08/09/15 18:16:38 dpkFR/LN
俺とＴさんの出会いは去年４月精神病院。
一目見て、かっこいいな、と思った。
ある日テレビを見たあとドアを開けてあげると、「ありがとう」と言ってくれた。
とても礼儀正しい人だった。
実を言うと俺もＴさんも不眠。
だから個室の俺はＴさんと部屋を替わってあげる事にした。
それでも二人とも眠れなかった。
ある日、眠れずに廊下を歩いてるとＴさんの個室から聞き覚えのある曲が流れてきた。
それはジョージ・マイケルの「フリーダム９０」だった。
おれは思いきって彼の部屋に入った。
「これジョージ・マイケルじゃない？」
Ｔさん「そうだよ。色々持ってるけど見てみる？」
そこにはおれたちの青春時代を彩ったポップスやロック、ジャズやレゲエのＣＤとテープがあった。
俺はジョージ・マイケルとジャネット･ケイのＣＤを借りた。
Ｔさんは天涯孤独だったおれにできた最初で最後の友達だったのかもしれない。
退院の日。
Ｔさんとトイレで並んだ。
「終わった？」
彼は俺に話しかけた。
俺「人生終わったよ」
Ｔさんは微笑んだ。ただ微笑んだ。
その微笑みはあまりにもまぶしかった。
そしてそれが俺が見た最後のＴさんの姿だった。