07/01/29 18:50:05 H91woW3J
山田正紀「愛しても、獣」(双葉社)
1993年の「ハードボイルド」風というか、「社会派」風のミステリ。
連続レイプ殺人犯として起訴されたが、証拠不十分で無罪となった青年。だがマスコミの「灰色無罪」なる表現で、
世間の冷たい仕打ちを受ける家族。父親は息子を信じたいのだが、息子は失踪してしまう・・・。
題名にあるとおり、非常にヘビーなテーマですが、ミステリの「仕掛け」として評価すれば、「被害者の爪が剥が
されていたのは何故か」という部分が面白い。後年の「女囮捜査官」シリーズにも通じるトリッキーな捻りかなあと。
でもそれ以外には、これという華がなくて残念。
文章は、どこか熱に魘されたような感じだし、どこか埋立地の匂いのする独特の雰囲気など、これまた「女囮捜査官」
の先駆とも言えます。
あと結城昌治「幻の殺意」にも似てますが、あれとは全く違う結論を父親から引き出した所は流石。