07/04/17 19:20:45 xfJ4/pKT
魔王様の仕事は人形製作。
炊事洗濯掃除に夜伽。彼の作る人形は精巧で万能。
萌え萌え美少女や溌剌とした美青年、どんなものでも揃います。
お求めやすいバリユーラインから一品もののオーダーメイドまで
あらゆる顧客の希望に応えられることでしょう―
今日も偽りの命を与えられた人形を設計し、工場の稼動をチェックして回る魔王とその腹心。
いつの間にかユーザーは全世界に広がり、人形製作は一大産業として発展しました。
魔王の影響力もそれに伴って次第に大きくなっていきました。
人は仕事が終わればすぐ家に帰るようになり、酒場の経営は厳しく、娼館すら潰れるほど。
商業への打撃は計り知れません。失業者は治安を悪化させ、けれどそれを取り締まるのも魔王の作った人形。
国家の支出も膨らんでいきます。そんな変化に不満を持つ支配者たち。
人形を退廃的なものと断じ、その所有に規制をかけるようになりました。
誤解とそれに由来する迫害とが広がり、一部の過激派は人形たちを狙って破壊活動さえ行う現在。
一方で支配者たちは魔王の技術を手中に収め、世界を我が物にしようと狙っています。
何人もの勇者が打倒魔王を掲げ、そして帰らぬ人となりました。
問題を解決しようとしない支配者に民衆は憤り、世界を混乱が席巻しようとしています。
そんな中、ついに世界を揺るがす大事件が起こったのでした。
魔王が若いころ、その技術と信念と、自らのもてる全てを賭して製作した最初の人形が
心無い悪漢によって壊され、この世から喪われてしまったのです。
人々の無理解に失望し、怒りに震え、復讐に燃える魔王。その力は世界征服へと向きを変えました。
旧態然として私欲に走る支配者たちを追い落とし、自らの理想を体現する国家を求めたのです。
ここに、後の歴史書にもっとも大きな戦乱として記される激しくも悲しい戦いが始まってしまいました。
そして立ち上がった一人の青年。
彼の傍にはいつも、寂しそうな目をした小さな少女がいました。
ごめん、何かすげぇ馬鹿一っぽい。