09/05/23 21:49:46 7UI63nFE
日影丈吉「狐の鶏」を読んだ。
深川は木場生まれの江戸っ子にして仏語に堪能(アテネ・フランセ出身、留学経験有り)な
翻訳家としても知られる作者の異色ミステリ短篇集である。
大好評に応えて今日も収録作品全話講評逝ってみようか!!
・「狐の鶏」
協会賞受賞の表題作だが、一見、作者のイメージに反する戦後の農村を舞台にした土俗的作
だが、悪夢と現実が交錯するフランス・ミステリ的隠し味が魅力か。
従って、本格やハードボイルドのような色合いが鮮明なミステリを好む者には不向き、
人によって好き嫌いがはっきりと出そうな作ではある。
・「ねずみ」
戦時中の台湾を舞台にした作のひとつ。
台湾劇というネタは興を惹くものの、まず、タイトル有りきの如く、
オチにねずみ絡めるのは強引な感あり。
・「犬の生活」
犬優、猫優って今でも存在するのだろうか?
ちょっと奇妙な味の作だ。
・「王とのつきあい」
読めばわかるが、タイトルも洒落た感がある短編アメリカン・ミステリの如き味わいがある面白い作、
前半のシリアスなタッチから後半のシュールな展開への切り換えが見事だ。
・「東天紅」
赤ん坊の死体ならOKってのが、いかにも「時代」を感じさせる。
雰囲気で読ませる小品だが、それ以上ではないという感はある。