08/01/26 14:15:39 wLnnO5ve
【ガラクタ・パーツ(集英社SD文庫)片桐敬磨】
先日SD文庫より発売された、新人作家のデビュー作である。
SD市場最年少19歳デビューと銘打たれた宣伝文句は、SD編集部の期待の高さを
うかがわせるものであり、その内容も大変前衛的な物といえよう。
何より特筆すべきはその文章力である。行ごとにコロコロと変わる視点、そして
ぼかされた主体によって、読者は否応なしに混乱をきたすことになるだろう。
小説において、一文字、一単語をじっくり読んで意味を考えるという国語の原点と
言えるべきことを改めて思い知らされた気分だ。そんな文章が全編300P以上にわたって
続くのである。ただ残念なことに私程度の読解力では、どんなにじっくり読んでも
作者の文章の意図に届けているとは到底思えなかった。非常に残念である。
ただこれだけは言える。おそらくこの作品を読んだ後であれば、どんな小説を読んだとしても
おそらく大変読みやすく感じることであろう。だがそれは逆に言えばいかに読者に
媚びているかということになるのではなかろうか? そう思えてならない。そう言う意味で
安易に読者に媚びることなく自分の文章を貫いた作者に敬意を表したい。
また、ネタバレになってしまうため詳しくは書けないが、たまたま主人公たちと
一緒にいて、事件に巻き込まれたというはずの設定の少年が、知らぬ間に仲間になって
当たり前のように、秘密結社の裏の作戦に参加していたりするところに驚きを覚える。
(ちなみに主人公達は、その秘密結社の社員である。)
これまで、秘密結社といえば、とかく裏に潜ったり、隠れたりという表に出ないイメージを
持たれがちであったと思うが、作者はそんな既成概念をあっさりと壊してくれたのである。
裏組織における新しい在り方の道を示してくれたのではなかろうか。
その他色々語りたいことは尽きないが、この意欲作を発売に踏み切った
SD編集部の英断に敬意を表したい。