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MIB(メイド・イン・ブラック) 電撃文庫/柏葉 空十郎
これは、素晴らしきツンデレの物語である。
いまや標準語と言っても過言ではないツンデレ。さすがに単語と概念が浸透し広まった現代にあっては
いささか手垢のついた題材といわざるを得ないが、だがしかし王道とは陳腐なもの。
いや、王道であるからこそ、陳腐と写るのだ。
やはり、普段はツンツンなヤツが、ある時デレるそのギャップと言うのは、どんなにありふれたパターンで
あったとしてもどうにも心ときめくものがある。
そしてこの作品は、そのツンデレの要である「ツン状態とデレ状態のギャップ」の限界に挑戦した物語である。
巷で、「メン・イン・ブラック」ならぬ「メイド・イン・ブラック」という、「UFOの目撃地点に現れては、それを他言
しないでくださいねとお願いしてくるメイド」の噂を聞いていた主人公の元に、まさにそのメイドが現れる。
UFOで彼の家に突っ込んで破壊するというインパクト溢れる登場で。
いやいや、この程度、昨今のラノベどころか、2~30年前の漫画ですら見られる展開はさして斬新でもない。
斬新なのはこの次。
なんと登場したヒロインは、家屋を破壊されて呆然とする主人公に居丈高にこう言い放つのだ。
「UFOなんて単なる見間違いなんだから、忘れなさい!」
「弁償しろって言っても、この星の貨幣なんて持ってないから無理よ!」
「どっかから価値のあるもの盗んできてもいいけど、盗品で修理なんて気分悪いでしょ?」
初登場からツン全開である。いや、ツンと表現するにはあまりに生ぬるい、明確な敵対反応である。
そしてすったもんだで話を聞いてみると、地球人類に対するスタンスで対立する二つの派閥のうち、
地球人類に害をなそうとする派閥が用意した危険なモノを彼らが何とか奪取したものの、それを託した
主人公の父が行方不明になってしまい、連絡不能になってしまったと言うのだ。
なお、主人公の父と連絡手段が失われたのも主人公を家屋を破壊したのも、ともにヒロインのドジの
せいであり、それらを謝るころか逆切れするばかりだ、と言うことも付記しておく。