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「ちゃぶ台返しに見た娘の志」 那智 文江(主婦 46歳 東京都)
平成生まれの娘は『ちゃぶ台返し』を知らなかった。昔の家庭で、よく父親が怒りをあらわに
した時に見られる光景で、年配の方なら一度は目にしたことがあるだろう。先日、専業主婦仲間
の雁尾千恵さんから、浮気旅行で行った東北のお土産をいただいた時に面白い話を聞いた。偶然
入った岩手県矢巾町のショッピングセンターで『ちゃぶ台返し大会』を行っており、すごく楽し
そうだったとのこと。この話を私の横で聞いていた娘は、初めて聞くちゃぶ台返しという言葉に
興味を持ったようだ。私は早速『自虐の詩』というDVDをレンタルして娘に観せた。この映画
ではちゃぶ台をひっくり返す場面があり、その大胆さに娘はとても驚いていた。私は娘に「貴女
はいづれ大勢の前で歌って踊るのだから、テーブルをひっくり返す位の度胸と大胆さを持たない
といけないよ」と助言したのだが、娘もその必要性を自覚していたため、さっそく実践してみる
ことにした。そこで、その日は夫と息子に、いつも以上に夕食を豪勢なものにするように、また
汁物や鍋ものを出すように、またケーキを買って食卓に出すようにと指示しておいた。ちょうど
子供達は、それぞれ学校で終業試験があり、息子は全教科の平均が95点、娘は合計が98点という
素晴らしい成績をとったので、どのみち豪勢な料理を作る必要があったのだ。料理が豪勢な方が
ひっくり返す勇気も必要になってくるからである。さて、料理が完成し、娘は勇気を出して実践
したのだが、結果は私の予想以上だった。弧を描く料理、汁物の飛散面積、食器のぶつかり合う
音。どれも完璧で、やはり私の娘には芸術に天才的な素質があると再認識させられた。片づけを
夫と息子に託して、私と娘は玄関に待たせたタクシーで、予約しているホテルニューオータニに
向かい、ホテルで改めて娘のお祝いをした。娘のちゃぶ台返しのインパクトは、『自虐の詩』の
それに引けを取らなかった。次はデジカメで録画しておこうと考えている。そして、それを芸能
事務所に売り込み、娘に女優としての道も作ってあげるつもりだ。