勝利を収めた顛末」
例によってラストのジェラールの自惚れ過ぎな感はあれど、決闘の顛末を粋に描いた作ではある。
・「准将がミンスクに馬を進めた顛末」
つまり「馬を進めた」だけなのである。最後に剣戟を見せるとはいえ、
全編を通じてはジェラールがどじっ子ぶりを発揮するエピ。
どう見てもロシア娘はジェラールに惚れてはいないように読めるのだが、相変わらずの自惚れぶり
に笑える。

123:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/12 09:41:14 LWktV3dh
・「准将がワーテルローで奮戦した顛末」
「森の居酒屋の話」「九騎のプロシア軍騎兵の話」から成る二部構成。
後者はナポレオンの身代わりとなったジェラールがプロシア騎兵からチェースされる非常に
スリリングなエピに仕上がってはいるが、結末はあっけない。
ナポレオンから「伝令の鬼」とからかい口調で呼ばれ、
事実を告げたのに「おまえはいつも戯けた奴だったな」と一刀両断されてまうジェラール、
本人の自己評価に反して、彼氏が敬愛する陛下の偽らざる評価は「これ」だったのではないか。
・「准将最後の冒険」
「おお!ナポレオン・・・」という感想に尽きる一編かな。
もうちょい読みたいジェラール談であったが、このエピを持って来てしまうと、もう終わるしかないか。

124:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/15 04:17:24 zlVize6L
「カインの眼」パトリック・ボーウェン(ランダムハウス講談社)

リアリティ番組の出演者として選ばれた10人の男女。会場となるはずの
ホテルへ移動中、彼らは乗ったバスごと砂漠の真ん中に拉致されて
しまった。そこは廃虚と化した町。集団生活を余儀なくされる
彼らだったが、一人また一人と消えていく……。

「そし誰」に挑戦したミステリーとのキャッチだが、要するにCCでしょ?
で、作者がフランス人って不安だなぁと思いつつ読み始めた。

CCみたいなもんなんだけど、どうも徹底していなくてそれが
フーダニットの弱さに繋がっている印象。登場人物がそれぞれ
抱える秘密が次第に明らかになっていく展開は引き込まれたけどね。
そんで、終盤やつぎばやの展開にこっちのページを繰る手も速まる訳だが、
このオチは何やねん!
無茶過ぎるだろw
これで「ああ、だからか」と納得した疑問もわずかにあったが、
代わりに新たな不審点が束になって押し寄せて来るw

作者としては「平仄なんか知らねーよとにかく驚け!」
てなもんなんだろうか?
医者が激務の合間に書いたらしいから雑になるのも道理か?
バカミスアワードにノミニーされてもおかしくないがスルーされた?
そういや作者は「アイデンティティー」に触発されて書いたらしい。
あれも相当なオチの映画だったけど、本作と違って喜んで薦めるよw
つうか、本作も映画化進行中らしいが、絶対叩かれると思う。断言する。

最後に気になった点の内いくつかを。
・訳者は海外ドラマの邦題をちゃんと調べてない。
・インターンが変温動物もルミノールも知らん訳ない。
・運転手が(メル欄)した理由。

125:名無しのオプ
09/01/15 22:12:36 BL71ENr8
2008年のベストミステリを投票で決める「2chが選ぶこのミステリーがすごい!」スレ
投票締め切りまであと5日です。まだ未投票の方は、ぜひ参加してください。
スレリンク(mystery板)

【以下のルールを守ってください】
・投票スレの>>1-3は無視してください。
・対象は奥付表記で2007年11月~2008年10月の期間内に発行された広義のミステリー作品。
・6作品以内で順位をつけて投票すること。
・必ずしも6作挙げる必要はなく、1作でも投票可とするが、上記のように順位はつけること。
・1位=10点、2位=9点~6位=5点で集計。
・国内作品と海外作品は別々に投票する。
・一行以上の総評必須(ネタバレ禁止)
・投票期間は12月8日~1月20日まで

今年のこのミス、本ミスなどのランキングです。参考にしてください
国内編 スレリンク(mystery板:267-270番)
海外編 スレリンク(mystery板:271-278番)

126:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/17 20:20:41 uPmSuzBz
スティーヴ・ホッケンスミス「荒野のホームズ」を読んだ。
このミスではベスト10入り、文春では完全スルーされた作、まあ読む者を選ぶ作とはいえる。
前に「五枚のカード」の評でも少し触れた点かもしれぬが、西部劇(小説)とミステリという
マッチングが難しいジャンルを融合した長篇、しかも主人公のカウボーイ兄弟が
ホームズもどきという謎解き主眼なストーリーでそれなりに読ませるのは評価してよいかも。
現代作家にしては西部小説としての牛糞や屋外便所の悪臭が漂って来るかの如きまで
リアルな描写に意外に読み応えあり。

ロバート・ファン・ヒューリック「紫雲の怪」を読んだ。
ポケミスですっかりおなじみとなったディー判事シリーズ、
今回は副官の馬栄(マーロン)が活躍する一篇。
訳者あとがきによれば本邦初訳だそうだが、荒れ寺を舞台にした日本人好みな怪奇探偵小説、
ちゅーかスリラーに仕上がっておりなかなか楽しめる。
年間ベストランキングとかには無縁の作だが、年末・年始に肩の力を抜いて読むにはこの手のもの
が一番かと思う。
だが、まず最大のヒントの呈示ということかもしれぬが、
作品冒頭で犯行形態(男女共犯)をばらしてしまうのはミステリとしては惜しい気もする。
しかしながら、外交官で学者(東洋文化)としても名高い作者のエログロ、バイオレンス満載の
ストーリーには軽い驚きを感じないでもない。

127:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/18 15:16:53 zKiOMRpX
「ロミオ」ロバート・エリス(早川書房)

女性を次々とレイプしては惨殺するシリアル・キラー“ロミオ”。
ロス市警の新任女性刑事リーナは相棒のベテラン刑事と共に事件を追うが、
その間もロミオは犯行を重ねていく。そんな中、事件とリーナ自身が
抱える悲劇的な過去との関連が浮かび上がって来るのだが……。

表紙だけ観るといかにも二見やMIRAから出てるロマサス臭く、
粗筋を読んでもいかにもありがちな女性捜査官もの、サイコキラーもの
という印象で、「何だ、こんなもんに手を出すなんて読後感も
落ちぶれたな! ペッ」と思われるかも知れないがさにあらず!
俺を誰だと思っていやがる!お前の信じる俺を新次郎!
私が本作に手を出したのはそれ以上のサムシング(阿刀田ぽく)がある
と聞いたからなのだ。そして実際あった!

読みながら、「マニュアル通りの描き方やのう」と幾分冷めていたものの、
ラストまで読むと評判も納得の出来だった。もっとも、大分危うい
箇所もあり完成度が高いとまでは言えないが、この手のサスペンスの
内では良作だと思う。「認められた女刑事」という設定も新鮮に感じた。
500後半と厚いにも関わらずスムーズに
読めるのも○。

こういう作品がランクインしている点をみても早ミスの意義はあると思う。
続編にも期待。

128:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/18 20:28:37 XMuR0qmd
ファン・フーリック(表記どおり)「中国迷路殺人事件」を読んだ。
ディー判事シリーズの記念すべき第1作。
前に論考対象とした「紫雲の雲」と同じく、国境の街蘭坊を舞台にした読み応え溢れる
チャイナ・ミステリ、ちゅーか、チャイナ・スリラーに仕上がっており、
以後の人気を納得させるものがある。
特にコンパクトに纏めた中期以降の作品とは異なり、ボリュームがあるため、町の顔役成敗に
始まり、タイトルに冠された中国迷路に隠された遺言の謎、前知事殺し、元軍人殺し、
女性失踪事件等、これに蛮族(ウィグル)による襲撃計画まであるという
モジュラー・タイプの集団警察捜査小説の面白さがある(作者が三件以上の事件(別件)が描かれることが多い中国の公案小説に興を惹かれ、これを模した結果ゆえか)
のが俺のお気に入り足り得た点でもある。サドマゾ、バイオレンス趣向も第1作から全開、
終盤の処刑シーンも凄まじいまでの迫力である。
小説としては全ての事件を解決した後の締め、ディー判事が「虫の如く泥土にもぐる」決意を
固めるラストが深く、洒落た余韻を残し良。

129:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/18 23:49:58 zKiOMRpX
「極限捜査」オレン・スタインハウアー(文藝春秋)

東欧にある某国の民警捜査官フェレンクは同僚の刑事たちと共に
数々の事件に対処していく―一見自殺にみえる変死、官僚夫人の失踪、
四肢を切断された焼死体、そして同僚の命を奪った過去の強姦殺人―。
家では妻との不和に悩み、職場ではKGBから睨まれながら、
フェレンクはあくまで自らの誇りを貫こうと苦闘を続けていく―。

自分は警察小説、殊にモジュラー型小説というやつがどうも
性に合わなくて、フロストも1作目読んだきりなのだけれども、
今回本作を読んで、自分は私の描写の中途半端さとか、互いに
関連性のない複数の事件が起こるという展開が嫌だったんだなと自解した。
つまり本作は主人公のプライベートの葛藤もがっつり書き込まれており、
かつミステリー的な造作にもちゃんと気を配っている良い作品だ
ということである。

分厚いが引き込まれ易く(何しろいきなり「妻が出ていった」とか
書いてるんだもの)、ほとんど一気読みした(エロいしw)。本作は
設定上「チャイルド44」と比較されることが多い様だが、
読後感では向こう、ミステリーとしてはこっちが上。社会情勢は
本作のがずっとマシなのに雰囲気は逆になるというね。でもこの諦観は
癖になるかも。後、アメリカのラジオ放送聴いて自分ら共産圏の
情報を得ているというのが皮肉だなぁと。

本作は5部作の2作目ということだが、次作ではあの人物が主役になる
そうでこれは是非読みたい。あ、その前に1作目か。

130:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/23 00:22:30 B8bQUGza
「キング・オブ・スティング」マシュー・クライン(早川書房)

投獄さるたのをきっかけに引退した詐欺師キップの元に
長らく会わなかった息子が助けを求めて転がり込んできた。なんでも
マフイアに多額の借金をしてしまい返す当てが無いという。
キップは息子を救うためもう一度かつての稼業に手を染めることに
なる……。

面白かった。久々に読んだコン・ゲームものが良質で嬉しい。
M田さん見直したぞ。ただの腰ギンじゃ無かったんだね!

枯れオヤジ詐欺師の哀愁を含んだ一人称は読んで引き込まれるし、
所々で脱線して紹介される詐欺の手口も面白い(そういや犬のやつは
「華麗なるペテン師たち」でやってた気がする)。

以前「百万ドルを取り返せ!」をTVMで観た時は順調に平和に
行き過ぎるのが物足りなかったけど、本作は一味違って満足。

端々に出てくる気になる部分が終盤ちゃんと回収されるし、
己の業と向き合うラストも単なるコン・ゲームには無い深みを加えている。
各種ベストに食い込んで来なかったのが不思議なくらいお薦めの一作。

追伸 でも、「あの仕組み」の種明かしが無かったような……。

131:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/24 23:35:50 GKLIPdqN
ロバート・ファン・ヒューリック「紅楼の悪夢」を読んだ。
これもおなじみディー判事シリーズの1冊。年末はすっかりこのシリーズに嵌ってしまった感がある。
前述したとおり、年間ベスト10やベストセラーとは無縁なシリーズだが、
そもそもポケミス創刊当初は、ある識者の「ぱーっと読んでポーン!」という評に代表されるが
如き古典よりも気軽な暇潰しを主眼とした作が主流だった時代がある。
怪奇、猟奇、お色気、アクション、そして謎解き等エンタメのツボを外さぬ構成は
カーター・ブラウン東洋版といったところか。
本作は出張旅行の帰途に立ち寄った歓楽地楽園島で美女殺人事件に巻き込まれるという
いわばアウェイでの事件、旅先ということもあってディー判事以外のレギュラーキャラは
マーロンのみであり、いつもの集団捜査小説の興趣は無いものの、相変わらずの畳み掛けるようなテンポで一気に読ませる。

132:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/25 15:54:15 BURszqWf
ロバート・ファン・ヒューリック「五色の雲」を読んだ。
ディー判事シリーズ8作を収録した作品集。
大好評な全話講評逝ってみよう!!
「五色の雲」
香印に関する謎解きが読ませどころ。
ただし犯行時間の特定に関する推理に強引さを感じさせるのが難か。
「赤い紐」
ディー判事が軍の支配領域という制約下で名推理を発揮する
ジョン好きには推したいトリッキーでアクロバティックな一篇。
「鶯鶯の恋人」
鶯鶯でピーンと来ないと、という一篇。
結構エロい作でもある。
「青蛙」
とにかく「蛙」が事件のキーとなる面白い着想&展開な作。
キーマンならぬキーフロッグや。
「化生燈」
「唐宋伝奇」等でも知られる中世中国(唐代)を舞台にしながら、意外に怪異談が少ないこの
シリーズだが、これはホラーミステリそのもの、この点では異色作である。
「すりかえ」
えらく鬱な悲劇なのだが、あっさりとした未来志向なお裁きもからっとした中国テーストか。
「西沙の柩」
武官の威張りぶりが鼻につき雰囲気は良くない作だが、ディー判事の推理ちゅーか、
一休禅師の如き知恵者ぶりが光る作。
「小宝」
クリスマス・ストーリーならぬ中国風に正月ストーリー。
一応、血生臭い(?)事件(?)だが、小品ながら後味が良い作に仕上がっている。

133:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/25 15:55:22 BURszqWf
テネシー・ウィリアムズ「やけたトタン屋根の猫」を読んだ。
南部富豪一家の激しい確執を描き、
作者が名作「欲望という名の電車」に続き2度目のピューリッツア賞を受賞した作、
一般的知名度は「欲望・・・」に比較して落ちるものの、
ウィリアム作品で著名な小田島先生の名訳もあって、
優るとも劣らない凄まじいまでのサスペンス・ドラマとなっている。
(作者の興味対象外だったと思われるが、1度は本格的なミステリを書かせたかった)
三幕構成の中で次々に明らかにされる衝撃的な事実とビビッドな家族模様は
国も時代も越えて、現代日本でも不変性を持った問題提起溢れるものである。
ただし、おじいちゃん(劇中の呼称であり父親)の苦悩はともかく、
主人公(次男ブリック)が抱える問題は現代では社会が寛容になりつつあるやに思える。
(日本でもETVで特集が堂々と組まれるぐらいまでになっておる)
戯曲だからと毛嫌いせずに、新春一番のお薦め作なのは間違いない。
同じ作者の「ガラスの動物園」「欲望という名の電車」を愛読しながらも、
ここまでそのメーンテーマへの抵抗感もあって敬遠していたのが惜しまれる感あり。
なお、タイトルはヒロイン(?)のマギー(ブリックの妻)の置かれた状況を比喩的に述べたもの
であり、(この比喩が的確、かつ、端的で印象的)ぬこは登場しない。
なお、作者からの説明つきでエリア・カザンの要請で書き直されたNY上演時の台本(第三幕)が
併録されているが、たいして意味が感じられないおじいちゃんの再登場、ブリックのキャラの変質、
無理やりなハッピーエンディング風の締め等、出来栄えは初稿と比較して歴然とした差が感じ
られ、最早、別物と化している感もある。
「エデンの東」の例でも顕著なように、エリア・カザンという人は原作からテーマが変遷した
別物をクリエートしてまう傾向があるようである。

134:名無しのオプ
09/01/25 16:01:39 aQXfdKU/
魔神さんも読後感さんも
読書スピード遅くね?


135:名無しのオプ
09/01/25 16:54:49 rMkWKcPs
>>134
馬人は休日はSF板合わせて一日につき3~4冊分の感想文を投下。
その他にも文学や社会学その他の本を読んでいる。
更に平日は激務に追われ、その合間に毎日複数のスレに論考を投下しているという
40代中盤の社会人という設定だよ。

実際はバイトすら長続きしない無職の50代後半で、
本など読まずに外部のサイトや新聞、雑誌などの書評をパクっているというもっぱらの噂。

136:名無しのオプ
09/01/25 17:37:21 E8cRf0r1
デタラメ言うな!!!!!!!!!!!!

137:名無しのオプ
09/01/25 17:54:17 +nYGCY07
ここで「やけたトタン屋根の猫」の感想を読もうとはww
確かにミステリ風なところあるかも。
テネシー・ウィリアムズ、読んでてちょい鬱になるのもあるけど良い。

138:名無しのオプ
09/01/25 18:17:39 69ieszAr
自演君含めてタイトル間違ってるぞ、おい

139:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/30 20:51:16 1Iw7HSMA
「死者の部屋」フランク・ティリエ(新潮社)

リストラされヤケになって車を飛ばしていた二人組は、誤って
人を跳ねてしまう。慌てて車を降りた男達が死体の側にあった
バッグを開けると中には札束が詰まっていた。金を奪い犯行を隠蔽する
二人。しかし、その金は誘拐犯に渡すはずの身代金だった。
やがて人質は無惨な姿で発見される。犯罪心理学マニアの女刑事
リューシーは念願の捜査チームに加わることが出来、勇躍乗り出す
のだが……。

如何にもなサイコサスペンスな女捜査官ものじゃないかと
思われるだろうが、実は「ロミオ」みたいに他と違う何かがある……
わけでも無かった。結構な具合で見たまんま。信頼出来る筋からの
情報だと思ったのになぁ。

つうか、プロファイリングが“趣味”て……。フランスの警察は
そんなに人材が不足してるのかよ。ヒロインは変なもん集めたり心理学の本読んだり
してるだけのただのオタクで、そんで「免状なんてただの紙切れ」とか
言っちゃうし、それが作中で通用しちゃうのがどうも違和感ある。
警察小説の範疇なのに警察を軽く見てるというか。犯行の描写も
ただグロいだけで目新しさは無い。数少ない美点は読み易いとこ。

「タルタロスの審問官」もこんな感じなのかな……。

140:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/30 20:51:51 1Iw7HSMA
「サファリ殺人事件」エルスペス・ハクスリー(長崎出版)

サファリの主人のテントから盗まれた宝石を捜すために
ハンターを装って一行に潜入したヴェイチェル警部。メンバーの間に
漂う不穏な空気を感じつつ捜査を始めたヴェイチェルだったが、
その直後メンバーの一人がハゲタカに食い荒らされた姿で発見された。
かくしてヴェイチェルは急遽殺人事件の捜査をすることになる。

何となく読まずにいたけど、ランクインしてたし、三津田ーマイヤーが
投票してたから読むことに。

面白かった。黄金時代にふさわしい作品だと思う。舞台がアフリカなんで
あまり古臭さを感じない(個人的には感じたいくらいだが)し、
スリルもあるので古典はちょっとという人もいけるやも。
容易に目星を付けさせない筆致といい、決定的かつさりげない
伏線といい、テンポの良いクライマックスといい、作者は見せ方を
良く心得ているね。技術的でかつ細を穿ち過ぎないトリックがあるのも
評価出来る。

一作目と三作目も読みたい。

141:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/30 20:53:58 1Iw7HSMA
「ラジオ・キラー」セバスチャン・フィツェック(柏書房)

ベルリンのラジオ局で突如起こった立て篭り事件。犯人の青年は
電波を通じてあるゲームを提案する。それは、一時間毎にランダムに
電話をかけ、出た人が合言葉を口にしなければ人質を一人ずつ
殺していくというものだった。犯人は交渉人となったアル中で
トラウマを抱えた女性捜査官イーラに対し、人質を解放する代わりに
自分の婚約者の捜索を要求してくるのだが……。

本作を今まで読まなかったのは、私が男尊女卑の豚だったからである。
しかし、以前褒めた「前世療法」より面白いと聞いて翻意した次第。

読んで良かった。出来の良い「24」という感じ。スピード感抜群の極めて真っ当な
サスペンス。というのは、本作は謎、トリック、サプライズ、という
本格に通底する要素がきちんと織り込まれているからである。

凡そミステリーである限り、どのジャンルの作品に於いても
程度の差こそあれ、本格の要素は含まれているはずであり、それでこそ
ジャンル毎の長所がより活かされると私は思っている。名作と呼ばれて
いるものはこれにほぼ当てはまるはずだ
しかしながら昨今、安易な物造りが増えてはいないか。

142:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/30 20:55:14 1Iw7HSMA
(続き)
気障なセリフと暴力の応酬が交されればハードボイルド。
狂人が派手に人体解剖をすればサスペンス。
三十路過ぎの一見地味な女がケーキを作ればコージー。
この様に、本来敬愛し尊重すべき対象を単に欲望の捌け口としてしか
観ない有象無象の馬鹿共が斯界に巣食い凌辱を重ねた結果、
私達はしばしば金と時間を無駄にしなくてはならなくなった。

しかし、本作はまるで違う。最後まで濃密に餡子の詰まった
上質なサスペンス小説なのだ。思いも因らぬ展開の連続―見当が着いた
と思ったら裏切られる―で厚いが読み出したら止まれない。
ページターナーとは正にこの事。実に端正で熱の篭ったミステリーであり、
流石職人の国の作家と感心した。

この様な真摯な創作姿勢とその見事な成果に出会えたこと
(それは「前世療法」を読んだ時に大体判っていたけど)を
改めて喜びたい。

143:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/31 18:56:08 KSWvmhJz
妄想と誤りに満ちた>>138こそ憐れなり(w

ロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」を読んだ。
久々の再読によりあらためて大乱歩の翻案の「巧さ」(特に事件の舞台となるリバーサイドの
逆L字型の館を墨田川沿いの三角館に設定した着想は凄い)を実感させられたが、
原作である本作もコリン作品で知られる大庭忠男氏のこなれた日本語訳により、
さくさくと読めそれなりに楽しめるものに仕上がっている。
一番面白いのは、殺人事件発生前のエンジェル家の人々の様を描いた序盤部分であるという
のはある意味で皮肉か。
物語がミステリに焦点を絞られると、個性的な両エンジェル家の人々が背景に下がる展開になり、
探偵役(ケイン警視)の魅力不足もあってか、
人間ドラマとしての面白さが大きく減退してしまうのは文学愛好家でもある筆者としては非常に
残念な感がある。
この辺は、大乱歩以上にこの手の錯綜した奇怪な人間絵図を描くことに長けた横溝御大で
あれば、金田一を主体にして見事なストーリーテリングを発揮したと思われ。
とは言え、邸内におけるアクロバティックな犯行、「名探偵コナン」好きとかに大受けしそうな
エレヴェーター内の密室殺人(奇しくも2人のジョン共作による「エレヴェーター殺人事件」読後のため、トリックとして落ちる感は否めなかったが)動機の必然性等々、
ミステリとしてはかなり読ませるものはある。

144:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/01 15:36:18 bSWw6SC3
アーサー・マッケン「怪奇クラブ」を読んだ。
創元推理文庫での分類は「怪奇・冒険」ではあるが、
あらためて読んでみるとこれは「ミステリ」やね。
マッケン十八番な妖精怪異談が展開される「黒い石印」や
グロなテーストが売りの「白い粉薬のはなし」等に代表される怪異が語られるとはいえ、
あくまで登場人物たちの「語り」に過ぎない点に留意しておきたい。
原題「THREE IMPOSTORS」からしてネタばれでしょ。
(「三人の詐欺師」のタイトルで発刊している出版社もある。ただし全て平井訳)
ただし、こんなことに目くじらを立てず、解説で訳者の平井呈一先生が書いておられるが如く、
永井荷風の「墨東綺譚」や「日和下駄」を読むが如く、世紀末における「都会小説」の変り種と
して吟味するのが妥当やもしれぬ。
併録された「大いなる来復」は聖杯(グレール)ねた。
平井先生の名調子に乗せられてなんとか読破は出来るものの、一般の日本人読者が読んで
面白いものではなく、なんでこの作をという感を強く抱いた。

アーサー・マッケン「夢の丘」を読んだ。
板違いと言われても仕方ない作ではあるが、稀代の怪奇小説家の手になる幻想青春文学と
でも称すべき作、若き日の作者の姿が投影された正にルシアンの青春なのである。
ジョイス、プルースト、フォークナー等を愛読する文学キティには好まれそうな作である。
解説で訳者平井呈一先生も指摘しているが、ラストのシビアさが秀逸、
このリアルな視点があったゆえ、本作の主人公とは異なりアーサーは作家としてある程度の成功
をおさめることが出来たやに思うのである。

145:名無しのオプ
09/02/01 19:29:04 ebEgqMGM
ミス住・・・やめろ! もう8年以上も住人から、否定されてるいるのに
まだやめられないのか! お前の書き込みは、鬱陶しいんだ、
会話になってねぇんだよ! お前の自己満足のせんずりなんだよ!

オナニーショーなんだよ! 2ちゃんねるでマスをかくのをやめろ!

マスターベーションなら、布団の中で、小倉優子でも岡本夏樹?でも
加藤なんとかとかいうジャリ番専門も小娘のことでも想像しながら、
ちんちんいじってろ、ブラウザーでNGワードにしてもごちゃごちゃ
出てきやがって、みんながみんな、実力で抗議に行かないと思ったら
大間違いだぞ!


146:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/01 20:45:05 tN3J370u
ジョルジュ・シムノン「闇のオディッセー」を読んだ。
メグレ警部シリーズでおなじみの作者による、どちかというと普通小説(主人公はいろんな意味で
「普通」ではないが)、最広義でミステリのカテゴリーを把握した場合の心理サスペンス小説には
該当するやもしれぬためこの板で紹介しておく、各人、心して読め!
医師として大成功したというてよい産科医ジャン・シャボの遂に解決し得ぬ苦悩の果てに
訪れた結末とは・・・
ソフトカバーの単行本で200頁と短かめなノヴェルだが、シムノン本格小説選の名にふさわしい
読み応えある作であり、久々に謎解きミステリを読み耽っているアホなミスオタに突き付けて
読ませたい1冊と言い得る。

147:名無しのオプ
09/02/01 20:56:50 9O/aoKRF
だめだ・・こいつ、完全にいかれてるわ・・・・・

148:名無しのオプ
09/02/01 21:50:28 Z2gYh/VQ
アンチの荒らしぶりが目に余る!

149:名無しのオプ
09/02/01 23:37:09 ND6XdlUd
書斎荒らしぶりが目に余る HAHAHA!


150:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/02/05 23:13:12 jMLXDiVT
「狂犬は眠らない」ジェイムズ・グレイディ(早川書房)

CIA専用の精神病院通称<キャッスル>で精神科医が殺された。
死体を発見した5人の患者達はこのままでは自分達が容疑者にされる
と考え、独自に犯人を捕らえるべく病院から脱走する。しかし、
彼らはそれぞれ心に傷を負った病人であり、薬を服用しなければ
やがてはどうなるか判らない。果たして
間に合うのか?

バカミスアワード受賞作だっけ?
やたら分厚いから一瞬SFかと思った。設定が秀逸やね。究極の
デッドライン・サスペンス。しかもそれぞれが特異な弱点を
持っているという。

但しプロット自体は割と単純。本作の魅力は偏にキャラクターにある。
それでこの分量を見事に読ませるんだから凄い。久々のキャラ萌え小説の
収穫だ。

最後に、訳者のご冥福をお祈りします。
訳書では「脅える暗殺者」「逃げるが勝ち」等を読んだ覚えがあります。
頑張れば会えたかも知れなかったのになぁ。ちょっと後悔。

151:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/07 23:12:04 zvaZ1Ztm
エラリー・クイーン「ナポレオン剃刀の冒険」を読んだ。
ラジオドラマシナリオ集ということもあってか年間ベストランキングからはスルーされ、
あるいは低位に甘んじる結果となってはいるが、
謎解きミステリ(フーダニット)として意外な面白さに満ちたものであった。
エルオタには高評価(特に国名シリーズ好き)なようだが、これは十分に納得がゆくものがある。
ただし、オタ主眼なミステリ小説とは異なり大衆向きラジオドラマという配慮ゆえか、
好青年エルが軽い感じのキャラとされ、ニッキーは小説版以上ににぎやかし、
ヴェリー部長の完全ピエロ化等、小説とはやや異なるキャラ設定に戸惑わぬでもない。
お待ちかねな全話講評逝ってみよう!!
・「ナポレオン剃刀の冒険」
しょっぱなから表題作。(その前にD・G・グリーン長めのまえがき(出版者の序と謝辞)があるが)
さっそくに小説版とは異なるエルとニッキーの軽口の応酬がうざい感はあれど、
大陸横断鉄道コンパートメントの殺人というトラベル・ミステリは雰囲気があって良し、
ガイシャの遺留品に着目すれば「見えて」来るという国名シリーズを彷彿とさせる
細かい推理の妙味、意外過ぎる宝石の隠し場所という
ラジオドラマシナリオでありながら、十分に小技の冴えを感じさせる作。
ただし、解説でも指摘されている年号間違いは御愛敬か。
トリックが地味な感もあれど、前記したキングの「鉄路のオベリスト」のような感じで風景や人物
を描き込んで長篇化してもエンタメ小説として面白かったのではないか。
・「<ダーク・クラウド>号の冒険」
英語発音ねたを主眼としており、これにもとづくダイイング・メッセージねたへの転換が巧いとは
いいながらも、日本の読者には今ひとつ面白さが弱い作と言い得る。
・「悪を呼ぶ少年の冒険」
このタイトルといい、探偵役がエルとはいえ「Yの悲劇」を読んでいること自体がミソと成り得る作。(解説でもこの点に言及している)
解説で指摘されたような説明不足が存するとはいえ、ミステリとしては面白い展開の作と言える。

152:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/07 23:13:17 zvaZ1Ztm
・「ショート氏とロング氏の冒険」
ホームズ談の語られざる事件のひとつジェームズ・フィリモア氏の事件のエル的解決は興味を惹く
ものの、謎解きは無理有り過ぎ感が強い。
同じネタで書いたものなら、サー・アーサーの遺児エイドリアン(注 ロッキーの嫁ではない(w )
とマエストロなジョンの共著「シャーロックホームズの功績」に収録された「ハイゲイトの奇蹟事件」
の方が面白く思う。
不可能犯罪仕立てにすると、エルよりジョン向きのネタということか。
・「呪われた洞窟の冒険」
いわく因縁付きの洞窟で発生した密室殺人の謎を描いた「シャム双生児の秘密」や「神の灯」
以上に怪奇色満載の作。
ガイシャが洞窟に入った状態に関する問題設定が出来得れば謎解きにストレートに入れる。
ただし、足跡の深さの違いあたりにも着目して欲しかったかも。
・「殺された蛾の冒険」
蛾の死骸の位置という細部から推理を積み重ねて事件解決に至るプロセスはエルらしく面白い。
・「ブラック・シークレットの冒険」
「<ダーク・クラウド>号の冒険」と同様に英語ダイイングメッセージねたがあるゆえ、
日本の読者には今ひとつの感がある。
登場するマジック用鞄はジョンの「緑のカプセルの謎」でおなじみの代物。
・「三人のマクリン事件」
語る程でもない小品だが、今では懐かしき右ハンドル・左ハンドルねたである。

153:名無しのオプ
09/02/08 08:59:29 uFlJrLaQ
「ナポレオン剃刀の冒険」はラジオドラマシナリオ集だからというだけの理由で
年間ベストランキングからスルーされたわけじゃないだろう
”今更クイーンかよ”的な心理が投票者に働いたのではないかな

154:名無しのオプ
09/02/08 09:31:53 HxdaNzPd
>>153
そいつはただのバカだから相手にするな

155:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/08 10:06:02 XTYR93f1
ヒュー・ウォルポール「暗い広場の上で」を読んだ。
奇妙な味の決定版、短編「銀の仮面」の作者の長篇。
主人公はピカデリーサーカスに佇む軍人上がりの失業者、手元にあるのはわずかな現金のみ、
と来れば、100年に1度の大不況の現代日本でもビビッドで興を惹く設定なのだが、
古い作品過ぎて、語りがたるく読むのは辛いものがある。
ストーリーは過去のリベンジ絡み、殺しもあるものの、ドンデン返しやトリックは無く先の
展開は読めるものがある。
ジャンル的にサスペンス、クライムノヴェルあたりに包含されようが、作者の主眼は極限状況の中で
タイトルに暗喩された人間の心の様を描くことにあるようであり、この点で文学的ではあるが、
新書エンタメとしての魅力は希薄なものとなってしまっている。
2004年の刊行ながら、以後、ウォルポール作品の邦訳が途絶えたのは納得がゆくものあり。

ヒュー・ウォルポール「銀の仮面」を読んだ。
日本では表題作(のみ)で著名な作者、本書は倉阪鬼一郎訳による作品集である。
全体に目を通した感想としては、大乱歩が絶賛しただけあり、
今読んでも表題作のみがズバ抜けた出来栄え(本格的に高齢化社会が到来した現代日本では
リアルな恐怖感に溢れた作ともいえる)であり、他収録作品との差が大きいという感がある。
古本屋が主人公な「敵」等、出だしは軽快で期待させるものがあるのだが、
「銀の仮面」程には見事な締めに至らないのが極めて残念。
あえて、もうひとつ推す作を挙げれば、真性の善意の酷さを描いた「トーランド家の長老」だが、
これも大河小説中のエピで使えば光るネタという感がある。
収録作品全11作中、後半にはスーパーナチュラルねた(解釈にもよるが)5作がおさめられて
いるが、特筆すべき作は皆無と言い得る。まあ、逝ってよし!だな。

156:名無しのオプ
09/02/08 10:09:31 6RVR46Xh
本ミス4位だし、別にスルーされてないだろ
流石に本ミス以外で評価されるもんでもないだろうし

157:名無しのオプ
09/02/08 11:10:12 ZeBnbimg
>>156
奴はこのミスと文春以外は権威がないから認めないとどこかで言ってたぞ。
そんなアホを相手にするなってば。

158:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/11 11:30:57 UCTttE+M
ピエール・バイヤール「読んでいない本について堂々と語る方法」を読んだ。
タイトルに冠された内容を語ることは正にミステリにおける謎解きに等しいと思われる。
軽いハウツウねた本のような邦題だが、内容はかなり濃く、読み易いものではないが、
平成が20年を経過し、21世紀も9年目を迎えんとする時に弛緩した読書状況に
あたかも楔を打ち込むかの如く現れた書であり、キャラ立ちと突飛でアホなミステリを
読み耽っている連中にこそ、正に突き付けて読ませたいものがある。
本書を一読し、「難し過ぎてわからないお」とか言うているアホなミスオタにこそ、
私は声を大にして言いたい。
「共有図書館」「スクリーンとしての書物」「ヴァーチャル図書館」、この3つのキーワードを
熟読吟味し、自学自習を怠るな!と。

159:名無しのオプ
09/02/11 11:43:37 qkN1qARS
書斎のチョイスはなかなかのもの。
半端な知識人でないことはこのレスからも明らかだ。

160:名無しのオプ
09/02/11 14:24:26 HMpp8Ikn
実際に本を買うこともできず、図書館と古書市で手に入れた本を
そんなものは十年も前に呼んで議論をどんどん発展させている人に
喜々として上から目線で語って見せるボケ老人の八流・林博士は
「半端な知識人」で「さえ」ないことはどのレスからも明らかだ。

161:名無しのオプ
09/02/11 16:50:44 qkN1qARS
書斎の選んだ本がどれhどの好著かわからないアホが何かほざいてますな。

162:名無しのオプ
09/02/11 17:00:36 aEU0C1kE
そもそも腐れ馬は“どれhどの好著か”全く説明できていないだろw
そしてその原因はタイトル通り「読んでいない本について堂々と語」っているからに決まっているw

163:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/14 09:24:55 Qxj1YRtQ
ポール・ドハティー「毒杯の囀り」を読んだ。
死体等のグロ描写もかなりリアルであり、ファンタジックな中世を舞台にした本格ミステリという予想
は大きく裏切られた。
14世紀後半の中世英国を舞台に、
アル中気味のクランストン検死官と助手のアセルスタン修道士の探偵コンビ
(それぞれに個人的なトラウマを抱えたキャラ設定は現代的とは言い得る)
によるシリーズ第1作
90年代の作でありながら汚物と悪臭漂うロンドンの情景描写も正に秀逸ではあるのだが、
西洋時代小説を読む気分ならOKとはいえ、シリーズ第1作ということもあってか、
ミステリが始まるまでが少し遅い感があるうえに、科学捜査が存在しない時代のおおまかな
犯行トリックは仕方ないとはいえ、やれやれ感大。
本書は指紋採取が可能な時代なら事件とも成り得ないものなのである。
ゆえに、ミステリとして見た場合、期間は空きながらもシリーズ第3作まで訳されているのは不思議
な感は否定出来ないものがある。
作品の雰囲気とキャラの魅力ゆえであろうか、ならば名探偵コナンな金田一少年を読み狂って
いる連中との差別化は難かしかろう。

164:名無しのオプ
09/02/14 09:36:44 1kKJ+g6k
>>163
カドフェル好きの友人が試しに読んだら
下品すぎて読めねー!って言ってた。
ミステリと思わず当時の生活が偲ばれる大衆小説と思えばいいの?

165:名無しのオプ
09/02/14 10:40:11 lngg0v06
自演ご苦労。

166:名無しのオプ
09/02/14 11:13:16 F5UteWkH
違うってw

167:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/02/14 12:27:37 orvFvOYA
「ねじれた家」アガサ・クリスティー(早川書房)

外国勤務を終えた外交官チャールズは2年ぶりに会う恋人ソフィアに
結婚を申し込もうとするが、色好い返事が貰えない。彼女の祖父が殺され、
一家は警察に監視下にあるというのだ。2人の関係のため、チャールズは
ロンドン警視庁副総監である父に事情を話して捜査に同行させて
貰うのだが……。

古典にしては珍しく「奇妙な館」が出てくる話。
主人公は純粋に事件の解決を目指すというよりも、恋人との結婚のために
動いているので、彼が手っ取り早く第一容疑者の不利な証拠を探そう
とするのがちょっと変わっている。

大方の戦後クリスティーの例に漏れず、本作もメイントリック
となるものが無く伏線の妙も感じられなかった。フーダニットも
難易度低し。
後、終盤に主人公がある事についておかしいと気づく理由がおかしい。
あれだけじゃそれまでと変わらないはずなんだが……。

クリスティーは何となくノン・シリーズものが好きでそればっかり
読んでるんだけど、そろそろ弾が無くなってきたなぁ。

168:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/14 16:09:27 cXO1z3B1
>>164
カドフェルがあの時代を書いたものにしてはおとなし過ぎる気味もある。
>西洋時代小説を読む気分ならOK
と書いたとおり、
>ミステリと思わず当時の生活が偲ばれる大衆小説と思えばいいの?
この姿勢読めば、まずまず楽しめるはずだ。
中世ロンドンの様が相当な臨場感をもって描かれているのは間違いない。

169:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/15 10:57:47 qD6sF21G
D・M・ディヴァイン「ウォリス家の殺人」を読んだ。
このミス、文春双方の最新号ベスト10にランクインした作。
怪奇、猟奇、ユーモア、メロドラマ等ありがちな装飾を全て排し、
名探偵の存在さえ排して(カズウェル警視は名刑事かもしれないが名探偵とは言えず、
物語の前面には登場して来ない)
謎解きミステリに徹したストイックな作(ジェーン萌えなアホなミスオタがいないとも限らないが(w )
正直言うて、つまらなかった。
確かに犯行可能性が最も高い人物という消去法で犯人当ては可能なのだが、
(自分は主人公モーリスが終盤でライオネルのコテージを訪ねるシーンでわかった)
呈示された手がかりによる推理で解く場合には、時計の件はあらかじめ明確にしておかないと
アンフェアかと思う。終盤のウケ狙いのような唐突なカーアクションも非常に萎えるものがある。

170:名無しのオプ
09/02/15 12:12:18 n+M3j/Uq
読後感の長文レスは内容がないねえ。

171:名無しのオプ
09/02/17 21:21:01 0c8OweqE
今頃かと思われる方もいると思われるが
『黄色い部屋の謎』ガストン・ルルー 宮崎 嶺雄訳 創元推理文庫
フランスのスタンガースン博士が住むグランディエ城の離れで、惨劇は起きる。
ある夜、内部から完全に密閉された『黄色い部屋』からの悲鳴と銃声が響き渡った。
ドアをこわしてはいった一同が目にしたのは、血の海の中に倒れた博士の娘マチルドの姿だけ。犯人はどこへ消えたのか?
この不可能犯罪に若干十八歳の新聞記者ルールタビーユが挑む。

百年以上の前の推理小説ってこともあり、多少読みにくくとっつきにくいが、そういう部分も含めて古典的な品格が感じられ、読み応えがある。
密室の不可能状況、無機質なグランディエ城の雰囲気、隠し事を持った容疑者たち、お使い様の鳴き声、ルールタビーユの謎めいた発言など、
次々と提示される謎は魅力的で、読みづらいながらも答えを知りたいとぐんぐん惹きこまれていく。
にしても主人公ルールタビーユの時々現れるデリカシーのなさ、人の秘密を握ってゆうことをきかせるやり方など、には少し腹が立つ。
ホームズがワトソンを馬鹿にしたり、ポアロがヘイスティングズを馬鹿にしても腹が立たないのに、こいつがサンクレール(本編の記述者)を馬鹿にすると腹が立つのは何故だろう。
そりゃ予審判事の秘書(だったかな?)もなんて傲慢なやつって書くわw
しかし、ルールタビーユの見せる騎士道精神も魅力的で嫌いにはなれない探偵である。

ラスト、裁判において満を持してルルタビーユが劇的に現れ、物語は最高潮にたっする。
そこで彼の口から聞かされる、犯人は驚くべきものである。しかし、それと比べると密室の方はちょっとがっかり。
まだ、人間消失トリックの方がスマートで納得できるものだったなあ。
あと、推理するための全ての情報を読者に提示できているとはいえず、アンフェアなんだが時代を考えれば仕方がないか。
最後まで読んでも、残された謎があり、それは続編『黒衣婦人の香り』で全てが明かされるらしい。
それって推理小説としてはどうなの?っとは思うがこういうスタイルの推理小説があってもいいんじゃないかなと個人的には肯定派。


172:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/02/18 16:43:02 vRl3XsLv
「ブルー・ヘヴン」C・J・ボックス(早川書房)

アニーとウィリアムの姉弟は釣りに出かけた森の中で偶然殺人の現場を
目撃してしまう。謎の男たちに追われ必死に逃げた二人は近くの
牧場へと辿り着く。事情を聞いた牧場主ジェスは二人を守る為に
立ち上がる。

あー面白かった。分厚いのに一気読み。まずこの設定が秀抜。
何もかも失いかけた初老の男が子供たちを助けて巧妙に世論を欺く
犯人グループと闘うという。それでプロット自体は割と単純なのか
と思いきや思わぬ捻りも挿し込まれていたりして油断ならない。

読み終って主人公は一体何を得たのか、どう変わったのか等を
考えてみるのも良いかも。

やっぱり早川はチョイス力があるね。
続刊するか不安なシリーズものを出すよりも読み切りの発掘に力を入れて
貰った方が良いかも知れん。

173:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/02/18 21:12:55 vRl3XsLv
「容疑者 上・下」マイケル・ロボサム(集英社)

難病の影に脅えながらも幸せな家庭を築いていた臨床心理士ジョーは、
ある日突然殺人事件に巻き込まれる。乞われるままに捜査に
協力していく内に事件と自らとの繋がりが明らかになっていき、
遂には容疑者になってしまうジョー。不利な証拠が次々と見つかる中、
最愛の妻からの信頼をも失った彼は決死の単独行に出る。

あらすじのどこに惹かれたかは言わずもがな。冒頭和やかな
一家団欒の描写を読みながら、「こいつが後に……」とか歪んだ期待に
胸を痛躍らせていたところ、いざ騒動の渦中に到達するとそれほど
クルものはなかった。いや、普通にイイ話だったかも。

ミステリー的にはホワイダニットが中心かなと思いきや……
なところもあり、まあ、まあ。この手の作品は他に「偶然の犯罪」や
「悩み多き哲学者の災難」(未読)が思い浮かぶけど、
順風満帆な主人公が思わぬ不幸に見舞われ、そのせいで
周囲の薄情さを知るというテーマの作品は好きだ。無論巻き返し込み
でだけれど。そういや別の観点から見ると「ジレンマ」も
類似作になるのかな?

後、ページからして一冊でも良かったんじゃないかと思うが……。

174:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/02/21 14:51:28 FFG2dIM/
ポール・アルテ「虎の首」を読んだ。
本邦初紹介となった「第四の扉」以来新刊が出る度に愛読して来たポール作品だが、
そろそろ逝ってよし!かなという感が強い。
本作は本邦の鮎風な連続バラバラ事件でスタート、謎の連続盗難事件、
今風のサイコなキャラあり、密室殺人あり、アガサ風の田園(と言うてもロンドンから30キロ程度
の村だが)を舞台にしたメロドラマあり等、欲張りと言うて良いほどに多彩な要素を盛り込んで
ミステリ的サービスには事欠かないものがある。
ただし、偶然性が強過ぎるあまりに創り過ぎた展開(鞄の件)
ジョンもびっくり(?)な他愛もない密室トリック、
あげくの果てに、遵法精神逝ってよしなアント二イもびっくり(?)なハードボイルドだどおを
越えるノワール的なバイオレンスな締め・・・
この締めは、第2次大戦中の空襲下のロンドンという騒然とした時代背景ゆえ多少の説得力が
あるとはいえ、スコットランドヤードのお膝元でこれはないでしょうという感あり。


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