07/05/26 18:22:47
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浄土真宗本願寺派は、国内最大規模の伝統仏教教団で、教団トップの大谷門主は温厚篤実な人
柄で知られる。政治や紛争に関する発言は少なく、海外で発言するのは初めてだ。西本願寺の重
要行事である20、21日の「降誕会(ごうたんえ)」(宗祖・親鸞の誕生日の法要)と重なったが、渡
航を優先した。
現地でインタビューに応じた大谷門主によると、今回の発言の伏線は、05年の立命館大での討論
にあるという。宗教と戦争のかかわりを学生から質問されたのを機に「宗教そのものに危険性がある
のではないかと思い直し、平和に積極的に貢献するのが宗教者の責務と考え始めた」と話す。
05年には、西本願寺を狙った右翼団体会長の放火未遂事件も経験。靖国神社への首相参拝に
浄土真宗本願寺派が反対したためだが、「どんな理由があれテロは許されない」との思いも強くし
たという。
さらに昨年夏、京都に宗教指導者らが集まり、世界宗教者平和会議(WCRP)が開かれたことで
「宗教をめぐる争いのない日本は、宗派間の紛争を調停できる貴重な立場にあると痛感した」。
ただし、大谷門主は急病で開会直前に欠席し、練り上げた開会あいさつは幻に終わった。その思
いを抱いて、今回参加した。
今年春には、立命館大での討論などをもとに現代社会と仏教を考える『世のなか安穏(あんのん)
なれ』(中央公論新社)を出版し、宗教者が市民にわかりやすく語りかける大切さを強調した。
ウィーンで実践した格好だ。
大谷門主がスピーチで引用した釈尊の教えは、23日に発表された大会声明に盛り込まれ閉幕
した。「ありがたいことです」。感想はあくまで控えめだった。