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ノーブラッド―ツインテール襲来! 作:布施文章 画:会田孝信
ここにいる皆様はもう既にこの作品を手に取られただろうか。
最近頓に多い吸血鬼ものの珠玉の一作である。
おそらくすでに読了された方が多いとは思うが、あえてこの作品をまだ読んでいない方に向けて、拙文ながら申し上げたい。
ノー・ブラッド。まずこのタイトルに惹かれた方は間違いなくこの作品を買うべきである。
血、ダメ。ゼッタイ。こうである。
血というのは押し並べてエロティックな印象を与える。
その血というものを否定する。エロティックな作品はいらない。作者の意図が込められたタイトルである。
吸血鬼である主人公は、己が吸血鬼であることを隠し、平凡な人間としての生活を望み、実践している。
しかしながら彼は人間ではなく吸血鬼であり、血を摂取しなければ本来生きていくことすら難しいのである。
血。地球上に存在する多くの生物は血がなくなれば死んでしまう。その血というものを否定し、決別した少年。
それがこの作品の主人公である。彼の苦悩は間違いなく読者に共感を覚えさせるだろう。
必要なことができない。あるいはしたくない。そのような悩みを持つ方はぜひとも主人公の生き方を知るべきだ。
次に表紙、イラストに惹かれた方へもお勧めしたい。
比較的若い、いやむしろ幼いと表現していいこの少女がこの作品のヒロインである。
外見に騙されてはいけない。彼女はとある組織のエージェントであり、アルファロメオのジュリアを駆る凄腕のドライバーでもある。
サブタイトルの「ツインテール襲来」からもわかるとおり、彼女は主人公から見れば敵である。
敵ではあるが、味方でもある。明確な敵対関係にはないが、友好関係もないのである。
主人公の部屋に押しかけ、ベッドを占領するという卑劣な行為は彼女にとって必要であったからやったことであり、そこには憎悪も愛情も存在はしない。
己の身を顧みずに任務に尽くす。その彼女の生き方は物語の終盤になっても変わることはない。
意志の強そうな顔を見せる表紙の絵は、まさにその彼女の生き方を描いた素晴らしい絵であると言えよう。
1レスあたりの容量をそろそろ超過してしまいそうなのでこのあたりで筆を置かせていただきたい。
この作品の真価は、おそらく読んでみないことにはわからないのだから。