06/10/24 18:25:59 dfbx2cli
「悪魔の栄光」ジョン・エヴァンズ(論創社)
私立探偵ポール・パインの今回の依頼は
キリストが書いたという古文書に関するものだった。
古文書を持っているという男の所へ向かったポールだが、
そこには一人の美女が銃を持って立っており、
クローゼットには何者かの刺殺体が押し込まれていた。
その後もポールの行く先々で殺人が巻き起こる。
果たして古文書につきまとう謎の怪人の正体とは?
栄光シリーズ2作目。今回も二段構えのサプライズは健在。
ただし前作よりは難易度が下がった模様。
というより免疫がついたのかも。
でも本格ばりの伏線はやっぱり見逃してしまいます。
あと前作同様、悪女とガツンというお約束を遵守してます。流石正統。
正統と通俗の違いはサプライズ要素に関わりがあるのかも?
だとしたらハニーは…。
148:どくごかんっ!
06/10/27 02:11:24 NIwVAil6
「豊饒の地」フェイ・ケラーマン(東京創元社)
夜間パトロール中のデッカーは夜の公園で一人で遊ぶ幼女を発見し、
保護する。付近の住民は誰も彼女に見覚えがない。
そしてデッカーにはこれが只の迷子ではないとわかっていた。
何故なら彼女の服には血が付いていたから―。
バツイチの中年刑事と若いユダヤ教徒のカップル探偵(?)
シリーズ第3作。
不気味な発端から凄惨な殺人に到達する件はなかなかだと思う。
警察小説らしく他の事件の捜査も並行して描かれていて、
さらにデッカーとリナの関係も、レイプの容疑者にされた
デッカーの戦友の存在等から変化を見せる。
特に衝撃を覚えるような箇所はないが読み応えはあったかな。
ただ、アメリカの平和のかほりがちらほらしたのが気になったけど…。
あと、作者は男性的だと感じた。
本作でリナはファム・ファタル属性を付加され、
さらに一流の売春婦ともタメ張れるほどの床上手に
「昇格」させられるし、事件の真相も鬼畜的に「エロい」
(両面の描写をしている所が重要)。
こんなの書く女流作家は読んだことなかった。
149:名無しのオプ
06/10/27 18:55:05 f6G6sslg
スタンリイ・エリン『闇に踊れ!』(創元推理文庫)
ガンに侵された元歴史学教授が、黒人の住むアパートの爆破計画を練る。
探偵ジョン・ミラノは、盗まれた絵画の行方を追う。
2つの犯罪は、いつかひとつの流れに繋がって……という話。
「出版を拒絶されたいわくつきの長編!」とのことだが、黒人への忌憚ない描写が原因のようだ。
『鏡よ、鏡』の作者でもあるし、アクロバティックな解決を期待したが、肩透かしだった。
登場人物同士のウィットに富んだ会話は面白いものの、この内容で500P超はきつい。
150:どくごかんっ!
06/10/27 21:07:09 NIwVAil6
「奇術師の密室」リチャード・マシスン(扶桑社)
卒中で植物人間同然になってしまった往年の大奇術師。
意識ははっきりしているものの、動かせるのは視線だけで、
普段はかつて自分の書斎であった「マジックルーム」に座っている。
そんないつもと変わらぬある日、悲劇の幕は上がった―。
二人になった息子の妻が入って来て何やら悪巧みを始め、
次いでやって来た息子のマネージャーは義理の娘と濃厚なキスを交わし、
次の瞬間息子は回転椅子に座って紫煙をくゆらしていた。
動けないただ一人の観客の前でくるくると変わる奇妙な芝居の結末は?
これ破綻してない?
(メル欄)は無理だと思うんだけど…。
とりあえずそれを度外視して言うと、
まあ、ぐいぐい読み引かれてそれなりに堪能できた。
「探偵スルース」や「デストラップ」はあまり好きじゃないけど、
こうして字面を追ってみると展開が早く感じられて苦にならない。
「どんでん返し」についても、「銅婚式」に代表されるような
口先だけで嘘だ本当だと繰り返す伏線もへったくれもない代物を
どんでん返しと呼ぶのは虫酢が走るけど、本作は明確な伏線はないが
既存の筋立てかちっと嵌るものなので(最初に挙げた点を除けば)、
抵抗なく許容できた。
後半に入って(メル欄2)かと思ったが違ってた。
つかこの本格ファンに阿った放題は軽くイラっと来るわ。
151:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/10/28 20:26:52 RlFghPZq
ジェームズ・アンダースン「血染めのエッグ・コージイ事件」を読んだ。
俺が敬愛する宇野利泰氏(以下「うの」と略す)の訳書ではあるが、
初刊の時はノーマークでスルーしてしまった作。
(解説でも指摘されているが、ミステリ界でも全くと言うてよいほど話題に
ならなかった)
タイトルだけ見ると、まがまがしい感さえ受けるが、
内容的には、館ものの一類型であるカントリー・ハウスもの、
時代は第2次大戦勃発直前、英国の伯爵が所有するカントリーハウスに集う
多彩な人物たち(英国外交官、諜報員、欧州小国の外交官、ガンマニアの米国の富豪、
遊び人の貴族、謎めいた男爵夫人等々)、これにルパンまがいの怪盗が絡み、
殺人事件が発生、コロンボ風の飄々とした名探偵(警部)の登場と相成る。
こう俺が書くと面白そうだが、
ジョン作品を想起させるトンデモなトリックはまずまずながら、
事件発生までの筆の運びが遅い感があるうえに、
極端な偶然性と御都合主義に頼った後半の展開は頂けないものがあり、
なぜ、今頃になって復刊されたのか理解に苦しむ出来と言わざるを得ないものがある。
宝石を狙う怪盗のエピは蛇足であるし、カントリーハウスを舞台にしながら、
本格ミステリの禁じ手とも言われる抜け穴は登場するにもかかわらず、
怪奇も密室等の不可能犯罪が登場しないのも寂しい限り、
せっかくの舞台が効果的に活かされていないのである。
152:名無しのオプ
06/10/28 22:51:38 //m2eQWN
>>151
ジョンって誰でしょうか?不勉強かもしれないがご教示を。
153:名無しのオプ
06/10/29 11:01:26 6AOjDVSv
>>151
> 俺が敬愛する宇野利泰氏(以下「うの」と略す)
敬愛する相手を「うの」なんて略し方するとは常識を知らぬ奴。
しかも何度目だよこの言葉。その後一度たりとも実行したことないじゃねえか。
というよりも、その後一度も「宇野利泰」の名を挙げることがない文章で
(以下「うの」と略す)
なんて書いても意味ないだろw
ミス住も少しは推敲というものをしてみたらどうだ?
154:どくごかんっ!
06/10/29 12:05:15 oUHqE6UG
「雲をつかむ死」アガサ・クリスティ(早川書房)
パリからロンドンへと向かう旅客機内で一人の老婦人が殺された。
首筋には小さな穴がうがたれており、
先刻飛び回っていた蜂によるものかと思われ始めた頃、
乗客の一人である口髭を生やした小男が
床に落ちている毒針を発見する。
果たして彼女は誰に如何にして殺されたのか?
クリスチーは意識的に避けてきました。理由は2つあって、
この先まず読みはぐれることはないのと、
ドラマで観たいと思っていたからです(12月に新作放送予定)。
ただあまり避けるのもあれかなと思って手に取ってみました。
どうせならクリスマスに読むべきなのでしょうが
廃止されて久しいので仕方なく今読むに至った次第。
読む前はてっきり終始機内で展開する密室劇かと思いきや、
死体発見は着陸間際で後はお馴染みの地上戦。
旅客機は単に容疑者を限定させるための装置かと少しがっかりしました。
その後は流石は探偵小説の女王と言った感じで、
各種のリストアップや気を引くワード等で読書意欲を保たせてくれます。
しかしながら本作では(メル欄)配置の不自然さが
ネタバレを誘っており、(メル欄2)と相まって大きなダメージに
なってしまっているのは残念です。
トリックもシンプルなのはいいのですがかなりの綱渡りで、
あまり感心はできませんでした。
個人的には解説者が言うような「中期の傑作」とは言い難いです。
155:名無しのオプ
06/10/30 01:31:07 D4XMDRND
>>151
ジョン作品て、ひょっとして、ジョン・ディクスン・カー?
156:名無しのオプ
06/10/30 13:03:07 LFfBuK9x
>>153
ワロスww
至極まっとうな突っ込み
だいたい「僕」なんて書いたかと思えば、次は「こう俺が書くと面白そうだが」なんて尊大なことを書くし。これはちょっとひどいね。だいたい「面白そう」に読めないんだけどなぁ…。そう言うならもう少しうまく紹介してほしかったです。
3点
157:名無しのオプ
06/10/31 17:27:39 AyWw1yIj
「震えない男」 ジョン・ディクスン・カー
フェル博士もの。
翻訳の問題か、やけに読みにくいものの、出だしは好調で雰囲気作りも申し分なし。
が、トリックがこの上なく腰砕け。人によっては激怒するんじゃないかと思う。
無茶しすぎの決着のつけ方が面白いので、それで救われてる感じか。
158:あぼーん
あぼーん
あぼーん
159:どくごかんっ!
06/11/01 18:25:57 1wCoNknT
「怪盗ゴダールの冒険」フレデリック・アーヴィング・アンダースン(国書刊行会)
連作短編集。
前半はいいんだがいざ真相を語る段になるとやや腰砕けの感も。
最初の「百発百中のゴダール」と最後の「スター総出演」がマシかな。
解説で紹介されてるライヴァルたちの物語は読んでみたい。
160:名無しのオプ
06/11/01 18:33:28 yaCX/+Cy
「青銅ランプの呪」 カーター・ディクスン
H・M卿もの。
二階堂センセが最低ランクのD級としていたので期待せずに読んだら、意外と面白かった。
やや冗長という感想は分からないでもないが、足音の謎の解法などは評価していいと思う。
少なくとも、あそこまで酷評するほどの駄作とは思えないのだが・・・。
161:名無しのオプ
06/11/01 18:34:53 PpXwzLvF
「深夜プラス1」 ギャビン・ライアル
30年も前の作品。
スマートで洗練された作品だ、ハードボイルドの先駆者的存在ってところでしょうか?
162:名無しのオプ
06/11/02 11:22:05 53dRYVXm
ウィリアム・カッツ『恐怖の誕生パーティー』(新潮文庫)
確か前々スレあたりでもいくつか書評が出てたように思う。
妻が夫の40歳の誕生日に向け、サプライズパーティを企画する。
だが、過去の大学や会社、所属していたはずの軍にさえ彼の記録はない。
一方警察は、毎年12月5日に女性を殺す殺人鬼の正体を追っていた。
12月5日は夫の誕生日だったのだ……。
ミステリーにすれていれば、ラストのオチは想像がつくと思うが、
演出は冴えに冴えており、サスペンスとはこうやって組み立てるのだ、といわんばかり。
ただ、夫へ匿名で手紙を送ってきたのは誰なのかがわからんのだが……。
163:名無しのオプ
06/11/02 18:54:46 AfAmuV9m
「ウサギ料理は殺しの味」 P・シニアック
かなり狂った作品。
序盤~中盤にかけてが冗漫で、噂ほど面白くもなさそうだと読み進めていったら終盤でひっくり返った。
もう、バカという言うしかない結末。こんなこと、よくぞ考え付いたものだと感心する。
しかしこれ、ミステリに分類していいのかな。
164:どくごかんっ!
06/11/02 20:34:34 1P1nbpcr
「絞首人の一ダース」デイヴィッド・アリグザンダー(論創社)
「掃き溜に鶴」と評判の短編集。
読んで思ったのは、この人はミステリー的な技巧の妙手というよりも
ストーリーテリングの名手なんだなということ。
最初の数編は正直イマイチだったが、「アンクル・トム」辺りから
面白くなってきて残りはほとんど外れがなかった。
トリックや意外な真相というよりサスペンスを演出するのが巧く
最後まで、というか最後になってもダレない。
ベスト3を挙げるなら、
「アンクル・トム」「見知らぬ男」「蛇どもがやってくる」。
次点は「デビュー戦」
165:名無しのオプ
06/11/04 15:37:17 pnNbBDgM
「魔術師が多すぎる」 ランドル・ギャレット
ダーシー卿シリーズの、たぶん唯一の長編。
魔法が出てくる設定だが、中身はハードなパズラー。例えるなら西澤保彦作品みたいなものか。
密室殺人も出てきてサービス精神は旺盛なれど、なんだか色々と物足りない感じがする。
長編ゆえか、短編集の「魔術師を探せ!」に比べて切れ味が落ちるのも欠点か。
166:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/11/04 20:42:56 TVo8a471
久々にアーサー・ミラー「セールスマンの死」を再読した。
初読の際は、先が読めない展開をサスペンスものとして楽しむことも可能な作品だが、
リストラ流行り、ニート・フリーターが増加する現代日本では、
ローマン家の状況はある意味、もう他人事ではなかろう。
戯曲を読む習慣が無い日本でも、今こそ広く手に取って欲しい1冊である。
同時代のテネシー・ウィリアムスほどの人物造詣の深さは感じさせないものの、
簡潔な台詞の積み重ねにより、登場人物たちが置かれた緊迫した状況を描写し切って
しまうミラーの才は、あらためて並々ならぬものがあるのがわかる。
ライターとしての私にとって、長年の座右の書のひとつである。
167:名無しのオプ
06/11/04 23:06:10 OEC6761K
>>166
またまた「サスペンス」w 救いようのない単細胞のミスヲタだなあ。
そして通り一遍の感想、いや「乾燥文」。
この程度のどこにでもある駄文書いて喜んでいるようじゃ、到底プロにはなれませんぜ。
お前はバカでもなれる「カキコライター」が精々だなw
168:名無しのオプ
06/11/05 16:37:35 2umI6WyY
167は他板からの改竄&コピペ
もとのレスはこちら↓
書斎魔神・アホアホ語録格納庫 その11
スレリンク(mog2板:776番)
読んで分かるように167( ID:OEC6761K )は
「このスレに書くべき話題だから」ではなく
このスレを荒らすのが目的で改竄&コピペしている
2ちゃんねるガイドの「荒らしに反応したらあなたも荒らしかも。。。」を
お忘れなく!
169:名無しのオプ
06/11/06 18:15:41 CZ7KaSzX
T・ロスコー「死の相続」(原書房)
「黄金時代の密室物の怪作」という評判どおりの凄まじいパルプ作品。
ハイチの奥地にある屋敷、ブードゥー教の奇怪な儀式、俗悪きわまる登場人物たち、密室の連続殺人、
これでもか、という怒涛のサスペンスあふれる展開。トリック自体はバカバカしいが、力技で無理やり
納得させられてしまった。ハイチ憲兵隊の隊長が存在感あって、結構カッコイイ。
170:名無しのオプ
06/11/06 23:46:03 qMyDWddR
エドマンド・クリスピン「愛は血を流して横たわる」
学園での先生達や生徒のキャラはいいのだけれど
中盤中弛み気味かも…
ラストの真相解明部分もクリスピンにしては理屈っぽいくだりが
長いのとちょっと推測が多いところが(´・ω・`)
171:名無しのオプ
06/11/07 01:13:50 iqM6AH+B
「魔性の森」 ハーバート・リーバーマン(角川文庫)
土地所有者男女数人が土地の境界線を調べるために
広大な森の中へ入っていくんだけど途中で測量人が
意識不明になっちゃう。
極限の中、それぞれの人間性が暴露されるんだろうなと
思ったら大間違い(多少あるにはあるが)
ただひたすら森の中を迷ってるだけの話
でも読むのこれで3回目なんだな
これほどラストが素敵で不思議な作品も無い。
172:読後感
06/11/08 15:14:08 oEF56G24
「剣の八」ジョン・ディクスン・カー(早川書房)
自宅の書斎から射殺体で見つかった男。
死体の側にはタロットカードが置かれていた。 折しも町の主教は兼ねてから奇行を繰り返しており、
ただならぬ犯罪の予兆を宣言していたのだったが―。
カーの凡作。密室も怪奇趣味もファースもなし。
解説はフーダニットを強調しているがそれほどとは思えず。
犯人外れたけど(気付いたけど捨てちゃった)。
あと8章冒頭で語られるヒロイン観は、
個人的には物語を詰まらなくする一因だと思うのだが…。
173:名無しのオプ
06/11/08 19:06:34 03MJQeHK
「殺人者と恐喝者」 カーター・ディクスン
H・M卿もの。
H・M卿の語る自伝は非常に愉快で、これについては文句なしに楽しめた。
が、問題となっているトリックは、いささかやりすぎな気がしなくもない。
似たようなことをカー自身がやっていたが、それに比べるとちょっと悪どいのではないか?
それと密室事件の解法だが、こちらはかなりの腰砕け。「死時計」や「震えない男」あたりも
どうかと思ったが、これもまた相当に厳しい。一応伏線はあるし、カーらしいと言えばらしい
仕掛けだけど・・・。
174:名無しのオプ
06/11/08 19:13:06 k9nTeoc7
カーの株下落中
175:名無しのオプ
06/11/09 19:52:59 14GTHjSV
「尼僧のようにひそやかに」 アントニア・フレイザー
フレイザー女史の処女作。
帯に「ゴシック・ロマンとパズラーを融合」とあるので初期カー風の内容を期待したが、
パズラーとしては平凡。むしろスリラー小説といったほうが適当か。
不倫ありサスペンスありと盛りだくさんの内容ながら、やや平板な展開なのが残念。
セイヤーズ作品ばりに頻出する薀蓄に面白さを感じられるなら、より楽しめると思う。
176:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/11/12 00:43:11 doBvr4UC
リチャード・マシスン「奇術師の密室」を読んだ。
SF・ホラーにおける手腕は定評がある作者、
本格的ゴシックホラー(幽霊屋敷もの)に現代的なテースト(科学による究明)を
加味した読み応え十分な「地獄の家」、一転、超常現象を排したリアルな恐怖感
(迫り来るトラック)に富むモダンホラーの教科書的短編「激突」、
前進的なオチが深い感動を喚起する「縮みゆく人間」、シニカルなオチが印象深い
「地球最後の男」…
どれも抜群の面白さであり、本書も期待して読んだのだが…
ストーリーは逆転に次ぐ逆転ではあるが、創り過ぎた感が強い作に終わっている。
常人以上の観察力・注意力を有するはずのマジシャン(しかも天才的という設定)という
ことを考慮すれば、「見ればわかるだろう」の突っ込みでトリックそのものが崩壊する
やにも思える。
ただし、現代ミステリを読み慣れた者から見れば、さしたる驚きは無いものの、
60年代から70年代初めが全盛期であったマシスンにとって、
犯人の倫理観は相当ショッキングなものということなのかもしれぬ。
177:名無しのオプ
06/11/13 00:07:45 wN+LY38y
ウィリアム・L・デアンドリア『ホッグ連続殺人』(ハヤカワ文庫)
被害者も手段も選ばない無差別連続殺人鬼「ホッグ」。
その犯人に、天才犯罪研究家ベネディッティ教授が迫る。
79年の作とはとても思えないような古い作風。
作品を支えるひとつの大きなアイデアと、最後にきかせる小技で、
かろうじて体裁を保っているものの、それ以外ではほとんど見るべきところがないと思う。
ビューアルという男とディードルという女が主要人物で、しかもカップルとして出てくるのだが、
わざわざそんな紛らわしい、変な名前にする意味がさっぱりわからん。
178:読後感
06/11/13 18:59:53 O4u2GXpu
「ねじれた奴」ミッキー・スピレイン(早川書房)
富豪の科学者の息子の誘拐事件に巻き込まれた依頼人のため
現地に乗り込んだマイク・ハマー。
手掛りを元に見事少年を救出したハマーだったが、
その後間もなく富豪が殺される。果たして事件の陰には何が?
別に追悼記念てわけじゃないけどハマーを読むのは初めて。
主人公がケンカが強かったり
出てくる美女が皆色情狂で秋波を送って来たりするのが
低俗と言われる所以なのかも知れんけど、そういうのも
アリっちゃアリだと思うのよね。古いとか新しいとかじゃなく。
筋立ては中々混み入っており読み応えはあると思われる。
犯人も割りかし意外だったかな。あと社会派的な側面もある。
ただ本作で暗示されている問題が顕在化するのは10年以上後だったはず。
その辺先見性があったのかも知れない。
疑問:(メル欄)は何故その場所をまず探さなかったのか?
179:名無しのオプ
06/11/14 21:01:28 ATLYF5JN
「読者よ欺かるるなかれ」 カーター・ディクスン
H・M卿もの。
とにかくミスディレクションが抜群に上手く、その点では大いに感心させられた。
だが、メインのトリック自体は類例があるものの、なんとも困った代物。読者受けを狙ってか、
あまりに派手な提示をしているのが逆効果で、解決の部分が言い訳じみて見えてしまう。
どうでもいいことだが、挑戦的な邦題は見事な翻訳だと思う。
180:名無しのオプ
06/11/15 00:07:04 Nu9l6f6G
「クリスマスに少女は還る」 キャロル ・オコンネル
過去ログ見てて面白そうだったんで読んだ。
確かによかった。
最後まで読むと中盤あたりでの微妙な違和感というか
伏線を感じさせる会話の間というか表情のニュアンスなんかが
ピタッピタッと解けていく感じで「あ~!成る程ね。あ~それでか…」みたいな感覚が気持ち良かった。
ラストは片方の主人公格の終わり方に安堵、もう片方の組には残酷さを感じた。
と、思ったらエピローグでもう一揺さぶり。って感じで最後まで満足。
181:名無しのオプ
06/11/15 20:19:44 024tOAxp
「迷路」 フィリップ・マクドナルド
ゲスリン大佐もの。
裁判記録と書簡のみで構成された珍しい形式の作品。翻訳がいいのか非常に読みやすい。
裏面の紹介文に「真っ向からフェアプレイの勝負を挑む」とあるようにストレートなパズラーで、
たしかに判断材料は全て文中に明示されていた。だが、解決までの道のりが矛盾の一点突破型で
ロジックの飛躍に乏しく、その点でやや物足りなさを感じる。
ついでに解決編の冒頭であまりに恣意的な判断があったり、動機の面で極端な想像があったりと、
ちょっと首をひねりたくなる部分が存在することも残念だった。
182:名無しのオプ
06/11/16 00:18:20 55cKpBZa
「氷の男」 フィリップ・マーゴリン
つまらん。
法廷もの(なのか?)として読み始めたせいか
肝心の弁護内容や証拠集め、検察のぐだぐださ全てがイライラした。
全体通して全てが浅すぎる。その分テンポは非常に速く一気に読めるが。
何より女の魅力がまったくない(男も脇キャラもないが)。というかこれは恋愛小説か?
勝手にメロドラマしてろ!って感じでした。
この著者の本読んだの初めてなんだけど
名前はよく聞くから期待してたんだけどな~。
183:名無しのオプ
06/11/16 01:29:43 OkOQyNgR
>>182
マーゴリンなら『黒い薔薇』『暗闇の囚人』から始めた方が良かったのでは。
名前をよく聞くのも、最初に翻訳されたこの二作は面白かったのに、
なぜか最近作になるほど????な感じになってしまった辺りが、
つい愚痴ってみたくなる作家ともいえ。
久々に講談社文庫から出た『女神の天秤』は、少し持ち直した感じだったけど。
184:名無しのオプ
06/11/16 20:34:57 mL6fN7jW
「ユダの窓」 カーター・ディクスン
H・M卿もの。
有名すぎる密室トリックが出てくる作品。事前にトリックを知っている状態で臨んだので本当に
楽しめるかどうか不安だったが、単純に法廷物として面白く、トリックは関係なしで楽しめた。
それと、あのメイントリック以外の部分にも仕掛けが施されていて、こちらも見事だと感心。
さすがはカー問答で第一位になっているだけのことはあると思った。
185:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/11/18 14:31:18 est2CK54
>単純に法廷物として面白く、トリックは関係なしで楽しめた。
ネタなのであろうか?
失笑を禁じ得ないものがあった。
ジョン、スコット等のリーガル・サスペンス、
本邦のものであれば、和久俊三作品あたりを手に取って欲しいものである。
それはさておき、俺も初学者指導のためジョンの「白い僧院の殺人」を再読していた。
「―いいか、間抜けども、マーシャ・テートはこの部屋で殺されたんだぞ」
このヘンリーの言葉に本作の全てが集約されていると言うても過言ではない。
初読時には、ジョンには珍しい心理的トリックに感心したのだが、
読み直すたびに、偶然性に頼った創り過ぎたプロットが気にかかるようになり、
評価が厳しくなっていかざるを得ない作である。
ジョンらしいはじけたバカトリックやドタバタも無く、かなり地味な印象、
結局、5段階でC評価あたりが妥当なところかと思う。
186:名無しのオプ
06/11/18 17:42:41 Q+JtvvHg
主人公の性別を間違えたり、何度も読んでる本の書名を間違える人間が、
人のことを笑う資格があるとでも思ってるのかい?
「暗黒無知」ことお馬ちゃん。
187:読後感
06/11/19 11:38:56 xLQdW98h
「災厄という名の男」R・D・ブラウン(早川書房)
独立して警備会社を構えるためにテキサスへやって来たハザードは、
到着早々妻の殺人容疑をかけられてしまう。
偶然選んだ貸家の中に妻の死体が横たわっていたのだ!
彼女は土地のマフィアの手先となっていたらしい。
ハザードは女弁護士と共に濡れ衣を晴らすために事件を追う。
面白かった。翳のある女弁護士、マフィアのボス、
主人公を執拗に追う警察署長、妻の二人の子、
土地で隠然たる力を持つ謎のオールドミスなど
クセのあるキャラクター揃いで真相も意外に感じた。
188:読後感
06/11/19 12:09:35 xLQdW98h
「タラント氏の事件簿」C・デイリー・キング(新樹社)
“怪奇な事件に心惹かれる者”タラント氏の活躍を描く短編集。
オベリスト三部作を視野に入れたのと新樹社を潰すために。
扱う事件は全て怪奇的なものばかりで、自分は
令嬢を悩ます足音と鏡の亡霊に挑む「現れる幽霊」や、
乗った人が次々と溺死するモーターボートの謎を追う「第四の拷問」
そして「最後の取引」が印象に残ってます。
「第四の拷問」は衝撃度抜群。ボートに乗り込んだタラントまでもが
餌食になりかけます。その真相は―実に㌧でもないモノでした。
「最後の取引」はシリーズの追尾を飾るエピソード。
隅の老人やポジオリ教授や亜愛一郎の様にオチが付くのですが、
彼等の場合と違い(亜ら未読)、寂しさの中にも
どこか爽やかなイメージが残る話です。
「ありふれたヘアピン」に近いものがあるかも。
その後解説読んで一安心の一幕も。
189:名無しのオプ
06/11/19 16:08:33 NmdQuIkQ
「チムニーズ館の秘密」 アガサ・クリスティー
バトル警視のデビュー作品。
クリスティー初期の冒険小説というので期待せずに読んでみたが、異様に面白くて驚いた。
登場人物はキャラが立っているし、二重三重に錯綜する複雑なプロットも魅力的。
屋敷での殺人事件あり、外交問題あり、秘密結社あり、ロマンスあり…と色んなエンタテインメント要素を
これでもかとブチ込んで、なおかつ目立った破綻もなしに大団円へつなげる手腕は見事というほかない。
190:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/11/19 16:30:56 tI+AcYue
「夜歩く」(創元の井上一夫訳)
これも初学者指導用に再読。
うーん、初学者にも読んで欲しい1冊ではあり、個人的にはとても好きな作なのだが、
(アンリ・シリーズゆえ極端なドタバタは無く、落ち着いた暗くムーディな雰囲気は
中期以降のジョン作品には無い独自の魅力がある)
「まずこの1冊を」というには躊躇せざるを得ないものがある。
第1の殺人は処女長編ながら、ジョンらしい強引な展開でその特色を遺憾無く発揮して
いるものの、第2の殺人はあまりにトホホな展開に過ぎるか。
191:名無しのオプ
06/11/22 21:09:10 8TcOyvHv
「血の栄光」 ジョン・エヴァンズ
私立探偵ポール・パインのデビュー作。
1946年の刊行らしいが、えらく古風なハードボイルド。主人公、へらず口叩いて殴られまくるし。
なので平凡な作品と思っていたら、終盤になっていきなりの大どんでん返しに面食らう。
身元不明人の埋葬になぜか十二人もの牧師がやってきた、という冒頭の謎の解決もまずまずだし、
しっかりと伏線も張られていて、実はよくできたフーダニットだった。面白い。
192:名無しのオプ
06/11/23 02:03:34 nza6WhPx
「わが故郷に殺人鬼」 デヴィッド・ウィルツ
"Home again"をこう訳すとは。
視点が三人称になったり、主人公の息子の一人称になったりで若干読みにくい。
えーい、アメリカ人はみんな変態か!!
ラストが消化不良。まぁでも読ませる。
193:読 了太郎
06/11/23 03:00:47 IbSc/PDw
「不思議の森のアリス」リチャード・マシスン(論創社)
“伴大矩の再来”と言われる希代の悪訳者を気にしながら読んだ。
誤訳以前に誤字がかなり…もう編集だけにして下さい。
「服は人を作る」「生き残りの手本」の
2編のショートショートが切れ味抜群で良かった。
ラストの「不法侵入」は長く続けて来た雰囲気が
ラストで放置されておりマイナス。
表題作はまあ平均点。
194:読 了太郎
06/11/23 16:22:58 IbSc/PDw
「10ドルだって大金だ」ジャック・リッチー(河出書房新社)
日本独自編集の第2短編集。
後半のシリーズ物よりも前半の方が好き。
「妻を殺さば」がベスト。出だしからしてイケてる。
これと「50セントの殺人」や「とっておきの場所」
「円周率は殺しの番号」等を読んでいるとリッチーが勧善懲悪に
“そこそこ”留意しているのが分かって楽しい。
他の異色作家達よりも童話作家という肩書きがピッタリ来るという
感じがした。
ちなみに本書、うちの区の図書館では4冊購入で即日貸出の上
予約が3件だった。流石このミス効果。
195:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/11/23 17:35:53 dca9SL+B
これも初学者指導用としてジョンの「魔女の隠れ家」を再読。
ジョン作品ベスト5には挙げられにくく、(解説にはアントニー・バウチャーはカー
作品のベストの一つとして推奨しているとあるが)、ええカッコしいのヲタは
よりマイナーな作を推す方向に走ってしまう傾向にあるため、
名探偵ギディオンのデビュー作でありながら、話題になることが少ない作でもある。
しかしながら、初期作ということもあって、ジョン作品の特色である怪奇性・猟奇性が
遺憾無く発揮されており、横溝御大の作品群あたりが好きな向きには最適か。
英語国民以外にはわかり難い暗号ネタにミステリとしての大きな比重が置かれていること、
キーポイントとなる監獄の長官室を、ジョンらしい完全なる密室(に見える)という
設定にしなかった点が惜しまれる。
それにしても初学者というのは手がかかるものである(w
196:名無しのオプ
06/11/23 21:40:21 spdCm+xy
>>195
脳内初学者相手に優越感に浸っています
相変わらず安っぽいオツムですなあ
しかし多忙のはずな人が何で2ちゃんねらーの為に何冊も「再読」するんですかねぇ?
197:↓はもう通用しないな
06/11/23 21:46:07 cR/XNhnd
806 :名無しのオプ :2006/11/14(火) 22:56:15 ID:P/3bUBRO
ここに書くべき話題を最悪板に書く方が悪い。
ちゃんとスレタイに沿った議論になっているんだからな。
808 :名無しのオプ :2006/11/15(水) 07:22:16 ID:94zL7AxD
コテハン叩きじゃないレスまで向こうに書き込まれてるから問題なんだろうが。
事態をよく把握してからものを言えやクソが。
810 :名無しのオプ :2006/11/15(水) 11:03:21 ID:Ud2MR2S/
>>809
そんな事例はないはずだよ。
バトルトークとコテハンたたきくらいの区別はしているだろ。
今まで見る限りはさ
198:名無しのオプ
06/11/23 23:25:47 XtitLu6B
196は他板からの改竄&コピペ
もとのレスはこちら↓
書斎魔神・アホアホ語録格納庫 その12
スレリンク(mog2板:140番)
読んで分かるように196( ID:spdCm+xy )は
「このスレに書くべき話題だから」ではなく
このスレを荒らすことと
専ブラでNGワード登録しても見えるようにすること
が目的で改竄&コピペしている
2ちゃんねるガイドの「荒らしに反応したらあなたも荒らしかも。。。」を
お忘れなく!
199:名無しのオプ
06/11/23 23:53:27 X9Nb4XgL
コテにいちいち絡む名無しもうざい。そっちのが荒らしだっての。
200:名無しのオプ
06/11/23 23:55:40 IburWEul
そっちのが荒らしって繰り返し出没するやつがいる
201:名無しのオプ
06/11/24 01:04:42 l+PBDGFe
>>200
逆に聞くけど貴方は嵐の相手をしてる奴らも同罪だと思わないの?
202:名無しのオプ
06/11/24 07:11:16 GX/1zDgi
んなもん同罪だ
「そっちのが荒らし」は要するに荒らしてるやつ以上に荒らしにか変わってるやつが悪いという意味不明な理屈だな
ほっておけばよいんでいちいちこんなことことさらにいうまでもない
同罪と騒いでる時点で自分も同罪って気づけ
ってことでおれは以下沈黙
203:名無しのオプ
06/11/24 07:11:59 GX/1zDgi
か変わってる → 関わってる
204:名無しのオプ
06/11/24 14:49:31 l+PBDGFe
>>202
「同罪だ」と注意することは必要だろ
それすら駄目なら結局ヒーロー気取りを勘違いさせたままになるし
一度目の注意を同一視するのは詭弁だと思う
205:名無しのオプ
06/11/24 20:16:33 AMXOT9x0
「真鍮の栄光」 ジョン・エヴァンズ
私立探偵ポール・パインの第三作目。
今回も主人公殴られまくりで、その境遇に自分で一人ツッコミしてるのには笑った。
古風なハードボイルドに見せて、バリバリのフーダニット+大どんでん返しなのは相変わらず。
今回も最後にとんでもない結末が待ち構えていて驚かされる。が、この解決は賛否両論だと思う。
個人的には否定派。理由はメル欄だから。伏線も今回は少し苦しい感じか。
206:読後感
06/11/25 00:19:32 Fq2b6hm6
「ペンギンは知っていた」スチュアート・パーマー(新樹社)
課外授業で生徒達を連れて水族館に来ていたミス・ウィザーズは
そこで大事なハットピンを落としてしまう。
生徒を総動員で捜させた結果無事見つかったのだが、
発見されたのはそれだけではなかった。生徒の一人が
ペンギンの水槽に漂う死体に見入っていたのだ!
ミス・ウィザーズは持ち前の正義感と好奇心から
警察に協力を申し出るが―。
プロットは特に珍しくもなくありがちで犯人もわかりやすい。
ただ、第2の殺人のトリックは少し興味を引いた。
主人公は「強い女性」ではあるが、男性作家の手によるせいか
フェミ臭さはなく好感が持てる。
207:読後感
06/11/25 16:30:36 Fq2b6hm6
「黄金」ディック・フランシス(早川書房)
再婚に反対したため長らく父と絶縁状態であったアマ騎手イアンは、
突如父に呼び出される。再婚相手であったモイラは少し前に
何者かに殺されていたのだが、今度は彼自身が狙われているという。
護衛として同行することになったイアンは愛憎渦巻く一族の中で
犯人探しを行うことになるのだが……。
フーダニットだが分厚い割にプロットは単純で、
推理も多分に心理的なもの。
見所は主人公と断絶して家族との絆の再生にある。
どれだけ敬遠迫害されても家族の繋がりを信じ続ける主人公という
この厳しくも理想的な作風が現代のおとぎ話として好まれるのだろう。
ミステリーとして特に読むべきものではなかった。
208:読後感
06/11/26 18:49:49 QoO0J7Ll
「アプルビイの事件簿」マイケル・イネス(東京創元社)
これから出るらしいので予習として。
ライヴァルたちの括りにされているが活躍時期は大分ズレてます。
話の筋は良さげなんですが、読むとイマイチ印象に残らないというか
…文体のせいでしょうか?
左右違う靴を履いている男を目撃したことから始まる「死者の靴」や
放置自動車と雪崩によって立往生したアプルビイ夫妻が宿を借りた
古城で起こる伝説通りの殺人を描いた「終わりの終わり」など。
他にショートショートもあり。
209:名無しのオプ
06/11/26 22:07:41 b6UMloCl
「蜘蛛の巣」ピーター・トレメイン(東京創元社)
7世紀のアイルランドを舞台にした歴史ミステリー。
当時のアイルランドは5王国に分かれており、事件の舞台は、
そのうちのモアン王国。
ケルト教会の修道女で、ドーリィー(法廷弁護士)であり、
アンルー(上位弁護士、裁判官)の資格を持つフィデルマが
主人公。
古代アイルランドはブレホン法という法律があり、女性の地位
も比較的高かったらしい。
因習に満ちた谷の村で、氏族の族長が殺され、その後も殺人が
起こる。容疑者とされたのは、盲目で耳も聞こえない若者。
乗り込んだフィデルマは、強い意志力でもって、裁判官として
の自分を認めさせ、真犯人を見つけ出す。
古代のアイルランドが、現代の法治国家とにたような仕組みを
確立していたのは驚きで、新鮮だった。
注意深い観察と深い洞察力による推理で、次々に真相を暴き出す
フィデルマは、まるでポワロのよう。
日本のものでは、「犬神家の一族」を思わせる雰囲気もある。
上下2分冊だが、おもしろい。一気に読める。
210:名無しのオプ
06/11/27 09:41:11 7WJTJ99l
読後感のつまらん報告はいい加減やめてほしいな。
211:名無しのオプ
06/11/27 22:13:13 +mjSFvuo
自分で感想書かないクズはグダグダ言うな
212:名無しのオプ
06/11/28 00:49:58 J7OOTCZJ
いつも楽しく読んでいます。読後感さん応援してます。がんばって。
213:名無しのオプ
06/11/28 20:29:15 7Tjmdvp0
「殺人四重奏」 ミッシェル・ルブラン
その手のミステリとしては高名らしい作品。
連城三紀彦の某作品のインスパイア元みたいな感じがする。
いかにもフレンチミステリといいたくなる内容で、終盤の無茶苦茶な展開が非常に面白かった。
ただ、この邦題は問題。これのせいで五割くらい面白さを減じているような気がするのだが・・・。
214:読後感
06/11/28 23:47:32 /jX8mlKr
「孔雀の羽根」カーター・ディクスン(東京創元社)
マスターズ警部に届いた一通の手紙。
それによると今夜とある廃屋に十客のティーカップが出現するという。
手紙を見て警部は顔色を変えた。何故なら2年前にも似た内容の
手紙が届き、それが殺人事件に発展したからなのだ。
しかも犯人は捕まっていなかった。そして夜、指定の場所で
一人の男が射殺される。至近距離から撃たれていたにも関わらず
屋内には忍んでいた警官と被害者しかいなかった。
そして現場には十客のティーカップと
孔雀模様のテーブルクロスが残されていた。
果たして犯人はどうやって入りどうやって殺しどうやって出たのか?
勿論警官が犯人じゃないよ。
中々の良作だと思った。謎の不可解性は抜群だし、
怪奇趣味の理由付けもマル。トリックは強引な部分もあるが
古典本格ならば許容範囲であれかし。ストーリー性が薄いので
ロマンスで犯人が絞られちゃうとお嘆きの方も安心して読めるかと。
細かいページ付きの解明もGood。「吸血の家」のインスパイア元かな。
珍しくイキイキとした悪女が出てくるのも印象的。
ただ、尋問する場面で不自然な箇所があったようだ。
215:読後感
06/11/29 18:50:57 9jc2Rnmd
「マッターホルンの殺人」グリン・カー(新樹社)
戦時中諜報活動をしていた経験を持つシェークスピア俳優
リューカーの所へ旧知の秘密情報部チーフクレイベリーがやって来る。
彼はあるフランス人政治家について当人がどのような思想を
持っているか探り出して欲しいと頼みに来たのだった。
そのフランス人は今登山のためスイスに滞在しており、
それは奇遇にもリューカーがこれから休暇を過ごそうとしている
場所だった。旧友の頼みを引き受けたリューカーだったが……。
やっぱ山岳ミステリーつったらカーしかいないよね、うんうん。
期待外れでした。
51年の作品なのに筋書きも道具立てもオーソドックスだし
プラス思わせぶり過ぎる地の文のせいで
早くに犯人の見当がついてしまいます。
紹介されなかったのもむべなるかな。
216:名無しのオプ
06/11/29 19:28:55 dCe+y+Dk
「ババ・ホ・テップ」 ジョンRランズデール
ミステリマガジンの今月号
老人介護施設で余生を送るエルビス・プレスリーが主人公。
過去から蘇ったミイラにケツの穴から魂を吸われるところを
エルビスに助けてもらった自称ケネディ大統領(黒人)と共に
そのミイラとの闘いを描いた短編。
とにかく下品で面白く、こんなに笑った小説も久しぶりだ。
それでいて男の生き様を見せられたりしてで
読後は満足感でいっぱいになった。
217:名無しのオプ
06/11/29 19:37:04 48G+a5Fm
「メソポタミアの殺人」 アガサ・クリスティー
イラクの遺跡発掘隊を舞台としたポアロものの一作。
衆人環視の不可能犯罪。クリスティーらしからぬ豪快なトリックで、なんだかカー作品みたい。
よくよく考えてみると、失敗する可能性が高そうなうえに、実行現場を誰かに見られかねない
非常に危険な犯行だと思うのだが、それはそれということか。
解決編での論理性は低く、あまりカタルシスを得られなかったのは少々不満。
218:読後感
06/12/02 11:58:37 IMLCywVy
「死体のない事件」レオ・ブルース(新樹社)
不良青年ロジャーズが酒場に入って来るや殺人を犯したことを告白し、
その直後毒を飲んで死亡した。そこに居会わせたビーフ巡査部長は
ロジャーズが詳細を明かさずに死んだため死体探しをすることになる。
やがてこの奇妙な事件が世間を騒がせ始めると、ヤードから
スチュート警部がやって来てビーフ達を指揮し
活発な捜査を進めていく―。
前作「三人の名探偵のための事件」は凝ったプロットとパロディが
詰まった傑作だったが、本作は死体探しという趣向が珍しいという
以外は前作より優れた点は無いように思えた。初心者で無い限り
冒頭でからくりがある程度読めるし、展開と真相は前作の焼き直しの
様に感じられる。また解説にある通りかなりアンフェアな部分もある。
更に言えば斜に構える余り物語性を軽視しているのも個人的には-。
219:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/12/03 00:22:53 WxofN7+Q
ミスヲタには縁遠い話であろうが、レフ・トルストイ「戦争と平和」の新訳が
岩波文庫から刊行されている。
初読時は、工藤精一郎先生(以下、工藤ちゃんと略す)の訳による新潮文庫版で
あったが、今回読んだ岩波版は活字のポイント、訳文等、
内実共にかなり読み易くなっているやに思う。
安手のミステリを読み漁っているミスヲタもこの機にこの世界的な文学を
手に取ってみたらどうであろうか、
灯下親しむべき候、気分はまさに往年の旧制高校生である。
まあ、正直言うて無理な注文だとは思うが(w
久々の再読してみたが、ナポレオンのロシア侵攻、形勢逆転による
逃げるナポレオン率いるフランス軍、追うロシア軍、
(作者レフは、ナポレオン軍の敗退を俗に言われる冬将軍にその主因を求める
ことはせず、糧秣の確保等占領政策の失敗により、本格的なロシアの冬が到来する
前に既にその敗退は始まっていたとする見解が慧眼である)
これにピエールとアンドレイという2人の貴族とヒロインのナターシャを中心とした
ロシア上流階級のロマンスが絡む、作者自身がホーマーの叙事詩の如きものを意図して
いたというだけあって、これを戦争冒険小説と言わずして何と言おうか。
本作の最大の主眼は、作者レフの史観呈示(「歴史に英雄無し」)にあることは
言うまでもないが、そもそも同時代人たちは本作を現代の日本人がシバリョウを
読むかのように楽しんでいた向きもあったのではなかろうか。
220:読後感
06/12/03 03:15:31 hkkASva1
「死の相続」セオドア・ロスコー(原書房)
恋人ピートの遺産相続のため中南米ハイチに赴いた貧乏画家カート。
2人はピートの叔父の屋敷で様々な使用人達と共に遺言を聴くが、
その内容は、1~8番目まで候補者が指定され、もし候補者が
24時間以内に屋敷を離れたら相続の権利を失い権利が次の候補者に移る
という実に奇妙なものであった。
その後埋葬を済ませ各々が寝室に引き取った直後最初の殺人が起き、
更に第2、第3の犠牲者が……。
「夢果つる館の殺人」といい「奇妙な遺言」というのは
古典のパターンなのかな? あまり知らないけど。
いやはや、凄かった! 頭ん中グングニルした。正に怪作!
まず舞台となるハイチという国。中国の武侠作家金庸が
中国にミステリーが根付かなかった理由を訊かれて
「中国では法の執行が健全ではないから」と答えていたが、
独裁国家でブードゥー信仰が盛んなハイチは正にその典型なわけで、
名探偵の推理も華麗にスルーされそうな予感がひしひし伝わって来る。
というかまず探偵がいるかも分からないんだけど……。
とにかく24ばりに連続殺人が怒涛の勢いで進行して圧倒される。
中盤からは更に加速しまるでサイコホラーに転換したかのような
無茶苦茶な展開になり本格だという認識は銀河の彼方にすっ飛んで
終いには孤軍奮闘大立ち回りでもう何が何だかわからなくなる。
こんなもんどう決着付けるんだ絶対無理だろと思っていると……
あ~ら不思議! ビシャリと収まる。こりゃ傑作だよ。
221:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/12/03 23:38:54 qGrH5hFP
G・ガルシア=マルケス「わが悲しき娼婦たちの思い出」を読んだ。
川端康成「眠れる美女」にインスパイアされた作とのことだが、
巻末の訳者解説にもあるとおり、似たシチュエーションながらも
全く異質な殺人も有りな濃いサスペンス・ストーリーが展開されてゆく。
途中までは悲劇の予感を漂わせながらも、いかにもラテン系らしい「性と生」に
対する前向き、かつ。肯定的なハッピーエンディングが楽しい。
「満90歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと
考えた」、この過激なインパクトある冒頭の書き出しから、
ガルシアのマジック・リアリズムの世界が始まっているのだと言い得る。
222:名無しのオプ
06/12/04 20:55:17 DYbF7v2H
「サンタクロース殺人事件」 ピエール・ヴェリー
なんとも変なミステリ。
探偵役が口にする解決の糸口も含めて、全体的に奇妙なメルヘン風味が漂っている。
ほとんど手がかりが提示されない点は不満に感じたが、事件は複雑に構成されていて、
探偵役の語る解決編ともども、予想以上にテクニカルで感心させられた。
ただ、原文からそうなのか翻訳の問題なのか、妙に読みづらいのは困ったところ。
急な場面転換が頻繁に起こるので、読みにくさは倍増してるし。
223:名無しのオプ
06/12/05 01:22:34 YKXZrwJe
「サンタクロース殺人事件」は読みたいなーと思ってたら中学の図書館に置いてあってビックリした覚えがある
あの図書館、クリスティとかは置いてないくせに中国迷路とか十三角関係とか乱歩賞のマイナーな奴とか変なのが置いてあったなぁ
224:読後感
06/12/06 00:21:19 zAo8nWR4
「飢えた海」ウィルバー・スミス(文藝春秋)
大企業に成長させた海運会社のトップの座を奪われ、
絶世の美女であった妻も寝取られ、最愛の息子までも失ってしまっい
絶望のどん底に叩き落とされたニック。
隠居料として半ば押し付けられた子会社は多額の負債を抱えていた。
そんな彼の乗る船に突然舞い込んだSOS通信。それは難破した
豪華客船からのもので、オーナーはあの憎い敵であった。
ニックは沸き上がる復讐の念を胸に救助に向かうことになるが…。
勿論救助は前半の展開で、その後は主人公を取り巻く
人間関係の愛憎を中心としたストーリーになる。
全体的に類型的で、それはいいのだが悪役が少々薄っぺらいのが残念。
ドンパチやらで簡単に人が死んだりすることがないのが意外だった。
225:読後感
06/12/06 00:41:03 zAo8nWR4
「ティー・パーティー」チャールズ・L・グラント(早川書房)
婚約者の浮気相手を殺して失意のダグは服役後逃げる様に
田舎へとやって来た。そこには長らく廃虚と化している屋敷があり、
住人から呪われた場所として恐れられていた。
ところが屋敷を買い取るとの情報が流れ始め、その頃からダグや
他の住民達の身に不可解な現象が相次ぐ。
そして不審に思う彼等の許へ屋敷への招待状が届けられた―。
とあるガイドブックで★4つだったから読んでみたんだけど、
別になんてこたない凡作だった。
筋立てはキング(未読)みたいな感じだが前フリが長すぎる。
パーティーをもっと中盤に持って来て終盤にもう一山欲しかった。
一応仕掛けめいたものがあるけど切れ味はイマイチな印象。
226:名無しのオプ
06/12/08 20:34:57 1KU2gVpy
「もの言えぬ証人」 アガサ・クリスティー
ポアロものの一作。
妙な構成が目を引くものの、クリスティー文庫版の解説にもあるように事件そのものに相当の無理が
見られるし、ポアロの語る真相にも論理的な穴が多く、出来はいまひとつな感じ。
生前の被害者が交霊会において、後光が差したり口からエクトプラズムを出したりしていた、という
奇怪な事件の真相はユニークで実にインパクト大。実現可能かどうかは別として、強く印象に残る。
227:読後感
06/12/09 00:34:01 mSvB1U22
「真鍮の栄光」ジョン・エヴァンズ(早川書房)
私立探偵ポール・バインの今回の依頼は都会に出ていき行方知れず
となった娘の捜索。彼女は出発前何故か全ての写真を破棄したという。
バインは彼女の友達もまた同じような状況にあると知り、
そちらからもアプローチしていくが、関係者が次々と殺されていく。
果たして彼女達に隠された秘密とは?
「シリーズ物は順番に読みましょう」
小鷹さんが三部作中最も衝撃の真相と言ってらっしゃいましたが
正にその通り! これは予測出来ませんでした。ガツンと来ました。
あと本作はミスディレクションが複数ばら撒いてあるようで
僕も見事に嵌ってしまいました。
(メル欄)はちょっと有り得ないと思いますけど、
話が成立しないわけではないからいいか。
228:名無しのオプ
06/12/09 20:57:34 4ev+Sv67
「九人と死人で十人だ」 カーター・ディクスン
H・M卿もの。
船上での殺人劇という「盲目の理髪師」を思わせる設定ながら、こちらは喜劇要素が非常に少なく、
いないはずの人間が一人増えたという不可能趣味が前面に押し出されている。
とにかく提示される謎が非常に魅力的で、読ませる内容。大戦の雰囲気を伝える点でも興味深い。
ただ冷静に考えてみると、あの状況でこの事件自体が成立しえないような気もするのだが・・・。
229:名無しのオプ
06/12/10 19:26:48 BP2W121e
「誘拐」 ビル・プロンジーニ
名無しのオプシリーズの一作目。
タイトルのとおり、主人公が子供の誘拐事件に巻き込まれるいう物語。
事件の構造は少々ひねくれているものの、目新しさも特になく、全体的に平凡な内容だと思う。
パルプマガジンの収集が趣味という主人公の造形、それと終盤での奇怪な論理が楽しめれば・・・
という感じだろうか。
230:読後感
06/12/11 03:41:54 gW+VC2RB
「タイムマシンの殺人」アントニー・バウチャー(論創社)
おしどり探偵ひくトミー。
ミステリー評論家でありながら実作ではSF・ホラーを多く
手掛けた人って結構珍しいのでは。
読んだ感想としては何かこう所々はしょってる感がして
イマイチ設定・展開が呑み込めなかった話がいくつかあった。
筆が先走り過ぎてる部分があるのかなーと。
読解力不足と言われればそれまでだが一応書いとく。
お気に入りはラストの「たぐいなき人狼」。
恋はスリルショックサスペンスでした。
次点は「悪魔の陥穽」。これらのシリーズだけで1冊編んで欲しい。
それ以外だと、「人間消失」のトリックや表題作の論理が面白かった。
P.S.夏に買ってすぐ実家のちゃぶ台に放置したきりの
「シャーロキアン殺人事件」が無くなってませんように…
231:読後感
06/12/14 00:48:09 39apm+P5
「淫獣の幻影」フィリップ・ホセ・ファーマー(光文社)
標的の尾行中相手の男と共に失踪した相棒コルベンの行方を
追っていた私立探偵チャイルドは警察に呼び出され
あるフィルムを観せられる。そこには裸で寝かされ
足を広げさせられたコルベンが映っていた。
そして彼は現れた男女にペニスを噛み千切られ殺されてしまったのだ!
その時チャイルドは観た。女の股間で蠢く何かを。
事件を探るチャイルドは伝手を通じて幽霊屋敷にたどり着くが
そこで彼が見たものは紛れもない女の幽霊だった!
エログロハードボイルドって感じ。ふんだんに官能シーンがあるけど
個人的には人と人との健全な交わりにしか興奮を見い出せないもので、
本書のエログロはちょっときつかった。殊に催淫座薬打ち込まれて
豚女に犯されるとこなんか斜めどころか平行読みしたぐらい。
とにかくエログロの雰囲気に嵌れる人でないと辛いと思う。
自分はあまり嵌れなかったけど気になる終り方だったんで
続編が邦訳されてるなら読んじゃいそうだ…。
232:読後感
06/12/15 21:03:05 s805kxS4
「無頼の掟」ジェイムズ・カルロス・ブレイク(文藝春秋)
叔父たちと銀行強盗をして逮捕されたソニーは成り行きで
警官を殺してしまい刑務所へ送られる。そこから何とか脱獄し、
叔父たちの許に戻ったソニーは、ふたたび強盗を繰り返すが、
息子を殺した男の脱獄を知った老刑事は復讐のため彼を追うのだった。
面白いというか読みやすい。続きが気になってどんどんいっちゃう。
翻って見ると別に大したプロットじゃないなと思うんだけども、
読んでる最中はそんなこと全然頭にないんだよね。
暴力描写に眉をしかめつつもページを繰る手は止まらない。
ただどれもこんな感じならその内飽きるだろうな…。
とりあえず次はアラムルチ読みます。
233:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/12/16 19:42:49 /a9WmpUN
ポール・アルテ「赤髯王の呪い」を読んだ。
このミス、文春のランキングをはじめとしてスルー状態な作品集、
出来栄えを見ればこれは致し方ないものがあるが、
怪奇探偵小説好きなら意外に楽しめるかと思う。
大好評な全話講評行ってみよう!
「赤髯王の呪い」
執筆されたのは本作(私家版)が先ではあるが、オチはあのヒット作の二番煎じであり、
連続不可能犯罪の謎解きはあっけないか、強引である。
前半は怪談話絡みの怪奇探偵小説そのものだが、終盤は一転、フランスの作家らしい
ムーディな心理サスペンスとなってゆくので、
トマス・クックの記憶シリーズの愛読者などには一読の価値はあるかもしれぬ。
「死者は真夜中に踊る」
実話「動き廻る棺」を想起させるような話で、怪奇な館ものの雰囲気は良し。
ジョン作品というよりは、名探偵コナンレベルの謎解きを気軽に楽しめるか否かで、
読後の感想も変わってこようかと思う。
「ローレライの叫び」
孔雀の羽根はやはりオマージュか?
本作もローレライ伝説に材を取った怪奇な雰囲気の盛り上げは巧みだが、
肝心の謎解き部分が「いつか来た道」に過ぎないのが残念。
「コニャック殺人事件」
この作者には珍しい超自然現象ネタを絡ませない不可能犯罪もの。
ゆえにすっきりした出来にはなっているものの、本質はぎりぎりバカミスになるかどうか
といったところか。
234:名無しのオプ
06/12/16 21:17:16 zGnYYex+
「金蝿」 エドマンド・クリスピン
半世紀近く昔の翻訳であるせいか、めちゃくちゃ読みにくい。新訳出してくれ。
肝心の中身はカーのような雰囲気ながら、なんだか今ひとつ。
幽霊話を持ち出して色々と煽るわりには物語に絡んでこないし、明かされる真相には困惑する。
ついでに探偵役が、関係者の証言を嘘と見抜く理由もよく分からない。そういえば金蝿の指輪に
関する理由付けも謎だった。
235:名無しのオプ
06/12/17 05:54:35 jUfOWDWC
ケン・フォレット『大聖堂』(上中下、SB文庫)【9点】
12世紀のイングランド。大聖堂建設の夢を持つ建設家、禁欲的な修道院長、
零落貴族の姉弟、成り上がりの傲慢貴族、野心溢れる司教など魅力的な人物が
織り成す大河歴史物語。
久しぶりに読み応えのある小説だった。冒頭の赤毛の若者の絞首刑のシーンが
一応ミステリー的な要素としてラスト近くで解決されるが、中心となるのは
あくまでキングスブリッジにおける大聖堂建立の物語。さまざまな事件や苦難が
次々に襲い掛かり、読者の興味を逸らさない。どの登場人物も欠点をかかえており、
それが物語を奥深いものとしている。
やや長いのが難ですが、それだけに冬休みの読書にうってつけ。
新潮文庫版がブッコフで並んでいるのをよく見かける。
236:名無しのオプ
06/12/18 19:47:02 g/uQr+dm
「赤い右手」 ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ
片田舎で殺人鬼が跋扈するというお話。
かなり妙ちくりんな作品。時制が飛び飛びになっているうえ、けったいな文章のせいもあり、
途中からアル中の日記でも読んでるような感じになってくる。
なぜここまで無茶な犯行を行わなければならないのかという疑問は残るし、ロジックは飛躍
どころかワープするしと、かなり八方破れな作品なのだが、逆にそこが魅力なのだと思う。
強引な力技が気に入らない人には合わない作品とは思うけど。
どうでもいいが、「コペルニクス的転回」という惹句は少しズレてるような気がする。
237:読後感
06/12/18 23:45:03 4iXM6c9/
「荒ぶる血」ジェイムズ・カルロス・ブレイク(文藝春秋)
大物ギャングの下で殺し屋として働いていたジミーはある時
一人の女に出会い、心を奪われる。一時の逢瀬を楽しむ二人。
しかしそれは突然終りを告げる。彼女に執着するメキシコの牧場主が
殺し屋を差し向け奪い去って行ったのだ!
ジミーは仲間と共に恋人奪還に向かうが…。
まあ、予想通り前作と構成はまるで同じw
ただリーダビリティだけは一級品。抜群にある。
プロット自体は大したことなし読後何も残らないけど。
例えるなら釣りで散々引っ張っといて漸く釣り上げたら
何も変わってなかった、みたいな感じかな?
このミス3位は高いような気がするけど、年一で楽しむ分にはいいかも。
238:読後感
06/12/21 00:14:16 TLB0aVqi
「魔性の森」ハーバート・リーバーマン(角川書店)
新しい相続人のため、土地確認の森歩きをする測量人と周辺住民たち。
しかし突如測量人が発作で倒れ、皆は森の中で迷子になってしまう。
見当を付けて歩き回るが深みにはまるばかり。やがてじわじわと
人間関係にも亀裂が入って来る……。
当スレからのセレクト。ひたすら道に迷うというだけの話。
読みやすかった。誰にも感情移入出来ない所が良い。
ラストは意味不明だけど…。
239:読後感
06/12/21 00:16:13 TLB0aVqi
「太陽の殺意」M・K・プレストン(ソニー・マガジンズ)
久し振りに故郷へ帰って来たチャンタリーンの目的は
濡衣を着せられてリンチにあった父親の汚名を晴らし
殺害犯達を見付けるためだった。皆の前で高らかにそう宣言する
彼女だったが、その直後仇の一人と思われる男が殺され、
容疑者になってしまう。若手弁護士ドルーの助けを借りて
チャンタリーンは調査を続けるが―。
300弱と短いのだけが取り柄。やたらダラダラしてて
ろくに調べようとしないし小説としてのまとまりも悪い。
こんなんがノミネートされるなんてクラーク賞はレベルが低すぎる。
日暮さん仕事選びなよ…。
240:読後感
06/12/21 09:37:45 TLB0aVqi
「海のオベリスト」C・デイリー・キング(原書房)
航海中の豪華客船で短い停電の最中に起こった殺人。
被害者は心臓を撃たれて即死しており、体内から2個の弾丸が
摘出された。しかし、銃声は一度しか聴こえなかったのだ!
ピストルを持っていた男が取り調べを受けるがそこから放たれた
弾丸は他の場所から発見され、更に解剖の結果被害者は
毒殺されていたことが明らかとなる。
この混乱した事態に乗客である4人の心理学者達はそれぞれ独自の
推理を披露して犯人を指摘するのだが―。
オベリスト三部作シリーズスタート。
本書の特徴は「多重推理」と「巻末の手掛り索引」である。
一人が答えを示し、それが違うようだと判明して次へ進むのだが、
その否定の方法が論理的に矛盾を突いたりして崩していくのではなく、
作中で制定された「明確な物差し」によってなされており、
読者としては結論に一抹の不安を覚えながらも頭を悩ますことなく
次に進んでいける。ここは物足りなさを感じる人も
いるかも知れないが、読み進みやすいことは間違いない。
また、手掛り索引については少々細か過ぎる気がした。
こういうのは少数の要領を得たポイントを指摘するべきだと思う。
間違っても「ロートレック荘事件」のようににならないよう…。
真相に関してはごしゃごしゃやり過ぎて意外性が削がれた感あり。
241:名無しのオプ
06/12/22 01:47:57 WbbSNsXH
クリストファー・プリースト『魔法』(ハヤカワFT文庫)
爆弾テロに巻き込まれた報道カメラマンのグレイは、記憶をなくし病院で治療を受けていた。
彼のもとを訪ねてくる自称「元恋人」のスーザン。
スーザン、グレイ、スーザンの恋人ナイオール、彼らの奇妙な三角関係の行方は……
『奇術師』がこのミスや文春でベストテンに選出されたプリーストの代表長編。
やっぱりボーダレスな小説で、恋愛、幻想、SF……など多彩な要素を含む。
「奇才プリーストが語り(=騙り)の技巧を遺憾なく発揮して描いた……」とあらすじにあるように、叙述要素が物語の仕掛けに組み込まれている。
解説にある激賞の言葉ほど面白いとは思わないが、第五部からとんでもない方向へ話がずれていく様子や、ラストで明らかになる仕掛けは、なかなかの見ものだった。
ちなみに解説は法月綸太郎。
242:名無しのオプ
06/12/23 23:53:09 Q4Hcy7ra
「私が見たと蝿は言う」エリザベス・フェラーズ
本格は感傷でしか読まないんだけど久しぶりに。
安アパートの一室から殺人に使われた凶器が見つかり
住人の誰かが犯人ってことになるんだけど
それぞれの住人が面白い。本格好きにはちょっと
物足りないかもしれないけど(十分楽しめるレベル)
おれみたいに謎がどうより人間模様を楽しみたい人にはいいと思う。
面白かったなぁと思ったら「猿来たりなば」の人なんだね
243:読後感
06/12/24 00:28:31 yTEQKdaw
「鉄路のオベリスト」C・デイリー・キング(光文社)
アメリカ大陸を横断中の豪華列車内のプールで男が死んでいるのが
発見された。状況からみて溺死と思われたが、解剖の結果
違うことが判明する。続いて第2の事件が発生し一人が殺され
一人が危うく生き延びた。列車に乗り込んでいたロード警部補は
旧知の心理学者と共に捜査に乗り出すのだが―。
シリーズ2作目。鮎哲訳。この人のマイナー作家に対する情熱の
お陰で本書や「殺意のトリック」を読むことが出来てありがとう。
今回は前作と比べて《多重推理》という型はぐんと薄まった感じ。
心理的推理に因る所が多い上に結論が安直。ただ、読みやすさは増した。
プラス、意外性も確保出来ていたかな。あらあらこんな
夜明け前よりミエミエな、と思っていたら見事にハズレちゃった。
前作よりもミステリーぽかったな。
あ、刊行順に読んでね!
244:注! 前宣伝のルールに変更点があります
06/12/25 19:45:49 Wf2c/Oqd
現在、「2chが選ぶこのミステリーがすごい!」の投票を行っています
各作品に一行以上のコメント必須です。未記入の場合無効となりますのでご注意ください
ただし再投票は受け付けます。どのレスの再投票かということも明記して再投票してください
投票お願いします 2chが選ぶこのミステリーがすごい!
スレリンク(mystery板)
以下のルールを守ってください
・対象作品は奥付表記が2005年11月~2006年10月の広義のミステリー作品
・投票者は6作品以内で順位をつけて投票すること
・国内作品と海外作品は別々に投票してください
・ネタ防止のため各作品に一行以上のコメント必須(ネタバレ禁止)
・宝島社の作品は対象内
・締め切りは1月15日まで
以前こちらのスレに投票された方へ。こちらの投票もちゃんと集計しておきます
2chが選ぶこのミステリーがすごい!2006
スレリンク(mystery板)
今年のこのミス、本ミスなどのランキングです。参考にしてください
国内編 スレリンク(mystery板:26-29番)
海外編 スレリンク(mystery板:30-33番)
ご投票お願いします。長書き込み失礼しました
245:読後感
06/12/31 04:55:57 16RpEECi
「空のオベリスト」C・デイリー・キング(国書刊行会)
サンフランシスコ行きの旅客機内で外科医が殺された。
被害者は国務長官の緊急手術をする予定であり、日時まで指定された
殺人予告を受け取っていた。そして予告通りの時刻に酔い止めの
カプセルを服用したきり目を覚まさなかったのだ!
しかもカプセルは護衛のロード警部が渡したものだった……。
原題カコイイ。オベリストよ、高く翔べ!
シリーズの特徴であったはずの多重推理はすっかり形骸化している。
その代わりというか本書はエピローグを冒頭に持ってきてプロローグで
締めるという仕組みが採られており、こういうの新本格以外では
Pマクの「ライノクス殺人事件」しか知らない。さて、どれほどの意味が
あるのかと思いきや、あまりなかった。
自分はプロローグを前にしてもう一度エピローグに戻りそれから
プロローグを読んで手掛り索引に当たり解説(この空気の読めなさは
異常)を読んだが、イマイチよく呑み込めなかった。犯人は解った
けど、じゃあ「あれ」をやったのは誰か? ロードの推理が正しい
のか? ならば(メル欄1)と(メル欄2))の説明は?
ここから一人の人物が導き出される気がするのだが……。謎だ。
ちなみに中盤のサプライズは薄々見当ついた。
246:名無しのオプ
06/12/31 11:44:57 CL2iYDUP
P.ボアロー『殺人者なき六つの殺人』(講談社文庫)
『悪魔のような女』の片割れ。サスペンスではなくがちがちの密室もの。
パリのアパルトマンで銀行家夫婦が狙撃される、という事件を筆頭に、タイトル通り6つの殺人事件が起こる。
真相が暴かれてみると、因果関係が連鎖しているので、6つもある殺人はすべて必然であることがわかる。
ただし、全体で250Pしかないため、次から次へ事件が起こって慌しい。
ひとつの事件を反芻する時間がないので、不可能性の強調も足りていない。
一番いけないのは、形として容疑者が存在しないことだ。
犯人の可能性があるのは一人しかなく、読者にとっては簡単に先が読めてしまう。
殺人の因果関係については、よく練られていると思うだけに惜しい。
小説としての面白みはほとんどないが、古典本格マニアであれば読む価値あり。
247:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
06/12/31 18:36:22 CzHikJAp
今冬は、アガサ・クリスティのマイナーな作を取り上げてみたく思う。
「愛国殺人」を読んだ。
スパイ・スリラーの著作も相当数あるアガサらしいエルキュールものだが、
やはり本格ミステリはエスピオナージ等が絡まない館もの等の方が
雰囲気にマッチするやに思われる。
犯人の犯行は、アガサらしい間隙を突くアクロバティックなものだが、
歯科医のスキルを簡単に見過ぎている点が気にかからぬでもない。
大きな可も不可も無い凡作といった評価が妥当かと思う。
248:読後感
06/12/31 20:58:23 16RpEECi
「屍衣の流行」マージェリー・アリンガム(国書刊行会)
私立探偵キャンピオンの妹でデザイナーのヴァルは若き実業家
アランに想いを寄せていた。しかしアランは人気女優ジョージアに
心を奪われており、ジョージアの夫レイモンドは妻そっくりの
モデルとデートをしていた。そんな中キャンピオン自身も
旧知の女性と婚約してしまう!!
迷走する恋模様の中失踪していたジョージアの元恋人が白骨死体で
発見され、更にレイモンドが飛行機内で死亡する。スキャンダルを
恐れた関係者達は隠蔽を計るが事はやがて漏洩しヴァルにも危険が!
のりりん曰く「森博嗣風ラブコメの原点」。しかしどこにコメが?
コメが主食の日本人としてこれは辛い。
つーか無駄になげーよ。大仰で持って回った言い回し、長ったらしい
比喩、その場その場で語られる男性・女性観など読書意欲を削がれて
参った。これもっと刈り込んでスマートにして欲しい。
大体プロットも大したことない。温い本格orサスペンスって感じ。
犯人の意外性もないし(これは解説でも消極的に認められている)、
このトリックのどこが凄いのかもさっぱり解らん。
ロマンスも唐突で腑に落ちない。解説者(=訳者)は褒めすぎ。
それでは皆さん、よいお年を。
249:名無しのオプ
07/01/01 15:24:52 IbXXBdhW
読後感は出て行けや。つまらん主観を押し付けて読書の楽しみを奪うなボケ。
250:名無しのオプ
07/01/01 15:36:00 HrTtkK4O
下劣なコテハン叩きはルール違反ですよ。
251:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/01 21:52:44 xXMhNOYc
「ポケットにライ麦を」
一般のミステリファンには十分にマイナー、エルキュール・シリーズと比較して作品数が
圧倒的に少ないジェーン・シリーズということもあって、
アガサファンには、結構、読まれているのがこの辺の作かと思う。
アガサ作品にありがちな若い男女の安手なラブロマンスが無く、
横溝風のいずれも一癖ある人物たち(一族)が集う館ものという設定は、
謎解きミステリのお膳立てとしては申し分が無いものがあるのだが、
いかんせん「売り」であるマザー・グース絡みの見立て殺人に無理が有り過ぎで、
必然性が感じられない点が弱い。
252:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/02 22:04:15 jv2425Sn
「ヒッコリー・ロードの殺人」
アガサファンでないと読んでいなさそうなエルキュールもの。
日本で例えれば、学生下宿(本作では入居者全てが学生というわけではないが)を
舞台にした奇妙な盗難、そして殺人が描かれる。
読者の興を惹き易い「館もの」等でも書けそうなストーリー
(アーヤならそうしてしまうかも(w )ながら、
殊更に怪奇な設定はしないアガサは、ロンドンの大通り裏のハウスを舞台に巧みな
ストーリーテリングで事件に広がりも持たせた上で、それなりに満足がゆくミステリに
仕上げているのはさすがである。
253:名無しのオプ
07/01/02 22:43:45 YldQyTb1
快調なペースで読書してるね。
その調子その調子。
254:名無しのオプ
07/01/03 19:56:47 fZM/ErZo
「最上階の殺人」 アントニイ・バークリー
素人探偵ロジャー・シェリンガムのシリーズ作品。
簡素な問題編とそれに対する多重解決という、いかにもバークリーらしい内容。
全編に渡って炸裂するロジャーの推理(というか妄想)が楽しく、そこが一番の見所だろう。
ただ、セイヤーズ言うところの典型的なロジャー・シェリンガム式の作品なので、着地点が
マンネリ気味という気がしなくもない。
最後の一行で思わず吹いたし、十分に面白い作品だとは思うのだけど。
255:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/03 21:12:46 GYptbuIY
スティーブン・キング「ミザリー」を読んだ。
正式にはホラーはSF板の担当なのだが、本作は恐怖小説ではあるが超自然現象が
描かれた怪奇小説ではないため、作品全体に仕掛けられた趣向は勿論のこと、
アニーの犯罪工作など見ても、キング作品中でもSFやホラーの好き読者よりも、
ミステリファン好みの一編と言い得る。
ヒーローは交通事故で重傷を負った寝たきりの中年作家、
ヒロインは人三化七を絵に描いたようなナース上がりのキティなオバン、
メインキャラはこの2人のみであり、この設定で、一読巻を置かせぬ面白い長編を書いてしまうのは、さすがのスティーブンである。空想力が逞しいこと、極限状態でさえ創作意欲を抑えられないこと等、
主人公のキャラが説得力を持って十分に活きているのも本作に精彩を与えている因である。
256:名無しのオプ
07/01/03 22:03:03 E9YqkwBn
>>227
的確な批評だね。
いつもさんくすこです。
257:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/04 21:35:27 aui0jNTG
「ロリータ」の新訳(文庫版)を読んだ。
大久保康雄氏の訳書は、端整で読み易いものであったが、
(この点は、新訳を担当した若島正先生(京大院文学研究科教授)も認めている
ようである。
大久保先生の筆による(?)ロリータが主人公ハンバート・ハンバートが
評する「ニンフェット」そのものの印象なのに対して、若島先生描くところ(?)の
ロリータ像は、話し方ひとつにもフィッツ作品に描かれるフラッパーの後裔ていうか、
不良性を帯びて読めるのが面白い)
それゆえに、「言葉」に凝る傾向が強いウラジミールらしさが感じられないという評
もあった。
今回の若島版ロリータは、原文の雰囲気を重視したものとなっているため、
時には読者サイドにとっては多少の読み難さとなっている点は否めない。
内容的には、「ミステリとして読める作」ていうか、訳者あとがきに記されているとおり、
「ミステリそのもの」かもしれぬという作品全体に「謎」が仕掛けられている
やもしれぬ作なのである。
この辺の事情も十分に意識して新訳されている27章以降の展開は熟読吟味する必要が
あろう。特に普段から低俗な新書ミステリに耽溺しているミスヲタは、
この世紀の名作に取り組むに当たって、この点は十分に心しておけ。
258:名無しのオプ
07/01/05 00:21:49 pcDRbWp+
ナンシー・ピカード『恋人たちの小道』(ハヤカワ文庫)
市民財団長ジェニー・ケインシリーズの第1作。
財団のせいで息子が死んだ、とジェニーをなじった男が、港開発のセレモニーに車で突っ込んでくる。
自暴自棄の行動と思われたが、ブレーキに細工がされてたらしい……。
ユーモラスなタッチのライトなミステリ。婉曲的な表現が多いため慣れるまで読みづらいかも。
はた迷惑なジェニーの父親など、キャラがしっかり書き分けられており面白い。
ただしタイトルで損をしているような……。
ジェニー&ジェフの恋の行方と、作中の地名ラヴァーズ・リープに引っ掛けた邦題と思うのだが、全体の印象からすると微妙。
259:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/06 00:12:45 g68scssk
アガサ・クリスティ「蒼ざめた馬」を読んだ。
テレフォースによる連続遠隔殺人の謎に挑むひとりの青年学者、
古ぼけた館「蒼ざめた馬」に住むマクベスの魔女を想起させるような女たちの登場・・
アガサ長編には珍しい怪奇探偵小説風のノンキャラ作品であり、
J・Dならここぞとばかりに怪奇性を強調してゆき、登場人物たちもどっぷりと
このムードに呑み込まれてゆくところであろうが、
本作の登場人物たちは事件の怪奇性に途惑いながらも常に懐疑的であるのが
アガサ作品らしいものがある。
脇キャラながら作者本人の投影と思われるオリヴァ夫人が、
呪法による殺人を書くことを薦められた時の返答、
「わたしはごくありふれた殺人しか扱わないのです」という言葉に
アガサの基本的執筆姿勢が顕著に読み取れるやに思う。
(訳者も、あとがきで「ありふれた殺人を神秘化させるところにこの作家の才能がひそんでいるのだろう」と述べている)
本作はエスピオナージではないが(英国作家らしくアガサはこの手のものも書いている)殺人方法は、偶然にもタイムリーそのものであり、あらためてこの作家の着眼点の良さに
感心したが、ストーリーには御都合主義による偶然性の不自然さが目立ち過ぎ、
アガサ作品中でも、ミステリとしても中の下レベルの域を出ないものに止まっている
のは、いささか(注 伊佐坂先生ではない(w )残念な感はある。
260:読後感
07/01/06 18:33:39 IQZ8TVgG
「マイアミ弁護士ソロモン&ロード」ポール・ルバイン(講談社)
仕事を選ばないお陰で成功とは程遠い弁護士ソロモン。彼は今
若き新米検事ヴィクトリアに心を奪われていたが彼女はソロモンに
負けたせいでクビになってしまう。その後彼女は弁護士として
知り合いの富豪の怪死に関する裁判を担当しようとするが、
甥の親権を守るため金が必要なソロモンはそこに強引に割り込む。
果たして彼等は勝訴することが出来るのか?そして二人の関係は―。
シリアスなリーガル・サスペンスではなく、
ロマンティック・ユーモア・サスペンスといった感じ。笑える。
裁判よりもロマンスに力点が置かれているからその辺好みが別れるかも。
でも「弁護士は奇策で勝負する」とか好きなら大丈夫だと思う。
あと「アリー・my・ラブ」とか。
ロマンスに関して言えば引っ張り過ぎだし、障害児を餌にするのも
あざとくてマイナスかな。でも続編邦訳されたら読むと思うw
261:名無しのオプ
07/01/07 00:24:33 9lRLGMTe
R.D.ウィングフィールド
『クリスマスのフロスト』(創元文庫)【8.5点】
クリスマスの直前、町の幼女が行方不明になった。
指揮を執る警部フロストは多発する大小の事件に奔走するが・・・
世評高いがなぜか長期間積読状態だった本作に挑戦。
赤川次郎の大貫警部みたいなキャラかと思っていたが、
もっと親しみある人柄でしたね。事件は派手でないが、展開が上手く
あれよあれよという間に一気読み。ラストにもうひとひねり有るかな、
と思ったが、充分に面白かったです。
262:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/07 21:27:33 PPp8uhL+
ノーマン・ベロウ「魔王の足跡」を読んだ。
世界の不思議といった類の書籍に取り上げられることが多い実話「英国における
雪上の謎の足跡」をネタとし、
(有名どころではフランク・エドワーズの「世にも不思議な物語」に採録され、
同名のテレビ番組によりこのエピも映像化されオンエアされている)
ミステリ・サークル的な解決の呈示を試みた、まさにジョン張りのコテコテな
怪奇探偵小説である。
本格ミステリ倶楽部ではある程度の評価を受けた作とはいえ、結局、この程度の謎解き
を読んで喜んでいるのは、毎週お茶の間で欠かさず「名探偵コナン」を手に汗握って
鑑賞し、稲垣金田一シリーズのオンエアを心待ちにして、
「稲垣メンバーの金田一キター!」と正月早々から絶叫した末、御近所から不審者として
通報されてしまうようなレベルのミスヲタに過ぎないという感がある。
この奇想天外とは言わぬまでも奇抜なトリックを看破するのはそれこそ不可能事だと
しても、(先に翻訳されたタルボット作品を想起させる面があるのも気にかかる)
普通に読んでゆくと犯人の目星は割りと簡単に付くのも難、
とにかく本作の評価は、否定的な意味合いを強く込めた漫画ちっくの一言に尽きる。
森英俊氏のあとがきによると、本作と同じ主人公の警部が登場する作品が他にも
4作(未訳)あり、この作者の代表作とされているらしいが、
記されたあらすじを読む限りでは、いずれも本作より面白そうに見えるのは皮肉である。
263:名無しのオプ
07/01/08 19:13:16 n0hPrNC7
M.J.トロー『霧の殺人鬼』(ハヤカワ文庫)
切り裂きジャック事件後のロンドンで、レストレイド警部が、殺人を見立てた詩を送りつける無差別殺人鬼を追う。
彼を主役にしたパスティーシュのアイデアが面白い。
オスカー・ワイルドやデュー警部など、同時代の著名人が次々に現れるさまは、まるでキム・ニューマン『ドラキュラ崩御』のよう。
ただ作品としては微妙である。
連続無差別殺人なので、事件がブツブツ途切れてしまうし、謎解きの興味も薄い。
作者は、ホームズ作品中の警官が腰抜けに書かれてあるのに憤慨しこれを書いたそうだ。
なるほどホームズはコカイン狂、ワトスンは駄目医者として、チョイ役で登場する(ちなみに別にドイルも出る)。
だが、こんなホームズファンに喧嘩を売るような書き方より、「会話には出てくるけど登場はしない」というような演出の方が、スピンオフっぽくて面白かったのではないか。
(なお訳では、ホームズもワトスンも、自分のことを「わし」と言う……あかんやろ)
264:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/10 06:40:29 GcKz2KGv
マックス・アフォード「魔法人形」を読んだ。
おなじみ国書刊行会の世界探偵小説全集の1冊だが、なんとなく積ん読していた作。
呪いの人形の謎、いわく因縁付きの館、ここに集ういずれも一癖ある人物等、
森英俊氏はオージーのジョンと評しているが、むしろ前半部分は本邦の横溝作品を
想起させるような作品だが、警察が動き出し犯人探しが本格化する後半に入ると、
一転、怪奇性は影を潜め出し、緻密な捜査と論理的な推理が中心となる。
内容的には作者がラジオ作家ということもあってか、御都合主義な偶然性が目立ち過ぎるのが難、また、丁寧に読めば犯人を当てることは難しくはない。
あとがきでアウトラインが紹介されているこの作者の他の作品の方が面白く
感じられるのは、前述した「魔王の足跡」と同様であった。
(奇しくも、「魔王の…」の元ネタとなった英国における雪上の謎の足跡が本作の最後の方で簡単に紹介されている)
265:名無しのオプ
07/01/11 23:59:32 dVHYEg/4
エラリイ・クイーン『第八の日』(ハヤカワ文庫)
ハリウッドからの帰宅中、ネバダの砂漠で迷ってしまったエラリイは
ふとしたことでクイーナンという集落へ迷い込む。
彼を来るべき預言者のように扱う村人たち。
半世紀にわたって犯罪すら起きていなかった街に、恐ろしい犯罪が……。
何気なく読んだ後期クイーンの作品だが傑作。代筆らしいけど。
事件は大したことがないものの、宗教的価値観の前に敗れさるエラリイの苦悩が、
実に生々しく、ダイレクトに伝わってくる。
最後に明らかになる「失われた書」の真相(その皮肉!)、一文だけの第七章、
エピローグの高揚感もすばらしい。
『災厄の町』を読んだ時も思ったが、自分は後期クイーンの方が好きだな。
266:読後感
07/01/12 02:00:43 F26YwF0L
「ダーティ・トリック」マイケル・ディブディン(扶桑社)
この本は「私」の告白である。薄給の教職に甘んじている「私」は
とあるパーティーで知り合った裕福な人妻と不倫関係になる。
ズルズルと深入りしていく「私」に運命は味方し、やがて欲しいものを
全て手に入れ、「私」は成功者となった。しかし―。
思わせぶりなタイトルといい叙述スタイルといい何か
サプライズがあるのかと胸ワクワクで読んだのに報われず。
まあクライム・ノヴェルでした。一人称ならでは細かな特徴等に
リアリティは感じるもののだからどうしたってなわけで……。
ダグラス・ケネディの縮小版みたいな感じなのかな。
267:名無しのオプ
07/01/12 02:44:09 PBpP+ogE
「狂嵐の銃弾」 D・スカウ
バカミス。
作者が狙って書いたのかはたまたヤクをやりながら書いたのか?
おそらく後者ではないか
268:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/12 20:47:32 qS/qkU2l
アガサ・クリスティ「邪悪の家」を読んだ。
エルキュール・シリーズ第6作と初期作品だが、アガサファン以外には読まれることが
少ない作かと思う。
初期のエルキュールの自己顕示欲の強さをあらためて再確認させられるような作
であり、中期以降の落ち着いた雰囲気の彼氏を知る読者にはギャップも感じ得よう。
内容的には読者がエルキュールの推理の過程をトレースするのは無理があるとしても、
仰天の結末なのは間違い無く、館ものとしての怪奇性(あえて、何らいわく因縁も無い
平凡な屋敷をメーンな舞台としているようである)や観光小説的要素を強調することも
可能な設定だが、この方向性を取らず、会話文を多くし余計な描写を削った文体が
テンポの良さを出すことに成功しているのがアガサらしい。
ベロウやアフォードといったニ線級の作を読んだ後だと、
n非常にスマート、かつ、シャープに感じられる。
269:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/13 17:21:40 mNT8457w
アガサ・クリスティ「エッジウェア卿の死」を読んだ。
これもエルキュール・シリーズ初期作(第7作)。
創元推理文庫にも別題で収録されているとはいえ、
アガサファン以外は手に取ることが少ない作であろうかと思う。
結局、謎解きはアクロバティックなおなじみのパターン、
犯行の動機に宗教的知識が無いと(エゲレスでは常識)日本人にはぴんと来ない
部分があるのは難としても、語りと仕掛けの巧さで読まされてしまう感じである。
訳者は日本SFの父のひとりである福島正実氏だが、
その海外ミステリに関する読書量は別としても、
翻訳となった場合には、ミステリしかもアガサ作品の雰囲気に馴れないのか、
エルキュールと大佐コンビの会話が、他の訳者の作に比べて、
今ひとつよそよそしく、ぎこちない感があるのを否めないのが残念である。
ひろゆき氏なら「新訳キボーン!」とか言うのではなかろうか(w
270:名無しのオプ
07/01/13 17:35:23 7zDFsejh
書斎さんは2ちゃんがなくなっても全然困りそうにないなあ。
ネットストーカーどもが困惑しているwのを尻目に、
この悠々せまらざるレスのことよ。
271:名無しのオプ
07/01/13 23:32:23 1KZNdMxw
ピーター・ラヴゼイ
『最後の声』(ハヤカワ・ミステリ文庫)【8.5点】
中年女性の殺害現場に赴いたダイアモンド警視は、遺体が
妻のステフであることを知る。捜査から外され、剰さえ容疑者と
見なされた警視は、命令違反を覚悟に単独捜査に。シリーズ第7弾。
最後まで犯人像を絞らせない巧みなプロット、伏線の妙はさすが。
とくになぜ(メール①)という点は、レッドヘリングも効いていて
真相が分かった時には感心した。レギュラー・メンバーも元気そう。
また途中まで(②)か? と思った人物が最後にあんなことになって・・・
シリーズ読者のひいき目かもしれんが、高度安定のすばらしい小説。
272:名無しのオプ
07/01/14 00:25:12 hhgp6TWq
書斎が書いてるクリスティの「論考」、俺が高校くらいの頃に読んだものばっかりだなぁ。
しかし自称知識人のクセにこの程度の感想もどきしか書けないんだから笑えるw
273:読後感
07/01/15 03:45:50 lPyfNQ1m
「アララテのアプルビイ」マイクル・イネス(河出書房新社)
出張で海路オーストラリアへ向かっていたアプルビイは途中で
Uボートの襲撃を受けてしまう。船は沈没し、アプルビイら
生き残った乗客6人はどことも知れない島へ漂着する。
何とか生活していこうとする一行だったが、数日後彼等の一人が
海に浮かぶ死体となって発見される。犯人は残りの4人の中に
いるのか?
丁度「LOST」が始まった頃でタイムリー(?)に読殺。
これ予告であらすじ読んで楽しみにしてたんだが、途中いらん文言が
目に入って水を差された。曰く「謎解きを期待するな」「本格だ
と思ってはいけない」みたいな。何ですかその予防線は。
感想なんて所詮主観だってのに牽制してんじゃねーよボケ!!
本格であろうがなかろうが面白けりゃそう言うしつまらんなら
糞つまらんと言うわさ。ご心配なく!
と、やや気分を害しつつ手に取ったわけですが……あるじゃん謎解き。
あらすじから予測されるものとは違った形になっていくけれども。
ただ面白いかと言われると、う~ん、お モ し ロ い ?
本格一辺倒の人ではないのは知ってたけどこれはどうも
中途半端な印象が拭えなかった。ラストもかなりご都合主義だしなあ。
追伸 40年前の児童書みたいな表紙は嫌いじゃない。
274:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/01/15 21:25:03 m6XUafDV
デイヴィッド・マレル「廃墟ホテル」を読んだ。
このミスのランキング入りはしているものの、下位になるとこんな程度であろうかという
のが正直な感想である。
本邦でも最近は静かなる廃墟ブームであり、写真集やルポなども出版されているため、
この点ではタイムリーな翻訳とは言い得るが、
所変れば品変わるというか、どこかマターリ、のんびりした感が漂う日本の廃墟探訪
とは異なり、
本書で紹介されている諸外国の廃墟のスケール感やクリ―パーなる廃墟深訪者
(というか冒険者)たちの時には命がけの廃墟に注ぐ情熱には驚嘆すべきものを感じざる
を得ない。
作品としては、謎解き有りの、アクション有りなサイコホラー風の冒険小説の類だが、
内容的に盛り沢山過ぎて焦点が定まらず、ありがちなハリウッド製B級アクションの
「ホン」を読まされているような通俗性が作品全体を安っぽいものに見せてしまって
いるのが惜しい。(ヒロインの途中交代だけは意外性があったが)
冒険小説でおなじみの海洋・山岳・大氷原といった自然界がその舞台になり難くなり、
共産圏の解体、大都市の治安強化等、国際社会や大都会さえその舞台となり得なく
なって来た現代において、巨大な廃墟という舞台は冒険小説の舞台としては格好のもの
であっただけに残念である。
作中で著名な(欧米人にはと言える)な小説・映画、人物等について作者の薀蓄
や批評と思われるものが登場人物の口を通じて語られているが、
これは本筋を離れた読ませどころと言え、なかなか面白いものはあるが、
(例えば、「ティファニーで朝食を」のヒロインホリーに関する見解等)
果して、作者はこの饒舌が物語のスリルを殺ぐ結果になっているのにも気付いているで
あろうか。
275:名無しのオプ
07/01/15 23:02:41 WjWFiPhu
あのさ、臭い魔神さんよ。
インターネットがまだ電話回線でつながれていた頃…そうさなぁ~、
「ISDNの方がADSLより快適だよ。接続早いし」「俺、テレホーダイ使っているぜ」とか言われていた頃、
あの当時ならYahooの掲示板も楽しかったし、それなりの盛り上がりもステイタスもあったかも。
でもな、上の方で書いている人もいるけど、2ちゃんが出来てからこっち、
ネットユーザーは殆どこっちに流れちまったの。
だけどここしばらくは1日のアクセス数は、mixiが2ちゃんねるを追い越してしまった。
荒らしが野放しとか、犯罪がらみの報道をみて新規の住人がどんどん流れ込んできて、
数年前からいる人は、削除がなかなか追いつかない2ちゃんに愛想つかせて
個人で発信できるブログやmixiに足場を移しているんだよ。
BBSはどこもかしこも過疎化している。2ちゃん以外でもね。
そんな情勢の中で、今頃になって「Yahooのトピに行くつもりである」なんて宣言してるお前が
それほどインターネット時代に取り残された爺なのかよく考えろ。
276:名無しのオプ
07/01/15 23:36:23 RmGMZHtD
>>275は蟻板からのコピペ
スレリンク(mog2板:108番)
277:読後感
07/01/19 03:41:20 fTjU51X/
「裏切りのノストラダムス」ジョン・ガードナー(東京創元社)
時は1978年のロンドン。ロンドン塔にやって来たドイツ人女性が
衛兵に告げた。「私の夫はここで処刑された」と。事は英国海外
情報局に伝わり、興味を覚えた局員ハービーが調査を行うことになるが、
その先には戦時下のドイツで進められたという「ノストラダムス作戦」が
姿を現して来る。関係者から聴取を始めるハービー。そんな中、
例のドイツ人女性が狙撃される事件が発生した。一体誰が、
何のために?そして彼女は何者なのか?
530ページと分厚いのが英国スパイ小説らしい。但しル・カレみたいに
読みにくくはない。しかし面白くもない。ほとんどが回想シーン
なのだがここで語られる作戦にあまり現実味が感じられない。中世か!
更に回想の初めに意味もなく話が前後するのも?だった。
「意外な結末」もあるものの伏線が曖昧なので感心出来ない。
折角下地がこんだけあるのに勿体無い……。
発端の謎の解答にもがっくりきた。だったらこの段階で終わりじゃん!
他の作品や続編にもいくらか興味を残しつつ本を閉じた。
278:読後感
07/01/19 23:57:01 fTjU51X/
「証拠は語る」マイケル・イネス(長崎出版)
象牙の塔で起こった奇怪な殺人事件。被害者は頭を潰されており
側には隕石が落ちていた。アプルビイは
地元の警部補と共に捜査に当たるが謎は凶器だけに止まらず
人間関係に纏わる様々な謎が彼等の前に立ちはだかる。
もう名前統一しなよ。
いや、しかし面白かったでつよ。やっぱイネスはコーディネイト。
訳の分からん謎がわさわさ出て来るのもたまらんし、ラストの
パタパタ返しも「ある詩人への挽歌」を思わせてGood!
新本格派特有の長さも今回は気にならなかった。これは本ミスに
期待が出来るんじゃないか。
あと(メル欄)は(メル欄2)てことなのかな?
ところでウチの区「アララテ~」は4冊購入+予約1だったのに対し
本書は1冊購入+予約1。この差は出版社の知名度かしら?
中身は逆だと思うのにな。
279:名無しのオプ
07/01/20 00:24:10 3OxZZYUY
買えよ馬鹿
280:読後感
07/01/24 12:38:22 1wWG0FGu
「復讐」ティム・グリーン(二見書房)
前途有望なネイティブ・アメリカンの弁護士レイモンドはある日突然
地獄の底に叩き落とされる。殺人容疑、有罪、そして長い刑務所生活。
絶望していたレイモンドだったが、何度目かの移送先で巡り会った
老人に思わぬことを聴かされる……。果たしてレイモンドは
裟婆に戻って敵に報復することが出来るのか?
絶対無敵ガンクツオーキター!!!!!!!!!!!!!!
俺これ系の話マジ好きなんすよ。これはもう
病気かも分からんね。
ただ、模倣作には時折出会うんだけどキッチリ満足させてくれるものは
少ないんだよなあ。だから不安半分で読んだんだが、これは良い!
少なくともガッカリ来ることはないと思うのでオススメ。
ホニャララが何度もホニャララされるとこなんかGJ!
て感じだった。ラストも爽やかで実にスガスガしかった。
ただ短くするために急いでいる部分があり、シノプシスみたいに
感じてしまうことも。一人称が「~いる」連発なのも性急さを感じる。
今まで「復讐の時」「連城訣」「天国の階段」「白髪鬼」
「ヴェンデッタ」等読んで来たけどこれは今んとこ暫定一位かも。
キチガイ度は「白髪鬼」がダントツだけどw
281:あらすじごめん
07/01/25 16:16:46 yYGEvy6V
ジャック・カーリイ『百番目の男』(文春文庫)【7点】
市内で連続する男性殺人事件。遺体は頚部を切断され、肉体の一部に
謎のメッセージが刻まれていた。ある事件を過去に引きずる刑事カーソンは、
相棒ハリーとともに事件解明にいどむ。
前半の刑事同士のいがみあいや、検視医アヴァとの関係などまどろっこしくて
投げ出しそうになったが、後半の精神病院の辺りから面白くなり、例の「真相」に
唖然。同時に前半の伏線がなかなか巧みに張られていたことに気づき感心。
ただ、(メール)なので、動機はともかく真犯人がわかってもカタルシスはなかった。
小説としては【6点】、真相の突飛さに敬意を表して+1点。
282:読後感
07/01/27 13:30:52 KeQ1L4Hr
「サンキュー、ジーヴス」P・G・ウッドハウス(国書刊行会)
有閑青年バーディーは楽器好きが高じて田舎に引っ越す羽目になり、
頼りにしていた執事のジーヴスにも辞められてしまう。
親友チャッフィーに引っ越し先を世話してもらったバーディーだったが、
チャッフィーの家でかつての婚約者ポーリーンに再会してしまう。
気まずさを隠し切れないバーディー。しかしチャッフィーと
ポーリーンがお互いを憎からず思っていることを知り……。
シリーズ第6弾。何故これから読んだかは言わずもがな。
ファースというかユーモア小説としてはいい出来だと思うものの、
個人的にはかなりガッカリした。解説も何か釣ってるし。
あんな設定必要だったのかなあ……。
283:読後感
07/01/28 14:11:09 4cjcvT+u
「妖女ドレッテ」ワルター・ハーリヒ(東京創元社)
荘園管理人シュテーゲンは遠ざかる馬車を見つめながら
立ち尽くしていた。ドレッテ―彼が愛した女は行ってしまった。
彼女の夫である荘園主が閉めきった書斎で不可解な死を遂げ、
全ては変わってしまった。ドレッテ恋しさに都会へ来たシュテーゲンは
再会した彼女から事件が再調査されていると知らされる。
―彼女は俺がやったと思っている。確かに俺達は彼を目障りに感じ、
俺は殺人を計画した。しかし、俺はやっていないのだ……。
物語としてはまあ読めるが密室トリックはすぐに解明されてしまうし、
あまり魅力もない。発表時期や国を考えると仕方ないか。
284:読後感
07/01/30 02:48:23 E5Loq5jE
「聖アンセルム923号室」コーネル・ウールリッチ(早川書房)
ニューヨーク、聖アンセルムホテル。その一室で繰り広げられる
一夜のドラマ。宿泊客の様々な人間模様を描く短編集。
一作除いて情感だけのもの(by二階堂黎人)。
まあガチガチの本格に飽いてそういうの読みたくなったらどうぞ。
285:読後感
07/01/30 03:07:34 E5Loq5jE
「時計は十三を打つ」ハーバート・ブリーン(早川書房)
写真家レイノルズは最新の細菌研究所を取材するため大西洋に浮かぶ
キルゴア島へ向かう。所長のウェイランド博士はレイノルズに
新兵器の開発に成功したと告げるが、その直後何者かに殺されてしまう。
現場には寒天状のものが散らばっていた。細菌が流出してしまったのか!?
連絡船が来るのは数日後。孤島に閉じ込められたレイノルズ達に
襲い来る感染の恐怖そして飢餓。果たして犯人は―?
シリーズ3作目。でも奥さんが冒頭ちょこっとしか出て来なくてカナシス。
本格として見ると厳しいかな。トリックがあるわけでもないし
推理らしきものも最後に申し訳程度にしか出てこない。ちょっとした
スリラーか。やっぱブリーン「ワイルダー一家の失踪」に尽きるようで。
論創が中々手放さない「メリリーの痕跡」はどうなんでしょうか?
286:読後感
07/01/31 13:11:07 c1cWOk1U
「六つの奇妙なもの」クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ(論創社)
伯父と共につましい生活をしていた女性マージョリーは
喫茶店で出会った霊媒師に雇われ住み込みで働くことになった。
霊媒師の人柄に感化され心霊現象を信じるようになった彼女。
やがて自身も霊媒をするようになるが、次第に心身が衰弱していく。
マージョリーの窮状を知った婚約者テッドは降霊会に潜入するが……。
「妖女のねむり」とかもそうだけど、本格らしいということは
わかっていてもどこで本格味が出てくるのかわからないものを読む時の
胸のときめきって素敵やん。↑のあらすじから話は更に膨張していく。
真相の大枠は前半で気づくけど細部の謎やトリックは驚きに足ると
思うし、フーダニット興味もがっちり確保している。それが
唯一残った謎と相まって事件のカラクリが鮮明になる様は見事。
スケールのでかさは「死の相続」に及ばないものの、完成度は高い
と思う。異色本格としてお薦め。ちなみに二階堂黎人の感想は
「奇妙な味が好きな人にはお薦め」。言わんとすることは分かる。
287:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/02/03 23:37:48 Z5KHaM9p
ローリー・リン・ドラモンド「あなたに不利な証拠として」を読んだ。
今更ながらではあるが、昨年度のこのミス、文春の両ランキングのベスト1、
ダブルクラウンに輝いた警察小説(というか実態は婦人警官小説とでも称すべき内容)
の佳作である。
深夜の屋外捜査の緊張感、単独で死体を目前とした際の恐怖感、
犯人と対峙した緊迫感等々、警察官という職業上、当然対面するであろう状況が
作者の実体験(5年の警察勤務)を活かし、ヒラリー、ニコラス、エド、
ペール&マイ夫妻といった過去の警察小説の名手たちも書き得なかったほど
ビビッドに息詰るような迫力で描かれ、読む者に強烈な印象を残す。
ただし、警察小説をミステリの1分野と把握する以上、本作をミステリと言えないことも
ないが、最終話「わたしがいた場所」はどう見てもミステリとは言い得ない領域の作と
なっており、MWA探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞受賞作の「傷痕」にしても、
最終話への布石となる女性警官グループが遭遇するアクシデントの顛末を描いた
「生きている死者」にしても、収録作品中では比較的ミステリ色が濃いものさえ、
意外性と言えるほどの展開は無い。
288:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/02/03 23:39:13 Z5KHaM9p
むしろ「傷痕」などは、こういった作品にありがちな悪徳警官や無能な捜査官ではなく、
むしろ腕利きゆえの捜査の誤びょうの可能性を抉ったものとして、
ひとつの小説として読んだ場合は非常に面白いものがあるのだ。
こういった点で言えば、本作はネタばれを恐れさせない、ネタばれされても十分に
読み応えがある(反面、ミステリとしては、ばらすほどのネタが無いとも言えるのだが)
単なる読み捨てミステリを越えた「ホンモノの小説」だとも言い得るのだ。
ただし、一点だけ不満点を挙げれば、まえがきを部分成す作者の謝辞にもあるとおり、
12年のにわたって書かれた作品を集成したもののためか、前半の作と後半の作では
作風の変遷が際立っており、やや調和を欠く感があることである。
3つの短篇連作により敏腕女性警官の波瀾の一代記をクールに描き切った
キャサリン・シリーズと比較した場合、
前述した最終話「わたしがいた場所」は心の癒しの世界を描いたヒーリング小説
とでも称すべきものへと転じているのである。
各個別の作品の出来は悪くないだけに、編集にもう一工夫が欲しかったところである。
本作を読むことにより、ミスヲタが安手の謎解きに傾斜したミステリを焚書するだけの
良識を持ち得るか否か、これはひとつ試金石ともなる作である。
各人、心して読め!
289:名無しのオプ
07/02/03 23:59:42 v+zAFw23
>>287
ニコラスってえ~と
ぶれいくじゃなくてフリーリングだろな
一応ニコラス・フリーリングは知っているのか
でもジェイムズ・マクルーアの名前は出てこなかったようだな
あと名手と言えるかは分らんがローレンス・トリートも入れて欲しかったな
290:名無しのオプ
07/02/04 09:00:21 CZxuW/2+
>>287-288
長々と回りくどいが上っ面をなでただけの感想だな。
291:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/02/04 15:48:21 23atjR7V
>>289
どうせ突っ込み入れるのであれば、まずジョゼフの名を挙げたまえ。
ローリー(注 寺西ではない)の作風から見て、彼氏の作がテースト的には
一番近いかと思う。
292:名無しのオプ
07/02/04 18:08:42 gcEQeQsJ
いつもよきアドバイスさんくすこです。
>>287も礼を言っておけ。
293:名無しのオプ
07/02/04 18:44:53 s0rnKQki
>>292
馬が他人に礼を言うわけないだろ
294:名無しのオプ
07/02/04 20:55:18 gcEQeQsJ
しかし読後感はウザイね。
295:名無しのオプ
07/02/04 23:16:30 dcBYAfOT
全くだw
296:読後感
07/02/05 00:33:02 aGMsiqhI
「潜航ノーススター十字軍」ウィリアム・カッツ(角川書店)
アメリカの原子力潜水艦が乗っ取られた!?
「ノーススター・クルセード」と称する犯人達の目的は米ソ両国に
戦端を開かせ第3次世界大戦を引き起こすことであった。
彼等の謀略にのせられ米ソ間の緊張は高まり一触即発の危機に陥る。
果たして世界の行方は―?
カッツって心理サスペンスの書き手かと思ってたらこれが
デビュー作だそうで。
冒険小説の中でも軍事謀略小説といった感じで、アメリカ首脳、
ソ連首脳、そしてテロリストの動静が並行して語られていく。
キャラクター個人のストーリーはなく、全体のプロットで読ませる
性質のものなのでその辺好みが別れるかも。読み慣れぬせいか
最初は退屈だったが後半に行くに従って容赦のない展開がスリリングに
感じられてきた。結果的に主人公の意向がばかりが通るのが
少し気になったがそれも性質上仕方のないことなのかも知れない。
297:名無しのオプ
07/02/05 05:55:12 sw9Y8q8h
>>294-295
書斎のウザさに比べりゃ遙かにマシw
298:名無しのオプ
07/02/05 12:03:26 /8wY2hPW
J・ボール「夜の熱気の中で」(ハヤカワ・ポケミス)
1965年、あのオスカー受賞の名画「夜の大捜査線」の原作。
8月のうだるような暑さの深夜、ある南部の町で、音楽祭に招待されていた指揮者の男が殺されているのが
発見される。地元警官のサムは駅で列車を待っていた黒人を強引に連行するが、彼こそはカリフォルニア・
パサディナの優秀な警官にして誇り高き男、ヴァージル・ティッブスだった。黒人差別の嵐の中、ヴァージル
は徒手空拳で捜査を続けるうち、地元警察の連中も心を開いてくる。そしてたどり着いた真相とは・・・。
これは傑作。印象的なヴァージルの初登場シーン、南部の閉鎖的な町の描き方、地元警察の態度が徐々に変化
してゆく過程や、プア・ホワイトの状況、そして登場人物を一同に会しての本格風の謎解き、名場面とも言え
るラストシーンなど、どれを取っても満点に近い出来。惜しむらくは、トリッキーな仕掛けに乏しく伏線も
やや不足なため、古典的ともいえるティッブスの謎解きシーンがちょっと盛り上がりに欠ける点でしょうか。
しかし、名作中の名作。
299:名無しのオプ
07/02/05 15:30:48 wpiRCdEl
読後感もいい加減に人の意見を聞くべきだな。
300:名無しのオプ
07/02/05 16:37:49 TiXBCzCQ
名古屋の竹石圭すけって小学生を強姦して捕まったクズ野郎だろ?
301:名無しのオプ
07/02/05 19:41:32 zI0QtcVY
デイヴィッド・リンジー『沈黙のルール』(柏艪舎)
刊行は去年だったけど、ようやく読了。
新潮社から柏艪舎に移行して、地味に刊行されているリンジー作品。
こういう身代金の取り方もあるか、と思いながら読み始めたものの、
ジワジワと主人公を追いつめる敵役の存在も不気味でしたが、
いざストーリーが展開していくと、普通の謀略小説っぽくなってしまいました。
それでも主人公の妻の存在が、いわゆる巻き込まれ一般人の心情を表していて意外に良かった。
読後爽快!みたいな作品ではないけど、地味だけど、これからもリンジー作品を刊行し続けてほしいです。
ただ翻訳文中に妙に小難しい熟語を使っていることが多く、ルビをふってあるものの、
いちいち辞書を引きたくなってしまいました、で高校生向きの辞書には載っていない言葉もありましたよ。
302:名無しのオプ
07/02/06 07:44:18 zZ59Zpd0
このスレ住人の民度の差が垣間見れて面白いな。
荒らす奴、それに釣られて雷同しちゃう奴、雷同しないけど
釣られちゃう奴、徹底スルーしてる奴、様々見れて飽きない。
303:名無しのオプ
07/02/06 21:10:05 ubQ81qcf
エド・マクベイン『われらがボス』(ハヤカワ文庫)
87分署シリーズ26作目。
管轄区の溝の中で、6体もの全裸死体が発見された。
調査を始めたキャレラたちは、三つのギャング団の抗争劇に行き当たる……。
ギャングのボスの供述が本編と並行して進み、謎解きの要素はほとんどない。
70年代初頭の、ニューヨークの荒廃ぶりをテーマにしたもののようである。
作者の意図は理解できるが、ミステリとして今読むと辛いかな。
主要キャラクターに何か変化があるわけじゃないし。
304:読後感
07/02/12 13:07:03 UlTCIwqz
「結末のない事件」レオ・ブルース(新樹社)
警官を辞め探偵業を始めたビーフの所へ舞い込んだ依頼、
それは殺人容疑で拘留されている兄の無実を証明して欲しい
というものだった。張り切って調査を開始するビーフだったが、
事態は好転の兆しを見せないままタイムリミットが近づいてくる。
レオ・ブルースの良い所は陸橋みたくパロディに終始しない点だね。
だからこそそれを楽しむ余裕も生まれるわけで。
本書は前作を凌ぎ前々作と並ぶ面白さだと思う。ちょっと
じれったくなるかも知れんけど。
ビーフのどこか捉え所のないキャラクターは惹かれるものがある。
305:読後感
07/02/12 14:30:57 UlTCIwqz
「風の影」カルロス・ルイス・サフォン(集英社)
内戦後のスペイン、バルセロナ。10歳の少年ダニエルは父親に
連れられて行った本の墓場で1冊の本に巡り会う。「風の影」という
タイトルのその本に魅せられたダニエルはやがて作者フリアンの
数奇な人生の軌跡を辿ることになる……。
「ジョン・ランプリエールの辞書」や「形見函と王妃の時計」みたく
本を巡るミステリーといった趣き。でもその2冊よりも読みやすかった。
プロットだけ抽出すれば別に大したことない話なんだけど、
そこを上下2巻という長さも感じさせずに読ませるのが
作者の力量でしょうね。ただ著者近影は要らないと思った。
追伸:諸○玲子ってそそる女だなぁ。
306:名無しのオプ
07/02/12 20:21:12 EapZ9uul
「三人の名探偵のための事件」 レオ・ブルース
タイトルどおり名探偵のパロディ作品。
パロディ面は秀逸で、オリジナルを知っていると結構笑えると思う(特にスミス師の
セリフとか、「オリエント急行」のネタとか)。
ただ、本編は密室殺人の多重解決という凄いことをやっているわりに、何かもう一つ
欲しかったという気も。淡々と話が進むせいか、ちょっと物足りない感じ。
307:読後感
07/02/14 13:52:00 gWNZjAWG
「震える熱帯」ボブ・モリス(講談社)
あらぬ罪を着せられ2年の服役を強いられたザック。待望の出所日、
出迎えに来るはずの恋人の姿はなく代わりにいたのは謎の男二人。
ザックは彼等を交わし恋人の代理で来たという男の車に乗り込むが
何故か置き去りにされてしまう。その後以前の住所地に向かったものの
再び先程の男達に捕まってしまい―。
以前書いた「復讐」のように報復が主の話ではなく、恋人に会いたい
一心の主人公が訳も分からず騒動に巻き込まれていくというサスペンス。
個人的に巻き込まれ型っていうのが一番のめり込めるジャンルだ。
古典的な道具立て等ちょっと本格風味もありつつ話は展開していく。
もっとも難易度はさして高くなく終盤の決めゼリフもニヤニヤするだけ。
頭を使わず力を脱いてひつまぶしするには最適かな。
続編も訳されたら読みたい。
308:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/02/17 20:58:34 fqxiO94r
ジョゼフ・ウォンボー「センチュリアン」を読んだ。
返す返すも絶版が惜しまれる警察小説の傑作中の傑作である。
舞台は60年代前半、60年の夏にLA市警の警官となった3人の若者の成長と堕落(?)、苦難等々が、65年までの6年間、各年の夏を舞台に警察官出身の作者らしく
ドキュメンタルに活写されてゆく。
クライマックスは、最終章におけるLAの黒人暴動であり、
まさに公民権運動がピークに達した60年代の空気がビビッドに伝わって来る
戦場ルポを読むかのような迫力に富むものとなっているが、
ここに至るまでの、短篇の如き日々の警察活動のエピを積み重ねた構成も
巧みであり、全体を通じて読み応えがある作品となっている
次々と登場しては退場してゆく
メーンとなる3人の若手警察官の相棒や上司が揃いも揃って個性派であり、
特に、3人のうちのひとりガスに対してその人生観にまで影響を及ぼす
ベテラン警察官キルヴィンスキーの最前線警察現場の哲学者的存在感は強い印象を
残すものがある。
(余談ながら、本書の映画化作品では、「パットン大戦車軍団」のジョージ・C・スコット
がキルヴィンスキーに扮し、原作以上にメーンなキャラとなっている。
だが、その行く末は原作同様に…悲しく酷い)
309:書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
07/02/17 20:59:35 fqxiO94r
また、インテリ警官ロイと組むアル中警官ホワイティもその後のロイの行く末を思うと、
忘れ難いキャラである。
当時の警察組織の問題点は勿論のこと、
職業人として、あるいは人間としてもどうかと思われるキャラも多出するが、
読んでいて反感や嫌悪感は感じさせないのは、
作品の根底に、現場の警察官たちに対する作者の愛情と共感の眼差しがあるゆえであろう。
これが、「…ショッキングな内容にもかかわらず、内幕暴露の意図が表立っていないのも、
この作品を成功させている理由の一つである」と訳者あとがきにも記されることとなった
因かと思う。
310:読後感
07/02/22 13:13:01 NKeVUxuk
「閘門の足跡」ロナルド・A・ノックス(新樹社)
テムズ川を下っていた男が行方不明になり、乗っていたボートが
川底から発見される。男は直前まで従兄弟と一緒であり二人は
以前から不仲で叔父の遺産に関する問題も存在していた。
保険会社の嘱託探偵であるブリードンは消えた男の生死を
突き止めるべく調査を開始する―。
ノックスを読むのは3作目だが相変わらず捻りに捻ったプロットで
読み難かった。ホワイダニットが次から次へと提示され、やがて
悉く解き明かされるのだがその経緯がまたややこしい。
その陰に隠れてあまり目立たない小さなトリックには不自然さが
目立った。
別に複雑なのが悪いとは思わないが、読んでてイマイチ楽しくない。
エンターテイメント性が薄いように感じた。
サプライズも仕掛けられているんだけどね。
とりあえず「サイロの死体」はいずれ読もう。