08/09/23 12:55:55 kUNaKjeU
NGワード・あぼーんのススメ
━━━━━━━━━━━━━━━━
■書斎魔神 ◆qGkOQLdVas とは?
かつて発狂コテにも認定された、読みましたスレに住みつく
NGワードの指定対象人物。
ネタバレを含めた持論を主張し続け、また、
議論においても他者の意見を受け入れようとしない傲慢な態度から、
他の住人からは忌み嫌われることに。
前スレでのアホアホ発言を一部抜粋。
『 乱歩賞受賞作「暗黒予知」を読み返していた。 』(そんな作品はない)
誹謗中傷当たり前、間違いを認めない、自作自演当たり前と、
三拍子揃った厄介物。
彼の発言に反応してしまうとスレが荒れる一方だが、
反応さえしなければ独り言を言い続けるだけなので、
余程のことがなければ、NGワードに指定してのスルーが推奨される。
どうしても我慢できない・反論したい場合は、下記スレにて
↓
書斎魔神・アホアホ語録格納庫 その25
スレリンク(tubo板)l50
■NGワード・あぼーんについて
2ちゃんねる専用ブラウザのオプションのひとつ。
設定することで、任意のレスを消すことができる。
2ちゃんねる専用ブラウザに関するサイトはこちら。
↓
URLリンク(www.monazilla.org)
3:名無しのオプ
08/09/23 12:57:00 kUNaKjeU
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
|| ○荒らしは放置が一番キライ。荒らしは常に誰かの反応を待っています。
|| ○放置された荒らしは煽りや自作自演であなたのレスを誘います。
|| ノセられてレスしたらその時点であなたの負け。
|| ○反撃は荒らしの滋養にして栄養であり最も喜ぶことです。荒らしにエサを
|| 与えないで下さい。 ΛΛ
|| ○枯死するまで孤独に暴れさせておいて \ (゚ー゚*) キホン。
|| ゴミが溜まったら削除が一番です。 ⊂⊂ |
||___ ∧ ∧__∧ ∧__ ∧ ∧_ | ̄ ̄ ̄ ̄|
( ∧ ∧__ ( ∧ ∧__( ∧ ∧  ̄ ̄ ̄
~(_( ∧ ∧_ ( ∧ ∧_ ( ∧ ∧ は~い、先生。
~(_( ,,)~(_( ,,)~(_( ,,)
~(___ノ ~(___ノ ~(___ノ
4:名無しのオプ
08/09/23 16:26:10 dxso9zcg
あーあ、立てちゃったのか
5:名無しのオプ
08/09/25 17:43:36 Kzl6WqWr
>>1
乙
重複あげ
6:名無しのオプ
08/09/25 19:11:16 uIspTt8u
国内作品はこちら
『読みました』報告・国内編Part.5
スレリンク(mystery板)
7:名無しのオプ
08/09/28 23:09:03 /42YYE6h
とりあえず乙
8:名無しのオプ
08/09/29 04:17:08 VWhk9UZ8
誰も書いてないようなので自分が一つ
アガサ・クリスティ『死者のあやまち』
ポアロシリーズ27作目
ある田舎屋敷で祭りが開かれ、その催しとして推理ゲームが行われることとなった。
そのゲームの筋書きを任された推理小説家オリヴァ夫人からポアロは招待されることに。
彼女がポアロを招待したのは、この推理ゲームに陰謀の匂いを感じたからだというが、はたして・・・。
推理ゲームの裏で何が行われているのかを、ポアロとシリーズ後半の相棒オリヴァ夫人と捜査するというシチュエーションが楽しい。
案の定、殺人は行われ、それまでお祭りムードであった作品は一転して緊迫した事態へ。ページの最初の方が明るかったのと比べ、その後の展開は暗い話が続くが
空気の読めないオリヴァ夫人がめずらしくムードを和ませてくれる。『第三の女』じゃあ、あんなにうざいと思っていたのにww
捜査は警察もポアロも難航、手がかりとなるものは最後の方でやっとで出てくるので読者としては推理するのが難しい。
ポアロが苦戦しただけあって、事件の真相は驚愕。こんなのヒント少なすぎだろうと思って読み返してみるとこれっでもかというほどヒントが隠されていることにも驚愕した。
このパターンは他のクリスティ作品でも見たぞと思ってしまう部分もあるが、江戸川乱歩の言うとおりクリスティはその組み合わせ方がうまいから許せてしまうなあ。
哀愁ただようラストもこの作品全てを物語っているようで印象深い。
個人的にもっと評価されるべき作品だと思う。
9:名無しのオプ
08/09/29 14:21:57 1qtcYgWX
過疎ってるな
10:名無しのオプ
08/09/29 21:05:33 EIb3kZss
荒らしに狙われるから age るなよ。
11:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/09/30 17:18:55 XC1YfhlM
「ミステリー 上・下」ピーター・ストラウブ(扶桑社)
カリブ海に浮かぶ島ミル・ウォークに住む少年トムは交通事故に遭い
生死の境をさ迷うが奇跡的に回復する。退院後、見舞いに来てくれた
隣人ラモントと付き合うようになったトムは彼が有名な探偵だったことを
知り、共に島に巣食う悪を暴こうとする。
「ミステリー」とはまた大きく出たなと思い読み始める。本格作品や
作家の名前がたくさん出るが内容は青春ハードボイルドと言った感じ。
それもティーンエイジャーの主人公というのは初めてかも。
正直ストーリーは凡庸でありがち。幼なじみのマドンナがドラ息子と
婚約しかけ、みたいなサイドも含めてね。冒頭は何となく
スーパーナチュラルな雰囲気を感じさせるがそういう展開もない。
ぶっちゃけ暇つぶし以上のものは感じなかった。「ココ」はどうすっかなぁ。
PS 車が跨ぐってどういうこっちゃ?
12:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/09/30 17:20:28 XC1YfhlM
「草の根」スチュアート・ウッズ(文藝春秋)
カー上院議員秘書の弁護士ウィルは、議員から二年後の選挙で
立候補した場合の支持を取り付けて喜ぶが、地元で旧知の判事に
厄介な事件の被告側弁護人を引き受けさせられてしまうことになる。
更にカー議員が病で倒れ、ウィルは急遽後継者として選挙に
打って出る決意をする。恋人でCIA幹部のケイトが徐々に
よそよそしくなっていく中、裁判と選挙、2つを同時にこなさなければ
ならなくなったウィルの運命は!?
面白かった。ウッズって力のある作家だなぁ。「サンタフェの裏切り」は
あまり印象に残らなかった印象だけど。特に凝ったプロット
というわけではないが、リーダビリティは確かなものがある。
これは是非「警察署長」も読まねば……と思ってあとがき見たら
これシリーズものの途中作じゃねぇかぁ~!
シクリマ・クリスティ!
そんならとりあえず前作らしき「潜行」をチェックしなきゃ……。
13:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/01 17:18:34 2x5upQ2L
「探偵人間百科事典」フランク・グルーバー(番町書房)
百科事典のセールスマンで内容を完全に記憶しているという
博覧強記のクエイドと相棒チャーリーが行く先々で事件に巻き込まれる
という連作短編集。
面白い!
訪ねた山荘で殺人が起きその直後に脱獄囚一味が乗り込んで来る
「鷲の巣荘殺人事件」、旅客機が雪山に不時着し生き残った乗員は
民家に避難するも、パイロットはコックピットで銃殺されており、
更に民家に強盗が押し入って来る「不時着」、奇妙な味のアプローチが
面白い「州博覧会殺人事件」等、プロットが凝っていて良い。
巻末の「フランク・グルーバー論」も一読の価値有り。アイツやっぱ
やな奴だったんだな。
14:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/01 17:20:14 2x5upQ2L
「カリブ海の秘密」アガサ・クリスティー(早川書房)
甥の薦めで転地療養のため西インド諸島へやって来たミス・マープルは
話好きのバルグレイブ少佐と知り合う。ある日のこと、少佐から
過去の殺人事件に関する回想を聞かされていたマープルは、
少佐が突如顔色を変えたことに気付く。その時彼は犯人が
写っているという写真を取り出そうとしており、マープルは少佐が
偶然何か重大なものを見かけたのではないかと考える。そして翌日、
少佐の死体が発見された……。
64年発表ということは後期の作品に属するのかな。
プロットはそう複雑ではなく、細かな伏線やトリックがあるわけでもない。
登場人物達の会話が内容の多くを占めており、そこに手がかりが
隠されているという風な造りか。ただ、解決時に明かされた
ある手がかりが、示されている箇所に無い様で? あと、145ページの
内容について、この時点で持ち主が判ったのは何故? まさか
訳をはしょってんじゃないよな?
「復讐の女神」は当分読まなくていっか。
15:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/04 17:23:38 pjdUVyQD
「密偵ファルコ 鋼鉄の軍神」リンゼイ・デイヴィス(光文社)
今回のファルコが受けた依頼は、ゲルマニアに赴き行方不明になっている
軍団長を捜すことと、異民族に崇められているという女祭司に会うこと
これまでになくという過酷なもの。
ヘレナへの関心を隠そうとしない皇太子に心中穏やかでは
いられないながらも、ゲルマニアの奥地へ向かったファルコと護衛達は
かつてローマが忌まわしい敗北を喫したテウトブルクの森へと
足を踏み入れる……。
シリーズ4作目。同時期の教科書ではトイトブルクと表記されていたのに。
今回は秘境探険もののノリなのでプロットはストレートで捻りはない感じ。
作者は歴史改変しないらしいのでそれが筆を控え目にしているのかも。
むしろヘレナ絡みの部分が見所か。いよいよ何かしら相関図が
見えて来たか?
それにしても毎度お馴染みのこの仲直りプレイは長続きさせる秘訣
だと思う。新鮮なセックスに耽れるから。
16:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/04 17:24:33 pjdUVyQD
「サンドラー迷路」ノエル・ハインド(文藝春秋)
若手弁護士トマスは事務所を何者かに放火されてしまう。
その後死んだ父が顧客だった大富豪の訃報に接し、更にその
遺産相続人を名乗る女性の依頼を受けたトマスは、やがて
先の大戦において展開された一大スパイ合戦の闇に踏み込むことになる……。
久々にスパイもの。相反する証言がどこまでも付きまとい、飽きさせない。
きっちりサプライズも仕掛けられており好印象。
しかし主人公は気の毒だなぁ。恋人の優しさに触れた場面で、
「そうかと思うと、他の男と寝たりもする」だってワロスwww。
それでいいなら何も言えねえわ。でも235ページの言動は許せない!
続編ありますように。んでこの小生意気な牝犬(fromブロック)に
鉄槌が下りますように。
17:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/05 17:15:02 KWqyJsTX
「二重誘拐」ジョン・クリアリー(角川書店)
アメリカ旅行中のオーストラリア人の警視マローンは、新婚の妻リーザを
何者かに誘拐されてしまう。彼女は歯医者に来ていた所を
ニューヨーク市長夫人と一緒に拐われたのだった。マローンは
選挙を目前に控えた市長と共に妻を取り返そうとするのだが……。
あまり作者読みは好きじゃなかったのに「高く危険な道」が良かったんで
つい手っ取り早く本書を開いてしまったのが間違いだった。
ストーリーも好みじゃなかったのに。失敗失敗。あらすじから
読み取れる以上のものは無いので、とにかく誘拐ものが好きな方
のみどうぞ。
18:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/05 17:15:53 KWqyJsTX
「修道士の頭巾」エリス・ピーターズ(社会思想社)
シュルーズベリへ荘園を寄付すると共に引越して来た領主が毒殺される。
使われたのはカドフェルが持っていたトリカブトであった。疑いは
領主の義理の息子に掛かり、未亡人となったのはかつてカドフェルか
愛したリチルディスだった。カドフェルは彼らのために一肌脱ぐことに。
シリーズ3作目にしてこれが緩い時代ミステリーだということが
やっと解りました。何も期待せず、ただ身を任せていけば良いのですね。
そうすりゃ、ああそうだったんだって解りますから。それとロマンスがね、
確かに進行してるんだろうけど、視点がカドフェルから離れないから
ろくに描写されねえのが残念ですね。
またいつか12世紀頃のイングランドの修道院の雰囲気に
浸りたくなったら読みます。
19: ◆XjFtIkbasQ
08/10/06 01:30:21 3o7rlglq
マイクル・コナリー『ラスト・コヨーテ』
(上下、扶桑社ミステリー、1996)【8点】
上司への暴行で休職処分となり、長年気にかけていた母親の殺人事件の
ファイルを開いたボッシュは、33年前の過去に直面する。
有力者の妨害、女画家との出逢いを経てボッシュがたどり着いた事件の「真犯人」とは?
シリーズ第4作。前作までは序盤~中盤がややテンポが緩やかだったのに対し、
今回は序盤からいい感じ。捜査自体はオーソドックスだが、釣りガイドの元警官や
女画家、セラピストなどとの会話がよくて物語に引き込まれる。
欲を言えばもうすこし真相に意外性がほしかったが、十分に満足。
いちばん驚いたのは某サブキャラの死かな・・・
20:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/08 01:58:42 JJVRzyjr
「バスルームから気合いを込めて」ジャネット・イヴァノヴィッチ(集英社)
災難続きの職業に嫌気が刺したステフはバウンティ・ハンターを
辞めてしまう。もっと穏やかな仕事がしたいと転職するものの、
そう簡単に縁が切れるはずもなく……。
ステフは謎の敵にに襲われつつ、失踪事件を追う。
シリーズ11弾だって長すぎ。三角関係もいい加減マンネリだと
再三言い続けてきたのがおばさんに届いたのか、本作ではヒロインを巡る
2人の男達に違いが出てくる。これは進展フラグだと信じたいところ。
自分はこの辺りから多岐川恭の時代ものを連想した。あ、セックスも
結構あるよ。
ミステリーとしては……まあ、ちと意外な気もせんでもない。
でも2作目のキャラなんて誰も覚えてないだろ(言い過ぎ)。
とにかく、キャラ萌えとその場面場面を愉しみましょう。
追伸 そういやクリスマス番外編はもう訳されないの?
21:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/08 02:05:15 JJVRzyjr
「七番目の仮説」ポール・アルテ(早川書房)
夜のロンドン。パトロール中の巡査が中世の医者の扮装をした
男に遭遇する。その男が指し示したごみバケツを覗いた巡査は
一瞬前には無かったはずの死体を発見するのだが、それは
自分の下宿の廊下から消え失せた男のものだったのだ!
そして事件から二ヶ月後、ツイスト博士の元にやってきた人物は
奇妙な闘いの経緯を語り始めた……。
シリーズ7作目。微妙に順番が前後している。私は未だに一作目を超える
作品はないと思っているが、本作も更新には至らず。
プロットに奥行きがなく、ちまちました印象を受けた。演劇的というか。
ま、実際演劇ではやれないけど。
トリックも単純なのは良いが、それはあくまでも仕組みの話であって、
表面上は複雑に見せる必要があると思うので、イマイチ感心しなかった。
本来なら目撃者がまず疑うことがそのまま答えになってしまっている
と思う。
ストーリーについて言えば、舞台はイギリスでも内容はフランスやなぁと。
後、36ページのハーストのセリフ内の「第二の説」は「第一の説」
の誤りじゃないか?
それから第四部のタイトル「凶事の兆」は「凶兆」で良いのではないか?
22:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/09 00:12:07 E3BBuX6k
「潜行」スチュアート・ウッズ(早川書房)
ソ連海軍中尉ヘルダーはある時上官から密命を帯びてスウェーデンの
領海に潜入する。一方、ソ連がバルト海沿岸で策動しているらしいと
突き止めたCIAソ連担当官ケイトは上司らに進言するが
何故か冷ややかな反応を受ける。必死に自分の正しさを証明しようと
孤独な闘いを繰り広げるケイトだったが……。
「草の根」のシリーズ前作。2人の出会いの話かと思ったら違うのね。
内容が濃い割にゴチャゴチャしていなくて良い。アメリカ作家だからか。
ケイトとヘルダーの視点が半々ぐらいで進行しているが、
単純な善悪にしていないのも良い。定番のモグラ探しもあり。
しかしケイトから余り母親臭がしないのが気になった。これ
「草の根」ではもっと顕著なんだよな。
23:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/09 00:17:59 E3BBuX6k
「欺かれた男」ロス・トーマス(早川書房)
サンサルバドルでスキャンダルに巻き込まれ退役を余儀なくされた
元軍人エドはその後に就いたしがない仕事までもかつての上司の
妨害でクビになり、脱藩公務員の支援団体から新たな仕事を
紹介してもらう。それは、盗まれた政治資金を取り戻す手伝いをする
というものだった。エドは自らの過去の柵に追われながら
消えた金を追う。
最後の長編。「女刑事の死」はどうもあらすじが好みじゃなかったので。
ありがちな設定なのは読みやすいしむしろプラスなのだが、主人公を巡る
事件の繋がり方がご都合主義でやや萎え。話の畳み方も年のせいか
単に飽きたせいか、どうも呆気ない。まあ、マンネリのみを
愛する人にはお薦めか。
24:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/10 01:25:35 G/ZzdJwx
「終わらない悪夢」ハーバート・ヴァン・サール編(論創社)
ホラー短編集。既に何度も言っていることですが、良い叢書です。
ただ、本書には若干気になった点があります。まず、ショートショートが
今一つ。もっと長い話の一部分を切り取った様なものや、急ぎ過ぎて
シノプシスの様になってしまっているもの等がありました。
それから聊か教訓めいたものが目につきました。「レンズの中の迷宮」
に至っては偏見もプラスされてますし。
それらを除けば、良い短編集でした。ベストは表題作でしょうか。
オチが良いです。実際あってそうで怖い。 次点は「入院患者」。
思わせぶりで実に気色悪い話です。後は「人形使い」の異様な雰囲気や
「暗闇に続く道」の救い様の無い不気味さもなかなか。「私を愛して」は
アイディアが面白かったです。「基地」は出だしは良かったのですが
真相の見せ方で減点しました。
詳細不明の作家が多いのがまた如何にもという感じでムードが出ます。
しかし、「死の人形」の紹介文は筋をバラし過ぎでしょう。めっ。
25:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/10 01:26:27 G/ZzdJwx
「ケープ・コッド危険水域」リック・ボイヤー(早川書房)
妻と2人海辺の別荘で過ごしていた歯科医チャールズは、ある時
沈没しかけた船が入港して来るのを目撃する。何の気無しに
知り合いのダイバーに探ってきてと頼むが、翌日彼は溺死体と
なって発見される。責任を感じたチャールズは例の船について
調べ始めるのだが……。
まず主人公が家庭人という時点で人間関係のバランスが悪くなるわけです。
家族は最低限描写しなくちゃならないしそうなると事件に付随する
キャラクターの登場シーンが制限されてしまいかねないのです。
だからイマイチ入り込めないまま読み終った感じでした。
普通のおっさんがどんどん大事に巻き込まれていくというストーリーは
それなりに面白いのですが途中途中に家に帰る(当たり前)もんだから
どうもですね……。ま、今回はご縁が無かったということで。
後259ページについて、この人はこの人を殺してない
と思うんですが……。
26: ◆XjFtIkbasQ
08/10/10 22:31:59 FHQj8cDt
ピーター・ラヴゼイ『漂う殺人鬼』(2005→2008、ハヤカワ文庫)【7.5点】
海辺で絞殺された女の事件+猟奇殺人犯“古老の船乗り”の連続殺人事件。
ダイヤモンド警視シリーズ。
海辺での殺人事件の顛末まではワクワクしたが、
プロファイラーのファイルが続く中盤辺りがちょっともたつく。
プロットや伏線も前作までと較べるとやや切れ味は鈍り気味。
“船乗り”の動機には個人的に共感できるが、犯行方法にはちょっと違和感。
それでもシリーズ読者としては、まあまあ満足+続きが気になる。
冒頭の副署長のネコ話がああいう風に繋がるとは思わなかった(原題みて笑った)。
27:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/11 01:26:59 Y3Jgv+Tc
「ランポール弁護に立つ」ジョン・モーティマー(河出書房新社)
ジョン・モーティマー。忘れようったって忘れられない名前である。
その昔「告発者」を読んだ夜私は眠れず口直しのつもりでコージーを
一冊必死に読殺したがまだ眠れず、朝一で図書館に行ってブラウン神父を
1、2編読んで漸く疲れが恐れを凌駕してくれたという思い出がある。
思えばあれが私が悪女に過剰反応するきっかけとなった出来事だった。
閑話休題。本書はそれとは違い弁護士を主人公にした連作短編集である。
しかし一般的なリーガルものや少し前に読んだ
「ランドルフ・メイスンと七つの罪」とは幾分趣きが違う。
法廷が主な舞台というわけでも法律に関するテーマというわけでもない。
主人公の生活を描く人間ドラマという側面がかなりある。
ミステリーとしてのプロットを抜き出した場合、あまり大したことはない
と思うけども、かといって詰まらなくもなく読まされるのは
作者の腕だろう。
ベストはミステリーとしてもまあまあの「ランポールと人妻」。
NHKがドラマ放送すればいいのに。BBCチャンネルは遠慮してね。
28:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/11 01:28:36 Y3Jgv+Tc
「赤き死の香り」ジョナサン・ラティマー(論創社)
私立探偵クレインは大富豪シムノン・マーチの依頼を受け、同僚の
アンと共に夫婦を装いマーチの会社に入社する。この所マーチの一族が
次々にガス中毒死しており、その真相を突き止めるのが2人の仕事
なのだが、そんな彼らを嘲笑うかの様に事件は続き、またクレインも
命を狙われる羽目になる。アンに思いを抱きつつ謎を追うクレイン
だったが……。
シリーズ最終作。ラティマーは3作読んでたけどイマイチ印象に
残らなかった。本格味という点ではどの作品に於いても小手先だけで
プロットと溶け合ってない様に思えて。ちなみに個人的には
本格味のあるハードボイルドというと栄光三部作とか「ここにて死す」
とかが思い浮かぶ。閑話休題。「シカゴの事件記者」は目覚めたら
隣で見知らぬ女が死んでる話。「処刑六日前」は死刑確定した男を
助けるために密室の謎と真犯人を探す話。「第五の墓」は……忘れた。
で、本作であるが、結論から言うと面白かった。夫婦を装いながら
口喧嘩の耐えない男女が主役なのだから詰まらない訳がない。
捜査中でも心のどこかでスケベなことを考えている様なクレインの
キャラクター等通俗ハードボイルドとしても良いのだが、本格味
となるとやっぱり首を傾げざるを得ない。一応真相に至る伏線らしきもの
はあるのだが、これだけでは弱い。もう本格とか枕詞に使わない方が
良いと思う。
追伸 このラストは中々味わい深いものがあった。でも何故……。
29:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/10/11 23:00:45 qWLOv/Yd
転載しておきましょう。
371 :書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/10/11(土) 22:04:43 ID:qWLOv/Yd
ローラン・トポール「幻の下宿人」を読んだ。
嘗ては、早川書房ブラックユーモア選集に収録されていた異色作。
この選集、読書人の間では論議が多いものであったが、
果たして現代において本作を「ブラックユーモア」と言うか否かは疑問な点もある。
(この事は同選集に収録された他作にも該当することであるが)
この点はともかくとして、サイコ・ミステリあるいはサイコ・ホラーとして読み、
(ラストをいかに読み解くかにより、この辺は変わって来るやに思う)
あるいは三人称で書かれた狂人の物語として見るとそれなりに面白いものはある。
何しろ主人公(トレルコフスキー)は、部屋探しだけのために会社に3日も年休を申請するDQN、
(どんな国、どんな時代でもNGな香具師かと思う)
文字どおり、おかしな奴がおかしな世界へじょじょに突入してゆく様が淡々と綴られてゆくのが、
恐く、この点で、より主人公の内面にアプローチ可能な一人称という形式をとらず、
あえて三人称という客観的視点を用いたことが成功しているやに思えるのだ。
そう、トレルコフスキーは、正にネット社会無き60年代の2ちゃんねらー(DQN&キティ)なの
やもしれぬ。
30:名無しのオプ
08/10/12 07:19:14 N0H/ofvL
ミステリー板
「読みました海外編」スレが立っていることにようやく気付いた書斎w
これまで、書斎に気付かれないように、ここでも話題にしなかったんだけど、
スレが立ってから半月以上もかかったのには笑った。
しかも、今日の夜10時の時点では気付いていなかった。
だからスレ違いを承知で「読みました国内編」スレの371に書き込んでいた。
その後海外編スレを発見したのだろう。
嬉々として、国内編スレに書いたことをわざわざ海外編スレにコピペ。
でも、削除整理板のスレに削除依頼は出さない。
それじゃあ単なる「マルチレス」=「荒らし行為」じゃねーかw
ま、書斎にとっては「荒らし行為」は「やって当然の行為」なんだろう。
ただ、それを書斎魔神名義でやっちゃっている、ということに気付いていないw
書斎よぉ。
「書斎は荒らしでは無い」と言いたいのなら、きちんと削除依頼を出してこいよ。
書斎魔神名義で。
31:名無しのオプ
08/10/12 15:18:25 UbnutB7w
30についてはこちら↓
スレリンク(mog2板:257番)
32: ◆XjFtIkbasQ
08/10/14 00:07:09 LvZZ/zuC
ジェフリー・ディーヴァー『魔術師』(文藝春秋社、2004)【8.5点】
ライム・ファミリーと連続殺人犯“魔術師”との対決もの。
名探偵vs怪盗(殺人犯だけど)みたいなワクワクする対決を描きつつ、
科学捜査+どんでん返しという作者の本領を発揮する構成はさすが。
本作の「物語」と「どんでん返し」とのバランスのよさを解説の法月は評価しているが、
個人的には多少破綻してもいいから派手に驚かせて欲しかったのが正直なところ。
一番の「オドロキ」は、ハードカバーで買ったのに今月文庫化されていたということ。
33:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/15 00:40:35 ndfR72XB
「ちがった空」ギャビン・ライアル(早川書房)
アテネを拠点に飛び回っている輸送機のパイロット、ジャックは
かつての戦友ケンの操縦する飛行機が行方不明になったことを受けて、
ケンの後釜としてインドの大富豪に雇われる。彼は何かを捜すため
この地にやって来ているようなのだ。ジャックは大いなる危険を
感じつつ消えた財宝を巡るゴタゴタに巻き込まれてゆく。
デビュー作。ライアルは3冊目だが、これは今一つ入り込めなかった。
機械類に興味は無いのでその辺りは評価不能だが、キャラクターの
描写が浅く、読んでいて物足りなかった。
ただ、主人公と悪役との駆け引きの部分は割と面白く読めた。
こういう綱渡りの展開は萌えるから好き。
34:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/17 20:00:32 03ej17UB
「優しい殺し屋」ビル・フィッチュー(徳間書店)
害虫駆除をしているボブ・ディランは会社が殺虫剤を用い続けることに
反発し辞職した。自宅で養殖している多数のキラー・バグを使って
独立しようと宣伝活動をするボブだったが、それを殺し屋の比喩と
勘違いした男から依頼が舞い込んで来て、更に標的が都合良く
死んじゃったからさあ大変! ボブはとんでもない争いに
巻き込まれることに―。
素人がプロに挑むというコンセプトは割とありがちですが、
本作が変わっているのは、周りが素人と認識していない点と、
殺し屋ランキング1~6位の連中が次々に襲って来る点です。
そんな緊迫感アリアリの筈のストーリーの随所に主人公の害虫狂いや
害虫トリビアが混ざって、かなり独特な作品になっています。
但し、キャラクターの描写に不満があります。主人公は十分に
立っているのですが、敵方の殺し屋連中がイマイチです。登場場面が
少ないし、それぞれタイプが異なるのにそれを描けていません。
「なめくじに聞いてみろ」を挙げるまでもなく殺し方は大事なんですが。
映画化決定らしいが例によって音沙汰ないようで……。
35:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/10/17 21:16:01 03ej17UB
「罰金」ディック・フランシス(早川書房)
競馬記者ジェイムズはある時泥酔した先輩記者バートから
「魂を売るな」という忠告を受ける。その直後バートはビルから
転落死を遂げた。彼が脅迫されていたのではないかと疑うジェイムズは、
バートが取り上げた馬がレース直前で出走を取り止めるケースが
多くあったことに気付く。
7冊目。今まで「興奮」を超えるものが無くて困っていたが、
これは中々イイ線行ってると思う。というのも、主人公がかなり
悲惨な境遇の持ち主で、しかもそれが作中でサスペンスを構成している
からである。割かし単純な事件の背景よりもむしろ見所はこの
主人公を中心とした人間ドラマにあると思う。
暖かくも切ないラストが印象深い。
36:名無しのオプ
08/10/18 14:24:52 2aXHIXwE
読後感の容量潰し荒らしがますますひどくなっているな。
前スレの荒らし行為をみんな忘れてないぞ。いい加減にしろ。
37:名無しのオプ
08/10/18 15:47:27 jOlMEXSH
>>36
別にいいじゃん。
おまえ、カースレで、"test" とか必死に書き込んでたよなwww
38:名無しのオプ
08/10/18 15:48:13 fUwKfrrm
そっちのが容量つぶしだな
39:名無しのオプ
08/10/18 21:50:14 Aqe0+zu0
読後感氏は、コテハンで感想を述べてるだけで、
荒らしでも何でもないぞ、
読みましたスレで感想を書き込んで何が悪いんだ???
書斎魔神も、感想等書き込みをすること自体は問題ない、
ただ書斎魔神の書き込みは、やたら上から目線で、不快だということだ
だから荒らし扱いされる、なぜみんなから嫌われるのか、よく考えろ。
40:名無しのオプ
08/10/18 21:55:47 DM8/rSV5
自分と違って「嫌われていないコテハン」が妬ましくて妬ましくて
仕方ないんだよ。察してやれよw
41:39
08/10/18 22:45:27 XA9TEZ/U
>>40
察してあげ~るわぁ♪ 哀れな書斎~♪
な~んてなw
42:名無しのオプ
08/10/19 02:38:33 LpBR3O/L
このスレはコテの方専用にしたらいいんじゃない?
名無しさんが気楽に感想を書けるスレがあったらいいのに
43:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/10/19 09:05:51 I5Yh1apz
C・デイリー・キング、鮎川哲也訳「鉄路のオベリスト」を読んだ。
90年代に入り国書刊行会等が本格的に取り組んだ本格を中心とする未訳ミステリの紹介、
既に80年代前半に光文社がカッパノベルスで試みていたわけである。
ただし、作品のセレクトに問題があったせいもあり、企画倒れに終わったという感は否めない。
本作もマエストロ鮎みずからが翻訳を手がけながらも特別に面白い作ではなく、
訳者あとがきにもあるとおり、今ではトンデモと言われても仕方ないような心理学(あとがきによれば
作者はコロンビアでマスター、イェールでドクターを得たインテリ)の薀蓄が
非常にうざいのが難。ただし、平板過ぎる人物描写には問題有りな作者だが、
プールまである豪華な大陸横断鉄道列車を舞台に事件と推理の合間に挿入される風景描写は
トラベル・ミステリの興趣を十分に感じさせ楽しめるものがあり、
また、クライマックスのお約束な関係者一堂を会した名探偵の謎解きは、第一、第二の事件(殺人というワードを使用していない点に留意)共に、それなりにエル風の理詰めな論理展開を試みて
いるのは評価しても良いかモナー。
44:名無しのオプ
08/10/19 10:47:19 RtXu5P63
>>42
読後感の感想文大量投下が一番の原因。
再考を促したいな。
45:名無しのオプ
08/10/19 10:51:32 yT5jLMsf
>>44
>>39、そして容量を言うのなら明らかに馬のほうが多い。
ミステリーでないものを無理矢理ミステリーだと言い張って投下する量も莫大。
お前も読後感氏に嫉妬する暇があるなら本の一冊でも読めよ。
46:名無しのオプ
08/10/19 10:54:59 P6YJ+S5i
削除依頼ひとつ出さないくせに原因だってさw
ほんとにそうおもっているなら削除依頼かけたりすればいいのに
依頼をしないことについてどんな言い訳するか知らんけど、
依頼も自分でできない時点で言いがかり以上のものではないな
47:名無しのオプ
08/10/19 10:56:42 P6YJ+S5i
ちなみに必死に正当化してる書斎の書き込みの方はなんども依頼が出て何度も削除されてるぜ
48:名無しのオプ
08/10/19 11:52:24 +me/1gFT
余計なこと書くのは、自分の書き込みに自信がないからだろうな。
内容では勝負できない書斎の悲しさよ。
49:名無しのオプ
08/10/19 13:52:03 JZY0VI9H
>読後感の感想文大量投下が一番の原因。
これ↑がデタラメであることは、きちんと証明されているよ。
スレリンク(tubo板:146番)
を読んでみればすぐに分かる。
50:名無しのオプ
08/10/19 15:08:35 RtXu5P63
>>49
恣意的に期間を区切って比べたところで客観的な判断材料になりえるはずもない。
書斎叩きのための資料作りといったところか。
51:名無しのオプ
08/10/19 15:10:57 ybW9IKu0
じゃ、あなたの判断材料は?
52:名無しのオプ
08/10/19 15:50:25 sMaNLT+6
匿名で自分をほめるしかないのかねえw
53:名無しのオプ
08/10/19 16:09:11 JZY0VI9H
>恣意的に期間を区切って
期間なんか区切っていないだろ。
「終わりの方の25レスを見てみると」と書かれていることから分かるように、
期間を区切ったのではなく、レス数をきりの良いところで区切っているだけ。
こんなことも分からないのか?
そんなことよりも重要なのは、その25レスの中で比べると、
レス数は読後感が7つで書斎魔神が6つと、読後感が1つ多いだけだが、
レスに書かれた行数は、圧倒的に書斎魔神の方が多い。
つまり、感想文大量投下をしているのは書斎魔神の方であり、
ID:RtXu5P63 はそのことを隠そうとしているのがミエミエ。
54:名無しのオプ
08/10/19 16:13:47 JZY0VI9H
あと、ID:RtXu5P63 は最悪板のスレのレスを一部改竄して横溝スレに貼っている荒らし。
(横溝スレの34、35、44。)
55:名無しのオプ
08/10/20 02:01:20 ciskbhih
自演とわかりきって相手してるヤツが一番うざい
56:ジョー・サージェント
08/10/20 18:29:07 sddxfAop
>>55
書斎アンチが、クズであることを証明してくれたね。
57:名無しのオプ
08/10/20 21:50:26 AYvcPbZb
ハイハイ
58:あぼーん
あぼーん
あぼーん
59:名無しのオプ
08/10/24 21:46:33 y/n6owf9
>>56
自演は認めるんだねw
60:名無しのオプ
08/10/25 11:22:03 2kG/fO+P
デス・コレクターズ読んだ
前作未読
僕一人称でトラウマ刑事が謎多い事件を追う。比較的好みの作品だと思ったが
なぜかとにかく文章のリズムというかなんというか、とにかく合わない。
読んでても面白くない。筋立てやキャラもわるくないし、しっかりしてし嫌いな話
じゃないのに、読んでる間全然楽しくなかった。
評判も良い作品なのに何故自分に合わないのか理由がわからない。
そういうのってない?
61:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/10/25 20:50:27 agnQlPFS
テリイ・サザーン「怪船マジック・クリスチャン号」を読んだ。
ミステリちゅーか、ブラック・ユーモアちゅーか、
プラクティカル・ジョーク(本邦作品では大乱歩の「ペテン師と空気男」が想起される)、
それも金に糸目をつけない悪ふざけという感がある作。
「イージーライダー」も著したアメリカ人作家の手になるものだが、モンティパイソン・シリーズ
とか好きな向きにはウケそうなテーストの作である。
なお、表題作は連作の中編であり、長編と呼べるボリュームを持つのは併録された
「博士の奇妙な冒険」であるが、本作は終盤に来てやっとミステリ的展開(殺人に関する偽装工作)
となるものの、即座にエンディング。なんとも評価に困る「奇妙な味」の作ではある。
62:名無しのオプ
08/10/25 21:14:10 DZU3DlQ9
書斎さんの論考はためになるなあ。
63:名無しのオプ
08/10/26 00:31:10 HFzENmBO
>>43
>「鉄路のオベリスト」
EQで連載してましたね
64:名無しのオプ
08/10/26 01:55:49 pRKotqjA
65:名無しのオプ
08/10/26 04:34:09 Yqe6Gnnd
お前らそんなに二人の感想が気に入らないなら自分らで代わりの感想を投稿しろ
その方がこのスレも活性化する
競争してお互い負けないような感想文を書けばいい
66:名無しのオプ
08/10/26 10:09:51 nlNmqDE4
キャロル・クレモー『アリアドネの糸』(ポケミス)
大学で開かれる、エーゲ文明黄金展の展示品が盗まれ、失踪した女学生アリアドネに疑いがかかる。
彼女の無実を信じる女教授ニールセンが、独自に調査を始めるが……。
英国推理作家協会最優秀新人賞受賞作(1983年)。
謎は女学生の失踪だけだし、主人公の女教授も地味な人物。
そのぶん大学内の人間関係とか、空気とか、他人の家庭のプライバシーに立ち入ったときの違和感とか、
肌ざわりがリアルに書かれている。
神話通りの名前、アリアドネとパイドラの姉妹など、いかにも見立てっぽい要素が前に出てきているが
虚構性やサスペンスで読ませる作品ではなく、話は退屈だった。
何と言うか、マーガレット・ミラーやルース・レンデルからハッタリを抜いたような感じ。
67:名無しのオプ
08/10/26 10:14:02 pQSVeETt
名無しもくだらん感想を書くねえ。
やめとけ。品位を落とすなや。
68:名無しのオプ
08/10/26 10:22:43 ROOFf8Tl
書斎が書き込み続ける限り品位の低下は防げない。
69: ◆XjFtIkbasQ
08/11/03 16:54:55 hH4fmeFV
マイクル・コナリー『ザ・ポエット』(上下、扶桑社ミステリー、1997)【8点】
新聞記者マカヴォイを主人公とするノン・シリーズ。
猟奇的殺人+殺人課刑事の自殺の謎を主人公がFBIと協力して追う展開。
ポオの詩の一節を現場に残していくという殺人犯というあおり文句の割には、
正直上巻はやや退屈なんだけど、下巻はおもしろかった。
ちょっと伏線があからさま過ぎた気もするけど。
70:名無しのオプ
08/11/05 22:53:54 AXGBYQbW
ローレンス・ブロックの短編を読んでるんだが、どれもオチが切れてて面白いな。
星新一やO・ヘンリーの作品の中の、良作ばかりを集めたような感じ。
この人がエッセイで、短編は売れない、商売にならないって言ってるのが、
皮肉なもんだなと思う。
明らかに短編の才能があるし、本人も短編書くのは嫌いじゃないんだろうが、
それを否定せざるえない市場の状況が・・・
71:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/11/08 12:45:53 AhGwAmk4
イーヴリン・ウォー「囁きの霊園」を読んだ。
最近、俺が読み狂っている(とは言うてもマジで狂っているわけではないが(w )
早川のブラックユーモア選集の1冊。
「ブライズヘッドふたたび」で著名な作者の文庫化もされていない作だが、
ヴィアンやトポール等の作よりも、ストレートにこれぞブラックユーモアという展開と味わいを
持つ現代にも通じるなかなか面白い作である。
巨大ビジネス化した葬祭業、脇で登場するペット葬祭業等、現代では珍しくはないものの、
日本での翻訳当時は、正にブラックユーモアそのものだったのではないだろうか。
また、挿入される身の上相談コーナー(ヒロインの運命を左右する結果となる)の内実も面白い。
ただし、重要なテーマであると思われるカリフォルニアという母国とは対照的なカラーの土地柄
で暮らす英国人たちの心情や主人公の詩人が行う名詩の剽窃ネタの面白さは、
正直言うて、多くの日本人が翻訳で読んでもわからない世界と言わざるを得ない。
他にサイコ・ミステリ風の「ラヴデイ氏のささやかな外出」(悲劇に見舞われるのは
A嬢だとばかり思うていた)、予想外のオチを迎える「べラ・フリース、パーティを催す」
(これもヒロインの人柄ゆえにそして誰もいないかと思うていると・・・)の2短篇と
ウォーの人と作品を紹介した文献を収録。
72:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/11 18:21:39 asgMQrfl
「アトラスの使徒 上・下」サム・ボーン(ヴィレッジブックス)
NYタイムズの新人記者ウィルが初めて扱った殺人事件は
よくある類のものに思えた。しかし、野心旺盛なウィルが
事件を掘り下げていった結果、被害者の意外な一面が明らかになる。
意気盛んに取材に励むウィルだったが、そんな時、妻ベスが何者かに
誘拐されてしまう。犯人と思われる人物から断続的に届くメールに
隠された秘密とは何か?
これは壮大なホラ話である。後半はこんなことない。あり得ないと
思いながらページをめくった。バカミスというか、呆れる人もいるかも。
しかしながら、陳腐な表現だが、謎が謎を呼び、全体像が
浮かび上がりそうで浮かび上がらないというもどかしさで引っ張る
リーダビリティがあるのは確か。ただ帯にあるように
「『ダ・ヴィンチ・コード』より面白い」かは未読なんで判らないけど。
それからプロット上1つ損してるなと思ったのは、(メル欄)。
これは(メル欄2)という風にするべきだったと思う。そうすれば、
実は(メル欄3)というミスリードになったのに。
最後に2点。
・ブラックベリーは非通知に返信出来るのか?
・原書のハードカバー版の結末が違ってるんならあとがきに書けよ。皆が
お前みたいに気軽に原書に向かえるわけじゃないんだぞ。でなきゃ
本書を手に取ってないっつうんだよ。
73:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/11 18:23:37 asgMQrfl
「犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き」ジェラルド・カーシュ(角川書店)
「私」が大犯罪者だったという男の回想を聞く形の連作短編集。
これもホラ話であるが、壮大ではなく小手先のもの。だがそれがいい。
晶文社の2冊に収録された分を除いて、ベストは
「カームジンとガスメーター」。タダでガスを使うという
裏技の面白さとその簡易さが○。こんなことがやれたなんて
いい時代だったんだなぁ。他の話は大抵カームジンでなくては
無理そうなものや、共犯者が必要なものばかりだったので。ま、本来は
そういうカームジンのキャラクターを評価するべきなんだろうけど……。
気になったのが「カームジンの出版業」。これはどう解釈すべきか?
作者自身の皮肉交じりの疑問とみるべき?
後、表紙のじいさんはイメージと合わんかったなぁ。
74:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/12 20:11:34 wn9d3o/G
「垂直の戦場」ジョセフ・ガーバー(徳間書店)
40代にして優良企業の副社長という成功者デイヴィッドはその朝も
いつも通りに出勤した。オフィスでシャワーを浴び、コーヒーを入れ、
スーツに着替える。しかし、部屋に入って来た社長はいきなり
デイヴィッドに銃口を向けた! そして突如現れた謎の殺し屋たち!
更に友も妻も息子も、何故か周囲が皆デイヴィッドの敵に回り始める!
自分の身に一体何が起こっているのか? 訳の解らぬままたった一人で
得体の知れぬ敵に立ち向かう羽目になってしまったデイヴィッドの
運命は!?
(「巻き込まれ」+「あなたはだあれ?」+「ベトナム帰還兵」)3
みたいな。この粗筋は惹かれるわいな。そんな状況SF無しで
無理やろと思って読み始めた。
主人公が次々に襲って来る危機に刹那的に対処していく様は
中々の読み応え。この辺が映画化権が売れた由縁か。真相も
納得の行くもので、巧いと思った。割かしお薦め。
ただ、この邦題は頂けない。直訳せずに字面を考えるべき。
それから、初期段階と結末違うんならちゃんとそっち教えろよ!
こないだのもそうだが、翻訳家ってのは原書と自国人との橋渡し役だろ?
言わばストローみたいなもんで、それが勝手に弁作ってんじゃねーよ。
何か勘違いしてねーか? そんな意識だから例のがあんなに
遅れたんじゃね。
最後に4つ。
・22ページまで包帯の描写が無いのはおかしい
・130ページのあれは辻妻合わなくない?
・無線機って銃声やら拾わないの?
・カッスラーに筋運び褒められても……お前が敵わないだけだろw
75:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/12 20:13:05 wn9d3o/G
「8(エイト) 上・下」キャサリン・ネヴィル(文藝春秋)
現代のアメリカ。コンピュータープログラマーキャサリンは、
左遷が決まった夜友人の家で占師に奇妙な予言を受ける。その翌年の春、
友人と観に行ったチェスの試合場で見知らぬ男から「今すぐ立ち去れ」と
言われたキャサリンは、その直後に命を狙われ、以後巨大な闘いの渦に
巻き込まれていく。
革命期のフランス。財産を没収されることになったモングラン修道院では
代々伝わる呪いのチェス・セットを守るため、院長が分散させて
修道女達に預け、各地へ送り出した。しかし、その中心メンバーである
2人の修道女は潜入したパリで血生臭い狂気に襲われることになる。
最近ホラ話よく読むな。いや、面白かったよ。こんな作家がいたのか。
現代と過去のパートが交互に進行するんだけど、フランス革命の頃の話は
歴史小説としても良い気がした。勿論、かなり創作入ってるけど。
ただ、ヒロインの行動に唐突で内面描写が不足気味の面が感じられたり、
また、中盤から「こんなにハンサムだなんて」とか少々雲行きが怪しく
なってきて、その後ナポレオンが凄い美男子という記述で
「やっちまったなァ!」こやつも所詮女であったかと思ったが
ま、その辺を除くと、楽しめる。
終盤どんどんまとまっていく展開は読んでいて心地よい。少々まとまり過ぎ
な気もするがそれはホラ話ってことで……。あっ あっ みたいな感じの
サプライズも○。長いけど内容は濃いと思う。
しかし、パリ・コミューンててっきり普仏戦争後に出来たのかと思ってた。
76:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/13 17:03:32 srPso2+Y
「女医スコーフィールドの診断」ヘンリー・デンカー(文藝春秋)
美貌の神経科医ジーンは抜群の実力を持っていたにも関わらず、
性差別の壁や過去の経験等から部長昇進を阻まれていた。そんな時、
彼女は発作を起こしての運ばれてきた幼児の診察に当たって
ある疑惑を覚えるのだが、それが彼女の仕事も私生活さえも揺るがす
事態に発展していく。
社会派医療ドラマって感じ? 何か地味なんだよな。扱う問題が
小さいというか少ないというか……もっと内容を詰めて欲しかった。
まるで同時期の日本の小説みたい。で、ラストは(これまでの
流れからすると)甘過ぎ。つかこの女、もうちょっと処世術学べよ。
雌伏してゲットしたら豹変すれば良いのに。
後、子供同士の交流が案外ドライで驚いた。
77:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/13 17:04:22 srPso2+Y
「ロス・アラモス 運命の閃光 上・下」ジョゼフ・キャノン(早川書房)
第二次世界大戦末期。世界中の科学者達を集めて原子爆弾の開発を
進めていたロス・アラモスの秘密基地の保安部員が下半身を露出した
状態で死んでいるのを発見される。極秘裡に処理したい軍部は
新聞記者上がりの情報部員コノリーを派遣する。住人を総ざらいして
犯人を探すコノリーだったが、彼自身もまた監視の対象とされ、
窮屈な立場での捜査を余儀なくされる。そんな中コノリーは
美しい人妻と出会い心を動かされる―。
多感な時期にナンガサクに住んでも何色にも染まらなかったことが
誇りです。
いやー長かった。どうしようかと思ったよ。あとがきにもあるけど、
本筋に関係無さそうな場面が多くて……。訳者曰くその辺りこそ肝で、
デイトンも関心した部分なんだろうけど、やっぱりミステリーしたい
自分には些か苦痛だった。
捜査が中々進まなくて(不倫はスムーズに進行するんだがw)
苛々させられるけど、上巻の終りでやっとこさ一波乱来ていよいよ
話が動き出す。下巻に入ってからは割と展開が早くなって来る印象。
ああ、あれがここで……とか解ってくる。ただ、
「だから上巻は我慢して読んでね(^_-)―☆」とは言えない。
何か推理の筋道が曖昧だし……別に読まんで良かばい。
78:名無しのオプ
08/11/13 20:37:23 4y+pUuhu
>>77
ネルソン・デミルの作品の感想かと思った。
79:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/11/15 13:05:27 YhP+TS35
サマセット・モーム「アシェンデン 英国秘密情報部員の手記」を読んだ。
新潮文庫(2分冊)以来、久々の再読。
言わずと知れたエスピオナージの古典中の古典であるが、
俺自身がサマセット作品(長篇)があまり好きではない(短篇は「雨」等面白いものが多いとは
思うが)ということもあってか、初読にも退屈であったが、今回も同様な感があった。
まあ、権威や歴史的意義に拘泥しなければ、現代ではエンタメとしては文句無しの「逝ってよし!」
だわな。これはサマセットのメーンな意図がスパイを主人公にした人間ドラマであったとしても
同様、俺も経験があるが、人間ドラマは異常時よりも平常時を設定した場合の方が難しいのである
ゆえに、
第1次世界大戦を背景にしたそれなりにスリリングな設定なのだが、
とにかくプロスパイならぬアマスパイそのものの作家(勿論、サマセット自身がモデルというか
体験談含みの作)が、諜報活動が趣味的、娯楽的に過ぎスリルの欠片も感じさせないのである。
連作小説の型を取りながらも、ストーリー的に章割りの役目しか果たしていない部分も多く、
この構成の選択そのものも問題視したいところである。
上司のR大佐は当然、イアンの007シリーズのMの元ネタなんやろね。
でも、この原典にはマネー・ペニーは不存在という寂しさ。
80:名無しのオプ
08/11/15 16:55:42 2t0VUUii
読後感のスレ容量潰ぶし荒らしがひどいことになっているね。
コイツこそアクセス禁止にすべきだよ。
81:名無しのオプ
08/11/15 21:30:51 PPnvYKoC
ここのコテの方々、いつも参考にさせていただいてます!
82:名無しのオプ
08/11/15 23:07:13 SUEacNBN
>>77
キャノンの『Alibi』ならハメット賞('06)を獲得したということで
読んだことあるんだが感想は全くいっしょで笑ってしまった。
WW2直後のヴェニスでの安っぽいミステリロマンスに
ホロコースト関連の歴史的詳細・異説を細々書込んだだけって感じで、
あちゃらでの評価の高さが今一つわからんかった。文芸ってレベルでもなさそうだし。
83:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
08/11/16 16:12:50 sYNgHhlQ
リチャード・スターク「汚れた七人」を読んだ。
20年以上のブランクを経て世紀末に復活したシリーズだが、
これは旧シリーズの7作目、もっと会話主体でテンポが良いイメージがあったのだが、
主人公パーカーが極端に無口なせいもあり、間も持たす意味もあるのか、
情景描写、性格描写も詳細で、意外にじっくり読ませる作という感がある。
後にはスーパー・ヒーロー化してまうパーカーだが、この初期作ではまだまだ悪党ぶりを
発揮し、とち狂ってパーカーの命を狙う仲間、情婦を殺し現金を横取りした藤四郎を始末
するまでを一気に読ませる。
終盤の森林でのチェイス、建築中のビル内でのアクションは読ませどころとなっている。
しかし、本作のパーカーは素人に強奪した現金を奪われるは、警察の動きを読み間違えて
仲間を壊滅状態にしてしまうわ等、間抜け過ぎる感がある。
そもそも犯罪のプロ中のプロであるのにもかかわらず、あくまで強奪金に拘り危険(事件担当の
刑事の自宅への訪問までする等)を犯し過ぎるパーカーの態度が最後まで説得力を欠く感が
あるのだ。
内容的には、カレッジ・フットボール・スタジアムからの売上金強奪のプロセスを軽く流さず、
もっと書き込めば非常にスリリングなものとなったであろうことが惜しまれる。
(ちなみに映画化作品ではこの部分に尺を割き、前半の見せ場とし、キャラ的にも
殺される女も主人公(黒人に脚色)の恋人と設定、リベンジ的要素も入れて主人公の追跡に
説得力を持たせている)
84:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/16 17:51:55 AQuJSsWq
「深海のアリバイ マイアミ弁護士ソロモン&ロード」ポール・ルバイン(講談社)
バカンス先でボート事故に遭遇したスティーヴとヴィクトリアは
ボート内で死んでいた男の殺人容疑にかけられた資産家グリフィンの
弁護を担当することになる。常日頃スティーヴの専横を苦々しく思い、
独立を考えていたヴィクトリアは、グリフィンと家族ぐるみの付き合い
だったこともあり、この件では何としても主導権を握ろうとするのだが、
それがきっかけで2人の間がギクシャクしてしまい、更にグリフィンの
イケメン息子の登場で舞い上がるヴィクトリアにスティーヴが
嫉妬して公私共に危機を迎えることに―。
いつ出るかいつ出るかと思っていたら6月に出とったやないかーい!
ひぐち君ちゃんと教えてくれなきゃダメだー。
いやしかし掴みがOK過ぎる。出だしからぐいぐいですよ。
訳者のセレクトも奏功したんだな。
リーガルサスペンスはそんなに好きじゃないけど、これは法廷の場面は
割と少なくて、主役2人のドタバタとかアクションとかがメインだから
問題なく楽しめる。後半ヌーディストクラブに入会させられる
行なんかはやりすぎコージーな気がするけどw。
中心となる事件とは別にそれぞれの親に関する事件の謎解きもあり、
またソロモン法という名称で紹介される一種破天荒な裁判必勝法も面白い。
ただ、ロマンスものとしてみた場合不満点がいくつかある。その辺りで
ちょっとヒロインにムカつくけど、全体としては続きが楽しみな
シリーズだ。
あ、法廷劇そのものには捻りはあまり無いのであしからず。
85:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/16 17:52:52 AQuJSsWq
「無実はさいなむ」アガサ・クリスティ(早川書房)
静かな町にやって来た一人の男。彼がアージル家にもたらした
驚くべき知らせが、2年前の殺人事件の悪夢を再び甦らせることに
なる―。
後期のクリスティはこういう過去の事件を再検証する作品がお気に入り?
殺人犯として獄中死した男が主張していたアリバイが2年後に証明され、
証人の学者が関係者に酷い衝撃を与えたことに責任を感じて捜査に関わる
わけですが、事件の性質上証拠より証言がクローズアップされており、
ダイイングメッセージ(とは違うか)等も出てきます。緻密な推理は
ありませんが、淡々と進行していくストーリーは秋の深更に
マッチしている気もします。
ただ、クリスティにしては話が膨らまず印象が薄いということも
言えますが……。後、186ページの罠は罠になっていないと思います。
その事はほんの数ページ前に皆に知らされていますから。
86:名無しのオプ
08/11/16 18:25:16 K1QqK66L
読後感よ、張り合って荒らすのはやめろや。
所詮レベルが違うし、スレ容量潰し以外の何者でもないんだからな。
87:名無しのオプ
08/11/16 18:33:10 nLInzscc
>>86
スレリンク(mystery板:77番)
>77 名前: 名無しのオプ 投稿日: 2008/11/16(日) 09:13:56 ID:K1QqK66L
>>3. 固定ハンドル(2ch内)に関して
>>叩きについて
>>最悪板以外では全て削除します。
>
>削除されるということは荒らし書き込みだということだね。
書斎支持者は自他共に認める荒らしであることがこれで証明されたなw
88:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/18 18:19:11 tNq4vZFM
「チャイルド44 上・下」トム・ロブ・スミス(新潮社)
スターリン体制下のソ連。保安省の捜査官レオはとあるスキャンダルに
巻き込まれ田舎町に左遷されてしまう。しがない警官としての余生に
絶望しかけていたレオだったが、森の中で惨殺された少女の事件を
扱うことに活きる意味を見出そうとする。密告の危険を抱えつつ
妻と共に捜査に乗り出すのレオに未来はあるのか……。
やっと読めた。初めて粗筋を知った時は「モスクワ、2015年」
(及びその続編)を連想したけど、ひょっとして同じ犯罪実話が下敷き?
閑話休題。犯罪政治愛情等が絡み合って引きの良い読み物になっている。
特に逃げ場の無い社会情勢だからこそ成り立つ人間関係のドラマが
面白かった。気に食わなければ割と簡単に離れられる現代では
本作の様な変化が起きることも稀になっているのではないか。
後、小さな子供の描写が切なくてキュンと来た。ラストの決断も心地良い。
それから勿論ミステリー的な驚きの要素もある。
ただ、ケチもいくつか思い浮かぶ。
まず、前フリが長すぎる。特に序盤の雪合戦と逮捕劇の行は
もっと刈り込めるはず。それから主人公が身の危険も省みず捜査に
これだけ入込むことに対して説得力のある理由が提示されていない
と感じた。この辺が「モスクワ~」と違う所。後、(メル欄)というのは
根拠の無い幻想だと思う。
それにしてもこんな組織で一廉の地位にある人はどうやって
出世し続けられたのやら……。
最後に、あの紅茶俺毎日飲みたい。飲み明かしたい。
89:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/25 18:45:18 lbx6RJ1u
「ウォリス家の殺人」D・M・ディヴァイン(東京創元社)
大学教授モーリスは、幼馴染みの売れっ子作家ジョフリーから彼の館に招待される。
ジョフリーの様子がおかしいと彼の妻ジュリアから聞かされていた
こともあり誘いを受けたモーリスだったが、ジョフリーには
複雑な思いを抱いており、更に彼の息子がジョフリーの娘と婚約していて
それにジュリアが反対しているという込み入った状況の中にいた。
館に着いたモーリスはジョフリーの兄ライオネルがこの地に来ていて
兄弟の確執が起きているらしいと知る。そしてある日、2人は揃って
姿を消した。大量の血を跡に残して……。
創元ディヴァイン・ウォーズ第2弾。相変わらず面白くてサクサク
読み進められる。伏線がガンガン出てきてキッチリ回収されていく
爽快感ったらたまんないね。本来それが当然なんだけど。
「悪魔はすぐそこに」に比べて難易度は高いと思う。
主人公の別れた妻が息子にあることないこと吹き込んで父子の関係が
半ば破綻しているというサイドストーリーも興味深かった。こんガキが。
ただ、「えっ!?」と思ったのは、作中で犯人の正体に気付く
決め手となる手掛りが提示されるタイミング。他の事情を勘案すると
ここで出てくるのは腑に落ちない。
後、223ページの最後の一文は「顔に現れている」では。
しかし、流石のクオリティだ。つくづくブランクが恨めしいよ。
というより見る目の無かったポン助どもがという方が正確か。
こいつらがスルーしたせいで、にわかが得意気に順番決める様な
不愉快な事態になったんだからな、全く。大体こいつも本格古典を
それなりに扱ってきた癖に聞いたこと無かったて有り得ねえよ。
90:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/25 18:47:02 lbx6RJ1u
「亡き妻へのレクイエム」リチャード・ニーリイ(早川書房)
広告代理店の副社長ポールは、ある夜衝動的に決意し、自室の
クロゼットの片隅に長いこと放置していたトランクを開封した。
それは21年前、退役後帰国する彼を待たずに死んでしまった
妻キャシーの思い出が詰まったトランクだった。様々な品を手に取り
過去に思いを馳せていたポールは妻の財布の中に手紙を発見する。
それは彼に宛てたもので、夫が間もなく帰ってくることに対する
喜びに溢れていた。最後に日付を見たポールは衝撃に襲われる。
それは彼女が自殺したとみられていた当日に書かれていたのだ!
妻の死因に疑惑を抱いたポールは独自に調査を開始する。
初ニーリイ。「仮面の情事」は映画で観た。
クリスティがお得意の過去の事件ものですが、不惑過ぎて会社重役という
責任ある立場にいる主人公が過去に拘わるのを周囲の誰も止めず
普通に協力するのがおかしかった。この会社の次期社長人事を巡る
争いも見所の一つ。
真相は、まあ、意外なんだけど自分は驚けなかった。引きが弱かった
のかな?
そうそう、いくつか辻妻が合わない様な箇所があった。
・45ページと46ページの記述が食い違う
91: ◆XjFtIkbasQ
08/11/28 00:30:42 jxMT8jyj
ピーター・ラヴゼイ『マダムタッソーがお待ちかね』
(ハヤカワ・ミステリ文庫、1986)【7点】
ヴィクトリア王朝を舞台としたクリッブ部長刑事物。
写真館の妻が助手の男を毒殺し、殺人を自白。絞首刑の判決を受けるが、
ある日その自白を覆す証拠を示した写真が郵送されてくる・・・女の真意は。
絞首人のパートが当時の死刑と民衆の文化が窺えて面白い。
ただそこそこ愉しめたけど、ミステリとしてどう絡むかという問題となると、
ちょっと物足りない。地味な良作というところ。
92:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/28 16:46:36 JN1PpYQ/
「アパルーサの決闘」ロバート・B・パーカー(早川書房)
横暴な牧場主ブラッグが君臨する町アパルーサに新たな保安官が
やって来た。男の名はヴァージル・コール。各地で名を馳せた
ガンマンであるコールは助手エヴァレットと共に巨悪に立ち向かうのだが、
やがて事態は複雑な色合いを帯びて来る……。
初パーカーが西部劇ものなのは、元々西部小説が読みたかったから
です(強く薦められた逢坂は女主役で「はい、消えたー」)。
どうせ読本を眺めた限りでは現代ものはフェミニストならぬ身には
かなりしんどそうですしね……。
しかし、西部小説ならそういうのは無いだろうと安心して強い男の
ドライな闘いを期待して読み始めました。コールの造型は一見機械の様で
感情に流される面もあり、矛盾を孕んでいる様にも思えましたけど、
これは西部小説の主人公として割とオーソドックスなのかな?
ガンマンという人種の微妙な立ち位置をきっちり描写しようと思ったら
結構大変なんでしょうね。その点侍は身分という枠組みから
アプローチして書けるからまだ楽と言えるかも知れません。
助手のエヴァレットは、コールよりもはっきりした倫理観を持っていて
より人間味が感じられます。この2人の差異がああいうラストに繋がる
のは納得がいきました。
他のキャラクター―悪役、美女(玄・素)―は類型的で、
彼らによって織りなされるストーリー展開も従来の西部劇(欧米の映画)の
それと変わらない印象を受けました。だから次作がどんなストーリーに
なるのか、早く読みたいです。
93:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/11/28 17:12:26 JN1PpYQ/
「反撃」ブライアン・ガーフィールド(早川書房)
善良な弁護士マールの人生は偶々賄賂の受け渡し現場を目撃して
しまったことから暗転する。マールの証言で有罪判決を受けた
大物マフィア・フランクの報復を恐れて名を変えてひっそりと
暮らす日々。そして8年後、出所したフランクは遂にマールの居所を
突き止め、復讐の牙を剥いた!
常に命の危険に晒され、家族の絆も危うくなりつつあるマールは
到頭ある決意を固める。
以前読んだ「ロマノフ家の金塊」は革命後の歴史ものとして良かったが、
今回は所謂素玄対決もの。ランボーでもポアロでもなく、
普通の中年のおっさんが、ホーム・アローンの様に単に機転を利かせて
危機を切り抜けるのではなく、ガチで身体を鍛えて様々な技術を
身につけて敵に立ち向かうという展開。
しかし相手はマフィア。頭を潰せばそれで済むという問題ではないし、
かといって壊滅させるのも現実的に不可能。何より報復感情を
捨てさせなければならないわけで、これは暴力で解決出来る事柄
じゃないぞと思いながら読み進めるわけですが、うーんこういう
展開か……。まあ、納得出来なくもないかな、という印象。
主人公の染まる様で染まらない意志の強さが物語に独自性を持たせている
と言えるかも。同じ作者の「狼よさらば」(映画のみ)と対照的な作品
といった処でしょうか。
94:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/03 16:55:09 046YdUqR
「腕利き泥棒のためのアムステルダム・ガイド」クリス・イーワン(講談社)
ミステリー作家兼泥棒のチャーリーは滞在先のアムステルダムで
突然裏稼業の依頼を受ける。それは2軒の家から小さな人形を盗み出す
ことだった。依頼人の持つ人形と合わせて所謂「三猿」を形成するもの
らしいが……。
仕事に取り掛かるチャーリーだったが、何者かに邪魔をされ、更に
事情を知っているらしいブロンド美女と共に依頼人を訪ねると
彼は自室で殺されていた! 一体誰が? そして猿に隠された秘密とは?
タイトルが洒落てたんで読んでみた。
これ劇画的だね。主人公が蘊蓄垂れながら泥棒する泥棒する話で、
編集者との会話で平然と泥棒の話をしたり、
本来会うのが難しそうな人にスルッと会えたり、
そもそも三猿というアイテムが「マルタの鷹」を意識してるし。
だからそういうノリを楽しめればおk。
しかし、おとぎ話故の甘さも垣間見えるようで、
1、前半にある人物が主人公のためにした行動は、それ以前の行動と
矛盾するはずなのに、誰にも突っ込まれていない。
2、154ページ辺りの記述はアンフェア。
3、最後にお約束的に皆を集めるシーンは本来有り得ないはず。
4、終盤語られる主人公がしたある細工は手順通りだとすると不可能。
など瑕もあり。後、やたらマンセー描写されてたヒロインが
あっさり……なのもマイナスかなw。
シリーズ化されてるみたいで次はパリが舞台。声の出演のみの
女性編集者との絡みなんかは面白かったしまた読むかも。
95:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/03 17:18:20 046YdUqR
「死の連鎖」ポーラ・ゴズリング(早川書房)
は女性大学教授が自宅で射殺されているのが発見され、グランサム警察の
敏腕警部補ストライカーと部下たちは捜査を始めた。そんな時、
部下の一人ピンスキー部長刑事は娘の恋人から相談を持ち掛けられるが
詳しい事情を聞けないまま彼は殺されてしまう。深く悔やむピンスキーは
犯人は通り魔と判断するストライカーと袂を別ち独自に聞き込みを
行うことに。
一方、ストライカーの恋人ケイトは研究室に頻繁に掛って来る
脅迫電話に悩まされていた。
ゲイブリエルシリーズをスルーしてストライカーものとしては
4番目の作品。恋人のインテリ美人、ケイトとはまだ結婚しておらず、
またもや一悶着有りそうな雰囲気の中スタートします。
やっぱりこういう女性と付き合うのは大変なんですねえ……。
あとがきでストライカーは「ほとんど何もしてない」と指摘があり、
そういやそうだなと思ったのですが、今回は部下の刑事たちの捜査に
焦点を当てているようで、それプラス前述の2人の関係の行方は
というのが見所ですね。実際の警察組織ってのはもっと前時代的だ
と思いますけれども、まあコージーの流れを組むらしい
ゴズリングですからこんなもんかなと。
……個人的には、ノン・シリーズものを期待したいのですが。
96:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/06 15:56:32 sXVqK7iK
「本命」ディック・フランシス(早川書房)
超一流騎手のビルが障害レースで転倒し、死んだ。完璧な跳躍
だったのに……。不審に思った親友のアマチュア騎手アランが
問題の柵を調べると、そこには針金が巻き付いていた。ビルは何者かに
殺されたのか!?
アランは警察の協力も請いつつ捜査を始めるのだが……。
デビュー作だそうで。
競馬という共通のテーマを元に何十作も書き続けているフランシスだが、
それは毎回どういう不正を考えるかと(ほぼ)言い換えることも出来よう
(←使ってみたかった)。こないだ読んだ「読本」に収録の短編然り
本作然り。主人公が親友の為に奮闘(孤軍ではないが)し、
かつ恋のレースにも励むという筋書きと合わせて基本的な作品だと思う。
恋敵に対して心穏やかでないながらもフェアたらんとする天晴れな男気や、
巨大な敵に襲われた四面楚歌からどう脱するのかや、終盤に強いられる
厳しい選択で主人公がこの先どうなるのか等が読み処。
最後に疑問点が2つ。
1、76ページの時点で主人公があの疑問を持つのは不自然。
それよりも先にまず思い浮かぶ可能性があるはず。
2、248ページの時点で主人公があんなことされたらその直後の
展開に繋がらないはず。
97:名無しのオプ
08/12/08 23:26:08 +r2iBEZc
現在、「2chが選ぶこのミステリーがすごい!2009」の投票を行っています。
こちらに投票お願いします。
2chが選ぶこのミステリーがすごい!
スレリンク(mystery板:266-番)
【以下のルールを守ってください】
・投票スレの>>1-3は無視してください。
・対象は奥付表記で2007年11月~2008年10月の期間内に発行された広義のミステリー作品。
・6作品以内で順位をつけて投票すること。
・必ずしも6作挙げる必要はなく、1作でも投票可とするが、上記のように順位はつけること。
・1位=10点、2位=9点~6位=5点で集計。
・国内作品と海外作品は別々に投票する。
・各作品に一行以上の総評必須(ネタバレ禁止)
・宝島社の作品は対象内
・投票期間は12月8日~1月20日まで
今年のこのミス、本ミスなどのランキングです。参考にしてください
国内編 スレリンク(mystery板:267-270番)
海外編 スレリンク(mystery板:271-278番)
98:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/09 17:13:11 EfhqmR+L
「ニューヨーク12番街 ブロークン・ハート・クラブ殺人事件」イーサン・ブラック(DHC)
ニューヨークで連続殺人事件が発生。被害者はいずれも女性で
惨たらしく殺されており、現場には必ず「BHC」の3文字が
残されていた。事件を担当することになった由緒正しき資産家の刑事
フートは、相棒と共に犯人を追う。
大富豪のイケメン刑事が主役で美女との濡れ場もたっぷりという
官能ミステリー。
真相には中盤で気付くと思うが、それよりも事件に関連した
主人公と恋人のイザコザで読ませる。
ラストはザマミロ4割はあ?6割って感じかな。続編も読もう。
しかし、(メル欄)は言い訳出来んぞw。
99:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/09 17:29:13 EfhqmR+L
「サーズビイ君奮闘す」ヘンリー・セシル(論創社)
資格取り立ての新米弁護士サーズビイは右も左も判らない法曹界で
戸惑い翻弄されながらも、良き先輩やガールフレンドの助言を得て
頑張るのであった。
最初は乗れずに困った。主人公共々ポカーンとただただ傍観してる様な
感覚だった。でも離婚訴訟の行から徐々に作品世界へ入れる様になった。
で、読み終って思うのは、これは別に成長物語でもなければ
法廷ミステリーでもないなということ。
セシルの作品は「浮ついた世界観」が土台にあってそこから
「奇妙な味の法廷もの」が展開していくというイメージがあって、
本作もそんな感じなんだけども、中心となる事件があるわけでもなく、
鮮やかなどんでん返しがあるわけでもなく、主人公が最初と最後で
然程成長しているとも思えず、主人公の性格も余り好きになれず、
正直読むんじゃ無かったと思った。ただちょっと気になるラスト
だったから続きが知りたくなくもないけど。
俺「メルトン~」も駄目だったんだよなあ……「法廷外裁判」は
傑作だと思うけど。
100:名無しのオプ
08/12/14 02:45:04 Cf99i4gQ
『秘密機関』アガサ・クリスティー(早川書房)
アガサ・クリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』に続く長編二作目にして冒険ミステリーデビュー作でありトミー&タペンスのデビュー作
久しぶりに再会した幼なじみのトミーとタペンスは、青年冒険家商会なる何でも屋的なものをつくった。そして、二人に仕事の依頼が舞い込むが、そのことをきっかけに二人は英国の極秘文書消失事件に巻き込まれてしまう。
トミーとタペンスは地下組織からイギリスを守るため機密文書をめぐる暗闘に身を投じることになった。
クリスティーの冒険もののお約束である、明るく向こう見ずな女主人公、登場人物の軽妙なやり取りと洒落たセリフ回し、明るく愉快な登場人物、多少のご都合主義の全てが揃っている。
ご都合主義な点で、特にイギリス政府が重大な仕事を素人の二人に託すのはどうかな?と思わぬでもないが、それはご愛敬。
常に死と隣り合わせの緊張感のあるスパイスリラーとまではいかないが、組織のボスの正体や機密文書の謎、敵との駆け引き、組織のアジトに侵入調査など冒険ものとして充実している。
後のクリスティーの冒険小説『茶色の服の男』『七つの時計』ほどミステリー的なサプライズはないが著者にしてはめずらしく密室殺人的な謎もあり(といっても簡単なトリックだが)、組織のボスの正体の隠し方などミステリー的にほどよく手の込んでいる。
だが、この本のメインはやはりクリスティーの序文にあるとおり「冒険の楽しみ」である。
クリスティーの冒険ものはやっぱり楽しく、主人公たちが人生楽しそうな人間ばかりである。少年少女のころのようにワクワクしたい方にぜひお勧め。
にしてもクリスティーの書く元気いっぱいの女の子はかわいいなあ
101:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/16 01:18:14 mxaYIvri
「原子力潜水艦、北へ」ジョン・ボール(早川書房)
人気ロック歌手の徴兵拒否から始まったアメリカ国民の
軍備に対する忌避感は陸軍のスキャンダルによって爆発的に増大し、
遂に違憲判決まで引き出してしまう。左派政治家の台頭。軍備の縮小。
そして、その日は突然やって来た。ソ連の奇襲攻撃にアメリカは
なす術もなく降伏し、占領されてしまう。大統領は身を隠す直前、
ある計画を立ち上げる。アメリカ最後の希望を背負って立ち上がった
愛国者たちの闘いが始まる!
面白かった。これは日本の未来だね。そう遠くない。アメリカじゃ
絵空事だけど、軍備そのものを忌避する特殊な左翼がのさばる日本じゃ
普通に有り得そうで怖い。
ストーリーはレジスタンスが侵略者に立ち向かうというものだけど、
この作者が偉いのは「アメリカの正義」をごり押ししない点。
ソ連側にも話の解る人物として描かれているキャラクターが複数いるし、
そういう人物のセリフを通して第2次世界大戦における
アメリカの欺瞞を指弾させている。そして主人公もそれに反論出来ない。
更に事態を悪化させた反戦政治家にも愛国心を認めている。
これらのことに一々頷きながら読み進めていくと、あらすじからは
予想出来ないラストを迎えるのだが、そこには単なるご都合主義とは
違う説得力がある。
ただ惜しむらくはタイトルが限定的なイメージを与えてしまうことと、
ソ連によって征服される過程がすっ飛ばされていることだが……。
総合的にはお薦め。
102:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/16 01:45:21 mxaYIvri
「レゾリューションの対決」ロバート・B・パーカー(早川書房)
さすらいのガンマン、エヴェレットが辿り着いたのは小さな田舎町だった。
有力者エイモスに用心棒として雇われたエヴェレットは
住民の信用を得るが、エイモスは強引なやり口で町全体を
支配しようとする。やがてかつての相棒ヴァージルもこの町を訪れ、
2人はエイモスの野望を阻むために立ち上がる!
2作目をどう作ってくるのかと思ったら、ああ、普通に作れるんだね。
短い会話が多くてサクサク読んだ。でも……ぶっちゃけ飽きてきたかもw。
主役2人(特にヴァージル)のキャラクターがイマイチピンと来ない。
何だかんだ言ってても最後に物を言うのは拳銃だし、事実そうなる
わけで……。だったらつべこべぬかしてないでさっさと撃てや
と言いたくなる。
道理や哲学にこだわる様で結局感情の赴くままに行動するヴァージルも
それに雷同するばかりのエヴェレットも好きになれないし、
そういう性格にしては不自然な程クールに描かれているせいで
人間味を感じない。
つか、今までもこんなこと繰り返してたんならこいつらとっくに
賞金首になってると思うんだが……。
でも3作目が出たら……読み易いから読んじゃうと思うw。
他に西部小説無いし……。
103:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
08/12/17 20:06:29 SKF8rKig
「ウィーヴワールド 上・下」クライヴ・バーカー(集英社)
リヴァプールに住んでいる若者キャルは逃げた鳩を追いかけて
辿り着いた屋敷で不思議なものを目撃する。
その体験が忘れられないキャルは数日後、再び屋敷を訪れるが、
そこで恐るべき敵と、そして運命の美少女スザンナに出会う。
キャルとスザンナは敵に追われながら、大いなる秘密を探り、そして
守り抜こうとするのだが。謎の絨毯に隠された“フーガ”とは?
初バーカー。長い。後半飽きが来た。
思うに、世界観とかの設定が雑かなー、と。読んでると
「結局、人間のみで良くね?」と思う瞬間が来るのよ。
普通のものと違うものを描くなら、大いに違えて貰わないとね。
加えて今はラノベ、漫画、アニメ等で多くのバリエーションが
産み出されているから真新しさも無いし。そこは20年の重みだぁね。
あと登場人物紹介でヒロインが処女となってるけど、誤り。
漫画だったら休載もんだぞw。ちなみに貞操観念で言えば、敵の女の方が
保守的なのがちょっと面白い。
最後に細かいけど、45ページで唐突に「壁」という言葉が出てくるが、
当該シーンに壁は無い。勢いで指が滑ったか?
104:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/02 00:01:50 Muk40sWC
ヘンリー・ウェイド「議会に死体」を読んだ。
昨年度の「このミス」等でもそこそこの評価を受けた作だが、
謎解きも淡白でつまらん、文句無しの逝ってよし作品であった。
殺人計画がダブる偶然性に、これまた偶然の目撃者が絡むという萎える真相に加え、
森英俊(早大政経卒)氏が、「フィニッシング・ストローク」と評したダイイング・メッセージねた
も小ねたに過ぎないという感がある。
土地開発に絡む議員汚職というエレメントは現代にも通じるものがあり、
この作者のキャリアから来る社会派志向は致し方ないものがあるとはしても、
怪奇探偵小説やファースの装飾がなく、この手の傾向で謎解きを読まされるのはきついという感
がある。
105:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/02 22:36:32 eX0ttsy3
コナン・ドイル「陸の海賊」を読んだ。
サー・アーサー・コレクション第4弾であり、表題作他10編を収録。
第4弾ともなるとさすがに「サー・アーサーってこんなのも書くのかお」といった感じの
異色作も多く収録されておる。
例によって、大好評な全話講評逝ってみよう!!
・「クロックスリーの王者」
貧乏医学生が学費稼ぎのためリングに賭ける。
面白いが今読むと辛気臭い感もあるシャーロックもののサー・アーサーが
こんな痛快ボクシング小説を書いていたとは意外だ。
・「バリモア公の失脚」
「よく見ればわかるだろうが」と突っ込みを入れたくもなるが、
洒落たボクシングねたのトリック小説として楽しめる。
・「ブローカスの暴れ者」
これもボクシング小説と見せて、グロな怪談への切り換えが見事な一編。
短い中に起承転結が綺麗に決まった短篇小説として非常に良く出来た作かと思う。
・「ファルコンブリッジ公」
オチと主人公の締めの台詞が効いているボクシング小説であるな。
・「狐の王」
解説にはバスカヴィルを連想させるとあるが、怪犬の登場以外は特に共通項を感じない。
近年、英国内でも批判が高まっている狐狩りをねたにした作だけにどうも好感を持ち難い作では
ある。
106:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/02 22:37:20 eX0ttsy3
・「スペディグの魔球」
日本では殆ど知られていないクリケットねたゆえ、エンタメとして日本の読者に提供するのは無理
があったようである。
思い切って野球ねたに翻案したら面白い作に仕上がったと思われ。
・「准将の結婚」
サー・アーサーファンにはおなじみジェラールものの一編。
獰猛なブルと准将の一騎打ちかと思わせて、牛の角に突き上げられて恋人の部屋へ窓から
ダイブする間抜けぶり。相変わらず憎めない活躍ぶりや。
・「シャーキー船長行状記」
海賊シャーキーを主人公とした3作を収録。
奸智に長けた極悪非道な海賊が堂々の主人公というだけで十分に異色作。
巻末の解説によれば、シャーキーもの(?)にはもう1作あるとのこと。
うーん、読んでみたいものである。
ボリューム、印象度等からみると、次に収録されている「陸の海賊」(面白いタイトルとは思うが)
よりも本シリーズを表題作にした方がベストだったと思われ。
・「陸の海賊」
これはシャーキーものとは異なる義賊もの風な一編。
怪盗ルパンならぬルパン三世あたりを喜んで見ているような連中にもウケるような明解さと
洒落た英国短篇小説風味を兼ね備えた作と言い得る。
107:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/03 03:47:19 fRqVBOtt
「荒野のホームズ」スティーヴ・ホッケンスミス(早川書房)
偶々手に入れた雑誌に載っていたホームズ譚に魅了されたカウボーイ、
オールド・レッドと弟の俺ビッグ・レッドの兄弟は、雇われた牧場で
奇妙な殺人事件に遭遇する。周囲がいい加減に処理しようとする中、
ホームズを尊敬するオールド・レッドは推理によって真相を突き止めようと立ち上がるが……。
普通に本格として面白い。西部劇ぽさもちゃんと絡めてある。
主人公達がパーカーのみたいに強すぎないのも良い。
ただ、ホームズ・パスティーシュとしての評価はノーロキアンなのでパス。
個人的には(メル欄)方が良かったかも?
西部劇とミステリーてのは、意外と合う分野だと思うわ。
「テキサスの五人の仲間」とか「暴行」とか。未見だが
「必殺の一弾」や「六番目の男」もミステリー味があるらしいし。
西部劇は今国内で中々読めないから貴重なこのシリーズ。
続編や短編集もどんどん出そうぜ早川。
108:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/03 11:57:07 r1PH0/44
「クルンバーの謎 ドイル傑作集3」を読んだ。
表題作他4作を収録。恒例となった大好評な全話講評逝ってみよう!!
・「競売ナンバー二四九」
サーアーサー版「恐怖のミイラ」とでも称すべき作か。
ベタな怪奇小説の展開の後、終盤は一転、アクティヴな化物退治談へと転じるのが
いかにもホームズ談やチャレンジャーもののサー・アーサーらしい。
・「トトの指輪」
20頁強の短い作だが、H・R・ハガードなら長篇で書きそうな古代エジプトから始まる不死を巡る
怪奇ロマン。
深夜のルーヴル美術館という恐怖を描く最適な舞台設定ではあるが、古代ロマンの印象度の方
が強い作であり、クールな医学者らしい古代考証へのシニカルな視点も感じさせるのが面白い。
・「血の石の秘儀」
無記名で雑誌掲載され近年発掘された(解説より)お宝作品ではあるが、出来は良くない。
古代ケルトの宗教を巡る他愛もない冒険談(この手の作としては主人公が女性というのが
異色とはいえるが)という感あり。
・「茶色い手」
タイトルからしてコテコテな怪奇小説、ストーリーも謎のインド人絡みのゴーストストーリーなのだが、
陰惨な感じは薄く、相続秘話という明るいイメージの作である。
主人公は医師(多忙ながら富に恵まれないのが若き日のサー・アーサー自身を投影している
ようだ)であり、死人の左右の手を取り違えるという失敗も犯す(笑える)ものの、
非常にアクティヴなせいかと思われ。
・「クルンバーの謎」
収録作品中で最大のボリュームであり、かつ、過去に単独で文庫化されていたこともあってか、
表題作となったのであろうが、先が読める展開(神秘的なインド人僧の登場による因果応報的
展開)が萎える感がある。今回は翻訳された補遺にサー・アーサーの心霊学への深い耽溺ぶりを
覗わせる点が興味深い程度の作かと思う。
109:名無しのオプ
09/01/03 20:50:47 3Yw7aZr6
「サイモン・アークの事件簿1」エドワード・D・ホック(創元推理文庫)
2000年生きた男が、探偵役の短編集。
オカルトを扱っているが、ホックなので、あまりホラー風味は強くない。
2000年生きていることが、あまり推理に生かされていない。
犯人の意外性にこだわっているところは、好感が持てた。
サム・ホーソーンの事件簿が好きなヒトにはお勧め。
110:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/03 23:38:15 lVjuHjvF
グラディス・ミッチェル「ウォンドルズ・パーヴァの謎」を読んだ。
首無し死体あり、肉親間の軋轢あり、オカルト探偵あり等と来れば、
横溝正史的どろどろの世界を想起、期待してまうのだが、
長年学校の先生もやっていた作者らしく少年(15歳)少女(20歳の設定だが書かれている
イメージは完全に元気少女)が活躍する明朗なジュブナイル風の雰囲気である。
この手の作風を好む者にはOKだろうが、作品としての重厚さを欠く感は否めないかと思う。
内容的には犯行現場におけるファースの如き偶然性の連続には萎えるものがあるが、
結末=最終的謎解きは、サイコロの振り出しに戻る感があり、遵法精神をスルーする姿勢は
アント二イ風でもあり、まずまず良しか。
111:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/04 20:25:53 /u0hGB8P
マイケル・イネス「霧と雪」を読んだ。
完全ネタばれしている作なのであるが、
ネタばれしているのが「わからない」という点がミソか。
どことなく大乱歩の習作「火縄銃」を想起させる作でもある。
ただし、このネタはシャープに短篇で書いた方が活きたかと思う。
文学薀蓄を散りばめ、多彩な登場人物が跋扈する展開が実にうざく読み難いものがあり、
これを読まされるとアガサならもっ巧く書くのにという感を拭い切れない。
(ただし、ネタはジョン風)
勿論、オクスフォードのフェローにまでなった作者ゆえ、単なるトリックに頼った読み捨てミステリを
著す気も無かったであろうが、本邦におけるユーザーに関してはミスオタしか想定し得ない点を
考慮すれば、本作のようなものこそ謎解きの興趣を活かすことを主眼にした抄訳、翻案等を意図
してもOKだったのではないか。
完訳で楽しめと言われても無理が多い作かと思う。
112:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/08 00:34:24 lGpA9kT+
「八一三号車室にて」アーサー・ポージス(論創社)
ポージスの短編集が遂に出た! とかニワカ丸出しの事は言わないが、
とにかく目出度いのは確か。
ミステリ編とパズラー編に分かれており、前者は倒叙ものや
シチュエーションに力点を置いたサスペンスの他、SFも含んでいる。
こちらのベストは「犬と頭は使いよう」。遺憾ながらSFである。
遺産を手に入れるため必死に犬を飼い続ける男の話。
余詰に余念のない弁護士が好印象。
次点は「冷たい妻」。犯人の工作と失敗が明確で短編として良い切れ味。
他に掌編「ひとり遊び」も心に残った。
後者では「静かなる死」がベストかな。ある一家が一晩で全員
謎の死を遂げるという話で、真相に驚いた。バカミスと言えるかも。
次点は「誕生日の殺人」。悪意あるパロディだが巧いまとめ方だと思う。
他にはバカトリックが炸裂している「賭け」や、アリバイ崩しの
「消えた60マイル」、某国内有名短編とネタが被る(こっちが後)
「横断不可能な湾」等が目に止まった。
こういう短編作家の作品をまとめるのはとても良い事なので
どんどんやって欲しい。
113:読後感
09/01/08 01:13:48 lGpA9kT+
「パニック!」ジェフ・アボット(ヴィレッジブックス)
新進の映画監督エヴァンの元に突如掛ってきた母からの帰郷を促す電話。
会わないと事情を話せないという切羽詰まった様子に急ぎ帰った
エヴァンだったが、そこに待っていたのは変わり果てた母の姿だった。
悲しむ暇もなく謎の二人組に捕まったエヴァンだったが、
その後現れた第3の男に救出される。自分の周りで一体何が
起こっているのか?
エヴァンの決死行が始まった!
図書館シリーズは長らくツンデル癖に新作をすぐに読んだのは、
こういう巻き込まれ型が大好きだからです! と言おうとして、はて、
主人公が事件に対して全くの門外漢でない場合は巻き込まれ型とは
呼ばないのではという疑問に突き当たりました。
ならスピード感のあるコージー? ま、いいや。そういうのってことで。
いや、面白かったです! 500後半と厚いがダレることなく読ませます。
この話の広がり具合とスピード感の保たせ具合は凄いと思いました。
類型的との批判はあるかも知れませんが、そういうジャンルなので
それを楽しめる人にだけお薦めします。
114:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/08 01:35:03 lGpA9kT+
「殺意に招かれた夜」イーサン・ブラック(ヴィレッジブックス)
NYの富豪刑事フートが今回担当することになったのは
男性の惨殺事件だった。死体はメッタ刺しにされ、局部が
切り取られていた。フート達の捜査にも関わらず殺人は続いていき、
やがて事件にはフートのプライベートにも繋がりを見せてくる。
現場に必ず残されるメッセージが持つ意味とは?
シリーズ2作目。あのラストだから今度は……と期待半分不安半分で
こわごわ読んだが、ゴルァ! 何だよこれ。もうね、アフォかと。馬鹿かと。
こんなフラグの壊し方ってあるか? うぜー。普通あそこでもう決定的だ
と思うてまうやろー! 気をつけなはれや!
えっと、このシリーズは、犯人の描写にかなりの枚数を割くので、
その辺好みが分かれるとこしょうね。ミステリー的には特に見せ場なし。
最後に気に食わない点。
1、前作の流れを改竄してる点
2、数ヶ月間の中に夏冬が含まれてる点 3、貧乳しか出てこない点
4、ラストの展開
マジで絶対無いわ! これ4巻ぐらいまで出てるらしいけど、さて……。
115:名無しのオプ
09/01/09 19:46:46 vOfCkznz
『帽子収集狂事件』ジョン・ディクスン・カー 森英俊訳 集英社文庫
乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10(7)
ロンドンでは帽子の盗難事件が相次ぎ世間を賑わしていた。
そんなロンドンにエドガー・アラン・ポーの未発表原稿を何者かに盗まれてしまったウィリアム・ビットン卿から要請を受けフェル博士がやってくる。
そんな折り、ウィリアム・ビットン卿の甥であり、帽子盗難事件を新聞記者として追っていたフィリップ・ドリスコールの死体がロンドン塔で発見されたという知らせが届く。
不思議なことに、その死体の頭にはウィリアム・ビットン卿の盗まれたシルクハットが被らされていた。
フェル博士もの二作目。ポーの未発表原稿についてはワクテカさせられ、おどろおどろしい霧がかかったロンドン塔の雰囲気には興奮するが、調査と聞き込みが始めると、あまり面白みのない展開が続く。
しかも場所を把握するのに何回もロンドン塔の地図を見返さねばならずめんどくさい。
被害者のマンションの部屋に調査が移されると、スピードアップし事態は一転、また新たな死体が発見され、そして真相が語られることに。その真相と犯人は確かに驚くべきものなんだが、あまりカタルシスを感じなかったな~。
思えば帽子と原稿の秘密をフェル博士によって明かされたときが物語の最高潮だった。
面白かったかと問われれば面白かったと答えるが、乱歩がベスト10に選ぶほど面白かったかと言われるとうーん・・・・
116:名無しのオプ
09/01/09 22:03:33 TNgVKvJP
今は地道な捜査場面とか尋問シーンとかが出てくると
すぐにつまらないという人多いね
そういう人はそもそもミステリ読むのに向いてない気がするが
次々に死体発見シーンが出てこないと興味引かないんだろうか
やたら被害者の多い連続殺人物が好まれるのもそのせいなのかな
117:115
09/01/09 23:46:26 vOfCkznz
いや、『帽子収集狂事件』の地道な調査、聞き込みが面白くなかっただけで、カーの他の作品、例えば『白い僧院の殺人』(別名義だけど)の調査、聞き込みはつまらなくなかった
最近読んだクリスティの『予告殺人』でも苦もなく読めたし
118:名無しのオプ
09/01/10 03:13:25 j4UKD1VZ
>>116みたいなレスする奴はそもそも2ちゃんするのに向いてない
119:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/10 08:42:11 sZVV8+ui
ジョン・ロード&カーター・ディクスン「エレヴェーター殺人事件」を読んだ。
ワンマンな出版社社長が密室状態のエレヴェーター内で殺害される。
ベタで淡白なタイトル(原題は「DROP TO HIS DEATH」とカッコ良さげであり、
章立ても「・・・転落」で統一した四部構成と凝ったものであるにもかかわらず、
この点は邦訳では活かされていない感がある)だが、筆致もそのまま。
カーターらしいオカルティズム(白昼の出版社が舞台の作のためともいえるが)や
ドタバタ劇も無く、淡々と進行してゆく感があるのは、やはり共作ゆえか。
素人探偵による外れな推理もそれなりに面白く(D・G・グリーンの書によれば全てカーターの
アイデアらしい)、真相はホームメイドかお(w
だが、これもまた良し、今ではジョンスレ等でさえ話題に挙がることがない作だが、
当時は次企画(大戦で中止?)の話が出る程、セールス、書評共に好調だった(D・G・グリーン)のはわからぬでもない。
ただし、エンタメとしての語りや装飾の弱さゆえ、やや退屈感を催す部分があるのが残念。
「彼女の話こそ犯罪というものの説明だよ」、結びとなるグラス医師の言だが、
雇用環境が厳しさを増す大不況到来の昨今、痛切なものがあり、
この点(動機)をクローズアップすれば、今なら社会派ミステリとしても成立し得たであろう。
120:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/11 09:09:08 N8V47F8j
コナン・ドイル「勇将ジェラールの回想」を読んだ。
年末・年始の読書に向いたナポレオン戦争時代を背景にした楽しい連作時代小説ゆえ、
久々に再読してみた。
勇将と冠した邦題がシニカルに思えるくらいどじっ子ぶりが際立ち、
正直言うて、本シリーズの実態はユーモア小説である。
ダルタニアン物語や007シリーズと比較する論が見受けられるのには「?」、
ゆえに、ミュンハウゼンのほら男爵との比較は妥当という感あり。
ここまでジェラールを戯画化出来たのは、やはり作者が英国人であり客観的にユーモアの対象に
出来たからであろう。フランスの作家では難しかったのではないか。
では、全話講評逝ってみよう!
第1話 准将が<<陰鬱な城>>へ乗り込んだ顛末
ジェラールが好漢デュロク少尉の助太刀のため仇が潜伏する城に乗り込み男気を見せる。
しかし、真にカッコ良いといえるのはこのエピぐらいなのである。
第2話 准将がアジャクショの殺し屋組員を斬った顛末
剣戟を披露するとはいえ、ナポレオンのコルシカ時代の腐れ縁の後始末の手先にされるだけ
とも言い得るエピ(細かい説明は無し)
第3話 准将が王様をつかんだ顛末
スペインのゲリラに捉えられたうえ、最後は英軍の捕虜となる顛末。
ゲリラの首領を倒すのもバート(准男)こと英軍のラッセルだし、いいとこ無しの主人公。
第4話 王様が准将を捕えた顛末
脱走を試みるもののぐるっと廻って元に戻る間抜けぶり、
しかも脱走そのものが無意味だったというオチまでつく。ここまで来ると間違いなく滑稽談か。
第5話 准将がミルフラール元帥に戦闘をしかけた顛末
ミルフラール元帥こと元イギリス近衛連隊将校アレックシス・モーガン一味の討伐を命じられた
ジェラール、途中で盟友バートの一隊とも合流するのだが、クセモノにして配下にも人気者の
ミルフラールの策にはまってしまう・・・最後の台詞がなんともシニカルや。
今回も主人公は全くと言うていいくらい良いとこ無し。
121:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/11 09:10:07 N8V47F8j
第6話 准将が王国を賭けてゲームをした顛末
ドイツ融和のため疾駆するジェラールだが・・・
「宮殿の窓から指摘した大きな星(ナポレオンの星)が西の空で色が薄く、
霞んでいるのが見られた」
この締めの一文から結果がわかろうか。
第7話 准将が勲章をもらった顛末
レジヨンドヌールはもらえることはもらえるのだが、これって御苦労賃?
第8話 准将に悪魔が誘惑された顛末
これも2話&7話同様にナポレオン直々の指令談。
ナポレオンの密書ねたにして限りなくほら話の匂いが濃厚。
旅団長まで出世する主人公ジェラールだが、自信満々の語りのわりには、
中尉時代の上司(大佐)の評価は「拍車と口髭のことに凝り固まり、女と馬のほかは何も考えない奴・・・」(2話)
5話でまんまとジェラールをはめるミルフラール元帥も「マセナ元帥(ミルフラール討伐を命じた)は
多忙を極めていて、あなたのことなどあまり念頭になさそうですよ」と言われてしまう始末。
その行動を見ても、第6話では女と話し込んでいて4時間も使命を忘れ去っていたり、
第7話では使命を言い訳にしてひとり地下室に逃げ込んだと思われるシーンがあったり等、
ヒーローとして感心しないものが多い感あり。
まあ、、本人もその総大将であるナポレオンから、その勇気ともかく知力は評価されていない点
を残念に思うという語りもあるのだが・・
122:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/12 09:40:24 LWktV3dh
コナン・ドイル「勇将ジェラールの冒険」を読んだ。
「回想」に続くジェラール准将冒険談の完結篇。
全話講評逝ってみよう!!
・「准将が耳をなくした顛末」
ジェラールが男気を見せて耳をなくすというちょいグロいエピ。
だがそれだけとも言えるエピ。
・「准将がサラゴッサ市を占領した顛末」
准将のサラゴッサ市潜入談。このエピは007風でスリリングに一気に読ませる感あり。
・「准将が狐を殺した顛末」
あとがきによれば、ジェラールもの中で作者が一番愛好した作とあるが、
前述したとおり、今読むと動物虐待とも見える狐狩りのネタは後味が悪く好きになれないもの
がある。
・「准将が軍隊を救った顛末」
タイトルは「?」。
軍隊を救う結果となったのはデ・ポンバル(ゲリラの副官)の優れた機転ではないのか?
デュプレシス(ジェラールの同僚)も悲惨過ぎ。
・「准将がイギリスで勝利を収めた顛末」
例によってラストのジェラールの自惚れ過ぎな感はあれど、決闘の顛末を粋に描いた作ではある。
・「准将がミンスクに馬を進めた顛末」
つまり「馬を進めた」だけなのである。最後に剣戟を見せるとはいえ、
全編を通じてはジェラールがどじっ子ぶりを発揮するエピ。
どう見てもロシア娘はジェラールに惚れてはいないように読めるのだが、相変わらずの自惚れぶり
に笑える。
123:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/12 09:41:14 LWktV3dh
・「准将がワーテルローで奮戦した顛末」
「森の居酒屋の話」「九騎のプロシア軍騎兵の話」から成る二部構成。
後者はナポレオンの身代わりとなったジェラールがプロシア騎兵からチェースされる非常に
スリリングなエピに仕上がってはいるが、結末はあっけない。
ナポレオンから「伝令の鬼」とからかい口調で呼ばれ、
事実を告げたのに「おまえはいつも戯けた奴だったな」と一刀両断されてまうジェラール、
本人の自己評価に反して、彼氏が敬愛する陛下の偽らざる評価は「これ」だったのではないか。
・「准将最後の冒険」
「おお!ナポレオン・・・」という感想に尽きる一編かな。
もうちょい読みたいジェラール談であったが、このエピを持って来てしまうと、もう終わるしかないか。
124:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/15 04:17:24 zlVize6L
「カインの眼」パトリック・ボーウェン(ランダムハウス講談社)
リアリティ番組の出演者として選ばれた10人の男女。会場となるはずの
ホテルへ移動中、彼らは乗ったバスごと砂漠の真ん中に拉致されて
しまった。そこは廃虚と化した町。集団生活を余儀なくされる
彼らだったが、一人また一人と消えていく……。
「そし誰」に挑戦したミステリーとのキャッチだが、要するにCCでしょ?
で、作者がフランス人って不安だなぁと思いつつ読み始めた。
CCみたいなもんなんだけど、どうも徹底していなくてそれが
フーダニットの弱さに繋がっている印象。登場人物がそれぞれ
抱える秘密が次第に明らかになっていく展開は引き込まれたけどね。
そんで、終盤やつぎばやの展開にこっちのページを繰る手も速まる訳だが、
このオチは何やねん!
無茶過ぎるだろw
これで「ああ、だからか」と納得した疑問もわずかにあったが、
代わりに新たな不審点が束になって押し寄せて来るw
作者としては「平仄なんか知らねーよとにかく驚け!」
てなもんなんだろうか?
医者が激務の合間に書いたらしいから雑になるのも道理か?
バカミスアワードにノミニーされてもおかしくないがスルーされた?
そういや作者は「アイデンティティー」に触発されて書いたらしい。
あれも相当なオチの映画だったけど、本作と違って喜んで薦めるよw
つうか、本作も映画化進行中らしいが、絶対叩かれると思う。断言する。
最後に気になった点の内いくつかを。
・訳者は海外ドラマの邦題をちゃんと調べてない。
・インターンが変温動物もルミノールも知らん訳ない。
・運転手が(メル欄)した理由。
125:名無しのオプ
09/01/15 22:12:36 BL71ENr8
2008年のベストミステリを投票で決める「2chが選ぶこのミステリーがすごい!」スレ
投票締め切りまであと5日です。まだ未投票の方は、ぜひ参加してください。
スレリンク(mystery板)
【以下のルールを守ってください】
・投票スレの>>1-3は無視してください。
・対象は奥付表記で2007年11月~2008年10月の期間内に発行された広義のミステリー作品。
・6作品以内で順位をつけて投票すること。
・必ずしも6作挙げる必要はなく、1作でも投票可とするが、上記のように順位はつけること。
・1位=10点、2位=9点~6位=5点で集計。
・国内作品と海外作品は別々に投票する。
・一行以上の総評必須(ネタバレ禁止)
・投票期間は12月8日~1月20日まで
今年のこのミス、本ミスなどのランキングです。参考にしてください
国内編 スレリンク(mystery板:267-270番)
海外編 スレリンク(mystery板:271-278番)
126:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/17 20:20:41 uPmSuzBz
スティーヴ・ホッケンスミス「荒野のホームズ」を読んだ。
このミスではベスト10入り、文春では完全スルーされた作、まあ読む者を選ぶ作とはいえる。
前に「五枚のカード」の評でも少し触れた点かもしれぬが、西部劇(小説)とミステリという
マッチングが難しいジャンルを融合した長篇、しかも主人公のカウボーイ兄弟が
ホームズもどきという謎解き主眼なストーリーでそれなりに読ませるのは評価してよいかも。
現代作家にしては西部小説としての牛糞や屋外便所の悪臭が漂って来るかの如きまで
リアルな描写に意外に読み応えあり。
ロバート・ファン・ヒューリック「紫雲の怪」を読んだ。
ポケミスですっかりおなじみとなったディー判事シリーズ、
今回は副官の馬栄(マーロン)が活躍する一篇。
訳者あとがきによれば本邦初訳だそうだが、荒れ寺を舞台にした日本人好みな怪奇探偵小説、
ちゅーかスリラーに仕上がっておりなかなか楽しめる。
年間ベストランキングとかには無縁の作だが、年末・年始に肩の力を抜いて読むにはこの手のもの
が一番かと思う。
だが、まず最大のヒントの呈示ということかもしれぬが、
作品冒頭で犯行形態(男女共犯)をばらしてしまうのはミステリとしては惜しい気もする。
しかしながら、外交官で学者(東洋文化)としても名高い作者のエログロ、バイオレンス満載の
ストーリーには軽い驚きを感じないでもない。
127:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/18 15:16:53 zKiOMRpX
「ロミオ」ロバート・エリス(早川書房)
女性を次々とレイプしては惨殺するシリアル・キラー“ロミオ”。
ロス市警の新任女性刑事リーナは相棒のベテラン刑事と共に事件を追うが、
その間もロミオは犯行を重ねていく。そんな中、事件とリーナ自身が
抱える悲劇的な過去との関連が浮かび上がって来るのだが……。
表紙だけ観るといかにも二見やMIRAから出てるロマサス臭く、
粗筋を読んでもいかにもありがちな女性捜査官もの、サイコキラーもの
という印象で、「何だ、こんなもんに手を出すなんて読後感も
落ちぶれたな! ペッ」と思われるかも知れないがさにあらず!
俺を誰だと思っていやがる!お前の信じる俺を新次郎!
私が本作に手を出したのはそれ以上のサムシング(阿刀田ぽく)がある
と聞いたからなのだ。そして実際あった!
読みながら、「マニュアル通りの描き方やのう」と幾分冷めていたものの、
ラストまで読むと評判も納得の出来だった。もっとも、大分危うい
箇所もあり完成度が高いとまでは言えないが、この手のサスペンスの
内では良作だと思う。「認められた女刑事」という設定も新鮮に感じた。
500後半と厚いにも関わらずスムーズに
読めるのも○。
こういう作品がランクインしている点をみても早ミスの意義はあると思う。
続編にも期待。
128:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/18 20:28:37 XMuR0qmd
ファン・フーリック(表記どおり)「中国迷路殺人事件」を読んだ。
ディー判事シリーズの記念すべき第1作。
前に論考対象とした「紫雲の雲」と同じく、国境の街蘭坊を舞台にした読み応え溢れる
チャイナ・ミステリ、ちゅーか、チャイナ・スリラーに仕上がっており、
以後の人気を納得させるものがある。
特にコンパクトに纏めた中期以降の作品とは異なり、ボリュームがあるため、町の顔役成敗に
始まり、タイトルに冠された中国迷路に隠された遺言の謎、前知事殺し、元軍人殺し、
女性失踪事件等、これに蛮族(ウィグル)による襲撃計画まであるという
モジュラー・タイプの集団警察捜査小説の面白さがある(作者が三件以上の事件(別件)が描かれることが多い中国の公案小説に興を惹かれ、これを模した結果ゆえか)
のが俺のお気に入り足り得た点でもある。サドマゾ、バイオレンス趣向も第1作から全開、
終盤の処刑シーンも凄まじいまでの迫力である。
小説としては全ての事件を解決した後の締め、ディー判事が「虫の如く泥土にもぐる」決意を
固めるラストが深く、洒落た余韻を残し良。
129:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/18 23:49:58 zKiOMRpX
「極限捜査」オレン・スタインハウアー(文藝春秋)
東欧にある某国の民警捜査官フェレンクは同僚の刑事たちと共に
数々の事件に対処していく―一見自殺にみえる変死、官僚夫人の失踪、
四肢を切断された焼死体、そして同僚の命を奪った過去の強姦殺人―。
家では妻との不和に悩み、職場ではKGBから睨まれながら、
フェレンクはあくまで自らの誇りを貫こうと苦闘を続けていく―。
自分は警察小説、殊にモジュラー型小説というやつがどうも
性に合わなくて、フロストも1作目読んだきりなのだけれども、
今回本作を読んで、自分は私の描写の中途半端さとか、互いに
関連性のない複数の事件が起こるという展開が嫌だったんだなと自解した。
つまり本作は主人公のプライベートの葛藤もがっつり書き込まれており、
かつミステリー的な造作にもちゃんと気を配っている良い作品だ
ということである。
分厚いが引き込まれ易く(何しろいきなり「妻が出ていった」とか
書いてるんだもの)、ほとんど一気読みした(エロいしw)。本作は
設定上「チャイルド44」と比較されることが多い様だが、
読後感では向こう、ミステリーとしてはこっちが上。社会情勢は
本作のがずっとマシなのに雰囲気は逆になるというね。でもこの諦観は
癖になるかも。後、アメリカのラジオ放送聴いて自分ら共産圏の
情報を得ているというのが皮肉だなぁと。
本作は5部作の2作目ということだが、次作ではあの人物が主役になる
そうでこれは是非読みたい。あ、その前に1作目か。
130:読後感 ◆VkkhTVc0Ug
09/01/23 00:22:30 B8bQUGza
「キング・オブ・スティング」マシュー・クライン(早川書房)
投獄さるたのをきっかけに引退した詐欺師キップの元に
長らく会わなかった息子が助けを求めて転がり込んできた。なんでも
マフイアに多額の借金をしてしまい返す当てが無いという。
キップは息子を救うためもう一度かつての稼業に手を染めることに
なる……。
面白かった。久々に読んだコン・ゲームものが良質で嬉しい。
M田さん見直したぞ。ただの腰ギンじゃ無かったんだね!
枯れオヤジ詐欺師の哀愁を含んだ一人称は読んで引き込まれるし、
所々で脱線して紹介される詐欺の手口も面白い(そういや犬のやつは
「華麗なるペテン師たち」でやってた気がする)。
以前「百万ドルを取り返せ!」をTVMで観た時は順調に平和に
行き過ぎるのが物足りなかったけど、本作は一味違って満足。
端々に出てくる気になる部分が終盤ちゃんと回収されるし、
己の業と向き合うラストも単なるコン・ゲームには無い深みを加えている。
各種ベストに食い込んで来なかったのが不思議なくらいお薦めの一作。
追伸 でも、「あの仕組み」の種明かしが無かったような……。
131:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/24 23:35:50 GKLIPdqN
ロバート・ファン・ヒューリック「紅楼の悪夢」を読んだ。
これもおなじみディー判事シリーズの1冊。年末はすっかりこのシリーズに嵌ってしまった感がある。
前述したとおり、年間ベスト10やベストセラーとは無縁なシリーズだが、
そもそもポケミス創刊当初は、ある識者の「ぱーっと読んでポーン!」という評に代表されるが
如き古典よりも気軽な暇潰しを主眼とした作が主流だった時代がある。
怪奇、猟奇、お色気、アクション、そして謎解き等エンタメのツボを外さぬ構成は
カーター・ブラウン東洋版といったところか。
本作は出張旅行の帰途に立ち寄った歓楽地楽園島で美女殺人事件に巻き込まれるという
いわばアウェイでの事件、旅先ということもあってディー判事以外のレギュラーキャラは
マーロンのみであり、いつもの集団捜査小説の興趣は無いものの、相変わらずの畳み掛けるようなテンポで一気に読ませる。
132:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/25 15:54:15 BURszqWf
ロバート・ファン・ヒューリック「五色の雲」を読んだ。
ディー判事シリーズ8作を収録した作品集。
大好評な全話講評逝ってみよう!!
「五色の雲」
香印に関する謎解きが読ませどころ。
ただし犯行時間の特定に関する推理に強引さを感じさせるのが難か。
「赤い紐」
ディー判事が軍の支配領域という制約下で名推理を発揮する
ジョン好きには推したいトリッキーでアクロバティックな一篇。
「鶯鶯の恋人」
鶯鶯でピーンと来ないと、という一篇。
結構エロい作でもある。
「青蛙」
とにかく「蛙」が事件のキーとなる面白い着想&展開な作。
キーマンならぬキーフロッグや。
「化生燈」
「唐宋伝奇」等でも知られる中世中国(唐代)を舞台にしながら、意外に怪異談が少ないこの
シリーズだが、これはホラーミステリそのもの、この点では異色作である。
「すりかえ」
えらく鬱な悲劇なのだが、あっさりとした未来志向なお裁きもからっとした中国テーストか。
「西沙の柩」
武官の威張りぶりが鼻につき雰囲気は良くない作だが、ディー判事の推理ちゅーか、
一休禅師の如き知恵者ぶりが光る作。
「小宝」
クリスマス・ストーリーならぬ中国風に正月ストーリー。
一応、血生臭い(?)事件(?)だが、小品ながら後味が良い作に仕上がっている。
133:書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
09/01/25 15:55:22 BURszqWf
テネシー・ウィリアムズ「やけたトタン屋根の猫」を読んだ。
南部富豪一家の激しい確執を描き、
作者が名作「欲望という名の電車」に続き2度目のピューリッツア賞を受賞した作、
一般的知名度は「欲望・・・」に比較して落ちるものの、
ウィリアム作品で著名な小田島先生の名訳もあって、
優るとも劣らない凄まじいまでのサスペンス・ドラマとなっている。
(作者の興味対象外だったと思われるが、1度は本格的なミステリを書かせたかった)
三幕構成の中で次々に明らかにされる衝撃的な事実とビビッドな家族模様は
国も時代も越えて、現代日本でも不変性を持った問題提起溢れるものである。
ただし、おじいちゃん(劇中の呼称であり父親)の苦悩はともかく、
主人公(次男ブリック)が抱える問題は現代では社会が寛容になりつつあるやに思える。
(日本でもETVで特集が堂々と組まれるぐらいまでになっておる)
戯曲だからと毛嫌いせずに、新春一番のお薦め作なのは間違いない。
同じ作者の「ガラスの動物園」「欲望という名の電車」を愛読しながらも、
ここまでそのメーンテーマへの抵抗感もあって敬遠していたのが惜しまれる感あり。
なお、タイトルはヒロイン(?)のマギー(ブリックの妻)の置かれた状況を比喩的に述べたもの
であり、(この比喩が的確、かつ、端的で印象的)ぬこは登場しない。
なお、作者からの説明つきでエリア・カザンの要請で書き直されたNY上演時の台本(第三幕)が
併録されているが、たいして意味が感じられないおじいちゃんの再登場、ブリックのキャラの変質、
無理やりなハッピーエンディング風の締め等、出来栄えは初稿と比較して歴然とした差が感じ
られ、最早、別物と化している感もある。
「エデンの東」の例でも顕著なように、エリア・カザンという人は原作からテーマが変遷した
別物をクリエートしてまう傾向があるようである。