07/02/17 20:55:20 fqxiO94r
村上龍「半島を出よ」を読破した。
冒険小説あるいはエスピオナージと位置付け、この板で語ることも可能な作では
あるが、フォーサイス等を読み慣れた目には、国際政治・経済情勢を踏まえた
状況設定の粗さが目立ち萎えさせられるものもある。
(最後まで偽装北朝鮮叛乱軍が福岡を占拠する国際政治面から見た場合の
リアルな説得力は感じさせず、また、落日傾向とはいえ日本経済の不振による
国際経済面の他国へのカウンター的影響力もほとんど無視されているのが気にかかる)
ただし、受賞当時最年少の芥川賞受賞者であった村上氏が書きたかったのは、
リアルなシュミレーション小説ではなくして、他国による占領という場に直面
した国であり国民(=日本人)の「あり方」であったに違いない。
こういった面から見れば、作者あとがきにも記されているとおり、
当初本作が「昭和歌謡大全集」の後日談として構想されていたことからもわかるが、
人間の生き様を描くための村上作品らしい純文学的ダークなメルヘン世界の構築に
過ぎないとも言い得る。