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記憶を固定する分子メカニズム
消滅してもよい記憶と残すべき記憶。脳はそれをどのようにして決定し,どこから指令を出して
いるのだろうか。
短期記憶も長期記憶もニューロン(神経細胞)どうしがシナプスと呼ばれる結合部でつながったときに
生まれる。
短期記憶ではシナプスが興奮して一時的に強化された状態になるが,長期記憶の場合,シナプスが
恒久的に増強される。
長期記憶のメカニズムがはたらくには,ニューロンの細胞核内にある遺伝子情報が読み取られ,
タンパク質が合成される必要がある。
ニューロンの発火後,核に向けて「記憶せよ」という情報が何らかの手段で送られているらしい。
いちばん考えやすいのは,シナプスから核への経路にシグナル伝達分子が介在している可能性だ。
著者たちはシナプスの役割を調べるために,ラット脳の海馬でシナプスの機能を阻害する実験をした。
その結果,シナプスが興奮しなくてもニューロンに刺激を与えて発火させれば,長期記憶にかかわる
遺伝子が活性化されることがわかった。しかし,ニューロンのインパルス(活動電位)によって
開く電位感受性カルシウムチャネルを阻害すると,長期記憶に必要なタンパク質が合成できなかった。
この結果から,記憶の固定に不可欠なのはシナプスではなく,ニューロンの発火そのものである
ことがわかる。
個々のシナプスが直接メッセージを核に送るのではなく,活動電位によってニューロンの細胞膜に
あるカルシウムチャネルが開き,核へのシグナル伝達経路が活性化して,遺伝子が働くのだろう。
(編集部)
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長期記憶形成のメカニズムがわかり始めた
ただし、そのような高速処理が長期記憶を転送している間中続いているかと言えばそうではなく、
睡眠中に起きているときに体験したことを再生する際の脳の活動は1秒未満で途切れる断続的な
ものであることもわかりました。
つまり、情報がいくつかの記憶の小さなパッケージ(パケット(packet))に分割されて、転送されて
いるということのようです。