09/09/01 19:04:30 hXCjYCbh0
「兄さん。夜這いしに来ました」
「は、はい?」
夜遅く、明かりを落とした部屋の中で一人寂しくディスプレイを見つつ、自家発電に勤しんでいた俺に声をかけてきたのは、隣の部屋で今静かに寝息を立てていて然るべき妹であった。
後ろから声をかけられたもんだからたまらない。びっくりしすぎて思わず先走ってしまった。
床が汚れてる。うあああ。
内心の動揺を悟られないよう、俺はゆっくりと妹の方へと顔を向けた。
部屋の入り口で、扉に寄りかかるようにして俺を見ているであろう、妹の表情はわからない。
ただ、時折漏れる声は、やけに艶っぽくて、俺は動悸が妹に悟られやしないかどうか不安でいっぱいだった。
「よ、夜這い?」
「そう、夜這いです」
ゆっくりと俺の方に向かってきた妹は、ぐいっ、とその顔を近づけてきた。
流石に暗闇の中でも目が慣れて、しっかりと整っている妹の顔が視界一杯に広がる。
その近さと微妙な恥ずかしさから、思わず目を背けてしまう。
「もう、兄さんったら……照れてるんですね?」
「う、ん……」
「あらあら、もう、兄さんってばエッチなんだから」
にこっと笑う妹の視線の先。ディスプレイ。
煌々と輝く画面に映し出されているのは、俺お気に入りのロリっ子、早希ちゃん。
やばい、妹に趣味がバレた。だが身体は動かない。
それを知って知らずか、妹は数秒画面を見つめた後、おもむろにPCの電源を落とした。
「早希ちゃぁぁぁん!」
「兄さん……あんな小さい子が趣味なんですか? というか、絵ですよね、あれ」
「バカ言うな、早希ちゃんは世界が望んだ至高のロリっ子! ……はっ!」
墓穴を掘った!
妹にとって、今まで優しくて頼りになる兄貴であったはずの俺の評価は、おそらく地の底に落ちた。
ジーザス、神はいないのか。大体なんだって妹が俺の部屋に来るんだよ。くそう、くやしいのう、くやしいのう。
「兄さん……」
一人で負の思考スパイラルに陥った俺であったが、耳元で囁かれた妹の優しい声で我に返った。
気づけば、いつの間にやら妹の細くて白い腕が俺の首に巻き付いている。
「いもう、と……?」
「兄さん……」
「な、何を……」
「だから、言ったでしょう……? 夜這いしにきましたっ、て」
耳朶をくすぐるような妹の声、吐息。……俺は軽く、思考停止状態に陥った。
「ば、夜這いって……なんで」
「そんなこと、言わせちゃうんですか?」
「え……いや……」
そ、それってつまり、あれだよな?
……女性が男性に好意を持っていない限り、こういうことは起こりえないわけだから、つまり?
妹は俺を……? いや、でも……。
「ま、まあ……寝ぼけてるんだよな、妹。早くベッドに戻れ。な?」
「……信じてないんですか?」
「いや、常識的に考えて……」
「常識的に考えて、なんですか?」
妹が兄に夜這いって言うのはおかしい、そう続けようとした俺の口は、だがしかし開かなかった。
唇から伝わる、柔らかい感触。体験したことのない、不思議な感覚。
ああ、俺のファーストキスは妹に奪われた。
「ん、はむっ……ん……」
「~~っ」
「……んちゅ、ふぅ……ん……」
俺は為す術もなく、妹に唇を明け渡すしかなかった。
だが、気を休めてはいられない。少し力を抜くだけで、容赦なくその舌が、俺の腔内に滑り込まんとするのだ。
ここまで来といてなんだと思うかも知れないが、これが俺の最後の抵抗でもある。
「ん、んぅ……ぷはっ……。もう、兄さんっ」
「はぁ……な、なんだよ」
「どうして口を開いてくれないんですかっ」
どうしてって、普通開かないだろう。
そう答えた俺だったが、やはり今の妹には何を言っても効果がないらしい。
もう一度唇を奪われ、挙げ句舌の侵入を許してしまった。