08/05/25 00:10:57 63gn4PUy
楳図かずお「洗礼」を読破した。
ホラーかと思いきや、この作者には珍しいミステリであった。
このネタは活字メディアであれば叙述トリックでゆくところであろうが、
(また、その手しかないかと思う)『漫画』という特性を活かしたうえで伏線を張り、
再読も可能な巧みな仕上がりで楽しめるものとなっている。
ジャンル的にはSFに該当する異次元空間もの「漂流教室」やロボットもの「わたしは慎吾」
のような舞台と物語のスケールの大きさは欠くものの、漫画らしいオーバーアクション気味の
ユーモアをまぶしたうえで、日常性に潜むスリルとサスペンスを描き切って申し分ないものがあり、後半の新キャラ登場あたりからラストまでのなだれ込むような
スピード感はこの作者ならではの優れたストーリーテリングを実感させる。
また、30年以上前の作でありながら、そのテーマ性(謎解きでもある)は病んだ現代社会にも
十分に通用するものなのも、作者の着眼点の鋭さを実証していると言い得る。
最後の先生の映像メディアでいうところのカメラ目線には、「おまいは喪黒福造か!」と
突っ込みを入れたくなるものの(w、まあ、典型的な少女漫画誌にこのような作が掲載されていた
ことには驚きを禁じ得ない。