07/12/16 21:20:21 /wa4VffF
C・デイリー・キング『タラント氏の事件簿』を読んだ。
個々の作品の出来栄えはともかくとして、不可能犯罪の凝った状況設定が
なかなか楽しい作品集であった。
ただし、この作者、魅力的な謎の設定という点は長けているものの、
その解決部分は弱いというのが全体的な印象である。
大好評につき収録作品全話講評いってみよう!
『古写本の呪い』
NYのど真中にある博物館、呪いがかかっていると言われる古代アステカの古写本を
徹夜番という設定が面白い。
密室内からの写本消失の謎はこれしかないという意外にあっけないものでるあるのが難か。
『現れる幽霊』
ワトスン役(ジェリー・フィラン)のロマンスを中心に置いた怪談仕立ての一編。
新装家屋の幽霊談というのが異色だが、解決が御都合主義で機械的過ぎるのが難か。
『釘と鎮魂曲』
屋上のペントハウスを舞台にした凄惨な密室殺人ものである。
ガイシャ(絵のモデルである若い娘)と犯人のキャラを濃く書き込めば、
横溝風の怪奇・猟奇趣味溢れる読物になったであろうが、都会派デイリーは
あっさりと語って謎解き(筋は通っているが、小技という感あり)してゆく。
『第四の拷問』
マリー・セレスト号事件の前ふりに始まり、終盤、いきなりB級パニックホラー的
展開となるトンデモな作、まあこの意味では楽しめる作とは言える。
探偵しか知り得ない事実が後で明かされる等のアンフェアな部分もあるが、
こういう点を問題視すべき作ではなかろう。