08/03/11 01:40:57 H5om82dV
ごめん。書いてる途中でミスった。
あらためてカミマゴについて語る。
カミマゴ 羽根としっぽと世界征服
主人公の前に、空から天使が落ちてくるところから、この物語は幕を開ける。
「おいおい、いまどき天使が空からだってぇ?」
富井副部長あたりが甲高い声で嘲笑しそうな出だしだが、
もう少し読み進めると、主人公は天使にこう答えるのだ。
「すみません。人類は五百年前に絶滅しちゃいました」
京極さんなら「なんてことしてくれはったんや」ぐらいは言うかもしれない。
人類は五百年前に滅び、世界は人類がつくったコンピュータ「マザー」に管理され、
「パラヒューマン」という生物がこの世界で生きている。
ありきたりな材料でもいい料理はつくれます、と主張するかのような世界観だが、
それだけではない。
なによりこの主人公がすばらしい。
自他共に認める天才であり、権力も持ち、世界征服という野望も抱いている。
厨二読者の願望ばっちりな、海原先生であれば「化学調味料の塊の如き」と叩きのめしそうな設定だ。
そして、すべてが彼の考え通りに進んでいく。
敵の思考は決して主人公を超えることはなく、偶然は起こらない。
天才料理人のつくる料理は理由もなくすべて旨いことと同じように。
とにかく、そんなわけでするすると喉越しよく物語は進む。
主人公と天使の軽快なやりとりには、読者はシャッキリポンとした味わいを感じることだろう。
非情な主人公が天使に泣きつかれて少しずつ態度を軟化させていくさまは、
栗田さんにデレていく海原先生のようだ。
他にも登場人物はけっこういたが、岡星の奥さんなみに影が薄いので気にしなくてよろしい。
ラーメン屋でパラ読みして店を出るときには内容をすっかり忘れている美味しんぼのように、
本を閉じたときにはどうでもよくなっている、お勧めの一冊である。