07/07/01 03:16:11 fPR2Jz/O
「私は、撮影者であることを自覚してる。つまり撮影行為の限界を識ってる。
だから私はカメラを使う。写真で自分の役割を区切ってる。
私は私がシャッターを押す事までを一つの画と捉えてフィルムに収めてる。
私は被写体との境界を逸脱しようとは思わない。脱脇役を意図しているわけでもない」
「あ、貴女は―」
「私の哀しみはそこにあるのよ。私と同じ撮されるのが苦手なあなたにはそれはないのかと、
ずっと思ってたけど。けどどうやら、あなたはそれに無自覚だっただけのようね―」
「…………」
「あなたは無秩序に行動する先輩達に意図的に姿を見せて、薔薇の館に登場する環境を造り上げた。
―そしてあなたの望みは叶った。反面、いろんなものを失った」
「失った―しかしそれは失ったのでなく」
撮したのです、収めたのです。―あなたがするように私は
「ならどうして動悸が乱れているの―。あなたは―本当に喜んでいた筈よ。
実姉を、先輩を、級友を眺めながら」
「喜んで―いましたとも」
少女は本当に嬉しかったのだ。いくつか嘘は吐いたけど、常に気持ちは正直だったから。
「そんなにまで手に入れた場所、ただ―その場所…私の傍にあなたと云う『個』は居ない、のよ。
だからこのままだと―あなたは潰れるわ」