10/06/21 23:22:11
評価お願いします。長いので分けました。
これは今から遥か昔のとある国での話だ。とある国の重臣が反乱を起こし、王を殺し権力を握った。よくある話だ。王には一人の息子がいた。ちょうど物心がつくぐらいの年齢だった。当然、その少年のことも重臣は殺そうとした。
しかし重臣は殺さなかった。なぜなら実際に少年を重臣が見たときに情がわいてしまったからだ。こんな小さく、そして美しい少年まで殺す必要はないだろう。可哀想だ。と重臣は思ったのだ。
だが、しかしほうっておけば害を及ぼすかもしれない。今や王となった重臣は少年を城の地下牢に幽閉した。
地下牢は日光がいっさい入ってこないのでとにかく暗い。唯一の光はろうそくのかすかな灯火だけだ。与えられるのは日に三度の食事と水だけ。地下牢にあるのはベッドとトイレぐらいだ。
少年のやることは少なかった。食事をすること、一人で暇な見張りの兵士の話を聞くこと、牢のなかにあるろうそくのかすかな灯火を見ることぐらいだった。
この中で少年が一番好きなのはろうそくの灯火をみることだ。見張りの兵士はたいてい愚痴話ばかり言ってつまらない。それに食事も豪華なものでなく、質素なものだ。
が、しかしそれでも普通の人にとってはろうそくの灯火をみることなどそれらに比べたらもっとつまらないだろう。が、少年は違った。暗闇のなかにぼうっと浮かんでいるろうそくの光を楽しめた。
光を見ながら昔のことを思い出す。楽しかった頃のことを。あのころの世界は光であふれかえっていた。少年はろうそくの燃え尽きる時が一番楽しみでもあり、悲しみでもあった。
ろうそくの光は燃え尽きる直前ゆらぎ、一番輝く。が、すぐに燃え尽きつきてしまうのだ。そんな生活が何年も続いた。