07/06/17 21:35:55 UoYJ4+oK
田中貴子「検定絶対不合格教科書古文」を読んだ。
あとがきに、この著者がミステリ好きである旨がさらっと記されているが、
さもありなん、教科書に採用されることが多い古文を文学的に読み解いた
第1部「教科書を読み直す」は、まさにミステリの「謎解き」そのものである。
「宇治拾遺物語」の「児のそら寝」に僧と児の性愛関係を読み取り、
「平家物語」の「木曾の最期」の義仲と今井四郎に「うほっ」を見る等々。
また、明治時代の子規の「仰臥漫録」から古代まで遡って古文を読んでゆく
第2部「教科書には載らない古文を読む」も非常に面白い趣向であった。
惜しまれるのは、およそ「教科書」の名にふさわしくない著者の現行教科書批判等が
展開されている第3部「論説編―国語教科書の古文、ここがヘン!」である。
いかにも本書版元(朝日新聞社)らしいものがあり、著者が最も書きたかった部分でも
あろうかと思うが、1部、2部と比較した場合の内容的違和感は大きい。
2部までの280頁でもボリューム的には十分であるし、3部の内容はあとがき等で
軽く論及する程度にして欲しかったものである。
また、こうした方が古文の楽しさを伝えるいう著者の意図には、
より沿う形と成り得たのではなかろうかと思う。