08/10/28 21:22:23 BKt0vtOH
>>925が正論やね。
大乱歩自身さえ、
>前以てやや筋が出来ていたのであるが
と書いているのに、ろくに作品内容も検討せずに「多彩な要素」があるのは苦し紛れとするのは
暴論そのものと言い得る。
さて、「孤島の鬼」が多彩な要素満載とはいえ、前記したとおり、いささかまとまりを欠き乱調気味
なのも事実ではある。
オープニングとエンディングを見ても、
本来、白髪と化した主人公と腿に大きな傷痕がある彼の妻の過去談として始まる物語
なのだがら、現在の2人のシーンに戻してエンドとするのが物語としては非常に収まりが良い。
しかし、ラストは「うほっ」な悲恋でカーテインド。
この点だけ見ても、いろいろ書きたくて全体構成には目をつぶったという感もある。
俺は作品解釈に際して大乱歩自身の言説に拘泥するスタンスではないが、
「生前、乱歩先生から直接うかがったところでは、先生は御自分の全作品中で、長篇としては
『孤島の鬼』、中短篇としては『陰獣』を最高傑作だと思っておられたようである」
という高木彬光(以下「高木君」と略す)の言葉を挙げておこう。
(角川文庫解説冒頭より)
大乱歩は、その時々の感情に正直な人だったようであり、
評価にあたっては作品そのものからのアプローチによるのが肝要である。