08/04/28 00:07:00 1mFnKGCP
キノの独白が妙にくどい
今日も今日とて快適とは言い難い一晩限りの仮設の寝床をどうにか這い出し、何時もの日課を行うべく
枕元に置いてあった２丁の銃を手に持った。ところで、『何時もの日課』とは、二重表記になるのだろうか、
一応日が昇る前の行為を日課と言い表してよいのだろうか、といった雑多な思考が頭の中を過るが、
寝起きの上手く回らない前頭葉の処理能力では、睡眠欲と食欲のツープラトン攻撃に対し余計な命題を
滑り込ませる事は不可能であり、つまりは朝のトレーニングを開始するまでの僅かな間にほんの少しの
無駄な脳内処理が行われるに留まり、これといって有用な結論は全く得られなかったのである。
さて、どうにもこうにも身体に染み付いてしまった、いかにして人を効率良く撃ち抜けるかの訓練も終了し、
もう連れ添ってどれほどになるかも分からない相棒の背を叩き、起床を確認したところでエンジンをかけた。
彼にはとても重大な使命――ボクの朝のコーヒーを温める――を仰せ付け、物理的にありえないような
量が詰め込まれた荷物の中から、今日の朝食となる携帯食料を取り出した。そういえば、『旅人の価値は、いかに
沢山の荷物をいかに要領よく詰め込むかにある』などという理解し難い持論を拝聴させてくれたのは誰だったろうか？
それが全てだとは決して思わない。そもそもボクの収納術からして、そのノウハウの元はといえば、残念ながら
お互いが生きるうえで相手が生きることを諦めなければいけなかった人の荷物を拝見させてもらった時に
学んだ物であることを考えるに、旅人の価値は、間違いなく『生き残る事』であろう。
さて、心地よいコーヒーの残り香も、段々と紺色が駆逐されていった夏の空に流れゆき、どうやら朝に弱い
ボクの相棒のエンジンと口が温まって来ている様だ。今日もまた、饒舌な彼の相槌で一日が過ぎて行くのだろう。
「それじゃあキノ、今日はどっちに行こうか」
「そうだねエルメス、…東に行こう。あっちの空が明るいから」
「ああ、月は東に日は西に、いつまでたってもフラグが立たない、ってね」
「…ああ、東は東、西は西、二つが共に出会うことはない、…ラドヤード・キップリング？」
「そうそれ」