09/05/30 15:03:14 jIxb69ZE
角田喜久雄「奇蹟のボレロ」を読んだ。
人気楽団員を巡る不可能殺人を描いた名探偵加賀美敬介登場作品。
伝奇小説のマエストロである作者だが、ミステリの方は怪奇性を一切排した都会的なものである。
現在読むと、動機面の解説が弱い(というか現代医学的にはトンデモでは?)のと、
細部にやや無理が感じられる謎解きも存するとはいえ、細かい論理を積み重ねて真相に至る
展開は、横溝御大を「日本のジョン」とすれば、この人は「日本のエル」足り得たかもしれぬものを
感じさせる。前記した戦前の蒼井氏(「日本のクロフツ」か)同様、
この手の作が人気の中心に来なかったのは、やはり怪奇を好み、情緒的面が強い日本人には
ストレートな本格ミステリは不向きってことなのであろうか?