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【戦闘城塞マスラヲ 著・林トモアキ 絵・上田夢人 (角川スニーカー文庫)】
※本書を語る前に語らなくてはならない事がある。
多くの人には蛇足となってしまうだろうが、著者の紹介から入る事をお許し願いたい。
林トモアキ氏は現代作家の中でもその名をよく知られた文人である。
なによりも人口に膾炙した名著といわれる作品がある。
『おりがみ』
この著書を知らない人は少ないだろう。現代小説や漫画映画に特に関心を持たない人でも記憶のある題名である。
林トモアキ氏の作品を知らないでもこの題名を知っている人がある。作者知らずの名著となっているのだ。
ところでどんな本が名著か。
調べが良くて唇に乗せやすい事。多くの人の共感を得る内容が盛り込まれている事。
その意味では親しくわかり易い作品である事が名作の条件に違いない。自ずと人々の間に広まっていく条件である。
しかし、本当は名作となる大切な条件がもう一つある。
それは分かり易い内容に見えて、人間と人生についての深い真実を蔵している事である。
故に幾度読んでも新鮮であり、読み度に感銘を覚えるのである。
それも世代間を越え、様々な境遇にある老若男女にである。
そんな名著を林氏は二十五歳で書いたのだった。
そして有名になった『おりがみ』の全7巻だけでなく、
知られざる名作というべきか、名著となって当然の作品が多くある。
スニーカー文庫幾百冊の本棚の中に収められた十三冊の作品は、鈍色の輝かしい宝物といって過言ではない。
しかし、若くして名作を詠んで為か「おりがみ」という一作品だけが有名になってしまった。
そして他の作品を読んでもらえない作家になってしまったというふしもないではない。
そこで私は、再び地表から掘り出して日の光あててやろうと本書『戦闘城塞マスラヲ』の紹介を決意した。