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クリスナーガ/小林三六九 電撃文庫
やはり幻想文学の王道といえば異世界ファンタジーであろうことは言を俟たない。
魅力あふれる世界、気持ちのいい仲間たち、胸のすく冒険譚こそが、現代社会に疲れたわれわれの心を癒し、つかの間の空想の翼を思うままに羽ばたかせる喜びとなることは、諸賢らには経験のあることだろう。
本書「クリスナーガ」とはその世界の名前である。世界を名を冠した物語というだけで、なんと胸躍ることであろうか。
主人公は、われわれ読者と同じく世界について何も知らない少年である。その彼と冒険を共にするのは、いずれも見目麗しき女性ばかりなのは筆をどれほど費やしても足りないほどだ。
まず主人公が召還した魔女。次にその世界の王女とその従者の女。最後にエルフの族長の女、半獣人の女。
……彼女らが主人公を取り囲み、千年にわたる因縁へと立ち向かう運命に抗うのだ。
だが、そんな右も左もわからない異世界ではあるのだが、作者は筆を巧みに読者の理解を助けている。
記憶喪失の少年が建造物を見て「●メートルの建物が~」などと描写したり、心理を伝えるために俳句を読み上げてみたり、パラドクス、ラグナロク、フェンリル、エルフ、メガネなどファンタジーでは耳慣れた単語を導入しているなどなど配慮に事欠かない。