08/01/02 19:57:49 mLA4FooI
スラヴォミール・ラウイッツ『脱出記 シベリアからインドまで歩いた男たち』を読んだ。
副題からもわかるとおり、まあ凄まじいまでの冒険ドキュメントである。
第2次大戦中、シベリアの強制収容所から脱走した著者(『終わりに』に記されているが、
正確には語り部)と六人の仲間、途中、孤児となったポーランド人少女も加わった七人は
自由の地英国統治下インドを目指し、逃げに逃げまくる・・・
フョードルの『罪と罰』や『死の家の記録』の舞台となった北シベリアから、あの『アーロン収容所』
の舞台ビルマ(ミャンマー)の隣国にまで及ぶのだから、そのスケールと苦難の大きさが推し測れ
ようというものである。
筆者は、ハガードの冒険小説等に関して、秘境冒険小説的要素が全体の前半あるいは
3分の1程度にとどまる点につき不満を述べたことがあるが、時代を大きく下るとはいえ、
意外にもノンフィクションである本書によって十二分以上にその欲求を満たされる結果と
なったのは意外であった。
本書の場合、全23章中14章がその逃避行の経緯の記述に当てられており、
極寒のシベリア縦断、酷暑のゴビ砂漠縦断、峻険なヒマラヤ越え(このリアルな書の終盤になって
雪男目撃談が登場するのには意外感があったが、このエピがあったがため本書刊行の契機と
なったことが訳者あとがきに記されている)等々、
まさに息もつかせぬ展開の連続である。